ばら積み貨物船(ばらづみかもつせん、撒積貨物船)、あるいはバルクキャリア()、バルカー () は、梱包されていない穀物・鉱石・セメントなどのばら積み貨物を船倉に入れて輸送するために設計された貨物船である。最初のばら積み専用貨物船が1852年に建造されて以来、経済的な理由によりこうした船の開発は促進され、規模を拡大させ洗練させてきた。今日のばら積み貨物船は容量・安全性・効率性を最大化しながらその任に耐えられるように特別に設計されている。ばら積み貨物船は、今日では、世界の商船の40 パーセントを占めており、その大きさは船倉が1つの小型ばら積み船から載貨重量トン数が40万トンに達する巨大鉱石船まである(「ヴァーレ・ブラジル」)。載貨重量トン数が10,000 ロングトンを超える船は、2006年6月現在で6,224隻ある。多くの専用設計が存在し、貨物船そのものに積み荷を降ろす能力を持っているもの、積み荷を降ろすために港の設備に頼るもの、さらに搭載中に積み荷の梱包作業を行うものもある。全てのばら積み貨物船の半分以上の所有者はギリシャ・日本・中華人民共和国で、また4分の1以上がパナマに船籍を置いている。ばら積み貨物船の最大の建造国は日本で、また82 パーセントはアジアで建造されている。ばら積み貨物船の船員は、貨物の積み込み・積み降ろし作業、船の航海、機械設備類の適切な保守作業などに従事している。貨物の積み込み・積み降ろしは難しく危険な作業で、大型の船では120時間ほど掛かることもある。乗員はもっとも小さい船で3人から、大きな船では30人を超える程度の数である。ばら積み貨物の中にはとても密度が高かったり、腐食性が強かったり、磨耗作用があったりするものがあり、そういった貨物は安全上の問題を引き起こすことがある。積み荷の船内移動や自然発火、積み荷の集中といったことは船を危険に陥れることがある。ばら積み貨物船は効率的な貨物取り扱いのために大きなハッチを備えているため、老朽化して腐食の問題を抱えた船を使い続けたことが1990年代に続発したばら積み貨物船の沈没事故につながっている。船の設計と検査を改善し、船を廃棄する処理の能率化を図るために新しい国際規制が導入されている。ばら積み貨物船という言葉を定義する方法はいくつかある。1999年時点で、海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約)はばら積み貨物船を「単一甲板で、トップサイドタンクとホッパーサイドタンクを貨物船倉内に有し、鉱石輸送船や兼用船を含む主に乾性ばら積み貨物輸送を意図した船」と定義している。しかし、ほとんどの船級協会は、ばら積み貨物船とは梱包されていない乾貨物を運ぶ全ての船であるという、より広い定義を使っている。多目的貨物船はばら積み貨物を運べるが、他の貨物を運ぶこともでき、ばら積み専用に設計されてはいない。ドライバルクキャリアという言葉は、石油タンカー、ケミカルタンカー、LNGタンカーなどの液体のばら積み貨物船と区別するために用いられる。非常に小さいばら積み貨物船は一般貨物船とほとんど区別不可能で、しばしば船の設計よりもその使用法に基づいて分類される。ばら積み貨物船を表現するための多くの略語がある。OBO (Ore-bulk-oil carrier) は鉱石・ばら積み貨物・石油の組み合わせを輸送する船を指し、O/Oは鉱石と石油の組み合わせを輸送する船を指す。大型タンカーにおいてVLCC (very large crude carrier) やULCC (ultra large crude carrier) といった記号が使われることに由来して、特に大型の鉱石船やばら積み貨物船にはVLOC (very large ore carrier)、VLBC (very large bulk carrier)、ULOC (ultra large ore carrier)、ULBC (ultra large bulk carrier) などの言葉が用いられる。専用のばら積み貨物船が登場する以前、荷主にはばら積み貨物を船で輸送する方法として2つの手段があった。1つは港湾労働者が貨物を袋詰めし、その袋をパレットに積み上げ、クレーンでパレットを船倉に積み込むという方法である。もう1つの方法は、荷主が船を全て借り切り、時間と費用をかけて合板製の容器を船倉内にしつらえることであった。