『∀ガンダム』(ターンエーガンダム、"Turn A Gundam")は、サンライズ製作のテレビアニメで、『ガンダムシリーズ』に属するロボットアニメ作品。1999年(平成11年)4月9日から2000年(平成12年)4月14日までフジテレビ系列(一部を除く)で全50話が放送された。略称は「∀」(ターンエー)。2002年にはアニメーション映画として『∀ガンダムI 地球光』と『∀ガンダムII 月光蝶』が2部作として劇場公開された。総監督にガンダムの生みの親である富野由悠季が就き、メカニックデザインに映画『ブレードランナー』『スタートレック』のシド・ミード、キャラクター原案にゲーム『ストリートファイター』などを手がけたカプコン(当時)の安田朗が参加した。音楽は富野の前作『ブレンパワード』から引き続いて菅野よう子が担当した。ミードの∀ガンダムのデザインは機械の合理性を強調したもので、従来のガンダムタイプとは大きく異なる外観を持つ。これは、放映当時から比較的不評であり、富野は書籍のインタビューなどで「僕がガンダムのメカ・ファンだったら『∀』は承認しない。そんなことはわかっている」「(当時)あれ以上のものを手に入れる事ができなかった」などと発言している。劇中でも∀ガンダムは「不細工だ」と言われるシーンがある。ガンダムシリーズで唯一、外国人デザイナーがメカニックデザインを務め、2013年放送の『ガンダムビルドファイターズ』まで唯一、女性の声優が男性の主人公を演じた作品である。また、ガンダムシリーズとしては珍しく、OP中にタイトルコールが流されている。『機動戦士ガンダム』誕生20周年記念作品として製作されたTVアニメシリーズであり、『機動戦士Vガンダム』以来5年ぶりにガンダムシリーズの生みの親である富野由悠季が総監督を務めた。サンライズ作品がフジテレビ系列で放送されるのは旧創映社時代に制作された『ラ・セーヌの星』以来24年ぶりだった。企画の時点でのタイトルは、『リング・オブ・ガンダム』であった。これは富野の、「『リング・オブ・イデオン』は無理だから、『リング・オブ・ガンダム』という名称でイデオンみたいな輪廻の物語をやりたい」という趣旨による。このタイトルは後に、ガンダム30周年記念として富野が制作したショートフィルム作品『リング・オブ・ガンダム』に用いられた。それまでのガンダム作品とは異なり、悲惨な戦場の描写は少なく、政治的な駆け引きのシーンが多い。また19世紀のヨーロッパ文明(産業技術は20世紀初頭のアメリカ合衆国)をモデルにした舞台を設定しており、牧歌的で穏やかな情景描写が多い。物語には『竹取物語』『とりかへばや物語』『猿の惑星(第1作目)』をベースにしている部分がある。これについて富野は「SF作品でありがちな“恣意的につくっていく社会構造”をルーズにすることができて、作品的に成功している」「人の動きが狭いところには落ちていなくて、いつもゆったりと風が吹いているようなところがある」と語る。月の女王ディアナ・ソレルが物語において重要な位置を占めている。他にも個性的な女性キャラクターが多数登場し、音楽は菅野よう子が担当するなど、「ガンダムシリーズではとくに女性的な作品」と言われることがある。メカデザインを担当したシド・ミードは世界的に高く評価されているデザイナーであるが、日本のアニメロボットをデザインした経験は乏しく、自分の描いたカイゼル髭のガンダムが日本で受け入れられるかどうか悩んでいた。そこで友人のデザイナーの村上克司に相談した。村上は「大丈夫、まったく問題ない。俺にもこういうのがある」と自分の作品集をミードに送った。そこには頬から巨大なトゲをはやした『ゴッドシグマ』が載っていた。これに勇気づけられてミードは主役メカ、∀ガンダムのデザインを決定した。∀ガンダムのデザインを見たバンダイの川口克己ははじめ違和感を覚えたものの、「Gガンの経験」(『機動武闘伝Gガンダム』はホビーショーで「ガンダムじゃない」と激しく批判されたが、夏頃には称賛されるようになった)から「ありかな」と考えた。さらに『新世紀エヴァンゲリオン』のヒット以来、バンダイ側はアニメ制作に干渉しなくなっており、∀ガンダムのデザインはバンダイ側からは特に反対されなかった(川口によるとこれは『ブレンパワード』や『ガサラキ』も同様だったという)。放送当時、プラモデルはあまり売れず、バンダイの関連商品売り上げは176億円と商業的人気は大きなものとはならなかった。