ショートリコイルとは、弾丸の発射時に発生する反動(作用・反作用)を利用した自動装填式銃器の作動方式(反動利用式、リコイルオペレーション)の一形態である。反動利用式の中で最も広く使用されている作動方式で、主に自動拳銃、機関銃等に採用されている。発射の際に銃身と遊底が固定されたまま、反動により薬莢の全長以下の短い距離を後退するためショートリコイルと称される。これに対し、ショートリコイル作動と同じく反動利用式だが、銃身、遊底が固定されたまま、薬莢の全長以上の長い距離を後退するロングリコイル作動方式も存在する。金属薬莢の実用化以降、さまざまな自動装填機構を持った銃器が考案されたが、最も初期に実用化されたものが、1884年にハイラム・マキシムが発明したマキシム機関銃である。マキシム機関銃はショートリコイル作動方式を採用し、遊底の閉鎖方式には1850年代から米国で普及したで使用されたトグル・ジョイント機構が用いられていた。一方、1893年にドイツで開発され世界初の市販自動拳銃とされるボーチャードピストルにも、トグルジョイント閉鎖機構を持ったショートリコイル作動方式が採用された。以後、閉鎖機構等の形態を変えながらショートリコイル作動方式は機関銃、自動拳銃へ採用されていった。しかし、ショートリコイル作動方式は銃身がレシーバー(機関部)に固定できない構造であるため、銃身が固定されている作動方式に比べると命中精度で劣り、また、銃身に大きな衝撃を加えると故障や暴発の原因となるため、精度が重視される上、銃身に銃剣を装着して白兵戦を行う必要のある歩兵用の小銃に採用された例は珍しく、フェドロフM1916やが数少ない採用例として知られている。第一次大戦、第二次大戦を経てショートリコイル作動方式は各種の改良、発展が遂げられ、ブローニングM2重機関銃、MG42機関銃、コルト・ガバメント、ワルサーP38、ブローニング・ハイパワー等の現代へ繋がる銃が生み出された。現在、閉鎖機構を持った自動拳銃では、小型軽量に設計できるショートリコイル作動方式が最も広く採用されている。他方、機関銃ではガス圧作動方式が一般的となり、ショートリコイル作動方式を採用した銃は、ブローニングM2重機関銃、MG3等少数派となった。また機関銃以外では、強力な弾薬の使用と軽量化の両立を目指したバレットM82等がショートリコイル作動方式を採用した例として知られている。銃弾が発射される際には、燃焼ガスの圧力が銃腔内の全方向へ掛り、弾丸を銃口側へ前進させる。また同じ圧力が薬莢にも掛り、遊底の砲底面を押して後退させようとする。この際、弾丸が銃口を離れる以前に遊底が後退し薬莢が薬室から抜け出てしまうと、銃腔内の高圧ガスが漏れ出し危険な状態となる。このため、銃腔内の圧力が安全域に下がるまでの間、遊底の後退を抑制する機構が自動装填式銃器には必要となる。ショートリコイル作動方式では発射の際に銃身と遊底を何らかの機構で閉鎖結合し、弾丸が銃口から出るまでの間、その状態を保持する機能を持つ。閉鎖機構の解除には反動(弾丸と燃焼ガスの前進移動・加速による反作用)が利用され、まず反動により銃身と遊底が閉鎖されたまま一定の距離を後退する。その後、弾丸が銃口を離れ、銃身が定位置まで後退した後にカム等の作動により遊底の閉鎖が解かれる(開鎖)。その後、開鎖された遊底は、開鎖されるまでの後退動作の慣性により、復座ばねを圧縮しながら後退し薬莢を排出、最後尾まで後退した後に圧縮した復座ばねの力により前進、次弾を弾倉から装填し再び銃身と遊底は閉鎖された状態へ復帰する。上記がショートリコイル作動方式の原理であり、銃身と遊底が閉鎖結合されたまま短距離を後退することが、ショートリコイルの語源となっている(short-recoil:短い 後座移動、反動距離)。。下図は、プロップアップ式閉鎖機構を持つフェドロフM1916のショートリコイル作動模式。上記5の動作後、遊底は後退を続け薬室から薬莢を完全に引き抜き、薬莢は排莢機構(エキストラクター、エジェクター)により排出される。その後、遊底は終止位置まで後退し圧縮された復座ばねの力により前進へ転じ、次の銃弾を弾倉から押し出す。押し出された銃弾は図Vの位置で後座したままの銃身薬室に装填され、遊底は銃身後部へ当たりロッキングブロックはレシーバー内突起により回転上昇、再び銃身と遊底は閉鎖結合される。さらに復座ばねの力により銃身と遊底は結合されたまま前進し、図Iの状態へ復帰する。