


食育(しょくいく。)とは、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てることである。食育は、国民一人一人が、生涯を通じた健全な食生活の実現、食文化の継承、健康の確保等が図れるよう、自らの食について考える習慣や食に関する様々な知識と食を選択する判断力を楽しく身に付けるための学習等の取組みを指す。2005年に成立した食育基本法においては、生きるための基本的な知識であり、知識の教育、道徳教育、体育教育の基礎となるべきもの、と位置づけられている。単なる料理教育ではなく、食に対する心構えや栄養学、伝統的な食文化、食ができるまでの一次産品および二次産品の生産についての総合的な教育のことである。この言葉を造語した石塚左玄は、食品の与える影響に関する独自の説によって、子どもに食べさせる食品の影響によって子どもの心身を養うという意味で用いた。小説家の村井弦斎が石塚の著書を読んで共感しており、1903年(明治36年)に著し、一大ブームを起こした『食道楽』秋の巻第252「食育論」で「食育」という言葉を使用した。左玄の説を実践する団体として「帝國食育會」という団体があった。その後、政財界の援助により石塚の食物養生法を啓蒙する団体として「食養会」が結成された。食養会の関係者が「食育」を唱えていた。しかし、一般にはほとんど知られていなかった。戦後、食養会の会長にも就任したことのある桜沢如一の起したマクロビオティックや、玄米健康法の関係者、有機農業・自然食品業界に石塚説が伝承された。2002年(平成14年)11月21日、自民党の政務調査会に「食育調査会」が設置された。その目的は、産地偽装など食の安全を揺るがす事件が多発したことから、食育で消費者の不安や不信感を取り除くことだった。だが一連の事件の多くは、消費者を蔑ろにした私利追求が原因だった。消費者の不安不信を取り除けば、事件の反省や再発防止策が不要になる上、一般人の知らない言葉をスローガンに掲げたことから、マスコミや研究者等が関心を抱き、語源を探した。この結果、歴史に埋もれていた石塚・村井が再び陽の目を見る。翌15年に時の総理・小泉純一郎の施政方針演説に取り上げられて「食育」が一般化した。1988年(昭和63年)には、小泉純一郎が厚生省としては食が一番大事なのではないかと述べていた。1993年に厚生省監修で『食育時代の食を考える』という著書が出版されている。服部幸應は自分の書いた1998年出版の『食育のすすめ』を厚生大臣の頃の小泉純一郎が読んだからと説明している。またマクロビオティックの久司道夫は議員会館で講演を行っていた。多いときには議員が80人ぐらい集まるときもあった。国会で、無国籍で脈絡のない料理では「ファーストフード予備校」であり食育とはいえないのではという指摘がなされ、政府としても米食や日本型食生活を増やしたいとの意向が表明されている。食育基本法の訂正に伴ってマクドナルドが食育に力を入れることを表明し、そして学校でハンバーガーの授業が行われるようになった。これに対して、「企業が社会貢献するのは結構だが、こうした食品では食育と矛盾するのではないのか」という批判も起こった。幕内秀夫は、食育基本法の制定に伴ってジャンクフードの販売業者が食育という言葉を利用して出張授業などを行うようになったことを自身のウェブサイト「フーズアンドヘルス研究所」で批判している。2005年(平成17年)6月10日、食育基本法が成立した。食育によって国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育むことを目的としている。食育基本法は、総理大臣と12省庁の大臣と国家公安委員長までが参加した国家レベルで食事をどうにかしようと捉えた、世界的に例のない法律とされる。関連した政策としては、厚生省による21世紀における国民健康づくり運動において、病気を予防するために目標を設定して目標達成を目指す運動を行っているが、甘味料の特に砂糖が虫歯(う蝕)を発生させるとして、甘味料に関する正確な知識の普及と甘味食品・飲料の間食の摂取回数の減少を目標としている。また、10.7%いる児童・生徒の肥満児を7%以下にすることも目標とされている。アメリカ合衆国では、肥満人口の増加が健康上の問題となっている。アメリカでは、ジャンクフードの販売は子どもの健康や食の嗜好を守るために、自主規制する方向に向かっている。アメリカ医学研究所(IOM)は、子どもをターゲットとした高カロリーで栄養価に乏しい食品のコマーシャルが、肥満と関連しているとし、自主規制ないし政府の介入を求めた。シカゴ大学は、18歳未満をターゲットにしたコマーシャルの90%以上が栄養価に乏しい食品であり食の嗜好に影響を与えると報告した。肥満対策のため、公立学校で糖分の多い飲料や脂肪を除去していない牛乳は販売されないように合意された。マクドナルドやペプシコなど11の大きな業者が、12歳以下の子どもにはジャンクフードの広告をやめることで合意した。2011年4月28日、食品医薬品局(FDA)、疾病対策センター(CDC)、アメリカ農務省(USDA)、連邦取引委員会(FTC)の4機関は、肥満増加の対策として子供に販売する飲食品の指針として、加工食品1食品あたりの上限を、飽和脂肪酸1グラム、トランス脂肪酸を0グラム、砂糖を13グラム、ナトリウムを210mgとした。2011年5月18日、550超の団体がマクドナルドに対し、子供を対象とした飲食品に高カロリー、高脂肪、多い砂糖、高塩分のジャンクフードの販売中止、おまけをつけないことや、ロナルド・マクドナルドの引退を要請した。イギリスでは、16歳以下に対するテレビ番組でジャンクフードをコマーシャルすることはできない。2007年、イギリス政府は、合成保存料の安息香酸ナトリウムと合成着色料の入った食品が、子どもに注意欠陥・多動性障害(ADHD)を引き起こすという研究結果を受けて、ドリンクやお菓子にそれらが入ったものが多いとして注意を促し、2008年4月、英国食品基準庁(FSA)は注意欠陥・多動性障害と関連の疑われる合成着色料6種類について2009年末までにメーカーが自主規制するよう勧告した。ガーディアン紙によれば、この政府勧告による自主規制の前に、大手メーカーは2008年中にもそれらの食品添加物を除去する。2008年3月、これを受けて、欧州食品安全庁(EFSA)は、イギリスでの研究結果は1日あたりの摂取許容量(ADI)の変更にのための基準にはできないと報告した。しかし、4月イギリスは再び排除すべきだと勧告を行い、8月には欧州は摂取量の見直しをはじめこれらの合成着色料を含む飲食品に「注意欠陥多動性障害に影響するかもしれない」という警告表示がされることになると報道された。大韓民国では米を中心とした給食を提供し、菓子、ジュース、ファーストフードなどの栄養価に乏しいいわゆるジャンクフードに関して、2009年3月からは小中学校とその周辺での販売の規制、2010年からは午後5~9時のテレビコマーシャルの規制を行う。ブルガリア政府は、全国の学校の食堂や売店からスナック菓子や清涼飲料水を撤去した。関連法令の発令により、様々な企業や公共団体が食育をビジネスとして取り込んでいる。ビジネス方法としては、食育に関する商品の発売やセミナー、講演会の場を設けることにより収益を上げている。これら食育ビジネスに関し12省庁も非常に協力的であり、農林水産省は外食産業や中食産業、中小企業に対しての活動を推進するページをしている。また、厚生労働省は従業員や職員、住民に対して、生活習慣病の啓発、健康増進のための優れた取り組みをしている自治体、団体、企業の表彰を行う「健康寿命をのばそう!アワード」を開催した。健康ビジネスニュースを配信しているヘルスビズウォッチは、海外の食育ビジネスモデルに関して詳細に説明している。
出典:wikipedia
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