ニューヨーク市地下鉄(ニューヨークしちかてつ、New York City Subway)は、ニューヨークシティー・トランジット・オーソリティー (NYCTA) によりニューヨーク市内で運行されている地下鉄(ラピッド・トランジット)である。1904年に米国ではボストンに次ぐ2番目の地下鉄として開業した。開業当初は民営であったが、1932年にはそれとは別個に市営地下鉄も開業し、1940年の完全市営化を経て1953年からNYCTAによる運営が開始された。路線網はマンハッタンを中心にスタテンアイランドを除く市内のほぼ全域に広がっており、路線延長は233マイル(375km)で地下鉄としては北京、上海、ロンドンに次いで世界で4番目の規模を有する。468駅が設置されており、全ての路線と駅で24時間営業が行われている。年間利用者数は約17億5000万人(2014年)で、世界で7番目に利用者が多い地下鉄でもある。ニューヨークで最初の「地下鉄」は、1869年にサイエンティフィック・アメリカン誌の編集者で発明家のアルフレッド・イーリー・ビーチがデモンストレーション目的で建設したである。ビーチはそれを郵便物用の気送管と偽ってトンネルの許可を取得し1870年2月28日に一般公開した。トンネルの延長はわずか312フィート(95メートル)で、ブロードウェイが市庁舎の真横を通る区間に建設された。車両は円筒形で送風機が生み出す空気圧で押し出す、あるいは吸い出すことで運転され、速力は時速6マイル(約9.7km/h)しかなかった。その後ビーチの地下鉄は1873年恐慌の影響を受けて1874年に運行を終了し、1912年にBMTブロードウェイ線建設のため取り壊された。ビーチの気送管式地下鉄が失敗に終わった一方、地下鉄開業以前のニューヨーク市では高架鉄道が発達した。最初の高架鉄道は1867年に技師のチャールズ・ハーヴェイによってグリニッジ・ストリートに建設された高架ケーブルカー(ウェストサイド・アンド・ヨンカーズ・パテント鉄道、後のIRT9番街線)で、1871年にはケーブル装置を廃して蒸気機関車による運行が始められた。蒸気機関を使用した高架鉄道は騒音、振動、ばい煙をまき散らし、高架線が街路への採光を妨げるという問題があったものの、1878年に6番街、1880年に2番街、3番街でも開業し、1890年には高架鉄道全体で年間1億8820万人を輸送するようになっていた。ニューヨークで最初の本格的な地下鉄はインターボロー・ラピッド・トランジット (IRT) の手により、1904年10月27日に - 間で開業した。地下鉄の建設と運営はニューヨーク市との間で交わされた契約に基づいて行われていたが、その後ニューヨーク市は1913年にブルックリンで高架鉄道と路面電車を運営していたブルックリン・ラピッド・トランジット (, BRT) とも別個の地下鉄建設契約を締結し、この2社に競わせる形で市内の地下鉄の建設を推進した()。1914年の第一次世界大戦勃発とその後の軍需景気、さらに狂騒の20年代を通じて地下鉄の利用者は急激に増加した。しかし契約上運賃は5セント均一で固定されていたため、インフレが進行したことにより却って両社の経営は悪化し、特にBRTは1918年の脱線事故で多額の賠償金を抱えたため、1919年に一度破産し1923年にブルックリン・マンハッタン・トランジット (ブルックリン・マンハッタン交通会社、BMT) として再スタートを切る事態となった。そこでニューヨーク市は自ら地下鉄運営に乗り出し、市直営のインディペンデント・サブウェイ・システム (独立地下鉄網、IND) を1932年に開業させ、路線の更なる拡充を図った。最終的にニューヨーク市は1940年に両社を買収して路線網をINDに統合し、地下鉄の完全公営化が実現した。しかしIRTは車体長15mの小型車を使用し、BMTとINDは19m以上の大型車を使用していたため、旧IRTの路線は 、旧BMT、INDの路線は として現在でも別々に運行されている。その後、地下鉄の運営は1953年に設立されたニューヨークシティ・トランジット・オーソリティ (ニューヨーク市交通局、NYCTA) に移管され、NYCTAはさらに1968年にメトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティ (ニューヨーク州都市交通局、MTA) の管轄下に組み込まれた。