これについて富野総監督ら製作スタッフたちは、「普通の人(=いわゆるオタクではない人)を相手にしているから」と語っている。ガンダムファンの間では、キャラクターデザインやメカニックデザインの特徴、なにより今までのシリーズとは一線を画した内容から好き嫌いの反応がはっきり分かれるとされる。自分の作品を褒めることの少ない富野ではあるが、本作品は褒めることが多い。なお、『月刊ニュータイプ』誌上で富野は、2005年に公開された『劇場版 機動戦士Ζガンダム』と同じく、20年後に『新訳劇場版 ∀ガンダム』を創りたいと述べた。なお、朴璐美(ロラン)と高橋理恵子(キエル/ディアナ)も、その時には同じ役で出たいとコメントしていた。「∀」という記号は、集合論や論理学で用いられる全称記号であり、「全ての〜」を意味する。「A(最初)に戻る」という意味からターンエーと読むこととした。つまり『∀ガンダム』には、『機動戦士ガンダム』を始めとした「宇宙世紀シリーズ」の歴史だけでなく、それぞれ独立した世界観を持つ「未来世紀」や「アフターコロニー」、「アフターウォー」といった富野が制作に携わっていない作品群の歴史全てを総括したいという思いが込められている。それゆえ、人類の幾多にも及ぶ宇宙戦争の歴史を「黒歴史」と総称し、「地球に住む人類と、宇宙に進出したコロニーや月に住む人類との幾多にも及ぶ戦争は、どういう結末を迎えたのか?」といった部分も作中で語られ、見方によっては、すべてのガンダム作品(『Gのレコンギスタ』は除く。詳細は後述)が最終的に行き着く、富野曰く「ガンダムの総決算」的作品となっている。なお、『∀ガンダム』の後年に発表された『SEED』シリーズの「コズミック・イラ」もサンライズ監修の漫画『∀ガンダム 月の風』(著者:安田朗)にて黒歴史に含まれるとされた。なお、本作の後年に制作された『機動戦士ガンダムSEED』の「コズミック・イラ」、『機動戦士ガンダム00』の「西暦」、『機動戦士ガンダムAGE』の「アドバンスド・ジェネレーション」、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の「ポスト・ディザスター」などの、本作の後年に発表された他のガンダムシリーズ作品も黒歴史に含まれるかについて、監督を務める富野由悠季は「(「∀」という記号には)“以後”ということも含めてあるので、『∀ガンダム』以降の作品についても認められるようになったわけです。『∀ガンダム』の時代に辿り着くまでには、あと100本の『ガンダム』を作っても余裕がある時間を作ってある」と語っており、他のガンダム作品を劇中のアニメ作品として扱い機動兵器としての「ガンダム」ではなく「ガンプラ(ガンダムプラモデル)」をテーマにした作品(『模型戦士ガンプラビルダーズ ビギニングG』や『ガンダムビルドファイターズ』など)を除いた、これから将来制作されるであろう新たな『ガンダムシリーズ』もすべて含めて、黒歴史の一部として包含されるものとして紹介されてきた。また同時に富野は「『∀ガンダム』以後のガンダム作品を描くとしたら、自分で作るつもりです。そうした設定があるために『∀ガンダム』において、ロランとディアナの物語は完結を迎えましたが、ガンダムについては触れていないんです。マウンテンサイクルという設定も“どこから何年後”という表現を避けるために考えたものなんですよ」とも述べている。また、本作の後に、同じく富野が制作した『ガンダム Gのレコンギスタ』の時系列は、『∀ガンダム』で描かれる「正暦(コレクト・センチュリー=C.C.)」よりも前の時代に位置すると公式関連書籍などで紹介されていた。だが後に、富野はトークショーにて『Gのレコンギスタ』は『∀ガンダム』から約500年後頃を想定して制作したと発言している。これは、これまで公式が公開してきた時系列の設定(『Gのレコンギスタ』⇒『∀ガンダム』)と異なる上、宇宙世紀を「約1000年前の“前世紀”」として扱う『Gのレコンギスタ』の設定と、宇宙世紀を「約1万年前の“太古”」として扱う『∀ガンダム』の設定とで矛盾が生じる。だが、この発言を受けるならば『Gのレコンギスタ』に関しては黒歴史に含まれないことになる。それと同時に、自身が単独でシリーズ全体の設定を決定する権限がないことにも触れ、「(公式が自身の見解と異なる時系列を発表していたことについて)それはそれでいいんです」「皆さんなりに“ガンダム全史”みたいなものを作っていたたければいい」と前置きしつつも「その時には『Gのレコンギスタ』の位置付けが、今言った所(『∀ガンダム』⇒『Gのレコンギスタ』)に置いていただけたら嬉しく思います」と述べている。