ショートリコイル作動方式は他の作動機構に比べ下記の特徴を持つ。自動装填火器の黎明期となった19世紀末以降、様々な閉鎖機構を持つショートリコイル作動方式が考案されたが、その多くは淘汰され現在ではプロップ・アップ機構の系統とティルトバレル機構の系統が主流となった。下記はショートリコイル作動方式で採用された閉鎖機構の代表例。トグルジョイント式は、薬室の閉鎖及び開放を継手を持ったトグルの屈曲により行う。遊底と機関部が発射ガスの圧力により僅かに後退した後に慣性でトグルが持ち上がり薬室が開放される。マキシム機関銃、ボーチャードピストル、ルガー・パラベラムピストル等に採用されたが、閉鎖機構の強度不足、作動に必要なスペースが大きい等理由で以後の銃での採用例は少ない。プロップアップ式は、銃身と遊底の閉鎖結合を、銃身に装備された閂子(ロッキングブロック)と遊底に装備されたロッキングラグにより行う。ロッキングブロックが上下に作動し遊底の閉鎖および開放を行うことからプロップアップ (prop up) の名称がつけられた。モーゼルC96、フェドロフM1916や、ブローニングM2重機関銃、十四年式拳銃、ワルサーP38、ベレッタM92等に採用された。作動機構の小型化に限界があり部品点数も比較的多くなるため、現代での自動拳銃への採用例は少数である。ティルトバレル式は、銃身と遊底の閉鎖開放を銃身の上下動により行う。遊底の開放時に銃身が斜め下方へ傾く (tilt) ことからティルトバレル式と呼ばれる。また、開発者ジョン・ブローニングの名前からブローニング式とも呼ばれる。構造の簡略さと小型化が可能なことから、コルト・ガバメント、ブローニング・ハイパワー、SIG P220等、ショートリコイル作動の自動拳銃では現在まで最も多く採用されている。ティルトバレル機構を持つ代表的なM1911系拳銃では、銃身の薬室付近にロッキングラグを設け、スライド内側の溝と結合させる構造となっている。銃身と遊底が後退すると、銃身後端はバレルリンクの働きにより下方へ移動し、結合が解かれる。ジョン・ブローニングは後にM1911のリンクをカムに置き換え簡略、改良した閉鎖機構を持つブローニング・ハイパワーを開発しており、この形式を改良ブローニング式と呼ぶことがある。SIG P220は、銃身の薬室上部と排莢口とを嵌合させて閉鎖する機構を採用し、近年の改良ブローニング式では主流となっている。この形式は遊底内側に閉鎖機構の加工を必要とせず、製造が容易なため20世紀末から急速に普及した。ロータリーバレル式はロッキングラグを設けた銃身を螺旋状のカムで回転させ、遊底との結合、解除を行う。ロテイティングバレル式とも呼ばれる。閉鎖機構の強度を比較的高く設計でき、部品点数を減らせる等の利点はあるが、銃身の外周にロッキングラグを設け、回転させる構造のため遊底やレシーバーが大きくなる傾向にある。、、オブレゴン・ピストル等に採用された近年での採用例は、ステアーTMP/ブルッガー&トーメMP9マシンピストル、ベレッタM8000、ベレッタPx4、 ( GP6) 等、比較的少数である。ロータリーボルト式は、遊底の回転により、遊底のロッキングラグと銃身後端の閉鎖、開放を行う。遊底はレシーバー内のカムにより回転(ローテイティング:rotating)させられるためローテイティングボルト式とも呼ばれる。閉鎖機構の強度を高く設計しやすいため、ボルト・アクション方式やガス圧作動方式では一般的だが、ショートリコイル作動の銃器ではMG34、オートマグ、バレットM82等、少数の採用に止まる。ローラーロック式は、薬室左右付近に設けられたローラー状のロッキングブロックにより遊底の閉鎖を行う。閉鎖機構に比較的高い強度を持たせることができ、ローラーを使用することにより偏摩耗を防いでいる。MG42、MG3、Cz52等へ採用された。なお、MG42の簡略型の試作過程でローラー遅延式ブローバックが派生しており、ローラーロックと構造も似ているため混同されることがあるが、両者には下記のような違いがある。ローラーロック機構によって銃身と遊底が閉鎖結合されており、弾丸が銃口を離れるまで閉鎖結合は開放されない。銃身は遊底と閉鎖結合されたまま反動により後退する。遊底の後退はローラーと復座ばねによって抑制されているが、完全に結合した状態ではなく、発砲時には銃腔内の燃焼ガスの圧力により薬莢が押し出され、弾丸が銃腔内にある間に遊底が移動を開始する。