ドナルド・ジョン・トランプ(、1946年6月14日 - )は、アメリカの著名な実業家であり、2016年アメリカ合衆国大統領選挙の共和党候補者である。2016年5月に共和党の推定候補となり、2016年7月の2016年アメリカ合衆国大統領共和党予備選挙で正式に大統領候補に指名された。不動産会社トランプ・オーガナイゼーションの会長兼社長で、カジノ・ホテル運営会社トランプ・エンターテイメント・リゾーツの設立者である。アメリカのビジネスシーンでの有名人であり、メディアへの露出機会も際立って多い。その経歴、ブランディングの努力、私生活、豊かな財産、歯に衣着せぬコメントによって、セレブリティとして知られる。生粋のニューヨーカーであり、父のフレッド・トランプもニューヨーク市の不動産開発業者。父フレッドは不動産開発事業に対するトランプの関心を育て、トランプはペンシルベニア大学ウォートン・スクール在学中から、父フレッドの経営する不動産会社「エリザベス・トランプ・アンド・サン」を手伝い、1968年に正式に社員になった。1971年には父フレッドから同社の経営権を与えられ、社名を現行の「トランプ・オーガナイゼーション」に改めた。以来トランプは、ホテル、カジノ、ゴルフコースその他の不動産を建設し、その多くに自らの名前を冠している。NBCのリアリティ番組「アプレンティス」への出演はトランプの知名度を更に高め、3回の結婚歴はタブロイド紙で広く報じられた。2015年6月16日、2016年アメリカ合衆国大統領選挙へ共和党から出馬することを発表。トランプの初期キャンペーンは大々的にメディアの注目を浴び、広く一般の支持を集めた。2015年6月以来、共和党の世論調査では継続してトップの支持率を保っている。メキシコ系やヒスパニック系の不法移民に関する発言は、外国人嫌悪と取られることから共和党主流派の方針と決定的に相反するという指摘も受けておりワシントン・ポスト、エコノミスト、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ハフィントン・ポストなどのメディアからは大きな批判を浴びた。その一方で、ヒスパニックへの愛を表明し、マンハッタンのトランプ・タワーで各分野のラティーノ指導者らと会談を持ち、マイノリティの声に耳を傾けてもいる。また、親しい黒人女優のオマロサ・マニゴールトとともにミシガン州デトロイトを訪れ、黒人有権者らとセルフィしたり、赤ちゃんを抱っこしたり、一緒に踊ったりし、差別されてきた人たちのことを理解しているとアピール。さらに、共和党はリンカーンの党であり、誰も排除されない国、労働者の党を目指すと宣言。有権者からの支持を増やすことに繋がった。2016年7月、トランプはマイク・ペンスインディアナ州知事を副大統領候補に指名した。トランプは裕福な家庭の第四子として生まれた。父のは、1885年にドイツのラインラント=プファルツ州からアメリカに移民して渡米したドイツ人フレデリック・トランプの子で、ニューヨーク州クイーンズ区の不動産デベロッパー。母のメアリー・アンは、スコットランドのルイス島生まれで1930年にアメリカに渡った慈善家・主婦。トランプの両親は1936年に結婚し、5人兄妹をもうけた。少年期のトランプは、クイーンズ区ジャマイカ・エステートのミッドランド・パークハイウェイ沿いで育って暮らし、13歳までは父が運営委員を務めるフォレスト・ヒルズ地区の学校に通っていたが、素行不良のためニューヨーク・ミリタリー・アカデミー(陸軍幼年学校の1つ)に転入させられた。1964年からブロンクス区のフォーダム大学に2年通ったのち、不動産の専門学科があった数少ない大学であるペンシルベニア大学のウォートン・スクールに通う。1968年に学士号(B.S.)を取得して卒業し、父親が経営するエリザベス・トランプ・アンド・サンに入社して、仕事を通じて不動産管理や投資などの知識を身につける。1970年代からオフィスビル開発やホテル、カジノ経営などに乗り出し、1980年代には、ロナルド・レーガン政権下における景況感の回復を背景に大成功を収め、アメリカの不動産王と呼ばれることになる。自己顕示欲が旺盛であると言われ、各種メディアに積極的に露出するだけでなく、自らが開発・運営する不動産に「トランプ・タワー」、「トランプ・プラザ」、「トランプ・マリーナ」、「トランプ・タージマハール」など、自分の名前を冠している。「トランプ・タワー」は、1983年に、ニューヨーク五番街(ミッドタウン・マンハッタンの目抜き通りである)に建設された。80年代のトランプの代表作として知られ、高級アパートメントとショッピングモール、オフィスエリアを擁する複合施設である。80年代にはスピルバーグやマイク・タイソンといったセレブが入居しており、現在もNYヤンキースのデレク・ジーターや、ハリソン・フォード、ビヨンセなどの有名人が住む。ミス・ティーンUSA、ミスUSA、ミス・ユニバースの優勝者が共同生活していることでも有名である。1980年代後半には、当時経営不振に陥っていた大手航空会社・イースタン航空のニューヨーク発(ラガーディア空港)のシャトル便路線網を買収して、自らの名を冠した「トランプ・シャトル」を興すなど他異業種への展開を進めたものの、88年から89年にかけて巨額の債務を抱え、91年にカジノが、92年にホテルが倒産した。94年にこれらの資産を売って借金を減らし、遊覧船事業と飛行機事業から撤退、マンハッタンに所有する物件も多数を中国企業に売却した。現在も中国の銀行やゴールドマン・サックスなどから多額の借金を抱えている。危機を切り抜けると、90年代後半から好景気を背景に復活を成し遂げ、著名な経済誌「フォーブス」が選ぶアメリカのトップ企業400社に再びランクインし、マンハッタンに新たな高級アパートメントを多数建設する他、ラスベガスやアトランティック・シティなどアメリカ中に多数のホテルやカジノをオープンするなど、再び「アメリカの不動産王」としての地位を取り戻した。2007年後半に起こったいわゆる「サブプライム問題」以降の不況を受け、社債の利子の支払い不能に陥るなど経営難に陥っていた「トランプ・プラザ」、「トランプ・マリーナ」、「トランプ・タージマハール」を経営するトランプ・エンターテイメント・リゾーツ社が、2009年2月17日に連邦倒産法第11章の適用を申請した。同社の創業者でもあるトランプはこれに先立ち、同社の取締役会に対して「同社の株式をすべて購入する」との申し出を行ったが拒否されたことを不服として同社の取締役を辞職した。2010年9月9日、「グラウンド・ゼロ」近くにイスラム教の文化センターが計画されている問題で、センター予定地を価格の25%上乗せで買い取りたいと申し出た。