インテリジェント・デザイン()とは、「知性ある何か」によって生命や宇宙の精妙なシステムが設計されたとする説。しばしば、ID、ID説と略される。またIDを信じる人をIDer(インテリジェント・デザイナー)と呼ぶ。『宇宙・自然界に起こっていることは機械的・非人称的な自然的要因だけではすべての説明はできず、そこには「デザイン」すなわち構想、意図、意志、目的といったものが働いていることを科学として認めよう』という理論・運動である。近年のアメリカ合衆国で始まったものであり、1990年代にアメリカの反進化論団体、一部の科学者などが提唱し始めたものである。旧約聖書から大きく影響を受け、聖書主義を基盤に、宗教的な論説の創造科学から宗教的な表現を除き、一般社会や学校教育などにも広く受け入れられるように意図したもので、宗教色を抑えるために、宇宙や生命を設計し創造した存在を「神」ではなく「偉大なる知性」と記述することが特徴である。これにより、非キリスト教徒に対するアピールを可能とし、ユダヤ教徒やヒンドゥー教徒、イスラム教徒の支持者を得ている。また宗教色を薄めることで、政教分離原則を回避しやすくなる(公教育への浸透など)。旧約聖書によれば「全ての人間の祖先であるアダムは神によって作られ、その妻イヴはアダムの肋骨から生まれた」とされ、ユダヤ教徒やキリスト教徒の間では長い間これが信じられてきた。しかし、ダーウィンの進化論が認知され、「原始的な動物が次第に進化して人間になった」と考えられるようになると、聖書の記述をどのように解釈するかについて議論が起こった。インテリジェント・デザインでは、地球が創造されてからわずか数千年しか経たないという「若い地球説」は採用せず、「原始的な動物が人間に進化した」という進化論を一部認めつつも、「その過程は偉大なる知性の操作によるものである」として、宗教色を薄めつつも「偉大なる知性」を神と解釈できる余地を残している。米国でインテリジェント・デザインを公教育の理科の時間にも取り入れようとする動きがあり、ジョージ・ブッシュなどもIDを支持し「平等のため、進化論のみならずインテリジェント・デザインも学校の理科の時間で教えるべきだ」と主張した。こうした動きが議論を起こした。一方、インテリジェント・デザインは科学とは別の「道徳的な問題」を扱う際のツール(道具もしくは根拠)であり、実際の自然科学と共存する思想であるとする論者もある。これは、「仏教における輪廻転生や地獄といった考え方は科学では肯定されてはいない(否定もされていない)が、人々が倫理や道徳を考える際に有用な考え方であることが経験的に知られているように、インテリジェント・デザインも自然科学を否定するものではなく、あくまで「仏教の様な方便に過ぎないのだ」という主張である。宇宙や地球の出来た年代、生物の発生順や発生時期、各々の生物種の発生の仕方などについて、宇宙論・地球科学・古生物学・進化論など現在の科学的定説とされる進化論と対峙して、創世記の記述を科学的に論述し証明しようとする言説を「創造科学」と呼び、それに関与する学者・科学者を「クリエイショニスト」と呼ぶ。アメリカ合衆国カンザス州での、進化論と同時にインテリジェント・デザインを学校で教育すべきである、という推進派の主張に対し、「これは科学の議論ではない」、「科学と宗教は全く違うもので、議論自体がナンセンスだ」との意見があった。一般向け科学解説書の多数の著作がある生物学者リチャード・ドーキンスは、一神教的宗教を批判する著作を発表し、その中でインテリジェント・デザインについても詳細な反論を行った。カトリック教会を始めとする宗教界ではインテリジェント・デザインは受け入れられていない。一般に誤解されがちだが、カトリックでは進化論は否定されておらず、むしろ、ヨハネ・パウロ2世が進化論を概ね認める発言を残している。というのも、進化論は必ずしも創造論を否定するものではなく、進化論が生命の起源にまで及ばない以上、そこに神の存在を見出すことが可能である(進化論を肯定しても原初の生物は神が作ったという解釈が可能)。つまり、インテリジェント・デザインは、たとえ神に置き換える余地があっても、そこを「偉大なる知性」と置き換えてしまうために、彼らにとっては進化論よりも神の存在を脅かすとされる。生物学の分野でも、創造科学者は極めて精妙な生物の細胞や器官のしくみを例に挙げて、「複雑な細胞からなる生体組織が進化、自然淘汰などによってひとりでにできあがったとは考えられない。