精神障害者保健福祉手帳(せいしんしょうがいしゃほけんふくしてちょう)は、1995年(平成7年)に改正された精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)に規定された精神障害者に対する手帳制度である。表紙の記載から、『障害者手帳』と呼ばれる場合、広義の「障害者手帳」のうち、これのみを指す場合がある。1995年(平成7年)の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の改正で同法第45条に規定された障害者手帳である。精神障害者が一定の精神障害の状態であることを証する手段となり、各方面の協力を得て各種支援策を講じやすくすることにより、精神障害者の自立と社会参加の促進を図ることを目的としている。発達障害者に対しては、ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)の「(F00-F99)」に含まれるため、知的障害を伴わない場合で基準を満たせば交付されることとなっている。本手帳制度の施行により、障害者基本法第2条に規定された障害者(身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む。)があり日常生活に制限を受ける者)に手帳制度が整った。身体障害者手帳・療育手帳と異なり、手帳には2年の有効期限がある。2年ごとに医師の診断書とともに申請をし、手帳を更新する。診断書に基づき、診断書が書かれた時点での申請した当事者の能力障害、機能障害(精神疾患)の状態を精神保健福祉センターが判断し、手帳の支給・不支給ならびに、支給の場合は等級が決定される。更新した場合は、期限が切れる旧手帳は返納し新しい手帳が支給される。不支給や、支給された場合でも等級に不服がある場合は、期日以内であれば再申請や不服申し立てができる。申請をしたからといって、自動的に手帳が支給されるわけではなく、新規申請の場合も、手帳を更新する場合も、必ず審査を受ける。この手帳を持っていることにより、後述のような各種サービスや就労支援を受けられる。就労している場合は、年末調整や確定申告により、所得税・住民税の障害者控除の対象となる。また、精神障害者保健福祉手帳を所持している当事者を雇用した企業やその他法人へ、日本国政府からの補助金支給などの措置も行われている。精神状態が快方に向かった場合など、諸事情で更新申請をしない場合、申請をしても不支給の認定を受けた場合は、手帳は自治体へ速やかに返還することとなり、有効期限後は効力を失う。手帳が失効した場合は、都道府県知事が記載する精神障害者保健福祉手帳交付台帳から個人記録は削除される。すなわち、障害者としての公式な認定は無くなる。手帳は他人へ貸与ならびに譲渡できない。都道府県知事には、あらかじめ指定された医師の診断に基づいて、精神障害の状態にないと判断した場合は手帳の返還を命令できる権限がある。また、申請を受け、精神障害と認定せず、手帳を支給しない場合は都道府県知事は申請者に理由を通知する義務がある。手帳の表紙には「障害者手帳」とのみ表示され、表紙を見ただけでは、精神障害者の手帳であることが分からないようになっている。これは被交付者のプライバシーに配慮したもので、他の障害者よりも深刻な偏見や差別・価値観の相違による無理解が、なお強く残存する日本の社会情勢を鑑みたものである。表紙の色は都道府県や政令指定都市により異なり、例えば東京都は緑色、千葉県は濃緑色、神奈川県では濃青色である。手帳には証明写真が貼付される。これは2006年(平成18年)10月1日申請分から改訂されたもので、当初は既存の2制度と異なり顔写真の貼付は不要であった。更新義務のない身体障害者手帳や療育手帳と異なり、発行後2年の手帳有効期限が定められているため、写真の添付されていない旧様式の手帳は、順次写真添付の新様式に更新された。厚生省(現・厚生労働省)保健医療局長通知「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」の「精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準の説明」によると下記の疾患が対象である。「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令」によって手帳には障害の程度により、重い順に1級・2級・3級と決められており、手帳の等級によって受けられる福祉サービスに差がある。本手帳の1級は障害基礎年金の1級に、2級は障害基礎年金の2級にほぼ比例する。3級については障害厚生年金の3級よりも幅が広い。もっとも本手帳と障害基礎年金は別の制度であり、本手帳の等級が1級であるから障害基礎年金は確実に1級と認定される保証はない(障害基礎年金の判定業務は日本年金機構(旧社会保険庁)が行う)。障害年金の受給者は、医者の診断書の代わりに年金証書を提示することで年金と同じ等級の手帳の交付を受けられる。判定業務は各地域の精神保健福祉センター(地域によっては名称を精神医療センターとしているところもある)が行う。判定基準は厚生省保健医療局長通知「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」の中に書かれている「精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準」による。判定材料は申請時に提出された診断書をよりどころにしている。判定基準は「精神疾患(機能障害)の状態」と「能力障害の状態」の各指標で構成されている。等級や各発行自治体により異なるが、共通して下記の福祉施策が実施されている。自治体における福祉サービスは、自治体運営交通機関の運賃減免・公共施設等の利用料減免・地方公共団体運営の公営住宅への入居優先などがある。