遠州鉄道株式会社(えんしゅうてつどう、英称:"Enshu Railway Co., Ltd.")は、静岡県浜松市で鉄道路線1路線と、静岡県遠州を中心としたバス事業を運営している会社である。関連事業として不動産・保険・介護事業も営む。略称は遠鉄(えんてつ)。本社は浜松市中区に所在し、鉄道営業所は浜松市東区西ヶ崎町686-1(遠州西ヶ崎駅構内)にある。かつては普通鉄道路線として奥山線、前身の遠州電気鉄道時代には軌道線として中ノ町線、笠井線も有していたが、1964年に奥山線を廃止した後は鉄道線(旧称:西鹿島線/二俣線)が残るのみである。また浜松市街では幾度か路線変更が行われている。広義の鉄道事業に含まれる索道路線としてはかんざんじロープウェイも保有している(運行は子会社の遠鉄観光開発に委託)。乗合バス事業の詳細は「遠鉄バス」を、貸切バス・旅行事業の詳細は「遠鉄観光」を参照のこと。分社した路線も含む。奥山線以外は軌道線ここでは鉄道線(西鹿島線)以外のものについては割愛する。奥山線の車両は「遠州鉄道奥山線#使用車両」を参照。旅客用車両として30形電車・1000形電車・2000形電車の3形式が在籍する。全車ともスパニッシュレッドの車体に白とグレーのラインが入った塗装で統一されている。この塗装は1983年から新製された1000形より採用されたものであるが、それ以前より赤系統の塗装が標準色であったことから、遠鉄の車両を指して「赤電」とも称される。なお、現有車両に関しては形と表記するが読みはがたではなくけいである。地方の中小私鉄においては大手私鉄より譲り受けた車両によって車両近代化を実施する例が多く見受けられるが、鉄道線(西鹿島線)における旅客用車両は電化開業当時から最新の2000形に至るまで、自社発注のオリジナル車両で占められている点が特筆される。その他共通事項としては、貫通路形状が30形モハ51-クハ61をのぞく全車とも「キノコ型(T字型・営団6000系電車などの原形と類似した形状)」である点が挙げられる。車両の向きは制御車(クハ)が西鹿島向き、制御電動車(モハ)が新浜松向きで各形式とも統一されており、30形(モハ25・モハ51)・1000形・2000形の制御電動車(モハ)は弱冷房車に設定されている。製造メーカーは各形式とも日本車輌製造である。車両近代化ならびに旧型車の代替を目的として、1958年から1980年にかけて制御電動車モハ30形18両(モハ25 - 39・51)・制御車クハ80形12両(クハ61・79・80 - 89)の計30両が新製された。全車とも2扉ロングシート構造であり、大幅な前面形状改良が加えられた最終増備編成をのぞいて湘南型の前面形状で統一されている。客用扉は1,200mm幅の片開扉とされたが、モハ30-クハ80以降1,400mm幅の両開扉に改められ、それに伴って窓配置にも変化が生じた。その他、前面アンチクライマーならびに行先表示幕の有無や運転台構造(初期車は半室運転台構造であり、後期車より全室運転台に改められた)の差異など、製造年次別による形態の差異が存在する。初期車には前面の排障器が装備されていなかったが、後の増備車に合わせて取り付ける改造が施されている。第一編成は後の増備車と比べて車体長が若干短いという特徴が見られた。車体塗装は当初グリーンとクリーム色のツートンカラーであったが、踏切事故対策として1961年12月よりスカーレット一色塗装に改められた。この塗装は以降の増備車ならびに従来車にも普及し、「赤電」の愛称の由来となった。後年1000形に準じた塗装に変更され、現在に至る。完全新製車と従来車の機器を流用して新製された車両(以下「機器流用車」)が存在し、モハ29・36 - 39ならびにクハ79・86 - 89が後者に該当する。最終的には全車とも2両編成(36 - 39はモハ同士の全電動車編成、その他はモハ-クハの組み合わせによるMT編成)を組成したが、増備の途上においてはモハのみ・クハのみを新製して編成替えを行うなどされたことから、落成当初とは異なる編成相手と組成された車両も多く、モハとクハで形態が大きく異なる編成も存在する。また、増備の途上において車両番号(車番)が30番台・80番台には収まらなくなったことから、モハ30形についてはモハ39の次に増備された車両をモハ30と付番し、以降モハ29・28・27といった具合に逆順で車番が付されている。また、クハ80形についてはモハ30形同様の付番方式によってクハ89・80・79まで増備されたのち、ラストナンバーは空番となっていたクハ85が付番された。さらに最終増備編成についてはモハ51-クハ61と、従来車とは全く関連性のない車番が付されている。