報道特別番組(ほうどうとくべつばんぐみ)とは重大な事件・事故、災害などの事態などが発生した時、日本の放送局が、その日予定されている番組(番組編成)を急遽変更して放送する報道番組の一般的な呼称である。俗に言う「臨時ニュース」の一種である。特報(とくほう)とも呼ばれるほか、報道特番(ほうどうとくばん)との略称もある。正しくは「特別編成による報道番組」のことである。即ちその日予定されている番組編成枠(時間枠)に変更を加えて放送するもので、且つその内容が「報道」であるものを示し、別途規定される。時間枠に変更のないものは、報道特別番組ではなく「番組内容の変更」として扱われ、通常の手順によって放送される。つまり、「報道特別番組」「報道特番」「特番」といった場合には、単に予定されている番組の「その日のタイトル」であることが多くあるので、ここでは時間枠に変更を加えて放送する、所謂特別枠として扱われるものを「報道特別番組」と定義して述べる。大地震や大津波などが発生し、かなりの緊急性を要する場合は「緊急」の語が更に冠されて放送することがある。日本放送協会(NHK)は災害対策基本法や国民保護法で、報道機関唯一の指定公共機関に指定されており、NHKは大災害の際には被災者の生命と財産を守るため、防災情報を正確・迅速に放送する責務を、有事の際には警報、避難の指示、緊急通報の3つの緊急情報を放送する責務を負うことになっている。またNHKと各民間放送局(民放)ともに報道特別番組の実施についてはそれぞれ特別の規定(自主規定)を持ち、これに従って報道特別番組は実施される。民放の場合、広告出稿者(スポンサー)との出稿契約時に、報道特別番組時のコマーシャルメッセージ(CM)の取り扱いについて別途、取り決めがなされる。テレビ・ラジオの持つ「同時性」「臨時性」「機動性」を最大限に活用することは国民から電波を負託されている放送局の使命であり、国民に対して一刻も早く重大な情報を伝えることを目的として実施されるものが報道特別番組である。例えば一般的に、突発的な事件・事故が発生した場合、放送局の報道担当部署は番組編成担当部署に緊急連絡を入れる。番組編成担当部署は事件・事故の状況、規模、今後の見通しなどを報道担当部署に確認、意見を聞いた上で「いつ」「いかに」伝えるかを判断、さらに関連するセクションと協議して報道特別番組の実施を決定する。この判断の基準は原則として各放送局や各放送系列の持つ自主規定である。従って各放送局・各放送系列によって、どのようなものを報道特別番組とするかの判断には違いがあることから、同じ内容のものであっても放送する放送局と、「放送しない」、即ちその日に予定されている編成枠内で扱う程度に留める放送局に分かれることがある。NHKの報道特別番組は総合テレビ、R1を主力に、BS1、日本国外向け国際放送のNHKワールド・プレミアム、NHKワールド・ラジオ日本で、先述のとおり「ここでニュースをお伝えします」の前置きと共に切り替えて放送される(定時の通常ニュースはテレビでは「n時になりました。ニュースをお伝えします」、R1では「n時のNHKニュースです」)。ワールドTVプレミアムでは、有料放送を行っている国ないしは時間帯であっても特設ニュースがあった場合はノンスクランブルでの無料放送に切り替えさせる。NHKの場合、前述のように災害対策基本法や武力事態対処法の指定公共機関に指定されていること、公共放送として全国が一法人組織であり、民間放送のようなスポンサーやネットワークとの絡みがないことから、機動的にNHKニュースの放送枠を拡大(短い場合は2 - 5分程度で後続の番組をその分シフトさせる、長い場合は完全に休止)して対応(EPGには「ニュース」と記載)することが多い。EテレとR2、FM放送では、後述する「全中」が行われる場合を除き、原則として実施されない。そのため、Eテレ・R2・FM放送では通常番組を放送しているというケースもある。総合テレビ、R1が大相撲、高校野球など長時間のスポーツ中継となっている状態で差し替えが発生し、かつ全中とならない場合は、スポーツ中継をEテレおよびFM放送にチャンネル変更とする。国外向け英語放送のNHKワールドTVでも緊急報道を行う必要がある場合は、総合テレビの副音声として流れる英語のアナウンスを主音声としてサイマル放送したり、『NEWSLINE』の放送時間を拡大、あるいは独自の英語テロップを使用するなどの措置を取る。震度6弱以上の揺れを観測する大型の地震、東海地震の警戒宣言発表時、津波警報・大津波警報を伴う津波、天皇崩御や軍事攻撃などの非常事態が発生する恐れがある場合は、Eテレ、R2、FM放送、BSプレミアム(BSプレミアム発足前はBS2・BShi)を含めて全チャンネル共通放送(全中)となる場合がある(過去に天災では日本海中部地震、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災が、それ以外では1989年(昭和64年)の昭和天皇崩御の例が挙げられる)。