『機動警察パトレイバー2 the Movie』(きどうけいさつパトレイバー ツー ザ ムービー)は、1993年に公開されたアニメーション映画作品。1999年、東南アジア某国で、PKO部隊として日本から派遣された陸自レイバー小隊が、戦闘車輌を持つゲリラ部隊と接触、本部からの発砲許可を得られないまま一方的に攻撃を受けて壊滅する。しかし一人の生存者がいた。破壊されたレイバーから脱出した彼がそこで見たのは、異教の神像が見下ろす古代遺跡であった。そして、彼は「彼岸の人」となった。「方舟」の一件から3年後の2002年冬、かつての特車二課第2小隊の面々は、隊長の後藤と山崎を除いて新しい職場に異動し、それぞれの日々を送っていた。そんなある日、横浜ベイブリッジで爆破事件が起こる。当初は自動車爆弾かと思われたが、自衛隊の戦闘機F-16Jらしき飛行機から放たれた一発のミサイルによるものであることがテレビによって報道される。そして、これがすべての始まりであった。事件に関する様々な情報が錯綜する中、南雲と後藤の前に、陸幕調査部別室の荒川と名乗る男が現れ、「柘植行人(つげ ゆきひと)」という人物の捜索協力を依頼する。後藤は荒川の真意を測りかねて依頼を断るものの、直後にバッジシステムへのハッキングによって、自衛隊三沢基地所属機による幻の東京爆撃が演出されるという事件が発生する。これに過剰反応した警察は自衛隊に対して過剰な対抗行動に出て、一部自衛隊部隊が外部との通信を絶って駐屯地に篭城するという事態にまで発展する。そんな中、ベイブリッジ爆破事件を調べていた松井刑事は、後藤から渡された荒川の資料を元に柘植と彼の組織を調べ始める。その後も状況は悪化の一途を辿り、在日米軍の圧力もあって事態の早急な収拾を図ろうとした政府は、警察に事態悪化の責任を押し付け、警察の代役として自衛隊に東京への治安出動命令を下す。そして雪の朝、東京湾の埋立地から3機の戦闘ヘリが飛び立つ。都内にある官民の通信施設、橋梁、警視庁千代田庁舎は戦闘ヘリの銃爆撃を受け、通信ケーブル網は仕掛けられた爆弾で破壊され、特車二課も壊滅してしまう。さらに東京上空を周回する3機の無人飛行船から妨害電波が流され、都内に展開した自衛隊部隊は情報が途絶して孤立していった。東京を舞台にした仮想的な「戦争」が、現実のものとして創り出されていく。同じ朝、後藤と南雲は海法警視総監列席の下で緊急招集された警備部の幹部会議に召喚されていた。緊迫した情勢下で南雲と警視庁上層部の対立が決定的となる中、特車二課壊滅を悟った後藤は、この期に及んでもなお権力闘争と責任転嫁に汲々とする上層部を見限り、南雲と共に自らの手で事態を収拾する覚悟を固める。そして壊滅した特車二課に代わり、かつての第2小隊メンバーがAV-98「イングラム」と共に呼び集められた。戦争という状況下に置かれた東京を舞台に、この「情況」を演出したテロリストを逮捕するため、特車二課第2小隊最後の任務が始まる。※各登場人物の詳細は機動警察パトレイバーの登場人物を参照。本作では劇中でコンピュータにより生成され出力される画面をCGを用いて描く試みが行われた。シリコングラフィックスのIRIS等、1992年当時に入手可能な最先端のCGワークステーションが導入され、最終的なレンダリングはシェーディング済みの3DCGを投影した2DCGとして行われた。出力されたCGはアナログで制作したアニメパートへのはめこみ合成の素材として用いられた。例としては、物語冒頭のレイバーのシミュレーション画面、戦闘機のHUD、航空レーダーなどがある。監督の押井守は『西武新宿戦線異状なし』や『機動警察パトレイバー』OVA第1期ですでに、自衛隊のクーデターをモチーフとした作品を手がけている。だが、劇場版第1作より濃厚になった押井独自の「都市論」「政治論」に基づく演出や、当時物議を醸していた自衛隊PKO派遣の要素を加えるなど、監督の思想を色濃く反映し前記の作品群とは一線を画すものとなった。また、レイバーによる戦闘シーンが冒頭とクライマックスに数分間挿入されるのみに留まり、極めて抑えられたものとなっている。幻の爆撃の演出に代表される、「現実」と「非現実」についての描写も随所に散りばめられている。