バランス釜(ばらんすがま)は、として自然給排気(BF)式を採用したガス風呂釜であり、バランス型風呂釜の通称である。「バランス」はその給排気方式の英語表記である"balanced flue type"に由来する。1965年にガスターが他に先駆けて開発したこのバランス釜は公団住宅向け需要を中心に全国的に普及していったが、その後は屋外壁掛け式の給湯器が主流となったために衰退傾向にある。これは、住宅の集中給湯システム化が進んだことやバランス釜の多くの欠点が忌避されたことなどに因る。そして、1990年代以降に建築された住宅では、バランス釜は殆ど見られなくなっている。多くのバランス釜は、シャワーや上がり湯としての給湯用に別系統の燃焼部と熱交換器を備えている。しかし、一般的なガス給湯器の給湯能力が16号以上であるのに対し、バランス釜のそれは最大の能力を持つ機種でも8.5号となっており、大きな差がある。嘗ては製造されていた自動湯張り機能を持つバランス釜は、主に制御基板が浴室内の湿気に耐えられずに誤動作や故障を起こすことが多く、製造中止になった。それ以後に発売されたバランス釜は自動湯張り機能を持たない。バランス釜は、住宅の浴室内に浴槽と並べて設置され、浴槽に取れるスペースが圧迫される要因となる。その一方で、燃焼のための給排気は屋内とは完全に遮蔽され屋外に直結した給排気筒を通して行われる。この給排気口が同一雰囲気の室外に出ている構造と成っているため、常に吸気と排気のバランスが取れている。つまり、屋内の空気を燃焼に使用し屋外に排気する半密閉式の製品と比較して、風雨の影響に因る不完全燃焼ひいては浴室内での一酸化炭素中毒事故や空気の汚染が発生し難い。バランス釜の給排気筒には、風呂釜後部から浴室の壁面に設けた四角い開口部を貫通して屋外に出すBF-W方式と、風呂釜上部から2本の給排気筒を延長し、浴室上部の丸穴を貫通させて屋外に出すBF-DP方式の2種類がある。特に、BF-DP方式は、不完全燃焼による事故の可能性がある浴室内の半密閉式風呂釜(CF式など)の風呂釜の買い替え製品として用いられている。なおこの項では、特に断りがない場合はBF-W方式のバランス風呂釜について記載する。バランス釜は浴槽と2本の管で繋がっており、湯が風呂釜内部でバーナーの燃焼で温められて自然対流に因って上方の管から浴槽に送り出されると同時にその分だけ浴槽下部の冷水が下方の管から風呂釜内部に引き入れられて、浴槽内の湯が焚かれる。運転ダイヤルを「着火」位置まで押し回し、その状態のまま着火ハンドルを回転させると、口火が点く。この時、風呂釜の内部で青く燃焼する口火が点火確認窓から見える。口火が着火したら、「給湯」や「追い焚き」のそれぞれの位置まで運転ダイヤルを回すことでバーナーが燃焼する。給湯機能を持つバランス釜は、浴槽に湯が直接給湯されて溜められた後に、温度調整目的で補助的に追い焚きを行う。一方で、その機能を持たないものは、使用者が浴槽に水を張ってから、追い焚きを行う。このため、給湯機能を持つものと持たないものを比較すると、前者のほうが大きい追い焚き能力を備えている。この点火操作には必ず両手が必要で、なおかつ、口火の点火の確実性が乏しい。メーカー各社間でこの問題点について協議が行われ、2011年4月以降に発売されたバランス釜に関しては、乾電池による連続放電で口火に点火させてその着火をランプで表示させる方式に統一された。1984年に、バランス釜設置用に穿たれた建物の給排気口用の穴を活かして、大規模なリフォームの必要無く代替設置可能な壁貫通型風呂給湯器が東京ガス(ecoジョーズ)によって先駆けて開発された。その後、ガスター(YUMEX)と日立化成がライセンス製造を手掛けて、それぞれをリンナイ(ユッコ・ユッコUF)およびノーリツ(バスイング)とハウステック(カベピタ)が引き継いで発売している。このような型の給湯器は、ホールインワン型風呂給湯器やパックイン型風呂給湯器とも呼称される。これは従来のバランス釜の給排気トップの寸法内に給湯器本体を格納することで、浴槽内にあった風呂釜部分のスペースを不要とし、その分大きな浴槽を入れることができるようになっている。この方式の給湯器は給湯だけを行うものと給湯と浴槽の追い焚きの両方が可能なものが発売されている。壁貫通型風呂給湯器はリモコン制御で完全自動での湯張りや保温を可能にしている。ただし、制御用に電源を必要とする。このため、内線規程により浴室内にはコンセントが設置不可能なこともあって、電源を壁や天井を加工して電源コードを貫通させて設置するか屋外に用意する必要が有る。なお、公営住宅などの場合にはこれらの施工が許可されずに壁貫通型風呂給湯器を設置できない場合が多い。

出典:wikipedia