そして、小さなハッチを通して貨物を運ぶために、木製の荷送り・荷止め板を設置しなければならなかった。こうした方法は時間が掛かり、労働集約的であった。コンテナ船と同様に、効率的な積み込み・積み降ろしの問題がばら積み貨物船の発展につながった。蒸気船として登場し始めた専用のばら積み貨物船は、より人気を博するようになった。ばら積み貨物船とされる最初の蒸気船は、1852年のイギリスの鉱石輸送船SS ジョン・バウズ (SS John Bowes)である。この船は金属製の船体、蒸気機関、砂ではなく海水を利用したバラストタンクを備えていた。これらの特徴により、船は競争の激しいイギリス石炭輸送市場で打ち勝っていくことができた。ディーゼルエンジン推進の最初のばら積み貨物船は1911年に登場した。第二次世界大戦以前は、ばら積み貨物への需要は低く、年間に金属鉱石およそ2500万トンほどで、こうした輸送の多くは沿岸部に留まっていた。しかしながら、1890年に採用された二重底と、1905年に導入されたバラストタンクの三角構造という、ばら積み貨物船の2つの決定的な特徴は既に現れていた。第二次世界大戦後、先進国、特にヨーロッパ諸国、アメリカ合衆国、日本の間での国際的なばら積み貨物の輸送が発展し始めた。この輸送の経済性の問題から、ばら積み貨物船は大型化し、さらに用途別に特殊化していった。ばら積み貨物船は6つの大きさに分類される。小型、ハンディサイズ、ハンディマックス、パナマックス、ケープサイズと超大型である。超大型ばら積み貨物船と超大型鉱石輸送船はケープサイズに分類されるが、しばしば別な分類とみなされる。地域輸送では他の分類もあり、例えばギニアのカムサ港 () で積み込みのできる最大の長さであることから、最大長229 メートルの船をカムサマックス (Kamsarmax) という。他に地域輸送で現れる単位としては、瀬戸内マックス (Setouchmax)、ダンケルクマックス (Dunkirkmax)、ニューカッスルマックス (Newcastlemax) などがある。1万載貨重量トン以下の小型船の分類の中では、小型ばら積み貨物船が多くを占めている。小型ばら積み貨物船は500から2,500 トンの貨物を積み、1つの船倉を持ち、河川航行ができるように設計されている。しばしば橋の下を潜ることができるように設計され、3人から8人の少人数の乗務員で運航できる。ハンディサイズとハンディマックスは一般目的で使われる。これらの2つの分類は、1万載貨重量トンを超えるばら積み貨物船の中で71 パーセントを占めており、その増加率も最も高い。これは部分的には、大型の船を建造する際により厳しい制約を課すようになった新しい規制が発効したことによる。ハンディマックスの船は典型的には全長150 - 200 メートルで、52,000 - 58,000 載貨重量トン、5つの船倉に4つのクレーンを備えている。パナマックスの船は、パナマ運河の閘門の大きさに制約されており、全幅32.31 メートル、全長294.13 メートル、喫水12.04 メートルまでである。ケープサイズの船はスエズ運河やパナマ運河を通航できないほど大きく、3大洋の間を行き来するためには喜望峰やホーン岬を回らなければならない。ケープサイズのばら積み貨物船は専門化しており、93 パーセントは鉄鉱石または鉱石を運んでいる。超大型鉱石輸送船や超大型ばら積み貨物船はケープサイズの一部で、20万載貨重量トン以上の船を指す。このサイズの船はほとんどが鉄鉱石輸送用に設計されている。世界のばら積み貨物輸送は大変な量に上っており、2005年時点で17億トンの石炭・鉄鉱石・穀物・ボーキサイト・リン酸塩が船で輸送された。こんにち、1万載貨重量トン以上のばら積み貨物船は世界で6,225隻あり、全船舶に占めるトン数は40 パーセント、船舶数では39.4 パーセントとなっている。小型の船も合わせると、ばら積み貨物船は総合計で3億4600万載貨重量トンの容量がある。兼用船はわずかな割合しかなく、この容量のうちの3 パーセント未満に過ぎない。五大湖のばら積み貨物船は、98隻320万載貨重量トンで、やはり全体に占める割合は少ない。2005年現在、ばら積み貨物船の平均船齢は13年ほどである。全ばら積み貨物船の約41 パーセントは船齢10年未満、27 パーセントが10年から20年、残りの33 パーセントが20年以上である。五大湖で登録されている98隻全てのばら積み貨物船は船齢20年以上である。