これから、どちらがシリーズ全体の公式な設定となるかは現状は不明。この発言を受けて、聞き手を務めていたサンライズの小形尚弘プロデューサーは「色々と整理したいと思いますので、来場者の皆さんは今日聞いたことは一旦胸の内にしまって頂いて。次の何かの機会に、しれっとそうなってる可能性はありますので」と答えた。それ以前にも、富野は『∀ガンダム』と『Gのレコンギスタ』を比較して「『∀ガンダム』は「ガンダムの総決算」的作品であり、その“次”をみせる「脱ガンダム」には行っていなかった。だが、『Gのレコンギスタ』は「脱ガンダム」をすることができた」と述べており、「脱ガンダム」するという挑戦が許されるのは、世界中に自分しかいないとも発言しており、『Gのレコンギスタ』は例外的に黒歴史に含まれない作品になる可能性が生まれている。『月の民』(ムーンレィス)のロラン・セアックは、地球先行潜入員に選ばれ、フランとキースとともに地球に降下する。ハイム鉱山を目指す道すがらロランはうっかり川で溺れ、「成人式」の禊ぎのため川に居たハイム姉妹に助けられる。その姉・キエル・ハイムは月の女王ディアナに瓜二つであった。キエルの計らいでハイム鉱山に職を得たロランはその後ハイム家の運転手となり、フランとキースもそれぞれ新聞印刷所とパン屋の従業員としてノックスに暮らし始める。姉妹の妹・ソシエはどこか普通とは異なるロランに興味を抱き、なにかにつけ詮索する。その頃、イングレッサ領主・グエン・ラインフォードはムーンレィスによるアメリア大陸への入植要請に対応していた。彼らに脅威を感じたグエンは市民軍「ミリシャ」を増強し、飛行機などの兵器の生産を急がせていた。ロランがヴィシニティで暮らし始めて2年が経った夏至の日の夜のこと。ロランはソシエと共に「成人式」の祭りに参加していた。自分もヴィシニティの住人として認められたことに驚喜するロラン。一方、キエルはグエンの主催するノックスでの晩餐会に出席していた。そんなとき、突如として月の女王の軍・ディアナ・カウンターがノックスを襲撃する。先遣隊のポゥ・エイジはミリシャの戦闘機との交戦で禁じられていた大型ビームを放ち、街を破壊する。「ホワイトドール」の神像で儀式を行っていたロランとソシエは、攻撃に反応して突如動き出した「ホワイトドール」(∀ガンダム)に偶然乗り込み、ビームライフルで応戦する。それはディアナ・カウンターとミリシャ双方に衝撃をもたらした。グエンは地球にまだまだ機械人形(MS)が埋まっていると考え、技術者のシド・ムンザに発掘を命じる。自宅に戻ったロランとソシエは、ハイム家当主ディランが戦火に巻き込まれ亡くなったことを知らされる。ショックから寝込むソシエだったが、親友のメシェーに焚きつけられ、ミリシャに入隊。キエルも父の死の知らせでおかしくなってしまった母親に心を痛めていた。平和を願い、地球に帰化したいと考えていたロランたちは、ムーンレィスと地球人との間に戦争が起きることを恐れていた。技術的に大きく劣る地球側は、∀のパイロットとしてロランに期待を高めることとなる。そうした混沌とした情勢の中、月の女王・ディアナ・ソレルが地球に降臨する。ロランはディアナ・カウンターの親衛隊長ハリー・オードと共にディアナを迎える。威厳に満ちたディアナは相互に理解を深めるためパーティの開催を宣言。グエンの悪趣味な計らいで「MSホワイトドールの貴婦人パイロット・ローラ・ローラ」に仕立て上げられ女装させられたロランはディアナと謁見する。ロランはディアナの考えを知り、共に平和への道を模索することを決意する。一方、ディアナはキエルと出会い、互いに瓜二つであることに驚く。戯れに入れ替わった二人だが、キエルとなったディアナは地球に暮らす人々の実情を知り、ディアナとなったキエルはディアナの置かれた危うい立場を知る。そんな中でイングレッサが占領され、入れ替わりを戻す機会を失ったまま二人はそれぞれの立場で行動する。ディアナの真意を知るキエルは側近の求めに応じず、予定されていた「建国宣言」をとりやめ双方の和解を演説で訴えかける。相互に戦力を増強するミリシャとディアナ・カウンター。ソシエとメシェーはシドの発掘したMSカプルの専属パイロットとなる。ムーンレィスにもミリシャに協力するホレスやキースのような者も現れる。また、ミリシャには隣領ボルジャーノも参戦。