デルタ IVはアメリカ合衆国の人工衛星打ち上げ用使い捨てロケットである。ボーイング社のによって設計され、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス (ULA)によって生産される。デルタロケットシリーズの最新型であり、2010年代でも運用中である。最終的な組み立てはULAの射場で行われる。デルタ IVは、アメリカ空軍のEELV計画により主に軍用に用いられるが、商業用人工衛星の打ち上げ用にも設計されている。デルタIVロケットは、その打上げ重量により5種類に分けられる。ミディアム、ミディアム+(4,2)、ミディアム+(5,2)、ミディアム+(5,4)とヘビーであり、ペイロードの規模と重量に応じて使い分けられる。ロケットは打ち上げに際してケープカナベラル空軍基地のSLC-37Bやヴァンデンバーグ空軍基地のの水平統合施設において組み立てられる。デルタIVの1段目はロケットダインのRS-68エンジンを動力とする1基またはヘビー用の3基のコモン・ブースター・コア(CBC)で構成される。 多くの第1段ロケットエンジンと異なり、RS-68はケロシンを使用せず液体水素と液体酸素を推進剤としている。2002年、RS-68は1970年代のスペースシャトルの主エンジン(SSME)以来の新規に設計された大型液体燃料ロケットエンジンとなった。 RS-68の目標は、あらゆる分野においてSSMEと比較してコストを低減することであった。燃焼室圧力はSSMEより低く、推重比や噴射速度(比推力)といった性能はSSMEより低下したが、絶対的な推力は向上した。また、開発期間や部品点数、開発費や組み立て工数は、SSMEよりも規模が大きいにもかかわらず大幅に減らすことが出来た。一般的にRS-68は打ち上げから最初の数分間は定格の102%の推力を発揮し、主エンジンを停止する前に出力を58%まで下げる事が出来る。ヘビー型ではCBCのエンジンは打ち上げ後約50秒間は出力を58%まで下げ、その間に両側の補助ロケットとして使用されるCBCの出力は102%である。これにより中心のCBCは推進剤を温存し、長時間燃焼する事が出来る。両側のCBCを分離後、中心のCBCは出力を102%に戻し、停止前には58%まで下げる。RS-68エンジンは、下部の推力構造体に4つの推力を受けるフレームで取り付けられ、円錐型の熱保護遮蔽板に囲まれる。推力構造体の上はアイソグリッド構造(重量軽減のためタンク内壁を機械加工で格子状に削られている)のアルミニウム製の液体水素タンクであり、中央部の複合材でアルミニウム製アイソグリッド構造の液体酸素タンクと前のスカートにつながっている。CBCの後部には電源および信号配線と液体酸素をRS-68エンジンへ供給するための配管がある。CBCは直径5mの一様な円筒型である。L-3 コミュニケーションズは以前にデルタIIで使用されていた冗長慣性制御装置(RIFCA)を供給するが、ソフトウェアはデルタIIとデルタIVでは全く異なる。RIFCの特徴はそれぞれ6台のリングレーザージャイロスコープと加速度計を使用することにより高い信頼性を確保していることである。デルタIVの上段は本質的にはデルタ IIIと似ているがタンクは摩擦攪拌接合で形成され、全長は4m、直径は5mに拡大されている。2段目は比推力を増やす為に進展式の炭素製ノズルを備えプラット&ホイットニーのRL-10B2エンジンが使用される。機種に応じて1段目と2段目の間の円錐形の段が使われる場合もある。直径4mの上段を使用する派生型では直径5mから4mに変換する円錐形の中間段が使用され、上段・下段とも直径5mの場合は中間段も直径5mの円筒形である。どちらの中間段も複合材で製造されている。衛星を格納するフェアリングは用途に応じて用意される。デルタIIIと同等の直径4mの複合材製フェアリングが4mの派生型として使用され、5mの複合材製のフェアリングは5mの派生型として使用される。より長い形式として、ボーイングが生産したタイタンIV用5m径のアルミ製アイソグリッド構造のフェアリングもヘビー仕様に使用可能である。デルタIVは全高が63m以上あり、ロケットの登場以来、現用のロケットでは最も高さが高い。デルタIVは衛星打ち上げ需要よりも既に打ち上げ能力が上回っている時期に市場に参入した。その上、新型のため信頼性が実証されておらず、商業打ち上げの顧客を市場で獲得することは困難であり、デルタIVの打ち上げコストは競合するロケットよりもやや高かった。2003年、ボーイングは需要の低迷と高コストのためデルタIVを商業衛星用打ち上げ市場から撤退させた。2005年、ボーイングはデルタIVを商業市場に戻すと述べたが、2006年時点においてそれ以上の発表はない。1回の打ち上げにつきアメリカ政府から1億4000万ドルから1億7000万ドルが支払われた。