2005年現在で、連邦海事局は1万載貨重量トン以上のばら積み貨物船を世界中で6,225 隻としている。最大の船籍国はパナマで、2位から5位までの船籍国の合計より多い1,703隻が登録されている。ばら積み貨物船の登録数では、以下香港 492隻、マルタ 435隻、キプロス 373隻、中華人民共和国 371隻である。パナマは登録されたばら積み貨物船の載貨重量トン数の点でも圧倒している。トン数の点で2位から5位までは、香港、ギリシャ、マルタ、キプロスである。3大ばら積み貨物船の所有国は、ギリシャ 1,326隻、日本 1,041隻、中華人民共和国 979隻となっている。これらの3ヶ国で世界全体の53 パーセントの船を所有している。ばら積み貨物船の巨大な船隊を保有している会社が数社ある。多国籍企業であるギアバルク・ホールディング () は7隻のばら積み貨物船を保有している。カナダのフェドナブ・グループ () は、北極海の氷の中で運航できるように設計された2隻を含めて80隻以上のばら積み貨物船を保有している。クロアチアのアトランツカ・プロビドバ () は14隻のばら積み貨物船を保有している。ドイツ・ハンブルクのH. フォーゲマングループ () は19隻のばら積み貨物船を所有している。ポルトガルのポートライン () は10隻のばら積み貨物船を所有している。デンマークのTORM () とスペインのエルカノ (Elcano) もかなりの船隊を保有している。以下の会社は小型ばら積み貨物船の運航に特化しており、イングランドのスティーブンソン・クラーク・シッピング () は8隻の小型ばら積み貨物船と5隻のハンディサイズばら積み貨物船を所有し、トルコのコーンシップ () は7隻の小型ばら積み貨物船を所有している。アジアの造船会社がばら積み貨物船の建造を独占している。全世界の6,225隻のばら積み貨物船のうち、ほぼ62 パーセントが大島造船所やサノヤス・ヒシノ明昌などの日本の造船所で建造された。大韓民国は、大宇造船海洋や現代重工業などの造船所により、2番手の建造国で643隻を建造している。大連船舶重工集団、澄西船舶修造廠、上海外高橋などの大きな造船所で建造している中華人民共和国が3番目で、509隻を建造している。台湾は、台湾国際造船などの造船所により4位で129隻を建造している。これら上位4ヶ国にある造船所は全ばら積み貨物船の82 パーセントを建造している。船でばら積み貨物を輸送する費用はいくつかの要素に影響される。ばら積み貨物輸送市場はとても不安定で変動し、輸送する貨物、船の大きさ、輸送経路など全てが最終的な価格に影響する。ケープサイズの船で石炭を南アメリカからヨーロッパへ輸送する費用は、2005年時点で1 トンあたり15ドルから25ドル程度である。パナマックス級の船で骨材をメキシコ湾から日本へ輸送する費用は、同じく2005年時点で1 トンあたり40ドルから70ドル程度であった。ばら積み貨物船の運賃変動を表す指数として、バルチック海運指数がある。荷主によっては、1 トンあたりの定価を払う代わりに、船を1隻借り切って1日あたりの費用を払う場合もある。2005年時点で、ハンディマックスの船を1日借りる平均費用は18,000ドルから30,000ドル程度で変動していた。パナマックスの船は1日当たり20,000ドルから50,000ドル、ケープサイズの船は40,000ドルから70,000ドルほどであった。一般的に、船は任務を外れると船舶解体(スクラップ)の過程を経て処分される。船の所有者と買い手は、船の重量やスクラップ金属市場の価格などの要素を基にスクラップ費用を交渉する。1998年には、インドのアラン () やバングラデシュのチッタゴンなどの場所でおよそ700隻の船が解体された。載貨重量トンにして50万トンにもおよぶばら積み貨物船が2004年に解体され、これはその年の船舶解体の4.7 パーセントを占めた。この年は、ばら積み貨物船は特に高いスクラップ価格で売れており、1 トンあたり340ドルから350ドルであった。ばら積み貨物船の船員は、典型的には20人から30人で構成されるが、小型の船は8人程度で操船することもできる。船員は、船長と甲板部門、機関部門、厨房部門で構成される。旅客を貨物船に乗せることはかつて広く見られたが、今日ではとても稀なことになっており、ばら積み貨物船ではほとんどない。