初等代数学における二項定理(にこうていり、)または二項展開 ("binomial expansion") は二項式の冪の代数的な展開を記述するものである。定理によれば、冪 は の形の項の和に展開できる。ただし、冪指数 は を満たす非負整数で、各項の係数 は と に依存して決まる特定の正整数である。例えば特別の場合の二項定理は古代より知られていた。紀元前4世紀ギリシャの数学者エウクレイデスは冪指数 に対する特別の場合の二項定理に言及している。三次の場合の二項定理が6世紀のインドで知られていたことは証拠がある。そういった意味での二項定理は、二項係数の三角形パターンについて記述した11世紀アラビアの数学者の業績にも見つけることができる。アル゠カラジはまた、原始的な形の数学的帰納法をもちいて二項定理およびパスカルの三角形に関する数学的証明も与えている。ペルシアの詩人で数学者のオマール・カヤームは、その数学的業績のほとんどは失われてしまったが、恐らく高階の二項定理についてよく知っていた。低次の二項展開は13世紀中国の楊輝や朱世傑の数学的業績にもみられる。楊輝は遥か旧く11世紀のの書の方法に従った(それらもまた今日では失われてしまったが)。1544年には「二項係数」("binomial coefficient") の語を導入して、「パスカルの三角形」を通じて を で表すためにそれらをどのように使うのかを示した。ブレーズ・パスカルは、今日彼の名を冠して呼ばれる三角形を "Traité du triangle arithmétique" (1653) において包括的に研究したが、これら数の規則性はルネッサンス後期ヨーロッパの数学者たち(例えばシュティーフェル、タルタリア、シモン・ステヴィンなど)には既に知られていた。アイザック・ニュートンは任意の有理数冪に対して成り立つ一般化された二項定理を示したと考えられている。定理によれば、 の任意の冪をの形の和に展開することができる(冪指数が零となるときは対応する冪は に等しいものとし、その項の因子としてはしばしば省略する)。ここに は二項係数と呼ばれる特定の正整数である。この等式はしばしばあるいは二項(恒)等式とも呼ばれる。を用いればと書ける。最後の式はもともとの式における と との対称性と、定理の等式に現れる二項係数の列の対称性により、真ん中の式から得られる。二項公式の簡単版が に を代入して一変数化することで得られる。つまり、定理の主張を、多項式列 は二項型であると述べることもできる。が主張を満たすことは明らか。以下 は 以上の整数として に関する帰納法で示す。帰納法の仮定により、が成り立つから、分配法則によってとなり、を用いてが成り立つ。この式は多重添字記法を用いればとより簡潔に表される。複素数に対する二項定理とド・モアブルの定理を合わせれば、正弦函数および余弦函数の多倍角公式が得られる。ド・モアブルの公式によれば が成り立つから、二項定理を用いて右辺を展開して実部と虚部を比較すれば および に対する公式を得る。例えばから倍角公式を得る。同様にから三倍角公式を得る。一般にとなる。ネイピア数 を極限で定義するとき、二項定理を用いれば の級数表示を得る。特にであり、この和の第 -項は のとき後半の分数部分は に収束するからよって は級数としてと書ける。実際、上記の二項展開は に関して単調増大だから、単調収束定理により上記の無限級数は実際に に等しい。整数 に対する冪函数 の導函数を定義に基づいて求めるとき、二項冪 を展開しなければならない。二つの函数の積の高階導函数に対する公式を導くのに、二項定理が記号的に利用される。逆に の函数 に一般ライプニッツ則を適用すると二項定理が導かれる。実際 を両辺 で 回微分すれば、一般ライプニッツ則によりを得るから、両辺を で除して所期の式を得る。
出典:wikipedia
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