本稿では標準ドイツ語の文法を示す。格 (Kasus, Fall) は、名詞句や代名詞が文の中でどのような役を担うかを文法的に示す語形変化であり、ドイツ語では重要である。ラテン語や古典ギリシア語などの古典語と異なり、名詞自体の格変化はごく一部に残るだけで、多くの場合は限定詞(冠詞など)が格を表示する点に特徴がある。ドイツ語の格には主格 (Nominativ)、属格 (Genitiv)、与格 (Dativ)、対格 (Akkusativ) がある。なお日本では(学術的用途も含めて)これらの格をそれぞれ1格・2格・3格・4格と呼ぶことが多い。これはドイツ語の 1. Fall, 2. Fall, 3. Fall, 4. Fall に相当し、また Werfall, Wes(sen)fall, Wemfall, Wenfall の名称もある。しかし、英米のドイツ語教育では使われず、また(表にする場合等の)順序もnominative, accusative, genitive, dative(米では dative, genitive)の順となる。ドイツ・オーストリアにおいては初等教育で 1. Fall, Werfall 等が用いられる。なお、ドイツではラテン語は今日では必修科目ではないため(選択科目)、ラテン語起源のNominativ等を中等教育以降用いることは、ラテン語教育とは関係ない。単なる文法用語としての位置づけである。代名詞 (Pronomen, Fürwort) は名詞句の代わりに使われる機能語である。なお、伝統的なドイツ語文法では、限定詞のことも代名詞と呼ぶ。指示限定詞の der を除き、限定詞は形を変えずに代名詞になれる。人称代名詞 (Personalpronomen, persönliches Fürwort) は話し手(一人称)、聞き手(二人称)、および文脈上明らかな第三者や物(三人称)を指し示す代名詞である。二人称は親称の du(単数)、ihr(複数)と敬称の Sie(単複同じ)があり、15歳以下の子供と大人の間では子供が大人に敬称、大人が子供に親称を用いるが、大人同士では普通互いに敬称を用いるか、親称を用いるかのいずれである。上下によるものではないため、上司に du を用いることもある。逆に上司と部下が顔を合わせる機会が少ない関係にある場合、双方から Sie で呼び合うこともある。なお、書籍などではポライトネスが直接要求されないため du を用いるのが普通(例えば「参照せよ」「…ページを見よ」などは du に対する命令形を用いる)。また、ドイツ語版ウィキペディアのコミュニティーにおいても du が用いられている。大人の間では一般的に du の呼称は与えられるものである。 Sie で呼び合う関係がより親密になったことで「今日から私を du と呼べ」などと言われる(相手を du で呼ぶ許可も暗に求めている)。これ以外で du を用いると非常な失礼に当たるし、du で呼び合う関係でありながら改まった席でもないのに Sie を用いるとそれまでの良好な関係を否定することにつながる。なお、ドイツ語話者は du で呼びあう関係では場面を問わず du を用いるのが一般的。呼びかけには Sie で呼ぶ人には「~さん、~様」に当たる「Herr(男性)/Frau(女性) + 苗字または肩書き」を用い、du で呼ぶ人にはファーストネームまたは愛称を用いるのを基本とし、年下の相手には Sie を用いていてもファーストネームで呼び掛けることも少なくない。親密になって Sie で呼びあう関係から du で呼びあう関係に移行した時、同時に「Herr/Frau...」という呼び方をやめてファーストネームに呼び変える。指示代名詞 (Demonstrativpronomen, hinweisendes Fürwort) は、会話の場や文脈において人や物を直接指す限定詞・代名詞である。ドイツ語の文法では、所有限定詞をしばしば「所有代名詞」(Possessivpronomen, besitzanzeigendes Fürwort) と呼ぶ。関係代名詞 (Relativpronomen, bezügliches Fürwort) は関係節を導く代名詞である。疑問代名詞 (Interrogativpronomen, fragendes Fürwort) は疑問文において内容が問われる代名詞である。不定代名詞 (Indefinitpronomen, unbestimmtes Fürwort) は不定の人や物を指す代名詞である。以下は不定限定詞である。再帰代名詞 (Reflexivpronomen, rückbezügliches Fürwort) は主語と同一の人や物を指す代名詞である。主格は存在しない。また、一・二人称は人称代名詞と同じである。主文の定動詞は文の構成要素の内、2 番目におかれる。V2語順を参照すること。このため、英語とは異なり、主語が最初に来ないとき、主語は動詞の次におかれる。主語は原則として省略はされない。ドイツ語の動詞は、法・態・時制・人称・数に従って活用する。動詞は規則変化する動詞と不規則変化をする動詞に分かれる。規則変化する動詞は弱変化動詞ともいい、不規則変化をする動詞は強変化動詞、混合変化動詞、そして若干の本来の不規則変化動詞(sein, werden等)に分類される。ただしこの分類は、主に不定形・過去基本形・過去分詞の形態の変化に基くもので、人称および数に従う変化は語尾の規則的変化である場合が多い。ドイツ語の時制は、現在と過去である。英語では、未来を表す時は一般に助動詞 will を加えるが、ドイツ語では未来の事象について助動詞 werden は必須ではなく、むしろ推測の意味が前面に出るので、時制とはいいきれない。ドイツ語では対格目的語をとるものを「他動詞」という。他動詞は haben 支配である。規則動詞の活用を、「学ぶ」という意味の規則動詞 lernen(語幹 lern + 語尾 en)を例として示す。敬称の二人称 (Sie) は文法的には三人称複数なので、lernen と活用する。