変分原理(へんぶんげんり、英語:variational principle)は、変分法を用いた物理学の原理。特に、変分原理は積分の形で扱うので、座標系の取り方に依存しない。従って拡張性に優れ、いろいろな分野に応用、利用される。作用積分"S" を、とする。"L" はラグランジアン、"q" ("t" ) は一般化座標、formula_2 はその時間微分、すなわち一般化速度である。ここで、ある時刻"t"、"t" において、"q" ("t")、"q" ("t") は固定されているとする。この作用積分"S" に対する変分原理は、作用積分に対する停留値問題を考えることであり、ということに相当する。変分は、一般化座標 "q" を、と時刻"t" 上で"δq" だけ微小変化させることに相当する。変分におけるこの微小変化は仮想的な変位を与えることであり、これは時間"t" に対する微小変位 "dq" とは異なった概念である。"δq" は元の経路 "q" ("t" ) 近傍の別の(仮想的な)経路との差であり、他方、時間変化 "dq" は経路 "q" に沿った変化の大きさを表す。一般化座標 "q" の微小変化 "δq" について、始点"t" ="t" と終点"t" ="t" においては経路が固定されているので、は常に満たされる。一般化座標 "q" の表す経路の変化に伴い、一般化速度 formula_6 も微小変化する。ここで、一般化速度の微小変化 formula_8 は、ある時刻"t" における、二つの経路での一般化速度の差を表す。作用積分の変分を計算すると、と変形できる。ここで formula_11 および formula_12 は充分小さいので、積分中の第一項と第二項、第三項と第四項の組はそれぞれ偏微分の形に書き換えられ、となる。"δq" ("t") = "δq" ("t") = 0 から第一項は 0 となる。"q" ("t" ) の任意の微小変化 "δq" ("t" ) に対して、作用積分の変分がゼロ "δS" = 0 である条件として、を得る。これはオイラー=ラグランジュ方程式になっている。同様にして変分原理を、幾何光学(光線光学)における光の反射や屈折の問題について適用すれば、フェルマーの原理が得られる。フェルマーの原理において、作用積分に対応するものは空間の 2 点間を結ぶ経路の光路長であり、ラグランジアンに対応するものは屈折率となる。微分形のガウスの法則、および静磁場におけるファラデーの電磁誘導の法則、が成り立つ静電場について、電場 formula_17 を静電ポテンシャル formula_18 で書き直せば、次のポアソン方程式が得られる。ここで、formula_21 は位置 formula_22 における電荷密度、formula_23 はSI単位系における真空の誘電率、formula_24 はラプラシアンを表す。この方程式は、次の formula_18 の汎関数 formula_26 について変分原理を用いることでも得られる。積分中の項を formula_23 倍した、formula_29 は静電場のエネルギー密度であり、formula_30 は電荷密度の位置エネルギーである。境界上 formula_31 で formula_32 として、 汎関数 formula_26 の変分を考えると、と変形できる。ここで、formula_35 の二次の項は無視した。ナブラの積の規則より、次の式が成り立つから、変分は、となる。ここで、ガウスの発散定理および境界上 formula_31 で静電ポテンシャルの変分 formula_35 がゼロであることを使った。このことから、汎関数 formula_26 の変分が任意の formula_35 に対しゼロになる条件は、関数 formula_18 が領域 formula_44 上でポアソン方程式、を満たすことであることが確認できる。ここではリッツの変分原理 (Ritz variational principle) の応用として、変分原理を用いた基底状態の波動関数の近似について述べる。ハミルトニアン formula_46 の固有状態で、固有値が最小のものを基底状態と呼ぶ。すなわち基底状態は以下の固有値方程式を満たす。ここで formula_48 は基底状態の固有値であり、ハミルトニアンの固有値は系の固有状態のエネルギーを表す。このハミルトニアンについて次のことが言える。「適当な境界条件を持つ任意の状態 formula_49 に対するハミルトニアン formula_46 の期待値 formula_51 は、基底状態のエネルギー formula_48 よりも常に大きいか等しい。等号は formula_49 が基底状態 formula_55 である場合に成り立つ」。このことは、ハミルトニアン formula_46 のエルミート性より、任意の状態がエネルギー固有状態の線形結合で表せることから示される。ハミルトニアンの固有状態 formula_57 は以下の固有値方程式を満たす。エネルギー固有状態を基底として状態 formula_49 を展開すれば、適当な複素数係数を用いて次のように表される。このときハミルトニアンの期待値は、となる。ここで固有状態の直交性を用いた。エネルギー固有値について、不等式 formula_63 が成り立つので、分子の固有値をすべて基底状態の固有値に置き換えれば、ハミルトニアンの期待値と基底状態のエネルギーに関する不等式が得られる。この原理によって、任意の状態 formula_49 に対するハミルトニアンの期待値 formula_66 の最小値が基底状態のエネルギー formula_48 である事が保証され、そのときの状態 formula_49 が基底状態 formula_55 であると言える。そのため、もしも基底状態とそのときのエネルギー値を求めたいのであれば、変分法によって formula_49 の汎関数 formula_71 の停留値を求めればよい事になる。変分原理を利用したこの手法を指して「変分原理」と言われる事も多い。formula_66 の停留値問題は次のようなものになる。formula_49 を適当な試行関数 formula_75 で表せば、formula_66 の変分は、パラメーター formula_78 の変分で表される。ここでハミルトニアンの formula_80 表示における行列成分を formula_81 、試行関数の内積を formula_82 とそれぞれ表すことにすると、次のようになる。この変分が任意のパラメーターの変分 formula_84 に対してゼロになることは、各パラメーター formula_85 の偏微分がゼロになることと同じなので、より、次の式を得る。この斉次方程式が非自明な解を持つためには、ベクトル formula_88 にかかる行列 formula_89 のディターミナントがゼロでなければならない。平衡状態において密度行列について変分を考えるギブズの変分原理がある。
出典:wikipedia
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