『ゲド戦記』(ゲドせんき、"Earthsea")は、アーシュラ・K・ル=グウィンによって英語で書かれ、1968年から2001年にかけて出版されたファンタジー小説。「戦記」と邦訳されているが戦いが主眼の物語ではなく、ゲドが主人公として行動するのも最初の一巻のみである。原題も作品世界を意味する『Earthsea』(アースシー)となっている。全米図書賞児童文学部門、ネビュラ賞長編小説部門、ニューベリー賞受賞。英語圏におけるファンタジー作品の古典として、しばしば『指輪物語』『オズの魔法使い』と並び称される。文学者マーガレット・アトウッドは『ハリーポッター』や『氷と炎の歌』など近年流行した幻想小説に影響を与えた作品として、ゲド戦記一巻の『影との戦い』を挙げている。日本語版は、清水真砂子の訳により、岩波書店から出版されている。岩波少年文庫、ハードカバー、内容は変わらないが、大人向けにデザインを変えた物語コレクション、映画化の際に発行したソフトカバーの4ヴァージョンが発売されている。
「影との戦い」のみ、同時代ライブラリー(現在は終刊)から発売されたことがある。2007年現在、日本語版の発行部数は200万部。この世で最初の言葉を話したセゴイによって海中から持ち上げられ創られたと伝えられる、太古の言葉が魔力を発揮する多島海(アーキペラゴ)、アースシーを舞台とした魔法使いゲドの物語。アースシーのうち、主にハード語圏では森羅万象に、神聖文字で表記される「真(まこと)の名前」が存在し、それを知る者はそれを従わせることができる。人は己の真の名をみだりに知られぬように、通り名のみを名乗る。主人公を例に採ればゲドが真の名で、ハイタカが通り名である。ゲド(ハイタカ)の少年期から青年期の物語。ゲドは才気溢れる少年だったが、ライバルよりも自分が優れていることを証明しようとして、ロークの学院で禁止されていた術を使い、死者の霊と共に「影」をも呼び出してしまう。ゲドはその影に脅かされ続けるが、師アイハル(オジオン)の助言により自ら影と対峙することを選択する。アチュアン神殿の大巫女テナー(アルハ)が中心の物語。「名なき者たち」に仕える巫女達によって親から引き離され、名前(自己)を奪われ、地下神殿の闇の中で大巫女として育てられるテナー。そこに、二つに割られ奪われた「エレス・アクベの腕輪」(銀製)を本来あるべき場所に戻し、世界の均衡を回復しようとする大魔法使いゲドが現れる。腕輪奪還と「名なき者たち」との争いの過程で地下神殿も崩壊する。少女の自己の回復と魂の解放の物語でもあり、ゲドとテナーの信頼、そして愛情の物語としても読める。大賢人となったゲドが登場する。世界の均衡が崩れて魔法使いが次々と力を失う中、エンラッドから急を知らせて来た若き王子レバンネン(アレン)と共にその秩序回復のため、世界の果てまで旅をする。ゲドの留守中に“石垣の向こう側”から“この世”へ侵入があり、学院の守りも破られてしまう。なお、終焉と世界の変化を暗示する結末から、第4巻が発表されるまでの十数年間、ゲド戦記は「三部作」とされていた。ゲド壮年期の物語である。ゲドは先の旅で全ての力を失い、大賢人の地位を自ら降りて故郷の島へ帰ってきた。そこで子供たちを産み、未亡人となったテナー(ゴハ)は親に焼き殺されかけた所を危うく救われた少女テハヌー(テルー)と生活していた。ゲドはテナーと生活を始める。ところが元大賢人と元巫女という存在は故郷の一般の魔法使いにとっては目障りでしかなく、3人の「弱き者」たちを容赦なく悪意に満ちた暴力が襲う。魔法の力を失った後に見えて来るアースシーの世界を覆う価値観とは、一体何なのか。それを作者自らが問いかけている作品とも言える。第3巻と第4巻の間には発表までに長い間隔があり、フェミニズム色の強い第4巻に戸惑う読者も、また高く評価する読者も、少なくないようである。また、第5巻以降は「9.11」(アメリカ同時多発テロ)後の混沌としたアメリカの世界観が如実に表れている。旧版では“―ゲド戦記最後の書―”という副題が付されていた。かつてゲドと共に旅をし、アースシーの王となったレバンネン(アレン)や、ゲドの妻となったテナー、その二人の養女となったテハヌー(テルー)が物語の核となっていく。竜や異教徒のカルガド人によって、従来の正義であった「真の名」という魔法の原理への批判が行われ、これまで作り上げられてきたアースシーの世界観を根本から壊していくような物語構造となっている。女の大賢人の可能性や世界の果てにある理想郷、また死生観への再考、長年敵対していたカルガド帝国との和解も暗示。テハヌーと竜との関わりも明らかにされ、確実に物語の中心はゲドからレバンネン、テハヌーの世代へと移り変わってきている。原題である"The Other Wind"に対し、日本語版の題名は「新しい風」の予定だったが「新しいではない」との翻訳者および作者本人の意見を受け現在のものとなった。邦訳から暫くは「ゲド戦記外伝」という題だったが、現在は「ドラゴンフライ アースシーの五つの物語」へ改題されている。『アースシーの風』以前に発表された中短編5作品と、著者によるアースシー世界についての解説を収録。特に「ドラゴンフライ」は『アースシーの風』と深いかかわりがあり、先に書かれたこちらを読むと理解が早い。初期短編集「風の十二方位」The Winds Twelve Quarters (1975)のなかに、がある。人界以外の地域の様子が不明で世界は平面であるとされている、電気や動力が存在せず明かりは裸火や魔法による灯し火のみなど、大航海時代前後の近世ヨーロッパに似る。基本的には伝統的な欧米におけるファンタジーの伝統を踏襲している。一方で人々の大半は赤い肌や浅黒い肌をしており、白い肌を持つのはカルガド帝国の住民のみであるなど独特の部分も存在する。スタジオジブリ制作、宮崎吾朗(宮崎駿の長男)監督・脚本。東宝配給で2006年7月29日より、長編アニメーション映画として劇場公開された。なお、この映画の副題として用いられている"Tales from Earthsea"は、原作「ゲド戦記外伝」の原題。第3巻を中心に、他の巻の要素と宮崎駿の短編「シュナの旅」の要素を加えてストーリーを編集した、独自の脚本である。原作者の公式コメントで、原作者の意に反する内容だったことが明らかになり、論議を呼んでいる。
出典:wikipedia
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