シトクロム"c"(cytochrome "c"、cyt "c")は、ミトコンドリアの内膜に弱く結合しているヘムタンパク質の一種である。タンパク質のシトクロム"c"ファミリーに属する。他のシトクロムと異なり可溶性(100 g/L)で、電子伝達系において不可欠な因子である。酸化還元能を持つが酸素分子は持たない。電子伝達系では複合体IIIから1電子を受け取り、複合体IVに1電子を引き渡す。ヒトではシトクロム"c"は "CYCS" 遺伝子にコードされている。シトクロム"c"はミトコンドリアで電子伝達系の構成要素を成す。シトクロム"c"のヘム基がb-c1複合体から電子を受け取り、シトクロムオキシダーゼ複合体に電子を渡す。また、シトクロム"c"はアポトーシスの開始にも関与する(後述)。シトクロム"c"は、細胞質に放たれるとアポトーシスプロテアーゼ活性化因子に結合する。シトクロム"c"はヒドロキシル化や芳香族酸化など幾つかの反応の触媒能を持つほかペルオキシダーゼ活性を有し、2,2-azino-"bis"(3-ethylbenzthiazoline-6-sulphonic acid (ABTS) や 2-keto-4-thiomethyl butyric acidや4-aminoantipyrine といった電子伝達体を酸化する。シトクロム"c"は、アポトーシス(胚発生の段階や感染・DNA損傷への応答として細胞が自殺する制御的プロセス)においてシグナル仲介の役割を担っていることが知られている。細胞がアポトーシス誘導刺激を受けると、ミトコンドリアからシトクロム"c"が放出される。これは、細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇することで、ミトコンドリアPTP(permeability transition pore)の開口が促されることによる。少量放出されたシトクロム"c"は小胞体膜上にあるIP3受容体と相互作用し、小胞体からカルシウムが放出される。このプロセスにより、濃度が上がったカルシウムはシトクロム"c"の大量放出を引き起こし、正のフィードバックループを形成して小胞体からのカルシウム放出を持続させる。これにより、小胞体から放出されたカルシウムの量は細胞毒性をきたすまで上昇する。細胞質中に放出されたシトクロム"c"は、今度はカスパーゼ9と呼ばれるシステインプロテアーゼを活性化する。カスパーゼ9はカスパーゼ3とカスパーゼ7を活性化し(カスパーゼカスケード)、最終的にアポトーシスを引き起こす。シトクロム"c"は高度に保存されたタンパク質で、植物、動物、単細胞生物など非常に多様な生物で確認されている。この保存性と、約 12,000 Da という分子量の小ささから、分子系統学において有用なツールとなっている。一次構造はおよそ100アミノ酸残基から成るポリペプチド鎖であるが、多くの多細胞生物では104アミノ酸残基のポリペプチド鎖となっている。シトクロム"c"は進化生物学の分野でも研究対象となっている。例えばニワトリとシチメンチョウにおけるシトクロム"c"のアミノ酸配列は全く同じであるが、これらとアヒルとの間には1アミノ酸残基の違いがある。同様に、ヒトとチンパンジーのシトクロム"c"はまったく同一であるが、アカゲザルとの間には1アミノ酸残基の違いがある。ヒトとチンパンジーでは66番目のアミノ酸残基がイソロイシンであるが、アカゲザルではこれがスレオニンになっている。ブタ、ウシ、ヒツジのシトクロム"c"は全て同一である。1991年、R・P・アンブラーはシトクロム"c"には以下の4つのクラスがあると考えた。シトクロム"c"は、いわゆる低レベルレーザー治療(; LLLT)において機能的な働きを担っているのではないかと言われている。低レベルレーザー治療とは、赤色光や近赤外線を照射して組織を貫通させ、細胞の再生を高めるという治療法である。この波長の光はシトクロム"c"の活性を高める働きを持つとされ、これにより代謝が活性化し、組織再生のためのエネルギーを効率的に生み出すことが出来ているのではないか、と考えられている。シトクロム"c"はと相互作用することが判明している。
出典:wikipedia
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