本作はOVA第1期・劇場版1作目と同じく押井守監督作品だが、公開当時のテレフォンサービスなどではテレビ版・OVA第2期に連なる世界である事が明言されており、特車二課棟の所在地もOVA第1期・劇場版1作目で設定されていた大田区城南島の埋立地には存在しない様子である。本作中では18号埋立地に通じる海底トンネルの入り口が城南島東端に存在する。ファンの混乱を避けるため公式ファンブック等ではパトレイバーはテレビ・OVA・映画・漫画・小説全てがパラレルワールドであることが明記されている。漫画版とは直接的な繋がりはないが、本作の公開に合わせて、ゆうきまさみが漫画版の扉絵に本作のキャラクターやレイバーを登場させたほか、「PATLABOR 2002」と題して本作の野明と遊馬をイメージしたピンナップを描いている。しかし、それらはいずれも週刊少年サンデーに掲載されたのみで単行本未収録となっている。東京の描写は、劇場版第一作の「過去の東京」に対し、本作では「現在の東京」がモチーフになっている。劇中でテレビなどのニュース番組の内容が映されているが、日本語のアナウンスは複数の文化放送の現役アナウンサー(当時)が声優として出演している。また、自衛官や民間人など、主要キャスト以外の声に敢えて素人を起用している。「声優による上手すぎる演技」を払拭する事で、現実感や臨場感を強調する為の措置であるという。しかし、後年のサウンドリニューアル版ではプロの声優での収録となっている。本作ではあくまで後藤をメインに話が展開され、一作目に比べ(旧)第二小隊の面々の登場割合が激減している。一方で、前作以上に「鳥」が随所で登場している。これは、押井の「空を飛ぶものは、人間からすれば怖いもの」という考えに基づいた演出であるという。「ヘルハウンド」に関しても、デザインこそ前作のものではあるが、河森いわく「猛禽類が獲物を狙う様をイメージソースとした」と語る本機を、鳥類のメタファーとして効果的に登場させている。柘植が野戦基地を構え、ラストシーンの舞台となる「18号埋立地」は架空の場所であるが、このシーンのロケハンは、実在の13号埋立地で行われた。国に正式な手段を踏んで許可を取らなければ取材や立ち入りもできない地域とのことで、角川グループを通し、名目上は『埋立地のゴミ処理問題を調査する記事の取材』と称して『そのコメンテーターとして映画監督の押井守氏に同行していただく』という建前で申請された。その取材記事は当時のアニメ誌『月刊ニュータイプ』に掲載されている。本作は富野由悠季による『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を絶賛する押井からのある種の回答やテーマに関する呼応の意味が込められている事が、同人誌『逆襲のシャア友の会』における庵野秀明との対談で告白されている。押井が他人の映画をほぼ手放しで褒める事は極めて稀な事であるが、押井との対面時にそれを告げられた富野は、同じく庵野との対談で「お世辞だと思って聞き流した」と語る。これに関してその場で庵野は「あの人(押井)はそんなに世渡りが上手くないです」と加えている。イメージソングとしてMANAによる「愛を眠らせないで」というCDシングルが発売されているが、事前のプロモーションやテレビ・ラジオCFなどで流れたのみで、本編中では聴くことはできない。また、この曲に川井憲次は参加していない。川井憲次によるサウンドトラックアルバムは三種類が発売されている。まず、劇場公開一週間前の1993年8月1日には本編の予告編的な意味合いを持つイメージアルバム「PATLABOR 2 the Movie/PRE SOUNDTRACK」が発売され、続いて9月21日に正式な劇中サントラ盤となる「ORIGINAL SOUNDTRACK "P2"」が発売された。1998年発売の「PATLABOR 2 the Movie "SOUND RENEWAL"」は本作のDVDソフト化に際しリニューアル(再録音)された音源を収録している。劇中歌「おもひでのベイブリッジ」は前売りチケットマガジン付属のシングルCDに美桜かな子が歌ったバージョンが収録されている。また、のちにVAPより単発のシングルCDとしても一般発売された。こちらには美桜バージョンと劇中で使用されたカラオケ・バージョンの他に、「しのぶと喜一」(榊原良子と大林隆介)によるデュエット・バージョンも併せて収録されている。