この場合、政見放送の途中で割り込むなどして本来R1で行われるべき速報をFM放送で行うなど例外中の例外も起こる。2016年(平成28年)の熊本地震では、電波全中に加えて総合テレビのニュースをホームページ『NHK NEWS WEB』でストリーミング配信する初めての試みが行われた。判決などである程度、時刻が予定されているものについては、当日の新聞のテレビ欄などでその放送を予告するか、「中断あり」などと掲載することもある。また、東日本大震災翌日の3月12日には全てのチャンネル(ラジオ第2は地方紙の一部除く)で「本日は終日ニュースを放送します」の表示がされ、開始・12時・19時・深夜の区分け部分でも「ニュース(東日本大震災関連)」とのみ書かれた。民放5系列では、各系列ごとに特別番組実施に当たっての判断基準が異なる。その中でもテレビ東京系列(TXN)では、全国ネットでの報道特別番組が実施されることが他局に比べて少ない。報道特別番組においては、必然的に各局が同じ事件や事故などについて放送することになるため、その内容も似たものになりがちで、扱われる事例によっては食傷気味になる視聴者もいる。このため、通常番組を放送しているテレビ東京系列にチャンネルを合わせる人も多く、普段は視聴率最下位になることが多いテレビ東京系列がこの時に限っては通常よりも高視聴率を記録するケースがある。だが、この編成には視聴者から多くの批判が寄せられることもある。TBS系列(JNN)では、全国ネット放送実施のための協定が排他協定となっており、その適用の有無によって対応が変わる。具体的には、台風・震度5クラスの地震など局地性の強いニュースは各加盟局ごとに対応し、全国的に関心の強いニュースはTBSテレビから排他協定適用で発信させる傾向がある。TBSテレビ社内においては、協定適用により加盟全局での同時放送となったものを「J特」(じぇいとく)、そうでないものを「報特」(ほうとく)と通称する。なおクロスネット局では、大震災発生時等各キー局が揃って長時間の報道特別番組を編成している際、各キー局発の報道特別番組を飛び降り・飛び乗りを繰り返しながら放送することがある。民放テレビにおけるクロスネット局では、報道特別番組の系列切り替えを行う際、「ここで○○(系列)報道特別番組を終了し、ここからは○○(系列)報道特別番組をお送りします」という趣旨のテロップを流して対応することもある。このため、TBS系列でかつ他系列の同時ネット局が存在する通常番組を差し替える時は、JNN排他協定の適用外とする。日本テレビ発で他系列の同時ネットないしは共同制作局が存在する番組の差し替えでは、「NNN」ではなく「日テレNEWS24」の冠を付けることもある。ローカル局では、有事発生時に通常時は自局でネットしない、ないし飛び降り・飛び乗りとしているキー局発の情報・報道番組、ワイドショー番組を事実上の報道特別番組として臨時ネット・フルネットすることもある。能登半島地震発生の際、フジ系の沖縄テレビでは通常通り『いつみても波瀾万丈』枠を日本テレビから同時ネットしたが、同番組が日テレニュース24を用いた特番に切り替わったため、結果的に報道特別番組をネットした形になった。1990年代後半までは、激しいBGMやテロップ等を使用する演出が見られたが、現在はこのような演出は少なくなった。実施にあたっては、放送中の番組を中断したり、予定していた番組の放送全てを中止、もしくは延期という措置をとることになるため、放送局には視聴者からの苦情や放送時間についての問い合わせが数多く寄せられることになる。また放送予定だった番組を後日改めて放送するためには、別途、放送枠を編成する必要がある。バラエティ番組では、1週分の収録を休止し、収録ペースを元に戻すことがある。収録もので帯番組となっている昼ドラマや一部バラエティ番組は土・日曜日を除く5日間放送するため後日改めての放送は困難であり、録画番組は翌日未明帯(0時台以降)に放送する場合が多かったが(2016年3月までフジテレビ系列にて放送された、『ライオンのごきげんよう』や『THKドラマ』〈昼ドラマ、東海テレビ制作〉などが該当)、2009年3月までTBS系列で平日13時台に放送されていたもの(ひるドラなど)については、翌日(金曜日放送分の休止時は翌週月曜日)10時台を代替放送枠に設定していることが多く、過去に放送が中断や休止されたものはその全てを10時台に代替放送することで調整していた。一方、1993年まで放送されていた『100万円クイズハンター』は、放送が中断・休止された日の分は次の日曜日の6時から、臨時枠移動して放送された。