ハワイ州が発行したバラク・オバマ大統領の簡易な出生証明書("Certification of Live Birth")に疑問を呈し、2011年、オバマは実際はハワイではなくアフリカ(ケニア)生まれで大統領の資格はないのではないかという国籍陰謀論を蒸し返し、注目を集めた。ABCニュースに出演したトランプはカメラの前に自身の出生証明書を掲げ、オバマにも同じことをするように要求した。「アフリカ生まれ」との疑惑を払拭するため、オバマは出生証明の原本をメディアに公開し、改めてハワイ生まれであるという事実を証明した。これについてトランプは、「バラク・オバマの出生情報を提出させることに成功した」と自画自賛したこれには、一部から人種差別だという反発とボイコット運動が起こり、グルーポンが「アプレンティス」(後述)のサイトから広告を引き上げる騒ぎとなった。同年4月末、トランプは年一回開かれるホワイトハウス記者クラブ主催の晩餐会に出席したが、ここでオバマは「この問題を取り上げていた人は、かねてからの問題に安心して取り組むことができるようになったのではないでしょうか」と、トランプら陰謀論を唱えた人々をジョークで皮肉った。同月の世論調査では、トランプは、大統領選における共和党の候補として、アーカンソー州前知事マイク・ハッカビーと並んで、2位の支持率を獲得した(1位はマサチューセッツ州元知事ミット・ロムニー)。2012年2月2日、共和党大統領候補として、ミット・ロムニーを支持すると表明した同年5月16日、共和党の予備選挙への不出馬を表明したが、最後に付け加える形で、のちの大統領選に、再び「(政治)見習いのセレブ(Celebrity Apprentice)」として出馬する予定であるとも述べた。2015年9月18日には、自身の集会で、自身の支持者がオバマをムスリムと決めつけたときに否定しなかったことで再び非難を浴びた。2016年8月10日には、フォートローダーデールの集会において、オバマと対抗馬のヒラリー・クリントンをイスラム過激派組織ISIL(イスラム国)の共同創設者であるとの持論を展開。翌11日のCNBCでのインタビューにおいて「私は事実を言ってるだけ」と述べた。しかし民主党のチャーリー・ウィルソンやオバマ陣営の外交問題顧問を務めたズビグネフ・ブレジンスキーらが、冷戦下のイスラム系反共武装集団に政治的支援を与えていたとしても、創設したとまでは言い難い。クリントン陣営は、「的外れな主張」であり、「トランプが米国を見下していることを示す新たな例」であるとの声明を発表した。一方で民主党の側もロシア悪玉論を振りかざしている。2016年8月19日には、洪水の被害に見舞われたルイジアナ州のバトンルージュを訪問。トラックいっぱいに詰め込まれた支援物資(子供向け玩具、衣類、おしめ、水、食料など)を運び、荷下ろしも手伝った。そして「大丈夫さ。状況は良くなる」などと被災者を励ました。その一方で、大統領就任以来300回目となるゴルフプレーに興じていたオバマに対し、「大統領はゴルフをせずに、早くルイジアナを訪れるべきだった。遅すぎる」と批判するのも忘れなかった。2016年9月16日、トランプはワシントンで記者会見を開き、「オバマ大統領は米国生まれ。以上」と短い声明を読み上げ、オバマがアメリカ合衆国生まれであることを渋々認めたが、謝罪はしなかった。かねてよりチェロキー族を先祖に持つエリザベス・ウォーレン上院議員を「ポカホンタス」と蔑称で呼ぶなど、SNS上で民主党関係者や共和党の対抗馬などへの挑発を続けてきたトランプであるが、ヒラリー・クリントンと最後まで予備選を争ったバーニー・サンダース候補が民主党党大会においてクリントン支持を表明するとTwitterにおいて、サンダースがやってきたことは全て無駄だったと挑発。サンダースは、「Never tweet.」(二度とツイートするな)と投稿した。オバマがクリントン支持を表明したことについて誰もオバマの続投を望んでいないとツイートすると、クリントンは「Delete your account.」(アカウントを削除しなさい)と短く返し話題を呼んだ。2016年8月10日、銃規制の強化をクリントンが主張していることについて、「銃を所持する権利を支持する人なら何かできるだろう」と発言し、支持者に暗殺を示唆したものとして波紋が広がった。トランプの選挙対策本部は、支持者に投票を呼びかけたものであると釈明に追われた。アメリカ合衆国シークレットサービスは、トランプ陣営に対して事情聴取を複数回行ったことを明らかにした。一方のトランプは、肺炎と診断された民主党候補ヒラリー・クリントンの回復を願うと表明。トランプ陣営の職員らにも、クリントンの病状に配慮し、 この件に関するソーシャルメディア上の投稿を控えるよう指示している。2016年10月8日、ワシントン・ポストは、2005年にトランプがテレビドラマ『デイズ・オブ・アワ・ライブス』の収録に向かうバスの中で、バラエティ番組『』の司会者と、結婚直後であったにもかかわらず、「私は魅力的で美しい女性に磁石のように引き寄せられ、キスを始めてしまう」と既婚女性と性的関係を持とうとしたことを発言し、猥談を繰り広げる動画を公表した。ポール・ライアン下院議長は、気分が悪くなるとしてトランプの演説会への参加を取りやめ、ラインス・プリーバス共和党全国委員長も非難する声明を発表。さらには、下院議員が、共和党の議員として初めてトランプ支持を撤回するなど、批判の広がりを受けたトランプは「気分を害した人がいたら謝罪する」と傍若無人の問題発言を繰り返すトランプが、自らの発言について謝罪を行う初の事態に追い込まれた。10月10日までに共和党に所属する連邦議会議員、州知事331人のうち少なくとも160人がトランプを批判し、うち32人はトランプに選挙戦からの撤退を要求した。2015年6月16日には、トランプ・タワーの会見場で、2016年アメリカ合衆国大統領選挙に共和党から出馬することを表明した。この出馬表明の場でトランプは「メキシコ(政府)がメキシコの人を送ってくるときは、メキシコのベストな人は送ってこない。メキシコは問題が沢山ある人を送ってきて、彼ら(問題が沢山あるメキシコ人)は問題を我々のところに持ち込む。彼らはドラッグを持ちこむ。彼らは犯罪を持ちこむ。彼らは強姦犯だ。そして、いくらかは多分良い人だ!国境警備隊と話したら我々の直面していることを話してくれた。」と破天荒な発言し、大きな反発を招いた。アメリカではヒスパニック(中南米)系住民が増加の一途をたどっており、2050年には国民の3人に1人はヒスパニックになると予想されている。このヒスパニックの反感を買う発言はトランプ自身の首を締めるものと言われた。