競合するロケット:アトラス V -アリアン 5 -長征5号 -アンガラ -H-IIB -プロトン -ファルコン9デルタIVの(分離された宇宙船の重量)打ち上げ能力ヘビーの打ち上げ時の総重量は約733,000 kgでスペースシャトルの打ち上げ時の総重量(2,040,000 kg)よりも遥かに少ない。デルタIVの開発中、小型版が検討された。これは1基のCBCの上にデルタ IIの2段目とオプションとしてチオコールのStar 48Bを3段目にしてデルタIIのフェアリングを使用するものだった。小型版の計画は1999年に廃止された。これはデルタIIと同規模の打ち上げ能力になったと推定される。デルタIVが今後にわたって更新できそうなことは、固体燃料補助ロケットの推力を増強し、主エンジンの推力を増強し、構成材料を軽いものにし、2段目の推力を増強し、装備するCBCの数を最大6本に増やす事や、液体水素・液体酸素で構成された推進剤を周囲のCBCから中央のCBCへ供給するクロス・フィード方式を採用することなどが検討されている。これらの改良を施すことにより、低軌道へ投入できるペイロードは潜在的には100トンまで増える。NASAの計画の一つにデルタIVをの打ち上げに使用する案がある。しかし、このCEVは有翼またはリフティングボディ型宇宙船からアポロ宇宙船のようなカプセル型への変更されている。これに伴い、スペースシャトルの後継となる人員輸送ロケットは、デルタIVからはRS-68エンジン技術のみが採用され、これが新型のアレスVのエンジンとして使用する計画となっている。2009年、は、NASAにデルタIVを有人飛行の為にに変更する可能性がある事を認める意図の調査結果の報告を提出した。更に誌は"デルタIVヘビーはNASAの低軌道への有人飛行の条件に適合可能である"との論考を書いた。2006年にRAND社の2020年までの国家安全保障上の打ち上げの必要性に関する調査において、他の重量物打ち上げロケットの可能性が示されそれには"・・・デルタ IV ヘビーだけがNSSの必要とする10機の重量物の打ち上げ需要に応じる事が出来る能力を持ち・・・デルタIVの製造能力において一つの可能性を除けば計画されたNSSの打ち上げの全体の需要を満たすことができる。例外としてNRO(国家偵察局)の単一のペイロードに対応するデルタIVヘビーの打ち上げ能力を向上させるための要件が含まれます。この要求への最適な改善策は現在調査中である。"と記された。2012年6月に打ち上げられた20号機のデルタIVヘビーからは、性能向上型のRS-68A エンジンが使用された。この更新ではGTOへのペイロードが13%増える予定と見積もられていた。新しいRS-68Aは同様にデルタIVシリーズに採用されることが想定され推力が106%になることによりGTOへのペイロードが約7–11% 増加する事が見積もられていた。デルタIVシリーズにおいて、他の可能な改良は外部の固体補助ロケットを加えることによって新しい派生型を生み出す事である。このような改良の一つにミディアム+(4,4)にM+(5,4)の2本のGEM-60と(4,2)のフェアリングを組み合わせる案がある。これによりGTOへのペイロードは7,500 kg (16,600 lb)になりLEOへのペイロードは14,800 kg (32,700 lb)になると推定される。これは最初の注文から36ヶ月で入手できる単純な派生型である。2つの他の可能な派生型として(5,4)に2本または4本のGEM-60を追加したミディアム+(5,6)と(5,8)がある。これらは大幅に性能が向上(M+(5,8)の場合GTOへ最大9,200 kg/20,200 lb)するが、異なる荷物に対応する為にこのような外部に設置する場合には既存の機体に変更が必要である。ミディアム+(5,6)と(5,8)は最初の注文から48ヶ月で入手できる。デルタ IVの打ち上げは2箇所の射場から実施される。アメリカの東海岸のケープカナベラル空軍基地の第37射場 (SLC-37)と西海岸の極軌道と高傾斜角の軌道への打ち上げに使用されるヴァンデンバーグ空軍基地の ()射場である。両方の打ち上げ施設は似ている。射点は可動式整備塔Mobile Service Tower (MST)で整備の場を提供し、悪天候からロケットを守る。ペイロードやGEM-60補助ロケットを機体に取り付ける為にMSTの上部にはクレーンがある。MSTはロケットの打ち上げ数時間前に開く。ヴァンデンバーグでは射場も同様に完全に機体を覆う可動式組み立てシェルターMobile Assembly Shelter (MAS)を備える。ケープカナベラル空軍基地では機体は部分的に覆われ下の方は露出する。期待の横の固定アンビリカルタワー(FUT)はヴァンデンバーグは2基でケープカナベラルは3基のスイングアームである。