主要機器については完全新製車と機器流用車で異なり、完全新製車についても製造年次による変化があるものの、モハ51-クハ61をのぞいて全車とも吊り掛け駆動方式で統一されている。モハ25-クハ85は1978年に新製されているが、同編成は遠鉄のみならず、完全新製の旅客用車両としては日本国内の普通鉄道においてノーズ・サスペンション方式の吊り掛け駆動方式を採用した最後の車両である。なお、モハ51-クハ61は遠州鉄道初のカルダン駆動車として新製された。ただし、前述吊り掛け駆動車を含めて制動装置はWABCO系の自動空気ブレーキで統一されており、制御装置の動作シーケンスの一部に互換性はないが指令線は共通化されているため、駆動方式や制御装置の差異に関係なく併結が可能である。また、モハ36 - 39をのぞいて全車とも停止用発電制動を常用し、減速時においても吊り掛け駆動独特の唸り音が生じる。当初は非冷房仕様で増備が進められたが、前述モハ25-クハ85ならびにモハ51-クハ61は落成当初より冷房装置を搭載し、非冷房車についても順次冷房改造が実施された。新製冷房車が分散型冷房装置を1両当たり3基搭載しているのに対し、冷房改造車は集中型冷房装置を1両当たり1基搭載している点が異なる。また、冷房改造施工時期と廃車時期が重複していたことから、冷房改造を受けることなく廃車となった車両も存在する。1980年以降廃車が開始され、2015年2月現在モハ25-クハ85・モハ51-クハ61の2編成4両のみ在籍する。本形式は制動方式等の相違から後述1000形・2000形とは併結不可能であるため、ラッシュ時における4両編成運用に充当される際には本形式同士による4両編成を組成する。2015年1月にモハ27-クハ89編成が退役し、これにより片開きドアと半室構造の運転台、トーションバー台車を装備した車両がすべて姿を消し、同線に残る吊り掛け駆動車はモハ25-クハ85の1編成を残すのみとなった。さらに同年4月には30形の定期運用が消滅して予備車となり、本線で走行する機会が大幅に減少した。従来車の代替を目的として、1983年から1996年にかけて制御電動車モハ1000形1001 - 1007・制御車クハ1500形1501 - 1507の計14両が新製された、遠鉄初の3扉構造を採用したロングシート車である。前述車体塗装とともに車体形状も一新され、30形とは異なり全体的に直線を基調としたデザインとされている。前面形状は中央部分を大きく取った3面折妻形状で、上下にそれぞれ後退角を設けている。大型化された前面窓内側には電動式の大型行先表示幕が設置されている。前照灯ならびに後部標識灯は1つのケースに収められて左右腰部に設置され、台枠部分にはアンチクライマーを有する。側面は3扉化に伴って窓配置がd1D3D3D1となったほか、客用扉幅が1,300mmに縮小された。また、30形においては腰部に設置されていた側面行先表示幕が幕板部に移設され、前面と同様電動幕となったことによって、30形における「新浜松⇔西鹿島」といった終起点表示方式から行先を単独表示する仕様に改められた。その他、側窓のユニット構造化ならびに客用扉のステンレス化といった改良が加えられている。主要機器の仕様は30形モハ51-クハ61のそれを踏襲しているが、空気制動装置が遠鉄において初採用となる電気指令式ブレーキ(発電制動併用HRD-1D)に変更された関係で、モハ51-クハ61を含む従来車との併結は不可能となった。冷房装置は30形新製冷房車同様に分散型冷房装置を1両当たり3基搭載するが、冷房装置カバーが3基の冷房装置を覆う一体形状に改められた点が異なる。本形式は末尾同番号のモハ・クハで2両編成7本を組成し、4両編成運用時においては本形式同士のほか、後述の2000形との併結運用も行なわれる。1999年に登場。2001編成(モハ2001-クハ2101)は同年4月5日より営業運転を開始し、現在に至るまで増備が続いている新形式であり、2015年3月現在モハ2000形2001 - 2006・クハ2100形2101 - 2106の計12両が在籍する。形式称号の「2000」には「21世紀に向けての新型高性能電車」の意味が込められている。車体構造は1000形とほぼ同様であるが、制御装置に遠鉄初となるIGBT素子を用いたVVVFインバータ制御(1C2M制御方式)を採用した。制御装置・主電動機ともに三菱電機製であるが、従来東洋電機製造製の電装品を主に採用した遠鉄にあって、三菱製の電装品の採用もまた初のことであった。