米スペイン語放送最大手でヒスパニック向けのテレビ番組を放送しているユニビジョンは、トランプが共同事業者として参加しているMUO(ミス・ユニバース機構)との提携関係を解消し、「ミス・ユニバース」関連の放送を今後一切行わないと発表した。米放送メディア大手NBCも「ミス・ユニバース」の放送を打ち切ると発表し、「ミスUSA」の放送も打ち切り、自社番組「アプレンティス」からトランプを降板させ、トランプ抜きで放送を続けると発表した。トランプは同時に「私はメキシコにもメキシコ人にも敬意を抱いているし好きだよ」()とも言ったが、米大手百貨店メイシーズもトランプ・ブランドを撤去すると発表した。男子ゴルフのメジャー大会優勝者で争われるPGAグランドスラムを開催する米プロゴルフ協会(PGA)は、10月の大会をトランプが所有するロサンゼルスのコースで行う予定だったが、別の場所にすると発表した。同月、トランプはケーブルテレビのインタビューで、大統領に当選すれば、投資家のカール・アイカーンを財務長官に、実業家のジャック・ウェルチや投資家のを政策ブレーンに起用すると発言した。アイカーンは「突然のことで驚いた」「嬉しいが、この提案に応じられるほど私は早起きしていない」と一旦は辞退したものの、後に受諾を表明した。カール・アイカーンはトランプのためにスーパーPACを組織するなど大統領選を支援し、支持を呼びかけている。11月、ヒスパニック系の著名な知識人67名が、「数百万の死者を出すことに繋がった異民族に対する歴史的運動を想起させる」危険なヘイトスピーチであるとの非難声明を発表した。2015年12月には、ムスリム系夫妻がカリフォルニア州サンバーナディーノ郡で福祉施設を銃撃し14人を殺害した事件の後、「当局が(テロの)全容を把握するまで当面の間ムスリムの入国を完全に禁止するよう」提案した。メディアはこれを「ムスリム入国禁止発言」と伝え、世界的に波紋が広がり、イスラム世界はトランプ・ブランドの商品を回収するなど激しく反発した。この発言を巡っては、アラブの大富豪として知られるサウジアラビアのアルワリード・ビン・タラール王子が「おまえは共和党だけでなく全米の恥だ。おまえは決して勝てないから大統領選から撤退しろ」と、Twitterで攻撃して話題になった。これに対してトランプは「まぬけ王子のアルワリード・タラルの望みは、我がアメリカの政治家をパパのお金で操縦することだ。私が当選したら出来ないがね。」とツイートし返して注目を集めた。その後も様々な「問題発言」が取り上げられているが、2016年3月現在では、共和党の指名候補争いでトップの支持率を保っている。2016年1月19日、2008年大統領選挙で共和党の副大統領候補だったサラ・ペイリン元アラスカ州知事から支持を表明された。2月27日、大統領選挙から撤退したニュージャージー州知事クリス・クリスティから共和党指名争いにおける支持を得る。3月2日、スーパー・チューズデーの日、共和党の安全保障専門家たちが「トランプの大統領就任を阻止するために精力的に取り組むと誓う」とする連名の公開書簡を発表した。この書簡にはロバート・ゼーリック前世界銀行総裁、元国土安全保障長官、元など120人以上が署名している。トランプ人気の強さが明らかになるに連れて、トランプの集会を訪れる抗議者も増えている。特にシカゴで予定されていた3月11日の選挙集会では、移民に関する発言に反発した黒人やヒスパニック系の反トランプ派数百人が現れ、会場となっていたアリーナの5区画を占拠した。既に会場にはトランプの演説を聞くために8500~1万人の聴衆が集まっていたが、抗議者と支持者の間で殴り合いも起き、トランプ陣営は「安全上の懸念」を理由として集会の中止を発表した。同日、4日に共和党指名争いから撤退した元神経外科医のベン・カーソンから大統領候補としての支持を受けた。2016年5月3日、インディアナ州予備選で勝利し共和党の大統領候補指名獲得に必要な代議員1237人の確保がほぼ確実となった。これを受け、ライバル候補のテッド・クルーズおよびジョン・ケーシックが予備選からの撤退を表明。他の候補者がすべて選挙戦から撤退し、予備選に残っている候補者はトランプのみとなったため、この時点でトランプの大統領候補指名獲得が事実上確定した。トランプは他の候補よりも少ない資金で指名争いをリードすることで、資金力だけでは勝てないことを印象づけた。ルビオ、ヒラリー、ジェブ・ブッシュらがウォール街から大口の献金を得ていることと対照的に、トランプは献金を募らずに自弁による選挙活動を続けており、同陣営が使った28億円(2500万ドル)という費用はあらゆる共和党候補よりも少ない。16年2月時点で、共和党の各候補が1票を獲得するために投じた費用は、ジェブ・ブッシュが14万円(1320ドル)、ルビオが3万円(260ドル)、テッド・クルーズが2万6千円(233ドル)、トランプが6800円(60ドル)である。有権者1人あたりに投じた金額は、ジェブ・ブッシュ6万円(551ドル)、ルビオ3400円(30ドル)に対して、トランプは340円(3ドル)である。またトランプに対するネカティブ広告は週ごとに増し、2月末までに費やされたトランプ封じのネガティブキャンペーン予算は76億円(6700万ドル)に上る。各候補は対トランプ予算を3億円以上用意しており、フロリダの予備選投票ではトランプ阻止のために7億9千万円(700万ドル)が使われた。16年3月上旬には共和党のテレビCMの半数はトランプ降ろしを狙うものになり、対トランプのネガティブCMは6万件に達し、「弾幕」や「嵐」と呼ばれるほど増えた。また欧米メディアは、一様にトランプに否定的な反応を見せている。米国の政治専門紙ザ・ヒルの調査によると2016年10月までに米国の発行部数上位100紙のうち民主党候補のクリントンを支持した新聞が17紙あったのに対し、トランプ支持を打ち出した新聞は1紙も存在しなかった。女性蔑視発言によるトランプの失速が明らかになって以降、トランプ批判に踏み切りクリントン支持を打ち出すメディアは急増しており、歴代大統領に関する資料を収集するカリフォルニア大学サンタバーバラ校のプロジェクトが同じく上位100紙を対象に行った調査では、クリントン支持33紙、ジョンソン支持3紙、トランプ支持は0紙であった。ジョンソン支持を打ち出した3紙は元来、共和党寄りの論調の新聞である。このようなメディアの逆風と、少ない選挙資金で指名争いの首位を保ってきた逆説的な状況については、マスコミ誌上でも多くの分析があり、全体としては主流政治家への不満の他、支持者の見識不足と結論づける論調が多いが、非常に少数の意見としては米大手シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のエドワード・ルトワックによる見解などもある。