コロラド級戦艦(コロラドきゅうせんかん:Colorado-class battleships)または、メリーランド級戦艦(メリーランドきゅうせんかん:Maryland-class battleships)は、アメリカ海軍が就役させた超弩級戦艦の艦級である。コロラド級は基本的には前級のテネシー級戦艦の改良型として1917年海軍整備計画において建造された。元々35.6cm3連装砲塔4基を搭載する予定だったが、日本が建造した初の16インチ砲搭載戦艦である長門型戦艦に対抗するために40.6cm連装砲塔に変更した。そのため装甲などは対35.6cm砲レベルのままであった(35.6cm4連装砲塔を40.6cm3連装砲塔に変更した、後のノースカロライナ級戦艦も同様である)。主砲を連装で装備した、最後のアメリカ戦艦である。ただし、対35.6cm砲レベルの装甲であっても、当たり前ではあるがニューメキシコ級以前のアメリカ戦艦よりは強力であり、テネシー級と同等であった。防御力を重視したアメリカ海軍は、アメリカ戦艦の中で特に防御力に優れたテネシー級2隻と本級3隻をあわせ5隻を「ビッグファイブ」と称した。第一次世界大戦中に4隻が計画検討されたクラスであるが、建造は戦争には間に合わず、大戦終了後にワシントン海軍軍縮条約の影響により、3番艦「ワシントン」がキャンセルされ3隻の就役に留まった。この時、「メリーランド」の就役が1番艦よりも早かったためにメリーランド級と呼称された。コロラド級の船体形状は前級に引き続き長船首楼型船体である。鋭く前方に傾斜したクリッパー型艦首から艦首甲板上に「Mark 1 1921年型 40.6cm(45口径)砲」を連装砲塔に納め、1・2番主砲塔を背負い式で2基、2番主砲塔の基部から甲板よりも一段高い艦上構造物が始まり、その上に司令塔が立つ。司令塔の背後から箱型の艦橋が立ち船橋(ブリッジ)で接続させていた。艦橋を基部として当時のアメリカ海軍の大型艦の特色である籠状の前部マストが立っている。前部マストの下部に航海艦橋、頂上部に露天の見張り所を持つ。船体中央部に2本煙突が立ち、その周囲が艦載艇置き場となっており、1番煙突の側面部に片舷に1基ずつ立つ探照灯台を基部とするクレーン2基により運用された。2番煙突の後方で船首楼が終了し、そこから甲板一段分下がって籠状の後部マストと3番・4番主砲塔が後ろ向きに背負い式配置で2基が配置されていた。コロラド級の副砲である「12.7cm(51口径)速射砲」は2番主砲塔後方の上部構造物上に単装砲架で片舷1基ずつ2基と、船体中央部にケースメイト(砲郭)配置で放射状に単装で5基の計12基を搭載していた。コロラドは大戦前の1941年夏よりオーバーホールと改装を行い、艦橋構造を一部改正し、前部マストの頂上部に網状のレーダーアンテナを設置した。また籠状の後部マストを撤去し、新たに塔型の後部艦橋が設けられた。メリーランドとウェストバージニアは真珠湾攻撃により損傷、メリーランドは修理に際してコロラドに準じた改装を受けた。一方、大破着底したウエスト・バージニアは浮揚された後に大改装を行い、改装前の上部構造物を撤去して上部構造物を新設し、サウス・ダコタ級に近似した塔型艦橋に1本煙突、後部マストをもつ外観となった。3隻とも改装の際に副武装と対空火器を一新、砲郭式の舷側単装副砲を全廃(メリーランドを除く)、旧来の対空火器を12.7cm(38口径)連装両用砲やボフォース 40mm(56口径)4連装機関砲、MK.V(エリコンSS) 20mm 単装機関砲といった新型対空火器に更新している。コロラド級の主砲は新開発のMark 1 1921年型 40.6cm(45口径)砲を採用している。これを新設計の連装砲塔に納めた。その性能は「テネシー級」の35.6cm砲弾よりも約4割増しの重量957.1kgの主砲弾を最大仰角30度で射距離31,360mまで届かせる事ができる性能で、射距離14,630mで舷側装甲376mmを、射距離18,290mで292mmを貫通できる性能であった。