生放送番組は企画流れとなってしまうが、時事を取り扱う情報番組・ワイドショー番組等については、報道特別番組に準ずる内容にして放送を維持することも多い。この場合、予定内容を一部変更して放送する旨がテロップもしくはキャスターコメントで伝えられる。さらに、(その情報番組・ワイドショー番組に)定期出演しているタレントはこの回に限り不出演とし、アナウンサー・フリーアナウンサー等のみで進行する場合もある。また、正式な報道特別番組に変更するためにその番組としては休止になるも、その番組の出演者がそのまま報道特別番組のキャスターとなるケースもある。ラジオはテレビに比べて地域密着性が強いため、全国ネットの報道特別番組が組まれる場合でも比較的短期間で終わることがある。しかし、大地震の被災地となった地域では、テレビをはるかに上回る超長時間の特別編成になることもある。1995年(平成7年)の阪神大震災では、被災地の局であるラジオ関西(CRK。当時はAM KOBE)が発生直後から3日間、69時間一切のCMを放送せず、本来なら当時は放送休止となる深夜の時間にも連続で放送する非常態勢を取った。毎日放送(MBSラジオ)・朝日放送(ABCラジオ)は丸2日間、ラジオ大阪も1日半以上CMなしで特別番組を放送した。2011年(平成23年)3月の東日本大震災の場合、首都圏でも千葉・茨城を中心に甚大な被害が出たため、TBSラジオ、文化放送、ニッポン放送、TOKYO FM、茨城放送が地震発生直後の11日午後から14日朝5時まで断続的に特別番組を放送し続けた(ラテ欄には通常番組タイトルの並んだ地域もあるが、内容を変えた局もある)。また特番編成を終えた後も特別な枠を作る局もあった(JFN系列「TIME LINE」(TOKYO FMで放送しているものを枠拡大、並びに全国ネットさせた)、「HOPE MAIL」)。一方、東北地方の被災地では11日の夜以降完全にCM抜き・災害報道に移行。ラジオ福島は福島第一原発事故も重なり実に350時間(14日間)、date fmが270時間(12日間)、東北放送(TBCラジオ)は231時間(11日間)、IBC岩手放送も108時間(6日間)に渡って一切のCM放送をしない非常態勢を取り続けた。なお、全国ネットの報道特別番組がどうしても必要な事例については、JRNはTBSラジオ、NRNは文化放送が、JFNはTOKYO FMがキー局となりそれぞれの判断で決定する。NRNでは、時間によりニッポン放送発で全国ネット放送されることもあるが、発局切り替え時間の決定など運行については文化放送報道スポーツセンターの指揮にニッポン放送が従う形を取る。ただし、文化放送、ニッポン放送共にプロ野球日本シリーズと同様NRN向けと自局ローカルの二重制作を行い、自局の電波ではもう一方の局発のNRN報道特別番組を一切放送しない。JRNとNRNのクロスネットでなおかつ県域に民放AM局が1局しかない地域では、テレビがTBS系列の兼営局であればJNN排他協定の解釈上JRN報道特別番組を優先の上、全国発信用の素材はJRN向けとNRN向けの2種類を制作して渡す。テレビが日本テレビ系列の兼営局でキー局への素材送りが発生するケースでは、NNN、JRN、NRNのそれぞれに向けた別々の素材を制作して渡さなければならない。また、NRN加盟局のうちABCラジオは例え報道特別番組であっても完全自社制作となり、ニッポン放送と相互に取材協力する。CMの放送については、各局、各系列によって契約が少しずつ異なることから違いがある。ただ、多くの民間企業が宣伝目的であるCMの放送を自粛するケースもあり、このような場合はACジャパンやJARO、地上デジタル放送推進などのCMに差し替えられる。また、時間帯や内容によってはCMの一部もしくは全てが放送されないこともあるため、その際には営業担当社員がスポンサーや広告代理店に事実関係の報告をし承諾を得る連絡に追われることになる。ただしスポンサー契約の際にあらかじめ「報道特別番組など突発的な臨時編成を組む場合の対応」についての特約条項が盛り込まれるようになった。特約があるとはいえCMの契約は細かく、それぞれに合わせてCM放送データの自動番組制御装置へのデータ入力作業は煩雑で、極限られた時間中にこれを行うことはミスを招く結果となり、発局ローカルCMがそのまま流れる、地元ローカルのCMが出ない、あるいは中断する、CMに入らずスタジオの映像のまま打ち合わせの風景が流れるといった放送事故(CM事故)も多い。NHKのみ、CMが存在しないので、非常に臨機応変な対応が可能である。
出典:wikipedia
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