コブタニシ属(コブタニシぞく、瘤田螺属、学名: "Margarya"、中国名:)はタニシ科に分類される1属。中国雲南省・雲南高地の湖沼群に固有の属で、2010年現在は11種が分類されている。古い時代から食用に利用されてきたが、水質汚染や過度な水利用による環境破壊、食用としての過剰採取等々の複合的な原因により20世紀後半から21世紀初頭にかけて急激に減少し、『』(2005)(中国版レッドリスト)では11種の全てが、IUCNのレッドリスト(ver. 2010.1)には5種がリストアップされている。比較的厚くて頑丈な殻をもち、殻皮は褐色~濃褐色、生時は黒っぽく見える。殻高は50~70mm程度になり、タニシ科としては大型。成貝の螺層は6-7巻きで、普通は殻の周囲に明瞭な螺肋を巡らす。螺塔は階段状になり、殻頂は乳首状に小さく突出するが、それを取り巻く初層部は円錐形に高まらないため、殻頂が鈍くみえる。これらの特徴の組み合わせが本属を特徴付ける。コブタニシなどでは周縁の螺肋上に鈍い棘状突起をもつが、ほとんど螺肋の目立たないものもあり、螺肋や突起の強さや殻型などにはかなりの変異がある。蓋は他のタニシ科と同様にキチン質で、殻口にぴったりと合う滴型。同心円状の成長線があり、核(同心円の中心)は蓋の中央のやや内側寄りにある。外側は核を中心に弱い凹面を呈する。歯舌は他のタニシ科と同様で、1個の中歯を中心に、1対の側歯、2対の縁歯(内縁歯と外縁歯)の計7個の歯を横一列として、これが前後に100列あまり並んでいる。滇池産のコブタニシ "M. melanioides" ()の歯舌では、幅0.7-0.9mm、長さ6.0-6.3mm、歯列数は108-128、星雲湖産の "M. mansuyi" ()の歯舌は、幅0.6-0.7、長さ4.8-5.5、歯列数は105-110で、前者の外縁歯の歯尖(鋸歯状の小歯)は、後者のそれよりも細かく数が多いという報告がある。雌雄異体で、オスの右触角は先端に輸精管が開口し、交尾の際にはこれを陰茎として用いるのも他のタニシ科貝類と同様である。沿岸部から水深の深い場所まで棲息し、湖底を匍匐しながらデトリタスを食べたり、水中の懸濁物を濾過摂食していると考えられている。雌雄異体・卵胎生で、繁殖は周年行われ、コブタニシの場合ではメスが一回に3~7個の稚貝を産む。産まれる稚貝は殻高8mm程度であるが、一年で殻高がおよそ30mmほどになって性的に成熟し、殻高60mm以上のものは3年を経た個体であると見積もられている。大型であることや、マルタニシ類 ("Cipangopaludina" 属)よりも味が良いとされることから、周辺の人々の日常的なおかずとして伝統的に利用されており、市場で販売するために漁獲も行われてきた。実際には相当古い時代から大量に食用とされてきたことは明らかで、滇池の周辺各地の地下に見られる大量のコブタニシ類を含む貝塚層がそれを示している。1980年代以前では、採取シーズン中は1人で1日20kgほどの漁獲量があったというが、1980年代以降は生息地周辺で急激に工業地帯化と都市化が進み、都市排水や工業排水が未処理のまま棲息湖に流入して深刻な水質汚染が発生するとともに、過度な取水による水位の低下や長期にわたる過剰な採取なども相まって急激に個体数を減らしてしまった。吉良竜夫博士が1988年にコブタニシの主要な生息湖である滇池を訪れた際には、汚染がかなり進行した状況ではあったものの湖はまだ辛うじて"生きている"状態で、湖岸には食用にされたコブタニシ類の殻が大量に捨ててあった。しかし1990年に訪れた時には湖面全体にアオコが大発生し、その中に無数のタニシの死殻が浮いている状態で、この頃までにはかつて棲息していたカワニナ類が姿を消し、20種ほどいた魚も2-3種しか残っておらず、滇池の環境悪化は更に深刻な状況になっていという。このような状況から、2005年7月発行(評価は2004年)の『中国物種紅色名録』(中国版レッドリスト)第三巻にはコブタニシ属の全11種が取り上げられているが、保全対策などについては特に記載されていない。また2008年評価のIUCNのレッドリストにも5種がリストアップされている。種類の分類は時代や研究者によっても異なるが、個体変異の幅も大きいため多数の型や亜種が記載(この場合は学名が付けること)されており、そのうちのいくつかは後に独立種に昇格されたものもあり、2005年の中国レッドリスト『』(では11種が独立種としてリストアップされている。ただし、これらの分類は主として殻の外見によるもので、分子系統などを用いた詳細な系統関係の研究は未だ不十分であるとされるが、ミトコンドリアDNAのCOI(チトクロームcオキシダーゼ・サブユニットI)遺伝子を用いた5種のコブタニシ属の系統解析では、シナタニシ "Cipangopaludina chinensis" ()を外群として、コブタニシ "M. melanioides" ()、"M. melanioides dianchiensis" ()、"M. monodi" ()、"M.tropidophora" ()の4種が共通のクレードを形成し、"M. yangtsunghaiensis" ()だけが別のクレードとなるという結果が報告されている。なお、この研究で区別されているコブタニシの亜種 "M. m.dianchiensis" (滇池螺蛳)は『』やIUCNのレッドリストなどでは扱われていない。また、いくつかの種では核型が調べられており、コブタニシ "M. melanioides" ()と "M. monodi" ()の染色体数は2n=18、陽宗海に固有の "M. yaungtsunghaiensis" ()では2n=10m+6sm+XYであるとされ、分子系統の結果とともに "M. yaungtsunghaiensis" が属内でも特に分化した種である可能性が示されている。
出典:wikipedia
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