輓獣(ばんじゅう)は、車両やソリ、農耕具などを牽引するための動力として用いられる使役動物である。駄獣がその体自体に直接荷物を載せて運ばせるのに対して、輓獣は荷物を載せた車両やソリを牽引することで、より大きく重い荷物を運ばせることができる。また、犂を輓獣に牽かせて耕作することで、田畑をより深く耕すことができる。輓獣として利用される馬のことを特に輓馬(ばんば)という。荷車の牽引や犂牽きにどの種類の動物を利用するかということに関しては、その地域の気候への適性やそこで得られる餌の種類などが影響している。ただし、その地域で古くからその方法が利用されてきたというだけの理由で特定の種類の輓獣の利用が継続され、より強力な輓獣が利用可能であっても移行が進まないといった事例も広くみられた。輓獣の利用は、メソポタミアのウルクにおいて発掘された紀元前3000年ほど昔の粘土板に記載された内容から、この時代には既に行われていたと考えられている。犂を雄牛に牽かせる方法や、車両やソリの牽引といった内容が既に見られる。その頃は牛の角に棒を固定して、車両やソリをそこに結び付けて牽引させる方法が採られていた。当初は操向可能な車輪がなかったので、四輪の車両では向きを操作することが困難で、二輪の車両が中心であった。また中央に牽引用の棒をおき、その両側に輓獣を配置するという方法であったので、輓獣は必ず2頭立てで用いられていた。紀元前2世紀頃に、中国の文献で初めて両側に牽引棒を配置して、その間に1頭のみ輓獣を置くという方法が出てくるようになった。輓獣から牽引力を取り出すために、輓獣に牽引棒を固定するための道具を軛(くびき)といい、また軛を含み車両やソリを牽引する機構全体を輓具(ばんぐ)という。軛を頸に置く方法は頸環式輓具と呼び、肩甲骨に沿って頸環が取り付けられ、肩の部分から牽引力が発生する。軛を背につける方式は胸繋式輓具と呼び、胸の部分から牽引力が発生する。牽引力を肩や胸から発生させる方式はどちらも古代から利用されてきたが、頸環を用いた方式は中世頃に発明されたもので、これにより輓獣の利用効率が高まった。右に示した4頭立て馬車の図では、左側の馬が胸繋式輓具を、右側の馬が頸環式輓具を使用している。複数の輓獣を利用するときには、軛をつけない動物を外側に配置することがある。重い輓具をつけることは輓獣にとっては不快であるが、群れをなす性質を利用することにより、外側の輓具をつけない動物が走るのにつれて内側の輓具をつけた輓獣も走る気を起こすからである。また旧約聖書の申命記二二・十によれば、牛とロバを組にして犂を牽かせることが禁じられていたが、この布告にもかかわらず牛とロバ、あるいはラバを組み合わせて犂を牽かせることは一般的であった。馬と牛では、牛の方が牽引力が大きいが、馬の方が牽引速度が速いという特徴がある。人、馬、牛が8時間労働した時の平均的な牽引力と速度を表に示す。また機関車であれば、用いる両数を増やしただけ牽引力も増加していくが、動物の場合は頭数を増やしても牽引力は比例して増加せず、次第に効率が悪くなるという特徴がある。
出典:wikipedia
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