なお、トランプ陣営は自身に対して批判したメディアの取材を拒否し、ワシントン・タイムズ、ハフィントン・ポスト、バズフィード、、ユニビジョン、フュージョン、、ポリティコ、ナショナル・レビューなど多くの報道機関の記者から記者証を取り上げたり、トランプの選挙対策本部長コーリー・ルワンドウスキ(後に解任)が質問しようとした女性記者の腕を掴むなどの強硬策に打って出ている。数少ないメディアによる支持表明の例としては、ニューヨーク・ポストがあり、日韓核武装論やメキシコ国境への万里の長城建設といった政策を「新人らしいミス」と一蹴しつつも、「不完全だが、可能性に満ちている」として支持を表明している。アメリカ大統領選挙は世界中の政治や経済の秩序に大きな影響を与えるため世界中のメディアが注目しており、アメリカの同盟国として最大の経済力を持つ日本でも新聞各紙はトランプの躍進について社説で論評している。1987年以前と2001年~2009年にかけては民主党員であり、同党のクリントン元大統領夫妻に過去10回に亘って献金もしている。また1999年~2001年までの間、アメリカ合衆国改革党にも所属していた。2000年の大統領選には同党から立候補しようとしたが結局断念。2016年の大統領選では共和党から出馬しているが、アメリカ改革党の支持も得ている。トランプの政策的主張は共和党の主流派とは大きく異なっており、政見について敵対する勢力からは大衆迎合主義(ポピュリズム)であると揶揄されることも多い。トランプをポピュリストとする1人でロイター通信のコラムニスト、ビル・シュナイダーによれば、ポピュリストとしてのトランプには右翼ポピュリストの特徴と左翼ポピュリストの特徴が両方あるという。シュナイダーによれば、ポピュリストにも右翼と左翼の区別があり、左翼ポピュリストはウォール街と「富を独占する1%の富裕層」を攻撃するが、右翼ポピュリストはリベラルの俗物ぶりとエゴの大きさを批判し、高学歴者がキリスト教の伝統的価値を破壊することを批判する。そしてドナルド・トランプはそれが合体しており、自分自身が富裕層であるのにウォール街を愛しておらず、右派のように移民、少数派、女性を攻撃するばかりか、左派のようにヘッジファンド嫌いであり、ウォール街の側も、反トランプの広告に何百万ドルも使って、トランプの勝利を阻もうとしているという。こうしたトランプの主張の支持者は、ニューヨーク・タイムズによれば「高校を出ていない白人」「農業や製造業といった古い産業の底辺」であり、ウォール・ストリート・ジャーナルによれば「高卒の白人、特に男」「下流労働者で非民主的な思想の持ち主」だという。また支持者に移民はほとんど居ないと言われている。しかし一部の合法な移民からは支持されているという。反共主義や自由化、民主化を掲げて介入するジョージ・W・ブッシュ元大統領をはじめとする共和党のネオコンや、ヒラリー・クリントンなどの民主党のタカ派とはトランプは一線を画していると見られており、外国の事に関与するよりも国内問題に集中して取り組むべきだというモンロー主義(孤立主義)により近いという見方もある。トランプの古くからの親友で長年アドバイザーだったはリチャード・ニクソンの崇拝者であり、トランプには輸入課徴金の採用やニクソンの演説の引用など保護主義的で国益重視だったニクソンの影響があるともされている。トランプは自らの外交方針について「私は孤立主義者ではないが、’’米国が第一’’だ("I’m “America First.”" )」「我々はあらゆる国と親しくするが、いかなる国に対しても付け入る隙を与えない」と要約している。ときに米国のリベラル・保守派の双方が非難している他国の指導者を支持するかのような発言が見られ、1990年にインタビューの中で、崩壊前年のソビエト連邦と天安門事件直後の中国について語った箇所は、トランプが共和党候補者でタカ派であるにも関わらず、共和党右派からも批判されている。インタビュアーがソビエト連邦の情勢をどう見るか尋ねると、トランプは「ピケが多発しており、今すぐにも革命が起こる。ロシアはリーダーシップを失って混乱している。がっちりした手を講じないゴルバチョフ大統領(当時)に問題があるのだろう。」と答えた。この前年(89年)に起きた中国の天安門事件を念頭において「がっちりした手とは中国のような対応?」とインタビュアーが質問すると「中国は学生たちを一掃した。彼らは悪いやつで恐ろしい。だが、彼らは我々に力の強さを見せつけた。一方の我々の国は、弱くなっている」とコメントした。また、「ソビエト連邦は転覆すると予言しておく。ゴルバチョフが極端な弱さを示しているからだ。突然いたるところで騒乱がおきて、究極的には暴力革命に繋がるだろう。ゴルバチョフは素敵なリーダー扱いされており今後も国際的な信用を増していくだろうが、それは彼がソ連を破壊しているからだ。」とゴルバチョフの改革がソ連を脆弱化させているという認識を示した。この発言は、右派の共和党とイラク戦争を支持する編集幹部から、「(ソ連や中国の強権政治について)こんな発言をする人間だからプーチンを褒めても驚くには値しない」「自由や民主主義や人権に背を向ける民主党のように、共和党まで落ちてしまうのか。」「私は残忍で殺人的で卑怯な中国政府を吹き飛ばしたかった!」と非難されている。この発言はCNNで行われたテレビ討論会でも追及され、その際にも天安門で起きたことを支持していないと強調した上で、中国政府が「暴動」を押さえ込んだという表現を使ったことで、天安門事件でリーダー格だった王丹、魏京生やウイグル人ウーアルカイシといった著名な中国民主化運動家から「まるで中国共産党の指導者」「中国共産党による抑圧に反対する者への侮辱だ」「アメリカの価値観の敵」として抗議を受けている。ロシアや中国とは小さくない問題を抱えてるとしながらも、「敵対関係になってはならず、共通の利益を見いだすべきだ」と発言している。2015年9月にはシリアで空爆を続けるロシア軍について「ロシアはアメリカに敬意を払っていないが、もしイスラム国を攻撃したいのならロシアに好きにさせればいい。イスラム国を排除させるのだ。我々もイスラム国を排除したいのだから気にすることなどない」と発言。ロシアが主導権を握ることを容認する考えを示した。2016年7月には「イスラム国に対抗して、我々がロシアや中国などと一緒になってイスラム国がもたらす地獄と混乱を一掃すれば素晴らしいだろう?」と発言している。当時は旧ソ連だった1987年以来、ロシアでもビジネスを行っている経験上、ロシアとも関係を深めるべきであると発言しており、「米ロがもっと協力すれば、テロを根絶し世界平和を再構築することができると常に感じている。