銃身はレシーバーに固定されて動かない。ロングリコイルとは、主に散弾銃で使用される方式で、日本の散弾銃市場では銃身後退式と呼ばれる事もある。この方式で最も有名な物はジョン・ブローニングが1902年に開発し、その後1998年まで100年余りの期間製造が続けられ、戦前の日本では半自動式散弾銃の代名詞的な存在ともなったブローニング・オート5である。ロングリコイルでは撃発と同時に銃身と遊底が一体となって共に後退し、リコイルスプリングで銃身が先に元の位置へ押し戻される際に後退を続ける遊底から空薬莢が排出される。遊底の前進開始と同時に弾倉から新たな装弾が薬室に供給され、遊底が閉鎖される事で次弾装填が完了する。ロングリコイルはブローニング・オート5の登場以来、1963年のガス圧利用式のレミントンM1100登場まで、半自動式散弾銃の主力で有り続けた。日本でも日本猟銃精機がフジ・ダイナミックオートとしてこの方式に参入し、その他の競合他社(SKB工業、KFC川口屋林銃砲店、晃電社)もこの方式の半自動式散弾銃の製造販売を行っていた。ロングリコイルは機構がやや複雑になるが頑丈で信頼性の高い銃を製造できる反面、多種多様な装薬量のショットシェルを撃つ必要がある散弾銃においては、重装弾になるほど射手に掛かる反動が指数関数的に強くなり、極端な軽装弾や射手の肩付けが不十分で銃身に十分な反動が発生しなかった場合には容易に作動不良を起こしてしまう欠点があった。その為、ガス圧利用式の技術が向上しどのような装弾でも安定したガス圧力を供給する自動ガスピストンなどの新機構が普及すると、ロングリコイル式は次第に廃れていく事になった。しかし今日でもイタリアのフランキがとしてこの構造の散弾銃の量産を続けており、同じイタリアの高級元折散弾銃メーカーのもこの方式による手作り高級散弾銃の注文生産を続けている。散弾銃以外の採用例ではアメリカのレミントンが1906年にレミントン・モデル8として半自動式小銃にこの構造を採用、ハンガリーでは1907年に拳銃、フランスでは1915年にFM_mle1915軽機関銃がこの構造を採用している。イナーシャ・オペレーションとは、ロングリコイルと同じく主に散弾銃で使用される方式で、イタリアのベネリ社が開発した慣性を利用して作動する最新鋭の反動利用方式である。資料によってはイナーシャ・ドリブンやイナーシャ・システムと呼ぶ場合もあり、日本語直訳では慣性利用方式または慣性モーメント方式となる。この方式は他の方式と異なり、遊底の後退に銃身に掛かる反動に加えて遊底自体に内蔵された反発ばねの力も利用する。これにより銃身の後退量を必要最小限に抑える事が出来、なおかつ遊底の反発ばねの反作用で銃身からの衝撃を相殺する為、銃身後退に伴う衝撃が射手に全て掛かるロングリコイルよりも衝撃をかなり小さくする事が可能ともなる。また、反動の発生を銃身の後退量のみに頼らない為に、ロングリコイルでは銃身後退に必要なエネルギーが不足するような軽装弾を使用した場合でも安定した回転を行う事ができる。ただし、この方式を採用するメーカーは現在の処は開発元のベネリと、ベネリのアンダーライセンスを受けたフランキなどごく一部に留まっている。ショートリコイル作動の銃は、発射ガスの圧力で作動するブローバックやガス圧利用の銃等とは異なり、銃腔内を塞ぐ等の処置を施しても、空砲の火薬の燃焼による反動は弾丸の発射時に比べ遥かに小さいため作動しない。そのため、M2重機関銃等では機関部に固定される空砲発射用アダプターを装着し、空砲のガス圧によって銃身を後退させ遊底を後退させる力を得ている。この時、銃はショートリコイル作動を行っているのではなく、ガス圧利用の作動方式に変わっている。もともと、銃身後退の補助用にが装備されるヴィッカース重機関銃やMG42等では、マズルブースターの中心孔を絞った空砲用ブースターと交換することにより空砲のガス圧だけで動作させる事ができる。拳銃ではこのような空砲用アダプターは一般に存在しないため、映画の小道具(プロップ、ステージガン)でショートリコイル作動の拳銃等を使用する際には、閉鎖機構を除去しブローバックと同様の構造に変更することが一般的に行われている。
出典:wikipedia
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