また、ロングアイランド鉄道 (LIRR) から老朽化した一部の高架路線を買収・修復して既存のAラインと接続した。こうして20世紀初頭から中期にかけて、ニューヨーク市において、3つの異なる鉄道会社が地下鉄と高架鉄道を中心とする路線を拡大した。地下鉄開業以前からニューヨーク市の公共交通を担っていた高架鉄道は、地下鉄の整備が進むにつれて多くの路線がそれに接続されるか廃止され、マンハッタン島内では1956年に全廃された。ブルックリンでは、地下鉄開業以前から存在する高架がまだ使われている区間もある。ニューヨーク市地下鉄は、アメリカでは珍しい充実した公共交通ネットワークを構築し、ニューヨーク都市圏の重要な交通体系を担うようになった。しかし、1970年代以降、設備の老朽化に加え、車体全体を覆いつくすことすらあったグラフィティ、車内や駅構内での犯罪が目立つようになり、市民からも敬遠され利用者数は1910年代の水準にまで落ち込んだ。これらは米国内のみならず、メディアを通じ海外にも広く知れ渡る悪評と化したため、1980年代以降、駅のリニューアルや新型車両の導入、警備体制の強化等の対策が進められた。その結果、犯罪や落書きは減少し以前の評価を取り戻しているが、未だに車内や駅構内が不衛生であること、ダイヤが不正確であることや現業職員の接客態度の悪さなど課題は多数残っており、特には、利用者を顧みない現業職員の身勝手な行為として市民の不評を買った。一方で90年代以降は利用者数も増加に転じており、2014年には一日あたりの利用者数が過去最高を記録するなど、24時間運行や複々線による急行運転を行い米国内で最も充実した公共交通ネットワークを持つニューヨーク都市圏の重要な交通体系の一翼を担っている。ロウワー・マンハッタンには、IND8番街線のフルトン・ストリート駅(A・C系統)と、BMTナッソー・ストリート線のフルトン・ストリート駅(J・Z系統)、IRTブロードウェイ-7番街線のフルトン・ストリート駅(2・3系統)、IRTレキシントン・アベニュー線のフルトン・ストリート駅(4・5系統)が至近距離にあるにもかかわらずバラバラに存在するため、これら四つの駅を統合して総合駅化する "Fulton Street Transit Center Project" が2009年完成予定で進められていたが、当初の計画から大幅に遅れた2014年11月にフルトン・センター複合駅が開業した。さらに周囲のやパーク・プレイス駅、ワールド・トレード・センター駅、およびパストレインのワールド・トレード・センター駅とも地下通路でつなぐことが予定されている。2007年4月には、1972年に着工されたが、直後に中断されていた "IND2番街線"( - )の建設が30年ぶりに再開された。まずは一部区間(Q線の延長という形でまで)が開通する予定で、全線が開通した時は、北半分を走るこのQ線に加え、全線通しの(ラインカラーは水色)がお目見えする計画である。2015年9月には、7線のタイムズ・スクエア-42丁目駅から11番街の34丁目-ハドソン・ヤード駅の延伸区間が開業した。これは1989年に開業したF線のクイーンズ方面への延伸である以来26年ぶりの新区間および新駅となった。当初の計画で途中に設けられる予定だったについては、予算が下りれば新設されるが当面の予定はない。2015年10月現在、ニューヨーク市地下鉄には24の運転系統が設定されており、旅客向けの案内は基本的に運転系統を単位に行われている。電車の種別は急行 (Express または EXP)、各駅停車 (Local または LCL)、シャトル (Shuttle) の3種別がある。ただし日本の地下鉄とは異なり、基本的に急行と各駅停車は違う運転系統として区別されており、一つの運転系統の中に急行と各駅停車が同時に運行されているのではない(一部例外もある)。各系統には運転区間や種別によって個別の系統記号、系統名が付けられているほか、ロウアー・マンハッタンやミッドタウンでどの基幹路線 (Primary Trunk line) を通るかによってラインカラーがグループ化されている。