早期地震警報システム(そうきじしんけいほうシステム)とは、鉄道用の早期警戒型の地震警報システムである。P波(初期微動)地震計を日本の沿岸、鉄道沿線および主要内陸部に設置し、大きな地震となるべきP波を検知した場合に自動的に警報動作をし、鉄道の列車を停止させるシステムである。コンセプトは国鉄鉄道技術研究所時代に開発が始まったユレダスと同様であるが、種々の改良、高度化がなされている。なお、新幹線用地震計の主要地震計の一部は、緊急地震速報の主要地震計と同様のものを使用している。緊急地震速報自体も、ユレダスシステムからヒントを得て高度化したものであり、ユレダスからの発展的統合と言える。現在、日本国内の新在直通路線を除く新幹線路線全線において施行されている。各社とも名称は異なるが、特に新幹線部分に関しては機能は概ね同様である。沿岸、沿線および主要内陸部に設置される早期警報用地震計は、P波を検知すると、最初の1-3秒間ほどの地震波型により、震源までの距離、震源の方位を求め、それからマグニチュードを数式的に計算する。これにより震央の位置と震源の深さを推定できる。ここまではユレダスのシステムとほぼ同様である。早期地震警報システムにおいては、この地震諸元推定アルゴリズムに改良を加えて、M8クラス以上の巨大地震において断層の破壊時間が長時間掛かるためにマグニチュードの推定誤差が大きくなる(結果として被害判定に遅れが出る)問題を改善した新地震計を採用している。この改良アルゴリズムは「B-⊿法」と呼ばれ、まず計測されたP波地震波形(時間変化t)の振幅包絡線と、次式関数による曲線とが最も近似する係数A、Bを算出する。続いて次の式により震央までの距離⊿を算出する。これにより初動最大振幅Amaxから次式により、P波検出当初1-2秒程度の間に、マグニチュードMを推定することが可能となった。地震諸元(震央の位置、マグニチュードなど)が求められると、それにより地震被害が発生する想定範囲を求める事が可能となり、直ちに列車を停止させるべき範囲を特定することができる。以下は早期地震警報システムのうち新幹線システムにおける制御方法について記載する。推定マグニチュードMと、震央の位置からの距離⊿の関係は次式で表され、この⊿が震央からの被害想定範囲の限界距離となる。(「M-⊿法」)ここまではP波の波形により地震諸元をリアルタイム推定するものであったが、これとは独立した指標として、S波(地震主要動)のデータも制御に使用している。新幹線システムの新地震計はすべて、P波のほかS波(地震主要動)検出機能も備えており、最大加速度(ガル)、SI値(スペクトル強度)、計測震度を測定可能である。これらの主要地震動指標が規定値を超えた場合には、即時に検知点周辺の予め規定された沿線検知点(変電所)が制御対象となる。新幹線システムにおいては、鉄道沿線の地震計(沿線検知点)が運転制御に主要な役割を果たす。沿線検知点は通常、沿線の変電所ごとに設置されており、沿線検知点が、可変範囲制御に基づき被害想定範囲に掛かると判断され、または固定範囲制御に基づきS波諸元の規定値超過から制御対象となる場合には、即時に該当変電所の電力供給を停止する。さらに、沿岸、内陸にも新地震計(前述)を設置し、これらと沿線検知点とを通信回線および中継サーバーにより相互接続しているため、ある位置の地震計において計測された地震諸元およびS波規定値超過情報は、各地点への地震波(P波、S波)の到達を待たずに、即時に他の検知点に伝達され、制御に利用される。このような自律分散型制御により、実際の地震発生直後の高速な運転制御を可能としている。制御対象の変電所の電力供給が遮断され、該当する饋電区間の饋電が停止すると、当該区間を走行中の全ての新幹線列車は、即時に非常ブレーキが掛かるようになっている。なお、「ユレダス」利用時における運転制御においては、沿線検知点において「M-⊿法」により被害想定範囲(後述)に掛かると判断された場合には、即時に該当変電所の電力供給を停止していたと言う点においては、本システムと同様である。この新幹線システムの運転制御ネットワークは、気象庁が発報する緊急地震速報との接続も行われている。緊急地震速報からの地震諸元情報を運転制御ネットワークに配信し、運転制御に利用している。また、新幹線システムおよび緊急地震速報からの諸元情報は、在来線早期地震警報システム(JR東日本の場合)にも配信されている。在来線システムでは、これらの諸元情報に基づき、警報対象範囲を判断し、即時に対象エリアの列車無線を通して一斉に音声で地震発生、緊急停止の旨を発報する。発報を受けた運転士は非常ブレーキを掛けるようになっている。なお、在来線システムにおいては元来、S波(主要動)地震計を域内に設置し、地震により規定値を超えると同様に自動的に列車無線を発報するようになっている。在来線システムの早期警報化(上位システムとの相互接続)は、2007年に首都圏、2009年度にJR東日本管内にて実施。
出典:wikipedia
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