貿易のみならず、あらゆる恩恵が相互の信頼関係からもたらされる」と述べている。トランプはウラジミール・プーチンを「内外で尊敬されている人物」「オバマと違って少なくともリーダーだ」と称賛しており、プーチン大統領もトランプを「トランプ氏には才能がある」と評価している。ただし、トランプは「ロシアとは関係はよくなると思うが、もしかしたらそうでもないかもしれない。私をプーチン大統領が褒めたといっても、これは交渉の助けにならない」とも発言しているトランプ陣営が制作した選挙宣伝用ビデオの中で、ナレーションがロシアを「最強の敵」と表現したことについては、ロシアの大統領報道官ドミトリー・ペスコフは「ロシアを悪魔のように扱っている」と批判した。また、国際空域で米軍機へのロシア軍戦闘機の接近が相次ぐことに関連して、オバマはロシアに弱腰であるとして、「ロシアの戦闘機が米国機に接近しても、外交が役に立たないなら、それらを撃墜する必要がある」とも明言している。民主党のメール流出事件については「ロシアや中国といった我々の友人はハッキングの地獄に突き落としたのだ」「ロシアにはさらにメールを見つけてもらいたい」「ロシアと中国、或いは他の国がメールを持っているなら、正直に言う、彼らは私に見せてほしい」と発言している。これまでの中東政策には否定的であり、イラク戦争にも反対してきた。CNNのの中では、次のように述べた。一方で、2002年のの中では、「あなたならイラクに侵攻する?」と問われて「するだろうね(Yeah I guess so)」と答えていたので、かつてはイラク戦争を支持していたのではないかという指摘もある。トランプはこの件について、「私は開戦する前から反対派になり、2003年からはっきりと反対しているのだから意味がない」と主張した。イラン核合意については破棄を「私の最優先事項」と訴えている。サウジアラビアについては「守りたいが、彼らはいくら負担してくれるんだ?」と発言した。エジプトについては、「親イスラエルだったホスニ・ムバラク政権を倒してムスリム同胞団を助けた」とオバマの外交政策を批判している。イスラエルを「アメリカの最も信頼できる友」としており、「我々は100%、イスラエルのために戦う。1000%戦う。永遠に戦う」や「イスラエルはユダヤ人の国家であり、永遠にユダヤ人国家として存在することをパレスチナは受け入れなければならない」などと表明するなど、明確にイスラエル寄りの姿勢を示している。イスラエル首相のベンヤミン・ネタニヤフを評価しており、2013年には再選キャンペーンにも「本当に偉大な首相だ」と支持する36秒の応援メッセージを寄せた。2004年にニューヨーク五番街で行われたイスラエルを応援するパレードでグランドマーシャルを務めたり、「Jewish Voice」というメディアから、ユダヤ人の孫の祖父であることをどう感じるかと聞かれて、「私はユダヤ人の孫だけでなくユダヤの娘(イヴァンカ)もいて、とても光栄に思います」と答えるなど、ユダヤ人コミュニティとの繋がりも深い。2016年7月に行われた共和党大会では、採択された政策綱領で同盟国イスラエルとの関係強化が掲げられ、パレスチナに言及した二国家解決案の削除などがされたことから「史上最も親イスラエル的な綱領」と称賛した。ただし、ネタニヤフ首相も、イスラム教徒を入国禁止にするというトランプの発言に関しては、発言の数時間後には「イスラエルはあらゆる宗教を尊重する」と表明するなど距離を置いている。同発言については、ルーベン・リブリン大統領も「我々はイスラムと戦争していない」と過激思想とイスラム教そのものとの区別を強調して批判した。このためか、トランプは予定していたイスラエル訪問を「彼(ネタニヤフ)は会うのを楽しみにしているとか言ってるが、余計なプレッシャーをかけたくないので大統領になってからする」と延期した。2016年9月25日、ネタニヤフ首相との会談を果たし、イラン核合意やイスラエルへの軍事支援を話し合った他、エルサレムをイスラエルの首都として承認することやパレスチナにイスラエルをユダヤ人国家として受け入れさせることで一致した。アジア太平洋での海洋安全保障については、2015年9月3日にラジオで司会者から「中国が日本やフィリピンの船を沈めたら、どう対応するか」と聞かれたときは、「相手に考えを知られたくないから答えない」「『これをする』『ここを攻撃する』と言ってしまうのがオバマ大統領の問題。」と明言しなかった。また、「中国の行動をきっかけに米国が第三次世界大戦を始めるとは考えない」「中国をよく理解している」「中国とは良いビジネスを重ねてきた」として「米国は中国に対して貿易上の影響力を持っている。圧力をかけて譲歩を引き出すことができる」とし、尖閣諸島を中国が占領した場合も「答えたくない」としている。また、2016年2月25日テキサス州でのテレビ討論会では「日本、韓国、ドイツ、など全ての同盟国を守ることはできない」とし「もっとお金を払わせたいんだ」と、在日・在韓米軍の駐留費用の負担増を求める考えを示した。3月10日フロリダ州では、社会保障の財源について司会者から聞かれると、「狂気じみた北朝鮮が何かするたびに米国は艦船を派遣するが、事実上、米国が得るものは何もない」と話し、アジア地域を含む在外米軍の駐留経費を削減する可能性に言及した。3月21日、ワシントン・ポストによるインタビューにおいて、人件費を除いた日韓の米軍駐留経費のうち、50%を日韓が負担していることを指摘された際、「50%? なぜ100%ではないのか?」と答え、海外に基地を有することで米国は利益を得ているかと問われた際には、「個人的にはそう思わない」「米国はかつての地位にはないと思う。米国は大変強く、大変豊かな国だったと思うが、今は貧しい」とした上で、それにも関わらず巨額の予算を自国のためではなく外国の防衛のために投じていると述べた。3月26日、ニューヨーク・タイムズのインタビューでは、記者が「日本は世界のどの国よりも多額の駐留支援金を払っている」と指摘すると、「払っているが、依然我々が負っているコストより遥かに少ない」と指摘し、駐留経費の負担を日韓が大幅に増額しないのであれば「喜んでそうするわけではないが」、在日・在韓米軍を撤退させるつもりがあると答えた。更に、NATOや日米等の防衛条約について「非常に不公平」であるとして、再交渉する意向を表明した。また「我々がこのまま弱体化を続けるなら、私が議論するかどうかとは無関係に、日韓は核兵器の保有を望むようになるだろう」「日本が核兵器を保有することはそんなに悪いことではない」と述べると共に、記者の「(北朝鮮が何をしでかすかわからないから)日本が米国に頼るばかりではいられなくなり、自分たち自身の核兵器を必要とするかもしれない?」