装填機構は固定角度装填で仰角1度で装填、発射速度は毎分1.5発であった。砲身の仰角は30度・俯角4度で動力は電動モーターによる駆動であり補助に人力を必要とした。旋回角度は左右150度の旋回角が可能であった。第2次大戦時、損傷修理時に新型砲塔のMark 5&8 1938年型 40.6cm(45口径)砲に更新された。その性能は重量1,016kgの主砲弾を最大仰角30度で射距離31,910mまで届かせる事ができる性能で、射距離15,360mで舷側装甲457mmを、射距離22,400mで356mmを貫通でき、射程20,120mで甲板装甲102mmを、射程31,550mで甲板203mmを貫通できる性能であった。装填機構は固定角度装填で仰角1度で装填、発射速度は毎分1.5発であった。砲身の仰角は30度・俯角4度で動力は電動モーターによる駆動であり補助に人力を必要とした。旋回角度は左右150度の旋回角が可能であった。副砲は前級に引き続きMarks 7 1910年型 12.7cm(51口径)速射砲を採用した。その性能は重量22.7 kgの砲弾を最大仰角15度では射程14,490 mまで届かせられるこの砲を舷側ケースメイトで18基ずつ、甲板上に露天で4基の計14基を搭載した。砲架の俯仰能力は仰角20度・俯角15度である、旋回角度は露天で300度、ケースメイトで最大150度の旋回角度を持つが実際は上部構造物により射界に制限を受けた。砲身の俯仰・砲塔の旋回・砲弾の揚弾・装填は主に人力を必要とした。発射速度は前型の毎分6発から毎分8~9発へと向上した。対空火器として1914年型 7.62cm(50口径)高角砲が搭載された。その性能は重量5.9 kgの砲弾を最大仰角85度では射程9,270 mまで届かせられる。この砲を単装砲架でメリーランドは4基、コロラド以後は8基搭載した。砲架の俯仰能力は仰角85度・俯角15度である、旋回角度は露天で360度の旋回角度を持つが、ケースメイトでは旋回角に制限があった。砲身の俯仰・砲塔の旋回・砲弾の揚弾・装填は主に人力を必要とした。発射速度は毎分15~20発である。その他に対艦用に53.3cm魚雷発射管を水線下に2門を装備した。高角砲は1928年から1930年にかけて、12.7cm25口径単装高角砲へと交換された。同時に対空機銃として12.7mm単装機銃8丁を搭載した。主砲関連の装備に大きな変更はないが、1928年に超重砲弾(Super Heavy Shell)がアメリカ海軍に採用されたのに伴って1935年から順次揚弾機構などの改修が行われている。航空兵装の追加も大きな点である。学研の『アメリカの戦艦』によれば、1921年に就役したメリーランドは当初は航空兵装を搭載しておらず、1922年5月22日に艤装中のコロラドに圧縮空気式カタパルトが米戦艦で初めて搭載された。その後カタパルトの普及は進み、コロラド級各艦は1926年までに火薬式カタパルトの搭載改修を完了した。コロラドにおいては当初は艦尾に1基のみ搭載されていたカタパルトであったが、1925年に火薬式カタパルトに交換するとともに、第三砲塔上に1基追加され、結果的にコロラド級は全艦、合計2基のカタパルトと2機か3機の水上機を搭載するようになった。ただし、1924年10月のものとされる右に掲げた写真では艦尾のカタパルトが撤去されており、1925年の改装を前に圧縮空気式のカタパルトはすでになかった可能性もある。この時代のアメリカはタービン機関の開発に立ち遅れており、低速時の燃料消費に問題があった。これを改善すべくゼネラル・エレクトリック(GE)社は独自にターボ発電機推進を開発していた。この形式の利点はタービン機関を簡素化が可能で、直結タービンの欠点である低速時の燃費の悪化が少ない利点があった。