このため目的地の最寄駅に停車する系統がわかっていれば、電車の系統表示を見るだけで乗るべき電車を判断できるようになっている。24時間運転を行っていることも特徴の一つであり、これはシカゴの高架鉄道シカゴ・Lとともに世界で二つしかない。ただし深夜から早朝にかけては日中とは運転区間や停車駅が異なる系統もあるため、深夜の利用には治安以外の観点でも注意が必要である。また保線作業や工事を行ったり災害や事故があった場合には、不通区間を迂回して運行を継続したり、特定の駅や区間の営業を休止し代替バスを運行するなど、変則的な運行が行われる場合が非常に多い。保線作業や工事による変則運転は特に深夜や週末に多いため、乗車の際には事前にMTAの公式ホームページ内にある「Planned Service Changes」の項目にて告知を確認し、掲示物や駅、車内の放送などで伝えられる運行情報に十分注意する必要がある。運行時間帯は5つに分けられる。ニューヨーク市地下鉄のほとんどの運転系統は公的な意味での路線名称 (Line) とは全く無関係に設定されており、路線名称としては34路線が存在し2015年10月現在33路線が営業運転に使用されている。残りの1路線、IND2番街線は建設中であり、2016年12月に開業予定である。これらの路線は現在フランクリン・アベニュー・シャトルが使用しているBMTフランクリン・アベニュー線フランクリン・アベニュー駅 - パーク・プレイス駅間の1区間を除き、全区間が複線で建設されている。また急行運転を実施している路線では、急行運転区間の全線が複々線または三線となっており、急行と各駅停車の完全な緩急分離がなされている。また以下に示す路線が基幹路線 (Primary Trunk line) である。ニューヨーク市地下鉄の路線図は、MTA公式ホームページの「Maps」の項目のうち、日中の路線図は「Subway System」で、深夜の路線図は「Late Night Service Map」で確認することができる。 駅名には独特の表記方法が用いられており、例として42丁目は一般的に“42nd Street”という書きかたをするが、“42 Street”または“42 St”という表記が使われ、読みかたは通常どおり“Forty Second”である。Avenueの場合も省略形が通常の“Ave.” ではなく、eとピリオドが消えて“7 Av”のように表記される。 また、駅名表示が統一されていないのも特徴で、ファーロッカウェイ・モットアベニュー駅ではホーム上の駅名板では「ファーロッカウェイ」となっているが、同じホームにある柱には「モットアベニュー」と表示されていて、駅自体の出入口には場所により「ファーロッカウェイ駅」と「モットアベニュー駅」という2種類の表示がある。他にも、207丁目-インウッド駅では、一カ所の出入口を除き「207丁目」と表記されている。これら以外にもまちまちな表記法が散見され、車両によっては同じ駅ながら「コニー・アイランド」と「スティルウェルアベニュー」などと、一見別の行き先であるかの様な表記が混在しており、不慣れな乗客の誤乗の一因となっている。一部の大きな駅のホームには、電光行き先案内設備が備え付けられている。左側から、「終点の駅名(行き先)」・「分表示」と表示されている。「分表示」の意味は、「何分後にこの行き先の地下鉄が来るのか」を表示している。例として「5min(5分)」を表示されていれば、「5分後にこの行き先の地下鉄が来ます」という意味である。なお、黄色い文字が1番目、緑色の文字が2番目に来る地下鉄である。ニューヨーク市内の多くの地下鉄駅構内の壁には様々なタイル・アートが施されている(ニューヨーク市地下鉄駅のタイル)。また、MTAの許可を得たミュージシャンがホームで音楽を演奏している姿が見られる駅もある()。ニューヨーク市地下鉄は、2002年の段階で6,400両以上に及ぶ車両数を抱えている。1940年にニューヨーク市がすべての地下鉄路線を公営化して以降、車両の発注は、すべてニューヨーク市が行っている。ニューヨーク市地下鉄の車両は、車両番号の前に「R」をつける慣習があり、また車両番号は市当局と車両メーカーとの購入契約時の番号に依っている。