物語終盤において、南雲しのぶと旧第二小隊の面々とレイバーを載せた列車は丸ノ内線の「新宿三丁目駅」および「四谷三丁目駅」を通過する。その後「新橋駅」に向う途中、線路は駅の手前で一度地上に出る。その間に列車は自衛隊の治安部隊に発見され、新橋駅に先回りして別働の隊員が配備される。だが、直前で何者かの手によりポイントが切り替えられており、列車は自衛隊員の待つホームには姿をあらわさなかった。南雲達を載せた列車は丸ノ内線から(おそらくは赤坂見附駅にある丸ノ内線と銀座線の連絡線を経由して)昭和13年に封鎖された銀座線の「幻の新橋駅」に乗り入れ停車する。これは現在使用されている新橋駅ではない。もともと銀座線は昭和9年に東京地下鉄道という会社が浅草-新橋に建設した路線を使用している。そして昭和13年、これとは別に東京高速鉄道が渋谷-新橋に地下鉄線路を敷いた。この時点でふたつの地下鉄にそれぞれの新橋駅が並立したことになる(東京メトロ銀座線新橋駅も参照のこと)。しかし、東京高速鉄道の五島慶太社長が東京地下鉄道の株を大量に買い占めたため、ふたつの路線はつながれることとなり、東京高速鉄道の新橋駅は約8箇月で閉鎖されてしまう結果となった。この閉鎖された駅を含む地下空間が後藤と荒川が南雲たちを待っていた場所だった。この「幻の新橋駅」(旧東京高速鉄道の駅)は現在の新橋駅として使用されている東京地下鉄道の駅とは、西端(虎ノ門方)券売機の壁一枚しか隔てていない。劇中では「昭和18年に閉鎖されて以来半世紀以上眠っていた地下鉄銀座線の幻の新橋駅」と述べられているが、そのモチーフ自体は実在するものである。だが、映画のシーンに映る空間は、押井守の著書「METHODS-機動警察パトレイバー2演出ノート-」によれば、とある工事現場を参考に設定がおこされた情景であることが述べられており、劇中でも「湾岸開発華やかなりし頃に建造された地下鉄銀座線の幻の新橋駅と湾岸の工区とを結ぶ新旧の結節点」と説明しているため、正確には「幻の新橋駅を拡張(あるいは隣接)する形で作られた架空の空間」と考えるべきであろう。ただし実際の駅の様子も当時ロケハンされており、本編では駅名プレートのみ実在のものをそのまま再現して描いている。現実の「幻の新橋駅」も劇中の様に本線から電車が進入出来るため、線路自体は留置線として現在も使用されていて日に数度回送車両が入線している。現在この駅は「新橋駅幻のホーム」と名付けられ、東京メトロが主催するイベント等で、内部を見学できる機会が設けられているが、その様子は劇中から想起される「廃駅」という言葉のイメージからは程遠く、かつてホームだった場所には駅員・関連会社職員用の施設(点呼場・講習室、休憩室・寝室、トイレ等)が後から建設され当時とは様相を異にしている。見学者用に当時の遺構や資料なども用意されてはいるが、これらは1997年に銀座線の開業70周年記念イベントに際した大掃除とリニューアル作業が実施されて以降のことであって、それ以前は通常使用される場所以外は必要最低限の管理に留めていた期間が永らく続いていたため、本作品の取材が行われた当時は場所によっては内部が雑然とした状態だったという。東京地下鉄の公式発表によれば駅の設計図などは現存しておらず、当時の改札口や地上への出口がどこにあったのかも正確には分っていないが、構内の構築物の状況からおおよその場所は特定されているとの事である。なお、これら一連のシーンのあと列車はさらにレールを通って湾岸部周辺(大田区城南島東端)まで進んでいるが、その間の描写はなく、観た者の想像に委ねられるかたちとなっている。だが、既存の路線から考えれば「結節点」の先は恐らく都営地下鉄浅草線に通じており(実際に新橋駅は銀座線と浅草線の連絡駅である)、そこを経由しながら目的地点へと到達したものと考えられる。都営浅草線は西で京急本線に通じているため、直接羽田空港や小島新田駅(行政区分上の所在地は神奈川県)等の東京湾岸エリアに直通している。また、製作当時は小島新田駅付近はJR川崎貨物駅から貨物列車乗入れのため三線軌条化されており、1067mm軌間との接点にもなっていた。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。