1990年代には、ばら積み貨物船の海難事故が数多く発生した。こうしたことから、船舶所有者は船員の能力と適性に関する様々な要素の効果について説明する検討を依頼することになった。この調査によれば、ばら積み貨物船の船員の能力は調査された全てのグループの中で最低であった。ばら積み貨物船の船員の中では、船齢が若く大型の船に乗務している船員の能力が最もよかった。よく保守されている船の船員の能力は高く、また船内で使われている言語の数が少ない船の船員の能力も高かった。ばら積み貨物船では、同じくらいの大きさの他の種類の船に比べて甲板部門の人間が少ない。小型ばら積み貨物船は2人から3人の航海士を乗せている一方、より大型のハンディサイズやケープサイズのばら積み貨物船は4人である。同じ大きさのLNGタンカーはこれに1人の航海士が追加されており、さらに一般船員がいる。ばら積み貨物船の航海は市場の力によって決定され、航路と積み荷はしばしば変更される。収穫期には穀物輸送に関わった船が、それ以外の時期には他の貨物を輸送したり、他の航路に移ったりする。不定期輸送に関わる沿岸輸送船舶の場合、船員は積み荷が完全に搭載されるまで、次の寄港地を知らないことがしばしばある。ばら積み貨物は積み降ろしが難しいため、ばら積み貨物船は他の種類の船に比べて寄港時間が長い。小型ばら積み貨物船に関する調査によれば、積み込みに比べて積み降ろしには平均で2倍の時間が掛かっていた。小型ばら積み貨物船は55時間寄港していた一方で、同じ大きさの木材輸送船は35時間であった。この寄港時間は、ハンディマックスで74時間、パナマックスで120時間に伸びる。コンテナ船の12時間、自動車輸送船の15時間、大型タンカーの26時間の寄港時間に比べ、ばら積み貨物船の船員は上陸時間を長くすることができる。ばら積み貨物船への積み込み・積み降ろしは時間が掛かり危険な作業である。手順は、一等航海士の助けを受けながら、船長によって計画される。国際的な規制により、作業を開始する前に船長と港湾側の責任者が詳細な計画に合意している必要がある。甲板員と港湾作業員が作業を監視する。まれに積み込みのミスが起きて、岸壁で船が転覆したり、半分に折れてしまったりする事故を引き起こす。用いられる積み込み方法は、貨物の種類と船舶および港湾にある設備に依存している。あまり先進的ではない港では、貨物はショベルや袋でハッチを通じて注ぎ込まれる。このシステムは、より速く労働集約的ではない方法に置き換えられつつある。1時間に1,000 トンの積み込みを行える二重連接クレーンが広く用いられている方法で、1時間に2,000 トンに達する岸壁設置のガントリークレーンの使用も増えている。クレーンによる積み降ろしの率は、そのバケットの容量(6 トンから40 トン)と、クレーンが積み荷を積んで岸壁に降ろしてまた戻ってくるために掛かる時間によって制約されている。現代のガントリークレーンでは、この1周期の時間は50秒ほどである。1時間に100 トンから700 トンほどの標準積み込み速度を持つベルトコンベアはとても効率的な積み込み方法で、最新鋭の港では1時間あたり16,000 トンの速度を持つものもある。しかしながら、ベルトコンベアの作動開始・作動終了は複雑で時間を要する。セルフアンローダー付きの船は1時間あたり1,000 トン程度の率である。積み荷が降ろされると、船員は船倉の清掃作業に取り掛かる。これは、次の積み荷の種類が異なる場合特に重要である。船倉の巨大さや、積み荷の物理的な性質などにより、清掃作業は難しいものである。船倉が綺麗になると、積み込み作業が開始される。積み込み作業中に積み荷の水平を保つことは、船の安定性を保つために重要である。船倉が満たされるにつれて、油圧ショベルやブルドーザーのような機械が積み荷を整えるためにしばしば用いられる。積み荷は一方に偏りがちであるため、船倉が部分的に満たされている場合、積み荷を水平にすることは特に重要である。積み荷を縦方向に分割したり、積み荷の上に木材を固定したりする場合には、特に注意が払われる。船倉が一杯になると、トミング (tomming) と呼ばれる作業が行われ、ハッチカバーの下に6 フィート (2 メートル)ほどの穴を掘って、そこに袋入りの積み荷やおもりを入れる。
出典:wikipedia
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