クラーケン(ノルウェー語等:)は、その多くが巨大なタコやイカのような頭足類の姿で描かれる、北欧伝承の海の怪物。中世から近世にかけて、ノルウェー近海やアイスランド沖に出現したとされている。19世紀のアフリカ南部はアンゴラ沖に現れた海の怪物もクラーケンでなかったかと言われている。 の発音は、古ノルド語・ノルウェー語などで 、英語では もしくは 。この語は英語の crook (意:湾曲した杖、牧杖[羊飼い〈en〉の杖、shepherd's crook]、司教杖、など)や crank (意:捻じ曲がったもの、曲がりくねったもの、変わり者、つむじ曲がり、奇想のもの、[機械の]クランク、[道路の]クランク、など)とゲルマン語派のレベルで同根であり、怪物クラーケンの怖ろしい湾曲性の腕を想起しての名付けであったことが窺える。その後、北欧においてこの怪物の名は「畸形的な動物」を意味するようになっていたらしい。ここに見られる「畸形」の語義は英語 crank の中にもニュアンスとして現れている。古代スカンディナヴィアのサガに "Kraken" の名は見られない。しかし、類似する海の怪物として [仮名転写:ハーヴグーヴァ]( も同一か。"cf." )と を挙げることができる。これらは『ヘルヴォルとヘイズレク王のサガ』中のエルヴァル・オッド () の物語などで語られている。クラーケンの姿や大きさについては諸説がある。巨大なタコやイカといった頭足類の姿で描かれることが多いが、ほかにも、シーサーペント(怪物としての大海蛇)やドラゴンの一種、エビ、ザリガニなどの甲殻類、クラゲやヒトデ等々、様々に描かれてきた。姿がどのようであれ一貫して語られるのはその驚異的な大きさであり、「島と間違えて上陸した者がそのまま海に引きずり込まれるように消えてしまう」といった種類の伝承が数多く残っている(日本で伝承される赤鱏[あかえい]の島もこれに類似する)。15世紀アイルランドの聖ブレンダン伝承に登場するクラーケン(らしき怪物)の場合は、島と間違えて上陸したブレンダンが祝福のミサを終えるまで動かずにいたと伝えられる。体長は2.5kmに及んだというこの“穏やかな”クラーケンには、クジラがその実体ではなかったかとの憶測がある。実際にクジラには漁業神や海神と見なされる側面があり、このような逸話が世界中に数多く存在する。また、18世紀デンマークのベルゲン司教エリック・ポントピダン () が『ノルウェー博物誌』(原本はコペンハーゲンにて1752-1753年執筆)に著したところでは、クラーケンが吐いた墨で辺りの海が真っ黒になったとされ、ここでは頭足類の一種と認識されていたようである。なお、言語学的にはこの書物が刊行された1755年をもって固有名詞 "Kraken" の初出としている(それ以前から似て非なる名前あるいは全く異なる名前で語られる怪物の存在は数々あったが、それらは、ここで初めて現れたその名 "Kraken" と正体が同一と推定される別名の怪物である、という意味)。※クラーケンを動物、とりわけ頭足類の一種と考えるのであれば、どれほど巨大であってもマッコウクジラやシャチといった天敵の存在が想定されるため、離脱用として煙幕のように墨を吐く機能を保持していることは生態的に自然ではある。古代から中世・近世を通じて海に生きる船乗りや漁師にとって海の怪は大きな脅威であり、その象徴ともいえるクラーケンは、彼らから怖れられる存在であった。というような伝承が語り継がれた。船出したまま戻らなかった船の多くは、クラーケンの餌食になったものと信じられていたのである。それは近代においても変わることが無く、メアリー・セレスト号が見つかったとき(1872年)、この船が無人となった理由として様々な検証・憶測がなされたが、その中には「乗員が全てクラーケンの餌食になった」という説も存在した。全ての伝承で“危険な存在”とされている訳ではなく、温和かつ無害に描かれることもある。また、クラーケンの排泄物は香気を発して餌となる魚をおびき寄せているともいわれる。