との発言に対しては「特に北朝鮮の脅威に対しては本当にその通りだと思っている。北は中国とイラン以外には誰に対しても攻撃的で、特に日本には攻撃的だから。」と答え、日韓の核武装に反対しない考えを示唆した中国・日本に対しては、大統領選出馬表明会見の際にも「中国、メキシコ、日本、その他多くの場所から、仕事を取り返す。私は我々の仕事を取り返し、我々にお金を取り返す」("I’ll bring back our jobs from China, from Mexico, from Japan, from so many places. I’ll bring back our jobs, and I’ll bring back our money.")と言及がある。この会見では、特に中国への対抗姿勢を鮮明にしており、「私は中国のことは大好きです。中国から世界で最大の銀行(中国工商銀行)がやってきたが、米国本部がどこにあるか知っていますか?このビルの中ですよ。トランプ・タワーです。だから中国は好きですよ。」「みんなは私に中国が嫌いなんですかと聞きます。違います、私は彼らが大好きです("oh no. I love them")。だが彼らの指導者たちは我々の指導者たちよりも遥かに―うんざりするぐらい―上手くやっている。彼らはあらゆるものを作り変えている。彼らは我々を殺そうとしてるが、私は彼らを撃退する( "China in a trade deal? They kill us. I beat China all the time. All the time.")と発言している。一方で、2016年7月29日の演説では「中国は偉大だ。中国が好きだ。われわれは中国とビジネスをするべきだ。もっとうまくやっていけるはずだ」と発言した。トランプの対中国姿勢を批判する者は、トランプが新ビル建設工事にあたって中国人投資家へ出資を募り、彼らに向けて迅速にビザが発行される政府プログラムの利用を勧めていたことを取り上げ「安全保障を損ないかねない」と批判したり、トランプブランドの商品の産地がメイド・イン・チャイナやメイド・イン・メキシコであることを問題視し「全製品をアメリカで生産せよ」と非難するなどしている。これに対しトランプは、中国やメキシコの通貨が安くなっているためにアメリカブランドがアメリカで生産できなくなってしまっているのだとコメントした。日本については貿易上のライバル国と見た発言が多い。1990年には米雑誌記者のインタビューに答えて「まず日本はアメリカに商品を売りにきて我々のお金を残らず日本に持っていく。次に、そのお金を返しに戻ってきてマンハッタン中の不動産を買いまくる。というわけで、両方ともこちらの負けだ。」と論評。米国の有名な不動産を日本企業が買収していることについて感想を求められると、日本による爆買いでマンハッタンごと買い占められる、という危機感を示し「自分はそのことの最大の受益者の1人だから文句さえ言うべきではないのかもしれない。所有する資産を売るように望まれたら大はしゃぎするかもしれない」とした上で、「いらだつ」と拒否感を示していた。2015年の出馬会見では、「彼ら(日本)は、百万台以上の日本車を送ってくるが、我々はどうだ?最後にシボレーを東京で見たのはいつだ?存在しませんよ。彼らは我々をいつも打ち負かしてきた」と発言。為替政策について批判しており、たびたび「日本の度重なる円安誘導のせいで、友達は高いキャタピラーではなく、コマツのトラクターを購入した」と発言している。日米安保条約についても、アメリカ防衛の義務を日本が負っておらずアメリカが日本を防衛する義務を負っていることに不満があると見られる。1990年には「日本は石油の7割近くを湾岸地域に依存しているが、その活動は米軍が守っている。日本は米軍に守られて石油を持ち帰ってアメリカの自動車メーカーを叩きのめしている」「日本の優れた技術者はビデオデッキや車を作り、アメリカの優れた技術者はミサイルを作って日本を守っている。日本にコストを弁償させるべきじゃないか」と発言。大統領選挙出馬後には、との発言が伝えられている。中米からの不法移民の取り締まりに積極的な姿勢を示している。シリア難民の受け入れにも反対している。アメリカ国内に住む不法移民について強制退去させると言っており、アメリカ生まれの不法移民の子供にアメリカの市民権が与えられるという規定を廃止するとも述べた。1100万人に上る不法移民を退去させることは莫大な費用が掛かるし、差別的であると批判を受けながらも、退去させることは実現可能で人道的だとの考えを表明している。大統領選の出馬会見でも、メキシコからやってくる不法入国者たちが麻薬と犯罪を持ち込んでいるとの見解を述べ、メキシコとの国境沿いに「万里の長城」の様な国境の壁を造り、(注・CNNの試算では数十億ドルになるという)その建設費をメキシコに払わせると発言した。国境線に壁が必要だという主張についてメキシコ大統領報道官のエドゥアルド・サンチェスはブルームバーグの電話インタビューで「それはもちろん間違っている」「そういう考えはメキシコが果たしている役割をものすごく無視していて、そんなことを主張する候補者の無責任さを示すものだ」とコメントしており、その費用をメキシコに負わせるという発言に対しても「トランプの発言には米国の現実についての知識の巨大な欠如が反映されている」「アメリカにいるメキシコ人は熱意を持って働いている。彼らは仕事をよくやっている」として、負担に応じない方針を示しているが、トランプは現在まで撤回していない。イスラム教徒について一部のセキュリティ会社が発表した調査結果(アメリカ人を攻撃することをジハードの一部として正当化できると回答した割合が25%に上る)などを引用し、「ムスリムのアメリカへの憎しみは我々の理解を超えている」と何度も主張しており、ムスリム系夫妻が14人を銃撃し殺害する事件が起きると、イスラム教徒の入国を禁止するように提案したり、一部のモスクを閉鎖させてムスリムを監視すべきと提案している。トランプは、死刑を支持する死刑制度存続派である。以下の事件に関する言動では抗議デモも受けた。1989年4月19日、夜のセントラル・パークで、10代のストリートギャングが人々を襲った。夜9時ころから30人以上の黒人やヒスパニックの少年たちがパークの来園者を襲い始めた。襲撃者たちはタクシーを石で破壊し、サイクリングコースで数台の自転車を襲った。人々が逃げ出すと歩行中の男性に襲いかかり、金品を奪って意識不明になるまで殴った。通りがかった教師はひどく殴打され、何度も蹴られた。ランニングコースにいた2人の男性も意識を失うまで鉄パイプと棍棒で殴られた。駆けつけた警官は、血の海だったと証言した。