玄米(げんまい)とは、稲の果実である籾(もみ)から籾殻(もみがら)を除去した状態で、また精白されていない状態の米である。玄米の「玄」は、「暗い」または「色が濃い」という意味で、精白されていないのでベージュ色または淡褐色をしている米である。精白とは、玄米から糠(ぬか)を取り除き白米にすることであり、精白されていない玄米は、白米よりビタミン・ミネラル・食物繊維を豊富に含むため、現在は健康食品として用いられている。普通の炊飯器で炊くと、消化が悪く、食感も悪くてボソボソになる。玄米は精白によって白米と米糠に分けてそれぞれ販売され、米穀店の店頭に玄米が置かれることはまれだった。第二次世界大戦前から健康食として玄米食の支持者がいたが、近年は玄米がふっくらと炊ける圧力鍋が普及したことで、味も好まれるようになってきた。現在では、玄米が選べる外食店もあり、健康のためでなく味で玄米食をしている人も多い。玄米の炊飯に対応した炊飯器も市販されている。玄米はビタミン・ミネラル・食物繊維などを豊富に含むが、とりわけビタミンBが白米よりも多く含まれている。現代のようにおかずをふんだんに摂取する食生活では、栄養過多という問題はあるものの肉や緑黄色野菜からビタミンを十分に摂取できるが、かつて米飯・漬物・味噌汁だけの食事が中心の頃、白米食はビタミンB不足が問題となった。なお江戸時代以前は玄米を食べていたという通説に対して、それを肯定する史料はほとんどない。そもそも現代における「玄米」を作り出すのは精製技術の未熟さゆえに困難であった。そのような中で農民の多くは精白度が低い米(今日における半搗き米などぬか層を完全に除去していないもの)を利用し、さらには雑穀や芋や野菜を混ぜたかて飯や麦飯を食べていたため、少なくとも脚気が蔓延する環境にはなかった。しかしこれらを炊くには白米よりも時間がかかり多くの燃料を必要とするため、薪を買わなければならない都市生活者にとっては、ぬか層を完全に取り去った白米の方が都合が良く食味が喜ばれたことから、江戸時代には江戸や大坂などの大都市では白米飯を常食する習慣が普及し、脚気が流行し「江戸患い」「大坂腫れ」と呼ばれた。明治時代になり、江戸(東京)や大阪ばかりでなく、地方の都市部の富裕層や俸給生活者にも白米食の習慣が広がるに至って、脚気は全国的な問題となり昭和初期まで続いた。明治時代には、石塚左玄によって提唱された玄米菜食による食養が実践され、食養会という食養実践団体ができた。これはマクロビオティックとして継承され欧米でも普及し、アメリカでは医療の歴史として国営のスミソニアン博物館に収録されることとなった。スミソニアン博物館には玄米も資料として収録されている。日本綜合医学会にも玄米菜食による食事療法が受け継がれている。昭和初期以降、医師の二木謙三が玄米を完全食と呼び、健康のために玄米食を普及することに努めた。1943年(昭和18年)頃には大日本玄米連盟があり、1万人以上が加盟していた。1942年(昭和17年)以降、大政翼賛会で国民を玄米に復帰させるとして議題となり、時の首相であった東條英機が玄米を常食していることも伝わり世論は玄米に傾いたが、川島四郎ら軍の栄養学者は、玄米の消化が白米に劣ること、炊飯に要する燃料や調理時間が増加することを指摘して、玄米食に強く反対した。これに対し伝染病研究所の研究者らが玄米食について研究し、当時の「医界週報」での報告には、炊飯に要する燃料は増加したが、玄米食によって小食になった上、下痢も減り、仕事の耐久力が上がり、医療費は1/17に減った、と伝えたので、栄養学者も認めざるを得なくなったとある。宮沢賢治の『雨ニモマケズ』には、「一日に玄米四合と味噌と少しの野菜を食べ…… ほめられもせず 苦にもされず そういうものに私はなりたい」とある。ただし富裕層に位置していた宮沢自身が少年期にそのような生活をしていたことは無く、むしろ独居自炊時代に行っていた粗食が寿命を縮めたという説さえある。重労働をこなしていた時代には米を大量に食べてカロリー源とするのみならず、タンパク質も米から摂取していた。比率は多くはないものの人間にとっての必須アミノ酸がバランス良く含まれ、米はタンパク質の補給源としても秀れた食品であり、米のみで人体を維持するに十分なカロリーとタンパク質は得られるのである。このため日本人の米に対する思い入れは強く、すぐれた主食とされ、さらには食料を超えた神聖な存在とされていたが、実際には多くの日本人はこれを常食することはできず、米食悲願民族とすら評された。マクロビオティックでは玄米は完全食といわれ、玄米(と塩)だけで必要な栄養をまかなうことも不可能ではないと主張される。しかし現代栄養学の視点では、玄米に偏重した食は栄養失調の危険が伴うため推奨されない。1990年(平成2年)前後から、全粒穀物が健康に貢献するという科学的な根拠が蓄積されてきたため、各国の食生活指針で、健康の維持のために精白されていない玄米のような全粒穀物が推奨されるようになった。日本では現在のところこのような推奨はない。