また防御上の利点ではボイラー室と推進機関の構成に自由度が高かった。ただし、万能と言う訳ではなく、動力の伝達ロスがタービン機関の約5倍、また発電機と電動モーターの小型化が難しく、製造コストも高いという問題点もあった。このため、数を必要とする駆逐艦や艦形の小さい巡洋艦には採用されず、戦艦に主に採用された。軍艦の電気設備の増加や艦内空調の強化、真水製造器や食料保存用の冷蔵庫など、電気が欠かせない時代にあって、コロラド級が採用したターボ発電推進は魅力的であった。しかし、機関区が発電専門に特化していたため、コロラド級とテネシー級以前の戦艦が行ったような機関換装が行いづらく、高速化は技術的に難しかった。機関構成はバブコック・アンド・ウィルコックス社製重油専焼水管缶8基に単胴タービン2基で発電した電力で電気モーター4基4軸推進で、公試において最大出力28,900 shpで最高速度21.0ノット、燃料9割搭載時に15ノットで12,400海里を発揮した。燃料消費量から重油4,570トンで速力15ノットで16,600海里を航行できるとされた。発電タービンの形式は比較研究のために姉妹艦で別の形式が採用されており、コロラド、メリーランドはウェスティングハウス社製パーソンズ式単胴体タービン。ワシントン、ウエスト・バージニアはGE社製カーチス式単胴体タービンで異なっていた。機関配置は船体中心部に位置する発電室にタービン発電機が前後に1基ずつ計2基が並べられた。発電室を左右から挟み込むようにボイラー室が舷側に配置され、1室あたりボイラー1基ずつが片舷4室に4基ずつ計8基が搭載された。この工夫によりボイラー室に被害を受けても他のボイラー室に被害を及ぼさないようにされ、さらに発電機をボイラー室が防御していた。発電された電力は制御盤を介して艦後部の機械室が縦隔壁2枚で3室に隔てられた推進器室に外側軸は1室に1基ずつ、中央軸は1室に並列で2基ずつ計4基が並べられた。コロラド級の防御様式は前級に比べて変更はなく広範囲を防御する全体防御形式である。舷側装甲帯は1番主砲塔から4番主砲塔の弾薬庫を防御すべく長さ125m・高さ5.2mの範囲を防御した。水線部装甲は上側203mm、最厚部で343mm、下側203mmとテーパーしている。水線下防御は多層水雷防御を採用しており、船体長の2/3にあたる前後に広く防御していた。水雷防御は水線下に約5.3mの奥行があり、4枚の隔壁で5層構造で内側の空気の1層と液体で満たした4層で防御していた。水平甲板の装甲は前級から引き続き、舷側装甲と接続した主甲板装甲で敵弾を受け止め、剥離した装甲板の断片(スプリンター)を下甲板で受け止める複層構造とした。主甲板が最厚部で89mm、下甲板が38~57mでどちらも傾斜しない。主砲塔の装甲は前盾は457mm、側盾254mm、後盾229mm、天蓋127mmと重装甲だった。基部のバーベットは甲板上は320mmであった。開戦時真珠湾攻撃でメリーランドとウェストバージニアが損傷したものの、浮揚修復され戦線に投入されているが、このうち、ウェストバージニアは大破、沈没、着底という形となり、「航空機の攻撃で唯一沈められた16インチ砲搭載戦艦」という不名誉な記録を残すこととなった。また、当時コロラドは西海岸で入渠中で、一時期太平洋艦隊で唯一無傷で稼動可能な戦艦となったがこれといった戦果はなかった。コロラド級は太平洋戦争後期には日本本土攻撃に活躍したが特攻機の攻撃を受け、少なからず損害を被っている。第二次世界大戦終結後はコロラド級3隻は活躍することもなく、全艦とも1947年までに退役した。戦艦時代の終わりと共にいずれもスクラップとして売却処分された。※ワシントン (BB-47)は廃艦。
出典:wikipedia
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