被害者たちは意識が戻ると、4、5人の黒人の若者に襲われたと証言した。通報を受けて急行したニューヨーク市警は、少年たちを逮捕しながらパーク内の見回りを始めた。同じ頃、パーク内のランニングコースでも、ジョギング中の28歳の白人女性Aが何者かに襲われてレイプされ、肛門を犯されるなどの暴行を受けた。女性は発見時、縛り上げられ、口枷をされ、裸で、血液の75%を失う深刻な頭部外傷を負い、血まみれで泥の中に埋もれていた。女性は奇跡的に生きていたが、12日間昏睡状態にあり、深刻な障害が残った。Aが発見される前、パーク内を見回っているパトカーの車内でリヤシートに座っていた少年が、出し抜けに「俺は殺人(murder)はしていない」と言い出した。「だが誰がやったか知ってる。あいつら2人だ」と2人の名前をあげた。その隣に座っている少年も同調して「あいつがやった」と繰り返した。Aが20日未明に発見されると、警察は逮捕した少年たちから14歳から16歳の黒人4人とヒスパニック1人の計5人を、Aへの暴行、強姦、殺人未遂の被疑者とした。5人ともパークでの襲撃に参加しており、うち2人は前述のパトカーで仲間から犯人と名指しされた少年だった。5人は通行人を襲ったことは認めたものの強姦については否認し、目撃しただけで関与はしていないと供述した。5人の一人は「女を犯していた1人はフードを被ったプエルトリコ系(ヒスパニック)の少年だった」と供述し、一人は「レイプはしていない。俺は胸を触っただけだ」と供述した。メディアがこの事件を報じると、トランプは「犯人たちの死刑」と「ニューヨークでの死刑の復活」を求め、8万5000ドルを投じて新聞4紙に「死刑を取り戻せ!」という全面広告を掲載した。また当時のエドワード・コッチ市長が「憎しみや恨みを私たちの心から取り去らないといけません」と発言したことにも反論し「私はそうは思わない。私はこれらの強盗・殺人犯たちを憎しみたい。犯人たちが苦しむことを望む。社会を攻撃する者たちには、攻撃を始める時が人権の終わる時だと教えるべきだ。」と主張した。5人側を防御する弁護士は、この意見広告について「5人を公然と侮辱している」と抗議した。ニューヨーク市警は5人に苛烈な取り調べを加え、Aへの暴行も自白させた(後に虚偽の自白と判明する)。陪審員による裁判は少年たちに懲役6年から13年を宣告した。5人は二審でも有罪になり服役した。しかし2002年、この5人のぬれぎぬを晴らす出来事がおきた。連続強姦や殺人罪で服役していたヒスパニックの男性B(5人とは別人)が司法取引で強姦罪の免責と引き換えに、Aに乱暴した真犯人は自分だと告白した。Bの告白には信ぴょう性があり、DNA鑑定によっても裏付けられ、さらにBは1人でレイプしたと証言したため、5人の元少年たちは無実だったことが明らかになった。5人の元少年たちは釈放されるとトランプに謝罪を求めた。元少年たちの弁護士は「ドナルド・トランプは社会に対して、また若者たち(被告)とその家族に対して、本当の謝罪をするべきだ」とコメントした。トランプは「謝罪しない。彼らは刑事に自白した。後になってからやっていないと言い出したが信じない」と拒否した。人権団体はデモ集会を行って、参加者たちはトランプ・タワーの前で「トランプのとんま!(Trump is a chump!)」「人種差別主義者」と声をあげた。5人の元少年たちは人種差別、悪意訴追、精神的苦痛を理由としてニューヨーク市に2500万ドルの賠償を求めて訴えた。市側は、元少年たちを起訴に持ち込んだことには相当な理由があったとして応じず、市側の法律家も自分たちが勝つと感じていた。しかし裁判は10年間に及び、2013年にビル・デブラシオが「私が市長になればこの問題を解決する」と宣言し、新市長に就任すると、2014年5月に、元少年たちに解決金として4100万ドル(約46億円)を支払う決定をした。トランプはこの決着を批判し「これは恥だ」「彼ら(ニューヨーク市を訴えた5人)は天使のような人間ではない」「4000万ドルはニューヨーク市の納税者にとっては大金だ。この受け取り手は大声で笑っているに決まっている」「決着はしたが潔白という意味ではない」「この司法制度は問題だらけで、この問題に費やされた時間とエネルギーはとんでもない」などと発言した。 無実が証明された5人の少年の内の1人は「トランプはあいかわらず憎しみに満ちた人間だ。トランプが大統領になることなど想像も出来ない」とコメントした。なお5人の元少年たちはニューヨーク市から4100万ドル(46億円)を受け取るとニューヨーク州に対しても5200万ドル(約58億円)を求めて2014年12月に提訴している。2014年にニューヨークの路上で、違法タバコを所持していた黒人男性が、彼を販売容疑で逮捕しようとした警官たちにねじ伏せられて窒息死する事件が起きた。この黒人男性は1980年以来、重窃盗罪や暴行、公務執行妨害、タバコの違法販売など、軽微な罪も含めて数多くの逮捕歴があり、事件当時は3件の違反(無免許運転、マリファナ所持、身分詐称)で逮捕されており、2000ドルを払って仮釈放されていた。警官たちは男性を囲むと、1人の白人警官が男性の後ろから男性の右腕をつかみ、続けて男性の首に腕を回して絞めあげ、男性を路面に引き倒した。この警官は男性を腹ばいに倒し、その頭を路面におしつけるまでの約15秒間にわたって、男性の首を絞め続けた。男性がうつ伏せに転倒する際に「息ができない(I can't breath)」と絞りだすように言うと、警官の腕は声を出せる程度に緩んだ。男性は首に腕をまわされて抑えこまれた状態で「息ができない」と繰り返し訴えつづけたが、警官たちは彼にうつ伏せの姿勢を取らせ続けた。男性が意識を失うと警官たちは彼を解放して仰向けに寝かせ、7分後に救急車が到着したが、男性は1時間後に病院で死亡した。背後から首を絞めた白人警官は前年(13年)にも黒人容疑者の服を脱がせて所持品検査を行ったことで行政訴訟を起こされていた。現場にいた黒人の女性巡査部長は「犯人は横たわっている時は深刻な状態には見えなかったし、それ以上悪くなるようにも見えなかった」と証言した。男性は体重150kgを超える肥満体で心臓疾患と糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、重度の喘息など多数の疾患を患っており、男性の死因については、ニューヨーク市の検死官が「首を絞められたことと胸部が圧迫されたこと、うつ伏せ姿勢による窒息」「他者の意図的な行為による死」と断定した一方で、ニューヨーク市警の労働組合は「男性は意識を失っていたが救急車が到着するまで呼吸をしており、死亡は元々の健康状態の極端な悪さによるもの」と主張した。