制御装置のVVVF化に伴って停止用制動に回生制動が採用され、省エネルギー化ならびにメンテナンスフリー化を実現した。その他、パンタグラフにシングルアーム式のものを採用した。車内設備もおおむね1000形に準じているが、客用扉窓の固定支持方式がHゴム固定から金属枠固定となり、扉窓が若干角ばった形状に変更されたほか、座席モケット色も変更となった。また、バリアフリー対応としてクハ2100形の乗務員室後部、助士席側が車椅子スペースとなっており、当該部分に座席は設置されていないことから、モハ・クハで座席定員が異なる。2001年に増備された2002編成(モハ2002-クハ2102)より、運転機器が従来の主幹制御器(マスコン)と制動弁が別個となったツーハンドル方式から、それらを一体型としたワンハンドルマスコン方式に改良された。さらに2008年に増備された2004編成(モハ2004-クハ2104)においては、、制御装置も三菱製MAP-124-75V187に変更された。2012年に2005編成が増備され、2012年10月23日より営業運転を開始した。2005編成から台車の軸箱支持方式が従来の円錐積層ゴムバネ式から軸梁式に変更となった。2015年には2006編成が増備された。同編成では、車内案内表示器が遠州鉄道初のLCD式となった。本形式も1000形同様に末尾同番号のモハ・クハで2両編成4本を組成し、4両編成運用時においては本形式同士のほか、1000形との併結運用も行なわれる。2016年4月1日、2002編成に地元企業であるユタカ技研の創立30周年を記念して、車体全面を青色にラッピングした「青電」が登場した。これはユタカ技研のコーポレートカラーが青色であることから、話題作りの一環として企画されたもの。遠鉄において車両の全面ラッピングは史上初。2017年3月末まで運行する。鉄道線では磁気式の乗車券を導入していないため、磁気券を読み取る方式の自動改札機は存在しない。ICカード「ナイスパス」のカードリーダー、および駅係員・車掌の改集札で対応している。無人駅や、有人駅で係員が不在の時間帯では車掌や運転士が改集札に当たり、全降車客のナイスパスの読み取り及び乗車券の回収を行なう。しかし4両編成での運転時は無人駅にも職員が派遣され、降車客の集札にあたる。これは4両編成の場合、編成長が約70mと長く、車掌と運転士による集札だけでは時間がかかり発車が遅れてしまうためである。単線で12分間隔の運転という高密度なダイヤで運行しているため、発車が遅れてしまうとダイヤ全体への影響が出てしまう。自動券売機は各駅に2台以上が全駅に設置されている。新浜松・遠州西ヶ崎・西鹿島を除く各駅には、ホームに番号がついていない。相対式ホームでは行先の案内で目的のホームを判断し、片面ホームや島式ホームでは列車の方向幕によって乗車する列車を判断することになる。新浜松には発車メロディが、遠州病院(ラッシュ時のみ使用)、西鹿島には発車ベルが導入されているほか、接近放送が導入されている駅では接近メロディが流れる。なお中間駅では基本的には乗務員の手笛により発車する。本節の詳細は「遠鉄バス」を参照のこと。なお、1997年12月25日に浜松市は全国初の「オムニバスタウン」に指定されている。本節の詳細は「遠鉄観光」を参照のこと。基本的にはバスの施策は「遠鉄バス」にて、鉄道線の施策は「遠州鉄道鉄道線」にて述べるが、ここでは、両者に共通する事項を述べる。なお、ETカードやナイスパス、えんてつカードなど、各種カードに関連する事項は当該記事を参照のこと。遠鉄ではメインの鉄道・バス事業を補完するため、本体で国内企画旅行(運輸事業部)・不動産・保険代理業・介護サービス事業といった関連事業を直営しているほか、浜松市を中心に運輸・流通・観光事業など15の関連会社を擁し、企業集団「遠鉄グループ」を形成している。キャッチコピーは「地域とともに歩む、遠鉄グループ」。遠鉄ストア(2016年(平成28年)3月期売上高563.71億円)と遠鉄百貨店(2016年(平成28年)3月期売上高352.50億円)は本体を上回る売上を上げているほか、ネッツトヨタ浜松も2016年(平成28年)3月期売上高204.69億円を上げるなど連結の営業成績の多くを関連事業で稼ぎ出している。2008年9月1日よりグループ共通のポイントカード「えんてつカード」が運用開始となった。また、テレビCMも放映され、三重県出身の歌手西野カナの『stamp』という曲が使われている。株主は特記なければ遠州鉄道(株)。
出典:wikipedia
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