これらのアームは電気、油圧、環境制御や他の支援機能がアンビリカルケーブルを通じて繋がる。スイングアームは発射時には機体にぶつかる事を避ける為に格納される。機体の下の発射台には6基の整備塔(TSMs)があり、2基はそれぞれのCBCのためにある。発射台は機体を支え、TSMは支持とCBCへの推進剤の注入の機能を持つ。機体は発射台上に打ち上げまでボルトで固定するLaunch Mate Unit (LMU)で設置される。発射台の後ろに長いストロークの油圧式ピストンで水平統合施設(HIF)からの機体を垂直に立てる為に使用されるFixed Pad Erector (FPE)がある。発射台の下には発射時の火炎をロケットや施設から排気する為のダクトがある。水平統合施設 (HIF)は射場から少し離れた地点にある。射点に運ぶ前にデルタIV CBCと2段目の試験を行うことが出来る大型の建物である。デルタIVロケットの組み立てはスペースシャトルやサターンV、H-IIAなどの組み立てとは異なり、ソユーズロケットの組み立てと似た水平状態で行われ射点で垂直に設置される。デルタIVを射場の様々な施設から移動する場合にはElevating Platform Transporters (EPTs)で移動される。これらのゴムタイヤの車両はディーゼルエンジン式と電気モーター式の両方が使用される。ディーゼル式EPTは機体をHIFから射点に運ぶ時に使用され電気式EPTはHIF内で精密な移動に使用され、重要である。デルタIVは高額な費用がかかる射場での時間を減らす為に以下の工程を使用する。CBCはボーイングのアラバマ州Decaturの工場で製造されてからM/V "Delta Mariner"と言うRO-RO船に乗せられて射場まで運ばれる。"Delta Mariner"から荷揚げされて水平統合施設(HIF)へ入れられて別々に運ばれてきた2段目と組み合わされる。ヘビー型も同様にHIF内で3基のCBCが組み合わされる。多くの試験が行われ機体は水平に射場に運ばれFixed Pad Erector (FPE)を使用してMST内で機体は垂直に持ち上げられる。同時にGEM-60固体燃料補助ロケットが必要な場合は本体の周囲に発射台上で取り付けられる。試験後(既にフェアリングに収納された)ペイロードが射場に運ばれMST内でクレーンで吊り下げられて機体の上部に設置される。最終的に打ち上げの日にMSTは機体から離れて打ち上げ準備が整う。アメリカ空軍(USAF)はデルタIVの開発、統合、設備の建設にボーイング打ち上げサービス(BLS)に予算を出し続けた。2008年8月8日、空軍の宇宙ミサイルシステムセンターは経費プラス報奨金としてBLSと$165.6万ドルで2009年の会計年度に性能を向上させる契約を交わした。さらに$55710万ドルが2010年の会計年度にオプションとして追加された。デルタIVで打ち上げられた最初のペイロードはユーテルサットW5通信衛星である。ロケットはミディアム+ (4,2)でケープカナベラルから打ち上げられた。通信衛星を2002年11月20日に静止トランスファー軌道へ運んだ。"ヘビー デモ"は最初のヘビー版の打ち上げで2004年、12月に悪天候の為に延期された。推進剤供給配管内のキャビテーションをセンサーは推進剤が空になったと捉えた。そのため、補助ロケットと中央のロケットは予定通り燃焼する為の十分な推進剤が残されていたにも拘らず予定よりも早く停止した。2段目は1段目による不足を補う為に推進剤が尽きるまで燃焼を試みた。この打ち上げは試験打ち上げでペイロードは"NROL-22"はヴァンデンバーグ空軍基地のSLC-6射場から最初にデルタIVで打ち上げられた衛星である。ミディアム+ (4,2)によって2006年1月に国家偵察局(NRO)の衛星を打ち上げた。"DSP-23"はヘビー仕様によって打ち上げられた初めての価値のあるペイロードである。これはボーイングとロッキード・マーティンの合弁事業であるユナイテッド・ローンチ・アライアンスによって契約された初めてのデルタIVの打ち上げでもある。主なペイロードは23機目の最終のミサイルの警戒するDSP衛星で2007年11月11日、01:50:00 GMTにケープカナベラルから打ち上げられた。"NROL-26"は最初のNROの為の"ヘビー" EELV の打ち上げである。は偵察衛星に分類され2009年1月18日02:47 UTC.に打ち上げられた。"NROL-32"は "ヘビー"によってNROの為に打ち上げられた衛星で最大の衛星と推定される。ロケットの打ち上げは当初予定の10月19日から延期され、2010年11月21日22:58 UTCに打ち上げられた。
出典:wikipedia
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