現代的な船舶は自走能力が高く風の有無にかかわらず航行可能であるため、仮にクラーケンが実在したとしても襲われることはまず無い、という考え方がある。もちろんこれは「船舶が故障や燃料切れを起こしておらず、十分な自走能力を備えている」「船舶自体に十分な大きさがある」「クラーケンのサイズや運動能力が一定の範囲内に収まっている(全長が数kmに達する活発な生物であれば、タンカーや空母級の船舶を襲うことも考えられる)」といった場合の話である。加えて、この怪物が北欧の海に特有であると限るようなことでもない。分類学の父と謳われるカール・フォン・リンネは、“未知の海洋動物”クラーケンを頭足類の一種と見なし、1735年刊行の『自然の体系(ラテン語原題:)』初版にて という学名を与えている。この名は、 (欧字転写[]:、意:、小)と (、意: 世界、ほか)の組み合わせからなる古代ギリシア語 (mikrokosmos) を元とした既存のラテン語形 であり、「、小さな世界」との語義を持つ。ただし、この動物の実在性はのちに否定され、今日、軟体動物門の学名としては無効名 (en) となっている(尾索動物の一種を指す学名としては存在する。"cf." )。クラーケンのモデルではないかと取り沙汰されることの多いダイオウイカ属(学名:)は現生最大級の頭足類(巨大イカ)であり、平均全長約10m、信用に足る最大個体の記録は全長約13mである。しかし、推定全長20mともされる不確定記録がある。ダイオウホウズキイカ属(学名:)は現生最大とされ、その全長はダイオウイカを上回る14mに及ぶ。また、ダイオウイカと同様、推定全長20mとの不確定記録がある。深海棲の彼らにはいまだ謎が多く、推論や憶測を生む要素を多く持つ。ギリシア神話をモチーフとしたレイ・ハリーハウゼン監督の特撮映画『タイタンの戦い』(1981年アメリカ製)に登場するクラーケンは、ワニのような皮膚、魚の鰭(ひれ)様の大小の突起物を持つ人型の胴体に、手と爪があり関節の無いタコの触手様の4本の腕、嘴(くちばし)のある竜ともサルともつかない頭部を具えた、異形(いぎょう)の巨大怪獣」として描かれている。この一種独特の個性を放つクラーケンのイメージは、それ自体が、後に続く多くの海の怪物・怪獣に大きな影響を与えている。1998年のアメリカ映画『ザ・グリード』では、客船を襲った正体として巨大なタコの化け物が登場する。 2006年のアメリカ映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』には、幽霊船の船長デイヴィ・ジョーンズに操られるタコのような触手と、イカのようなエンペラを持ったクラーケンが登場する。ジャックスパロウを食べるも、後にジャックスパロウに倒される。『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』のワンシーンに岸に打ち上げられた姿で登場。ジュール・ヴェルヌのSF冒険小説『海底二万里』(1870年)にはクラーケンのモデルとされる巨大ダイオウイカが登場し、航行中の船舶を襲撃する。水野良の小説『ロードス島戦記』(1983年初出)等、フォーセリアを舞台にした小説では、水の精霊の上位種としてクラーケンが設定されている。J・K・ローリングの作品『ハリー・ポッター』シリーズ(1997年初出)では、ホグワーツ魔法魔術学校の池にクラーケンをモチーフとしたと思われる巨大イカが棲んでいる。この巨大イカは昼休みに生徒と一緒に泳いだり、浅瀬で日向ぼっこしているところを生徒に足をくすぐられたり、池に落ちてしまった生徒(デニス・クリービー)を筏に戻してあげたりと、無害かつ温厚な性格をしている。ロールプレイングゲーム(RPG)の世界では、プレイヤーキャラクターの進行を妨げる敵としての、頭足類をモチーフとしたモンスターの名前にしばしば「クラーケン」の名が使用される。『ザ・ブラックオニキス』(1984年初出)に登場するものが例として挙げられる。
出典:wikipedia
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