Rが何を意味するのかについては、以下の3つの説があるが、未だに不明である。ニューヨークの地下鉄は、その発展段階で、IRTとBMT&INDという2つの異なる鉄道システムを構築したために、車両もAディビジョンとBディビジョンで異なる規格の車両が導入されている。なお、Bディビジョンの車両(幅3m、全長18.4mまたは22.8m)は、Aディビジョンの車両(幅2.67m、全長15.5m)よりも大きめに造られている。現有車両は、以下のとおり。すでに廃車された車両を含めたすべての車両リストは、を参照。この他、退役した代表的な形式がNYCTAにより多数保存されており、ブルックリンにある地下廃駅を活用したニューヨーク交通博物館に展示されているほか、コニーアイランド車両基地の専用ヤードにも多くが保管されている。そのうち、稼動状態に整備されているといった各車は、しばしば休日を中心に本線走行することもある。特に2004年の地下鉄開業100周年の際は、これら動態保存車がフル稼働し、一部は42丁目シャトルなどで一般営業列車にも使用された。R142やR160などの新しい車両には、出入口ドアの上に新式の路線案内(車内案内表示装置)が取りつけられた。Aディビジョンの路線にはStrip Mapと呼ばれる案内用LED付の路線図、Bディビジョンの路線にはFIND (Flexible Information and Notice Display) と呼ばれる現在の地点より先の部分が表示されていくもの(日本に単体ではこのタイプはないものの、液晶の表示としては存在する)が採用された。事業用車両も存在して、変わったところでは現金輸送列車 (Cash Carry Coach/Money Train) や各駅のホームから発生するゴミ収集塵芥用無蓋貨車 (Garbage Train)、工事用クレーン車 (Understruction Train)、廃車予定車からの転用工事車両、そしてゴミ収集塵芥用無蓋貨車とクレーン車を牽引するためのGE(ゼネラル・エレクトリック社)製のディーゼル機関車もある。日本の地下鉄における機関車といえば東京都交通局のE5000形電気機関車を上げられるが、こちらは電車を自走できない区間を回送する際に牽引するのみである。運賃は2015年10月現在、一乗車につき2ドル75セントの均一運賃となっている。乗車の際には事前にメトロカードという磁気式のプリペイドカードを購入する必要があり、カードを自動改札機の読み取り機にスライドさせたときに運賃が引き落とされる仕組みになっている。メトロカードには一回のみ有効のシングル・ライド券、購入時に5ドル50セントから80ドルの範囲で任意の額をチャージするペイ・パー・ライド券、定額制で乗り放題のアンリミテッド・ライド券の3種類があり、アンリミテッド・ライド券には有効期間が7日と30日の2種類がある。ペイ・パー・ライド券は繰り返しチャージができ、一度に5ドル50セント以上チャージすると11%のボーナスが付与される。メトロカードは駅の窓口や自動券売機、また街中にある新聞販売所などの売店などで購入することができる。ただしグランド・セントラル駅を筆頭とする主要駅では、不慣れな旅行者のせいで券売機の前に行列ができることも多く注意が必要である。また2014年からはオンライン決済による自動チャージ機能の付いたイージー・ペイ・メトロカード、「Easy Pay Xpress」の利用が開始された。メトロカード導入以前は、駅窓口でトークン(代用貨幣)を購入し自動改札機に投入するというシステムが1953年から用いられてきたが、メトロカードの普及にともない2003年をもってトークンの販売、使用ともに停止された。これらのトークンはニューヨーク交通博物館にて収蔵・展示されている。メジャーリーグにおいて、ニューヨーク・ヤンキースとニューヨーク・メッツとの試合は、2チームの本拠地球場をニューヨーク市地下鉄で行き来できることから、サブウェイ・シリーズ(地下鉄シリーズ)と呼ばれる。
出典:wikipedia
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