化学物質過敏症(かがくぶっしつかびんしょう)は、非常に微量の薬物や化学物質(主に揮発性有機化合物)の暴露によって健康被害が引き起こされるとする疾病概念。人体の薬物や化学物質に対する許容量を一定以上超えると引き起こされるとされており、個人差が大きいといわれる。化学物質の摂取許容量と同様に、発症原因および症状、その進行・回復速度や度合いも多種多様であるといわれる。本態性環境不耐症とも呼ばれる。薬物と化学物質の定義についてはそれぞれの項を参照1950年代に、アメリカの医師セロン・G・ランドルフは、化学物質への暴露によって発生する過敏反応の可能性を提唱した。1980年代にマーク・カレンによってMCS(Multiple Chemical Sensitivity:多種化学物質過敏状態)という概念が提唱された。これは、慢性または大量の化学物質に曝露された後、極めて微量の化学物質に過敏反応し、多岐にわたる症状を示す疾患であるとされた。その後、同様の概念を提唱する「臨床環境医」と呼ばれる医学研究者を主体に研究が行われてきた。日本では北里研究所病院がMCSの概念を導入し、「化学物質過敏症」として診断方法・治療法の検討が行われてきた。その後、北里研究所病院臨床環境医学センターが設立された。2009年10月1日から、厚生労働省は病名リストに化学物質過敏症を登録し、カルテや診療報酬明細書(レセプト)に記載できるようになった。2010年には、有機溶剤を扱う業種で勤務し、化学物質過敏症による眼球運動障害を患った男性が、労災と認定されている。また,ガスボンベの再生作業に従事したことにより化学物質過敏症を発症したとの主張につき,労災認定では否定され,取消訴訟の第一審でも行政の判断が支持されていたが,控訴審において業務起因性が肯定された例がある。化学物質過敏症は、薬物中毒、アレルギーとは異なる概念の疾患であるとされる。シックハウス症候群と混同されることがある。こちらは単一の疾病を示す用語ではなく、住宅に由来する様々な健康傷害の総称とされるため、両者は異なった概念であると考えられる。化学物質としての住宅内の揮発性有機化合物 (VOC) は、シックハウスの原因としては一部である。環境省が1997年度より研究班を設置して、二重盲検法による疫学調査を行っており、2004年の報告では、原因化学物質の一つとされている微量ホルムアルデヒドの暴露と症状の間に関連は見られないという結果が出ている。この事から、いわゆる化学物質過敏症の症例には、化学物質以外(ダニ、カビ、心因等)の原因によるものが含まれると考察されているが、動物実験の結果から、微量の化学物質の曝露による未解明の病態の存在を否定できず、なお研究が必要であるとしている。厚生労働省は2003年に有識者からなる「室内空気質健康影響研究会」を計3回開催しており、用語の検討や化学物質過敏症についての見解の整理を行っている。こう語られている。国内で化学物質過敏症と診断された症例の中には、既存のアレルギー等の疾病概念で病体の把握可能な患者が少なからず含まれており、化学物質の関与が明確ではないにも関わらず、臨床症状と検査所見の組み合わせのみから化学物質過敏症と診断される傾向があり、既存の疾病概念で説明可能な病態について「化学物質過敏症」という名称を用いることが、化学物質過敏症に対する科学的議論を行う際に妨げになっていることを指摘している。非アレルギー性の過敏状態としてのMCSについて、その病態の存在を否定するものではないが、MCSに相当する用語として「化学物質過敏症」が適当であるとは言えないため、既存病態との分別が可能な臨床検査法及び診断基準が開発され、研究が進展することを期待する、と結んでいる。化学物質過敏症の症状とされるものは多岐にわたり、粘膜刺激症状 (結膜炎、鼻炎、咽頭炎) 、皮膚炎、気管支炎、喘息、循環器症状 (動悸、不整脈) 、消化器症状(胃腸症状) 下痢、便秘、悪心、自律神経障害 (異常発汗) 、手足の冷え、易疲労性、精神症状 (不眠、不安、うつ状態、記憶困難、集中困難、価値観や認識の変化)、中枢神経障害 (痙攣)、頭痛、発熱、疲労感、末梢神経障害 運動障害、四肢末端の知覚障害等がある。化学物質過敏症を専門に扱う化学物質過敏症外来などを設ける医療機関もある。シックハウス症候群については保健所に相談窓口がある。また、室内空気の揮発性有機化合物 (VOC) の測定なども有料で行う。慢性疲労症候群、線維筋痛症といった疾患と合同で、"May 12th International Awareness Day"と称される国際啓発デーが5月12日に開催される。
出典:wikipedia
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