-Ø はゼロ接辞を表す。強変化動詞の活用を、「見つける」という意味の動詞 finden(語幹 find + 語尾 en)を例として示す。語尾変化は規則動詞と同様。混合変化動詞の活用を、「知る」という意味の動詞 kennen(語幹 kenn + 語尾 en)を例として示す。語尾変化は規則動詞と同様。sein はコピュラであり、英語の be、フランス語の être などに相当する。日本語では「である」、「ある」と訳される。 定動詞としての用法のほか、完了時制の助動詞となる。敬称の二人称 (Sie) は文法的には三人称複数なので、sind を用いる。haben は、英語の have などに相当する。日本語では「持つ」と訳されることもある。定動詞としての用法のほか、完了時制の助動詞としても使われる。 敬称の二人称 (Sie) は文法的には三人称複数なので、haben を用いる。werden も、上記 sein, haben に劣らず重要な動詞である。本動詞として「~になる」(英語: become)の意味をもつほか、過去分詞と共に受動態、不定詞と共に未来(あるいは推量)を作る助動詞でもある。過去・接続法は規則どおりであるが、現在は不規則である。複合動詞 (zusammengesetztes Verb) とは複合語の動詞である。前つづり(接頭辞)により挙動が異なる。名詞 (Substantiv, Hauptwort) は必ず大文字から始まる。なお代名詞は名詞ではない。また、男性・女性・中性の性を持ち、それぞれ男性名詞 (Maskulinum (m.) – ein männliches Hauptwort)・女性名詞 (Femininum (f.) – ein weibliches Hauptwort)・中性名詞 (Neutrum (n.) – ein sächliches Hauptwort) という。また、複数 (Plural, 略: Pl.) になると、名詞の性に関わらず複数の形を取る。複数型の語尾には、-(無語尾), -e, -er, -(e)n, -sの五つのパターンが存在する。名詞の複数形は、名詞の性および単数形の語尾と密接な関係がある。-sによる複数は外来語や略語、他の品詞が名詞化された場合などに用いられる。他の四つは次のようになる。女性名詞は圧倒的に-(e)n型が多く、-er型はない。また女性名詞は冠詞等によって与格以外の単数形と複数形を区別することができないので、幹母音がウムラウトしない無語尾型はない。(幹母音がウムラウトする無語尾型も上に示したようにMutterとTochterのみ。)無語尾型は本来は-e型だったが、アクセントのないeが二つ重なるのを避けるために省略されたもの。(同様の理由で-el, -en, -erで終わる男性・中性の単数与格に-eは付けないし、単数属格は-esとはならず常に-sである。)-e型及び無語尾型の幹母音は、女性名詞は必ずウムラウトし、中性名詞は上に示した極少数の例外を除きウムラウトしない。男性名詞はウムラウトする場合としない場合があるので、一つずつ覚えなければならない。-er型は本来中性名詞の一部にのみ用いられていたが、勢力を拡大し、一部の男性名詞にも用いられるようになった。幹母音は必ずウムラウトする。その他の外来語(ラテン語・ギリシア語)中性名詞 Klima のようにギリシャ語、ラテン語と同様の複数形を持つ場合もある。ドイツ語の名詞句を構成する冠詞、形容詞、名詞には、いずれも格変化が存在する。しかし、ラテン語やギリシャ語と違い、構成要素のうちいずれか一カ所で性・数・格の判別がつくのであれば他の部分は必ずしもそれらを明示しなくてもよいという特徴を持つ(例に挙げた二つの言語では全ての要素の性・数・格を一致させる)。したがって、名詞句の構成のされ方によってどの部分で格が示されるかに注意を払う必要がある。また、ドイツ語では複合名詞が作りやすいため、よく使われている。複合名詞は複数の名詞をスペースを入れずにつなげて表記するので、そのままでは辞書に出てこない場合も多い。冠詞には定冠詞 der(英語の the)と不定冠詞 ein(英語の a/an), keinがある。複数の不定はゼロ冠詞である。定冠詞の付いた名詞句の格変化 (Deklination) を以下に示す。ちなみに少し古いドイツ語では、男性・中性名詞(語尾が-el, -en, -erのものと、男性弱変化名詞は除く)の単数与格には、 -e の語尾が(ギリシャ語の与格のイオタと同様)付いていた。また複数が-(e)nとなる女性名詞は本来弱変化名詞で、主格以外の単数形にも-(e)nが付いていた。そのため現代ドイツ語でも熟語化した表現にはこの語尾が現れることがある。例えば nach Hause や zu Hause、auf Erden など。形容詞 (Adjektiv, Eigenschafts- oder Beiwort) の変化を、gut を例に示す。定冠詞(類)と同様の強変化する。属格で語尾に -(e)s を伴う大半の男・中性名詞に形容詞がついた時はその形容詞は弱変化する(語尾 -en が付く)が、男性弱変化名詞は属格を示す語尾がない為、形容詞は強変化する(語尾 -es が付く)。定冠詞類が格変化するので弱変化になる。基本的に不定冠詞が格変化して弱変化になる。不定冠詞が弱変化のところ(男性主格・中性主格・中性対格)のみ強変化になる。現代ドイツ語の命令法(独:Imperativ)には、2人称du (君), ihr (君たち), Sie (あなた、あなた方)に対する形が存在する。du, ihrに対する命令形は主語がない(Komm!「来い」)。それに対して敬称のSieに対する命令形は、主語が存在する(Kommen Sie!)。その点で接続法Ⅰ式に対応していると言える。活用は主に次のようになる。例外としてseinは次のように不規則変化をする。
出典:wikipedia
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