白人警官は殺人罪で起訴されたが、大陪審は不起訴とした。リベラル派市民や黒人を中心に人種差別との声が沸き起こり、男性の遺族は警察を訴え、ニューヨーク市警は590万ドル(約6.6億円)を支払って和解した。この事件に関して「警官によって28時間ごとに1人の黒人が殺されている」「戦争のようだ」などと抗議運動をしていた『』が2015年11月、トランプの集会で抗議を行うと、トランプは批判を展開し「面倒を起こそうとしてるんだと思う」と述べた。また白人や警官によって殺される黒人よりも黒人によって殺される市民の方がはるかに多いとして画像をツイートしたが、この画像には信頼性がなく、非難を浴びた。トランプが引用した画像は、出典を「サンフランシスコ 犯罪統計局 2015年度データ」としているが、サンフランシスコ市は年次報告書の発行を2014年で終了しており、2015年の統計は公表されていなかった。また14年以前も、加害者・被害者の人種ごとの内訳は掲載していなかった。また各数字も、実在するFBIの14年度の全米統計データと見比べてあまりに差が大きく、信頼できないものと考えられた。実際のFBIの2014年度の全米統計では、①「黒人(B)が加害者になって、白人被害者(W)を殺害した数」は全殺人の15%である一方、②「白人(W)が加害者になって、黒人被害者(B)を殺害した件数」は7%である。ところがトランプが引用した画像は、15年のサンフランシスコについて①を81%、②を2%としていた。サンフランシスコ市警察の広報は新聞の取材に対して「(トランプがツイートした画像は)我々が公表したデータではない。どこから来た情報か分からない。」と答えた。自らを人工妊娠中絶反対派と位置づけており、原則として妊娠後期(米国では一般的に満20週以降)では中絶(abortion)を認めるべきではないとする。認めるべき場合としては、強姦被害による場合と、近親姦による場合、母体の健康に問題がある場合を挙げる。2016年3月、トークショーの司会者から、中絶手術を禁止した場合に違法な手術は罰するべきかと問われて、「there has to be some form of punishment (for the woman)((女性に対して)何らかの罰を設けるべきだろう)」と答えた。この発言に関して世界中のメディアがと報じ、中絶反対派からも激しい非難を受けた。日本のマスコミもと批判した。トランプはこの件については同日中に再説明し「もし議会が中絶を違法化し、あるいはいずれかの州が連邦法の下で禁止し、連邦裁判所がこの法律(中絶を禁じる法律)を合憲とする場合には、医師あるいはどんな人物であれ、この違法行為を妊婦に行った者(堕胎施術者)は、法的責任を問われる。この時、胎内の命を奪われた妊婦は被害者である。」として「私の立場はロナルド・レーガンと同じ立場で、例外を認めるプロライフだ。」とした。中絶を巡る問題に関しては、この件についての多数の報道があった後、有利とされていたウィスコンシン州で敗北したことで、フレームアップされたこの「発言」が、選挙戦に致命的なダメージを与えたという分析も出ている。ただトランプは、刑罰化を積極的に望む姿勢を示したわけではなかった。激しく非難された発言は、後期中絶の違法化を巡るやりとりの中での返答だが、トランプは司会者から「違法に堕胎するものが現れれば罰するのか?」と質問されて、そのたびに「これは非常に難しい問題なんだ」「他の候補者よりも緩やかな考えだ」「広い例外を認める禁止派(プロライフ)だ」と濁している。また、この返答を受けた司会者が「ではどのような刑を課すのか」などと矢継ぎ早に畳み掛けると、その際にもトランプは「分からない」と3度繰り返し「カトリックと同様の見地から対応するつもり」「これについては今後、決定する」と続けており、強固な考えを持っていないことも示唆している。なお、妊娠後期の胎児についての中絶の禁止自体は、共和党の候補者に共通する考えであり、米国外では日本などが採用している。しかし、日本の刑法で第212条から216条に規定されている堕胎罪の場合は、犯罪の主体が女性に限定されないため、批判されたトランプの当初の主張とは異なる。トランプは17年前には、中絶の問題は妊婦と担当医に委ねるべきと述べていた。現在「例外を認めるプロライフ」としていることについて、1999年の見解から立場を変えたことを批判しているマスコミもある。財政面では、社会保障のための積極財政政策を唱える。税制面では、法人税と個人の最高税率を引き下げて経済活動を促すと共に、年収5万ドル(約570万円)以下の夫婦世帯および年収2万5000ドル(約280万円)以下の単身者に対しては所得税を免除して国民の間の格差も是正するとしている。経済格差については過去に拡大を止めるために民主党のバーニー・サンダース上院議員と同じく富裕税を提唱したことがあり、政策スタンスはリベラルや民主党左派に近いともされる。また超高所得者、富裕層に対しては、ストックに対する懲罰的課税・富裕税を課し、ウォール街への規制を強化し、租税回避対策、インバージョン規制を行うなどとする。これらの政策は中流の保護と低所得者の保護、金融規制を含んでおり、共和党主流派の小さな政府・民営化・資産再配分の否定(自由主義・リバタリアニズム)と相容れないため、共和党や米財界から社会主義や隠れリベラルという批判を受けており、エスタブリッシュメント層からはポピュリズムや反市場・反企業と糾弾されている。グローバリズム拡散による単一市場に対しては否定的であり、保護貿易主義的とされる。TPPにも反対である。医療保険改革では、PPACA、通称オバマケアにたいして明確に廃止を主張していなかったため、テッド・クルーズ議員のスポークスマンは、「トランプの主張は馬鹿げている。他の大勢の社会主義者たちと同じように単一支払者制度(国民皆保険)を支持している。」と批判していた。現在は、トランプは自らのプランを明確には語っていないが、サンダースが訴える単一支払者制度ではないとたびたび表明しておりオバマケアへの反対を明言しているトランプ陣営のスポークスマンが、「ユニバーサルかつ、自由市場に基づいて選択の幅を提供する社会主義的ではない制度」を用意するとコメントする一方で、トランプは全ての人を被保険者とする保険を作るとして、共和党を「死にかけている人を助けるアイディアを嫌っている」と非難している。自己顕示欲が旺盛で、テレビや映画、さらにはセサミストリートのマペットやアニメーション「ザ・シンプソンズ」に至るまで、様々な媒体に様々な形で積極的に出演しており、この様な活動を
出典:wikipedia
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