『ディファレント・トレインズ』（"Different Trains" ）は、アメリカ生まれのユダヤ人作曲家スティーヴ・ライヒが、自分の幼少時代と、同時期のヨーロッパで起こっていたホロコーストを、「汽車」というキーワードによって結びつけ、ミニマル・ミュージックの技法によって作曲したドキュメンタリー性の強い楽曲である。1989年のグラミー賞最優秀現代音楽作品賞を受賞した。1988年に作曲された。ライヒの両親は彼が1歳の時に離婚した。第二次世界大戦の頃、1939年から1942年にかけて、父親とともにニューヨークで暮らしていた幼少のライヒは、ロサンゼルスに移り住んだ母親に会うためにたびたび家庭教師の同行を得て汽車で旅行をしていた。後にライヒは、「もし、ユダヤ人である自分があの時代にヨーロッパにいたらどうなっていただろうか？おそらく、強制収容所行きの、全く違う汽車（"Different Trains" ）に乗ることになっていたのではないか？」と考え、このことが作品を書くきっかけとなった。あらかじめ録音された、弦楽四重奏の演奏、話し言葉の断片、電気的に加工された汽車の音、サイレンの音のテープを流しながら、弦楽四重奏が生演奏を行う。ライヒは初期の『イッツ・ゴナ・トレイン』（1965年）、『カム・アウト』（1966年）で録音された人間の声を音楽の素材として使ったが、『ディファレント・トレインズ』はこれらの作品をルーツとしている。作曲するにあたり、ライヒは録音された声の中から、音高が聞き取れる部分を抜き出し、これに弦楽器の音程を当てはめ、楽譜に記した。『ドラミング』（1971年）以降、声に楽器の音を模倣させる手法が使用されていたが、ここではその逆が行われている。以下の5人の声が使用されている。録音テープには、声と弦楽四重奏の演奏以外に、以下のものが使用されている。録音の加工には、カシオのサンプラー（FZ-1とFZ-10M）が使用された。3部構成となっている。27分（9分＋7分30秒＋10分30秒）CD（WPCS-5053）のライナーノート、作曲者自身の解説

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