「厚生省多目的コホート」研究では14万人規模の追跡調査がなされているが、白米と玄米は区別されていない。渡邊昌によれば、玄米が健康に良いということは証明されていることであり、白米と玄米の違いに着目した調査が実施される予定であるという。玄米を炊いたり粥にしたりすると、胚乳は膨らみ、糠層は膨らまないので破れる。圧力釜で炊けば、糠層も消化の良い分子になり、食感も良く、日本人好みの粘りがあるように炊ける。栄養成分も味の成分も多く味わいが豊かで、食感も糠層がプチプチとした歯ざわりを持ち、白米の飯には無いおいしさがある。砂糖における黒砂糖と上白糖の違いと同様である。圧力釜が出現する前と同じく一晩水に浸けて吸水させた後、普通の炊飯器で炊くことも可能であるが、普通の炊飯器で炊いた場合にはぼそぼそとした硬い食感になりやすい。トウモロコシの穀粒の皮と同様に糠層の消化が悪く、吸水時間が短ければ食感も悪くぼそぼそになるが、12時間以上浸けて、分量の1.5倍ぐらいの水で炊くと普通に炊けるようになる。発芽玄米であれば、玄米炊きに対応していない炊飯器でもおいしく炊ける。最近の炊飯器は様々な炊飯メニューを持っており、メニューを選べば玄米炊きも簡単に選べるので白米を炊くように玄米を炊くことができる。白米に比べれば食物繊維が多いため消化が悪いが、難消化性デキストリンによって消化吸収を抑えることで、トクホに指定された食品がブームになっている昨今、デメリットではない。レトルトの粥や、シリアル食品などにも加工される。発芽玄米では、白米と同様、無菌パックのご飯も市販されている。近年では、玄米を用いた健康飲料である「ライスドリーム」がアメリカで生み出されている。農薬が糠の部分に残留する可能性が白米よりも高いとして、玄米食には無農薬、または減農薬栽培の米が勧められることがある。ただし、残留農薬検査は玄米を対象として行われており、農薬の残留は通常、定められた使用方法を遵守する限り問題とされない。また重金属が糠に残りやすいと言われることもある。玄米段階でカドミウム等の重金属の残留が確認された米は、工業用糊の原料に売却されるなどされるが、重金属は白米部分にも残留し、精米による減少効果は少ない。また農産物の中ではコメにはヒ素の含有量が多く、わけても精米に比べて玄米の方が多いが、通常の食品からのヒ素摂取が健康に影響を及ぼしたと認められる事例は日本においてはないとされている。その一方、米糠の繊維はキレート作用が強いフィチン酸を多く含み、ダイオキシン類を含む農薬や重金属などの排泄作用が強く、カネミ油症事件でも有効な治療法の一つとして考えられている。しかし、フィチン酸はミネラルと結合してフィチン酸塩になるため、最近の研究ではミネラルが著しく少ない食事においてフィチン酸が大量の場合にミネラルの吸収を阻害することが分かってきた。そのため玄米を多量に取ると体内にミネラルが吸収されず、ミネラル不足を起こすことがある。この作用は必須ミネラルの摂取量が著しく低い開発途上国の子供などには好ましくないが、通常は問題ない。また、大腸癌だけでなく、肺癌、乳癌などの多くの癌を抑制する効果のほか、食物繊維が多いことから糖尿病患者の糖・脂質代謝の正常化に効果があるとする報告がある。農産物検査法による公示の農産物規格規程で、籾の混入が、玄米は一等で0.3%以下と定められており、米穀検査では茶碗一杯3000粒として9粒まで許容される。なお、白米は、0.0%と定められている(つまり最大で0.04%であり、茶碗一杯3000粒として1.2粒)。この規格は、白米の原料としてのものといえ、玄米食用としての公的規格や業界団体の規格は無いので、玄米食用として販売されているもの以外は、籾の混入が多い。標準の30kg袋入りは、玄米食用と断りのない限り、白米の原料である。少量で販売されているものは、玄米食用と家庭用精米機による自宅精米用がある。発芽玄米は玄米食用として販売される。米は、保存性から玄米か籾で貯蔵される。日本では玄米で貯蔵する。精白後の白米は、皮をはがれた状態であり、日数の経過と共に酸化等により劣化していくので、少しずつ購入する方が新鮮である。これに対し、発芽玄米でない普通の玄米は時間経過に対する劣化が少ない。玄米も白米も、低温貯蔵がより望ましい。害虫を防ぐには密閉容器が良い。白米を好む虫と玄米を好む虫は異なる。一般に玄米は、白米より大きな単位(30kgの紙袋が多い)で販売されているため、保存中に黒っぽい水玉模様のついた蛾やそのいもむしがわいて大騒ぎをすることがある。これはノシメマダラメイガという昆虫で、気持ちは良くないが、とくに有害でもないので、精米して食べればよい。ただ、東京以西の暖地では、梅雨時になれば必ず発生すると言ってもいいほどなので、時々天気の良い日に米びつと中身を陰干ししたり、米びつの中にたかのつめ(赤唐辛子の乾燥品)を入れておくと、発生を予防することができる。
出典:wikipedia
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