彼らはかつてザクと呼ばれていたMSをボルジャーノンとして部隊運用していた。その隊長・ギャバンは女だてらにMSを乗りこなすソシエに惚れ込み求婚する。一方、ディアナ・カウンターには補充兵としてディアナにより禁固刑に処されていたコレン・ナンダーが加わる。コレンはロランの駆る「ホワイトドール」をガンダムと呼び執拗につけ狙う。コレンとの戦いの最中にキエルだと思っていた人物がディアナ本人であることを知ったロランは苦悩し、激しく自分を責める。また、ムーンレィスの地球先行潜入員の末裔であるレット隊がディアナ・カウンターに合流する。地上での戦いを熟知した彼らが参戦したことにより、ロランたちは更に苦しい戦いを余儀なくされる。やがてディアナ・カウンター内部に潜り込んだ反ディアナを掲げるアグリッパ派が暗躍を始める。月の執政官・アグリッパ・メンテナーはディアナが不在のうちに月の支配権を掌握。工作員のテテスやミドガルドを差し向けて、ディアナの命を狙う。キエルとディアナが入れ替わった事実を後に知ったハリーは暗殺の危機に直面するキエルを守るうち、互いに恋心を抱くようになる。新兵器を求めてマウンテンサイクルの発掘を続ける双方は禁断の兵器である「核ミサイル」を発掘してしまう。その危険性を知るゼノアは双方に注意を呼びかけるが聞き入れられず、戦闘の最中に核爆発に巻き込まれたギャバンは戦死。「真夜中の夜明け」にロランたちは戦慄する。ゼノアは残る核ミサイルをその危険性を十分に理解するロランに託した。ミドガルドに拉致されたキエルはディアナとして月に連行される。その行方を追うため宇宙に飛び立ったロランたちはレット隊を味方に引き入れ、その行く手を阻む月の武人・ギム・ギンガナムと対決する。封印された「闘争本能」に目覚めたギンガナムは月のマウンテンサイクルでターンXを発掘。暴走して好戦的になるギンガナムに穏健主義者のアグリッパも手を焼くようになる。月に降り立ったロランたちはアグリッパの管理する「冬の宮殿」にて黒歴史の真実を目の当たりにし、∀が月光蝶により地球文明を滅ぼしたことを知る。アグリッパを言葉巧みに籠絡して器量を見せたリリ・ボルジャーノは和平を願うディアナへの協力を約束。ディアナ・カウンターと各領ミリシャの全面衝突は避けられたかに思えたが、グエンは野心に取り憑かれ、密かにギンガナムと手を握り、地球の支配権を握ろうと画策。ロランをも抱き込もうとするグエンだったがロランはグエンと袂を分かつ。再び地球に舞台を移し、ディアナが不在となったディアナ・カウンターはギンガナム部隊とイングレッサ・ミリシャの強襲により大混乱に陥る。ロランはリリの働きかけで同盟を結成した各領ミリシャと共に彼らと対決。またディアナが戻ったことでディアナ・カウンターも体勢を立て直す。だが、ギンガナムの駆るターンXの猛威に苦戦を強いられる。ロランは「戦いを止めるための戦い」に身を投じ、ギンガナムとの一騎討ちに臨む。ロランがギンガナムに勝利したことで戦いは終結。∀とターンXは激しい戦いの後に自らが作り出した繭の中に埋もれた。ディアナ・カウンターとミリシャとの間に和平が結ばれ、地球への帰還を望む人々が帰化する一方でディアナは隠棲を決意する。出会いの春が過ぎ、戦いの夏が終わり、和解の秋も去り、別れの冬が来た。降りしきる雪の中、人々はそれぞれの道を歩みだす。キエルは新たな「ディアナ・ソレル」としてハリーと共に月に戻ることになり、夢破れたグエンは海の彼方へと去る。そしてロランは涙ながらに止めるソシエを振り切り、ディアナとの穏やかな生活を選ぶのだった。キングレコードより発売関西テレビ、鹿児島テレビ以外は1999年9月時点での放送時間である。純然たる再放送や系列局不在地域での他系列局放送を除き、ガンダムのテレビシリーズがテレビ朝日系列以外で放送されるのは初となる。2007年にはテレビシリーズを『DVDメモリアルボックス』として『I』『II』の2セットに分けて発売。2014年9月24日に『Blu-ray BOX』の『I』が、同年12月25日に『II』がそれぞれ発売。2002年2月9日より全国一斉公開された劇場版。TVシリーズの全50話に新作カットを加え、全2部作のアニメーション映画として再編集。日本映画界では初の試みとなる、2部作を日替わりで上映する「サイマル・ロードショー」方式がとられた。キャッチコピーは「人は癒され、ガンダムを呼ぶ!」。
出典:wikipedia
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