従って創造に際しては『高度な知性』によるデザインが必要であった」と主張するようになってきた。この主張は、伝統的な神の存在証明のひとつである「デザイン論証」に倣っている。しかし、創造論に反対する立場からは、という新たな疑問が発生するため、「“人智を超えた高度な知性”の存在が証明出来ない限り、単に問題を先送りにしたに過ぎない」、「単に神をそのままでは教えられないために『偉大なる知性』という別の言葉に置き換えて宗教色を覆い隠したに過ぎない」とする批判がなされている。また、現実には生物学上「複雑な器官等が突如、出現した」という証拠は全くない。原始的な器官から複雑な器官への橋渡しを示すような中間形態を持つ生物も存在しており、結局、進化の中で徐々に複雑化してきたと考える事に矛盾は見つからない。議論の前提から誤解・曲解が含まれていることに注意しなくてはならない(→わら人形論法)。「」(ラエリアン・ムーブメント)。米国のボビー・ヘンダーソンはカンザス州教育委員会の動きを見て、2005年6月、IDを批判するために自分のウェブサイトにパロディ宗教(冗談宗教)の「空飛ぶスパゲッティ・モンスター教」のコンセプトを掲載し、前述のブッシュのコメントを皮肉り、「平等のため『スパゲッティ・モンスター』が人類を作ったという説も学校の理科の時間で教えるべき」であり、「ブッシュ大統領を始めとしたインテリジェント・デザイン論者たちは我等がスパゲッティ・モンスター教を学校教育に採り入れるために戦ってくれているのだ」と主張した。『産経新聞』は特集記事を組んで、創造科学を肯定する側の意見を載せた。この特集は後述する渡辺久義に対するインタビュー記事で、「この理論は多くの科学者が支持しており、IDを推進しているのはキリスト教右派、宗教勢力だと言う主張はIDを快く思わない人間の妄言である。IDを教えず、仮説に過ぎない進化論を公認の学説として扱うのは思考訓練の機会を奪ってしまう」「人の祖先は猿だと教えれば、子ども達に人間としての尊厳が育てられない」と言う趣旨であり、締め括りは「進化論はマルクス主義と同じく唯物論的であるため、人間の尊厳を無視しており歴史、道徳の教育にとって良くない。日本では進化論偏向教育によって日本神話等が弾圧された」として日本も学校でIDを教えるべきだと主張した。また、『NHKが考える「性のありよう」』と題し“人間は男か女に生まれる。性別は選べない。被造物の分際で性の「境界線」をなくすなど、不遜な冒涜であろう”と述べた潮匡人の発言を、コラム『断』(2009年1月17日付)に載せた。創造デザイン学会という、創造科学やインテリジェント・デザインを扱う団体を、世界基督教統一神霊協会(以下、統一教会)の関連団体が主催するようになった。この会はやはり関連団体とされる組織である世界平和教授アカデミーが主催している。これはあくまで当人達が「学会」を自称しているだけで、日本学術会議が学会と認定した団体ではない。この「学会」は、「学会」の代表を務める渡辺久義(英文学者、摂南大学国際言語文化学部教授、京都大学名誉教授)は、統一教会系の日刊新聞『世界日報』や同じく統一協会の下部組織である国際勝共連合の月刊誌『世界思想』等でIDを肯定する発言を繰り返しており、前者では「誰がどう考えても、生命とか進化とか心(意識)の問題を物理力だけで説明できるとは思えない」と述べている。創造論は宗教的なものであるとして強力に排除されてきたアメリカでは、教育の現場で聖書主義を教えなくなった事が、今日のアメリカ社会の病巣の根源だとする考え方がある。一般社会に受け入れられるために宗教的な表現を排してでも、全てのものは偶然の産物ではなく意図を持って創造された、という考え方を広めるべきだとする人々に受け入れられているようである。しかし、人間の心の根源的な問題に関わる問題を宗教心なしで語る事は困難であり、創造論が広く受け入れられる事を良しとしながらも、聖書を基にしたものから聖書的表現を無くしたものは不自然であるとする意見もある。心臓外科医で埼玉医科大学准教授の今中和人は、人間の心臓の機能が優れている理由として、創造主の存在を考えており、進化論を公教育で教えることをやめるべきだ、とした。肯定的な内容を掲載しているサイト否定的な内容を掲載しているサイト
出典:wikipedia
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