民間事業者にあっては、携帯電話料金(携帯電話料金の障害者割引を参照)・映画館や劇場の入場料金・テーマパークや遊園地の利用料金などに割引制度が存在するほか、バスに関しては平成24年7月31日に改定された「一般乗合旅客自動車運輸事業標準輸送約款24条」に「精神保健及び精神障害者福祉に関する運賃を割引する」旨明記された事により、事業者判断や都道府県の福祉予算による助成で、運賃・料金を割引する事業者が増加している。法律第45条第2項の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者に対する割引」が規定されたためNHKでは受信料の免除が設けられている(1級若しくは2級で市県民税非課税世帯)。自治体におけるサービスは、等級によって免除・割引率が違う場合もあるが、民間福祉サービスにおいては、概ね等級における変化はない。手帳を提示することにより受けられる優遇対象は、公共の施設・制度を主としたもので、実質的な優遇内容は被交付者が居住する地域の施設・制度の整備度合いに依存する。制度の適用範囲に自治体間で相違があることから、他地域へ転居した場合など、他の自治体発行手帳では利用できないサービスも存在する。これまで精神障害者は、法定雇用率の対象とされていなかったが、2006年(平成18年)4月1日の障害者自立支援法施行に伴い、精神障害者保健福祉手帳所持者については、法定雇用率の対象とされるようになり、2012年(平成24年)には、雇用の義務付けの方針が厚生労働省内で定まった。鉄道事業者においては、JR・大手私鉄など、身体障害者・知的障害者(身体障害者手帳や療育手帳を所持する精神・発達障害者を含む)に対しては割引を行ってる事例が大半であるが、精神障害者(精神障害者保健福祉手帳のみの所持者及び手帳非所持者)に対しては割引を行っていない事業者が多い。県の障害者担当課などの働きかけにより、その県内の全バス事業者に精神障害者割引を適用している県もある。また、前節の通り自治体が運営する地下鉄や路線バスなどの公共交通機関では料金の割引や無料パス交付等の支援措置がとられる場合がある。東海旅客鉄道(JR東海)では、平成20年度に国土交通省が行った業務監査において、「福祉割引(障害者割引)は日本国政府の福祉政策の一環として行政の費用負担で行われるべき」と回答した。また航空運賃およびNEXCO管轄の高速道路・有料道路、都市高速などの地方道路公社の多くでも精神障害者向けの割引は行われていない。なお療育手帳では、全日本手をつなぐ育成会等、関係諸団体の運動の結果、JR運賃や鉄道料金の割引制度が設けられた。厚生労働省は従来より発達障害は精神障害の範疇としていた。同省の通知では申請用診断書に発達障害に当たるICD-10カテゴリーF80-F89、F90-F98の記入が可能である。参考までに都道府県または政令指定都市によっては知的障害者向けの障害者手帳である療育手帳の取得が可能な場合がある。日本では発達障害専門の障害者手帳はない。 手帳自体にはIQ検査の診断から、50~69程度と生活年齢の遅れで、軽度の知的障害がみられる場合も多い。最近では知的障害者に配慮した福祉サービスも行われてる。療育手帳とは違い合併症が見られる傾向は少ない方で、3級の登録が特に多い。重心化したものでは対象外である。手帳取得後は更新が必要である。たとえば精神障害者福祉手帳3級の更新は2年に1回、2014年時点で更新書類を精神科クリニックに通い、精神科医に書いてもらい該当する施設に精神障害者福祉手帳と提出する。都道府県知事は精神障害者保健福祉手帳交付台帳を備えて、手帳の交付に関する事項を記載する義務がある。精神障害者保健福祉手帳を返還をするか死亡した場合、記載された事項は削除される。記載される個人情報は精神障害者の氏名、性別、住所及び生年月日、障害等級、精神障害者保健福祉手帳の交付番号、交付年月日及び有効期限、精神障害者保健福祉手帳の再交付をしたときは、その年月日及び理由である。一部の精神障害者患者会が、当時の大きな圧力団体である全国精神障害者家族会連合会および全国精神障害者団体連合会が、厚生省に要望して強引に制定したとの証言がある。また病者総番号制、結局精神病者分断(行政に都合の良い精神病者と都合の悪い精神病者を分けるだけ)と批難している。認定条件は日本国政府が示した「精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準」によりつつも都道府県、政令指定都市で幅広い裁量があるため、行政行為としての信頼性と安定性を損なっている、障害者施策の推進に手帳が役に立っていない(実質生活保護の障害加算の決定程度)、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律には、身体障害者福祉法第15条に定めている指定医制度のような制度がなく、精神科医でなく事実上知識が浅くても、手帳申請用の診断書が書けてしまい、その診断書によって正しい判定がされず、精神障害者の権利侵害につながるなどが指摘されている。精神障害者保健福祉手帳を持っていることにより、所得税や住民税などの控除を受けていた労働者が、何らかの理由で手帳が失効した場合、税金負担が一般と全く同じになり、生活が圧迫される。精神障害者保健福祉手帳の判定の基準が、未だに旧式の国際障害分類(ICIDH)に則っていることに対して、批判がある。障害については、21世紀を迎えた現在では、国際生活機能分類(ICF)の基準が広まっているからである。2009年(平成21年)に、神奈川県にて携帯電話料金の障害者割引目的での手帳偽造事件が発覚している。2014年(平成26年)には、受け取る障害年金の額を上げようと目論んで、医師の診断書を偽造する事件が発覚した。障害者自立支援法が施行される前まで、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)第32条により精神科通院医療費の一部を公金にて負担した制度があった。この制度の申請時にこの手帳が交付されている者は医師の診断書が不要であった。
出典:wikipedia
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