信託(しんたく、)は、ある人Aが自己の財産を信頼できる他人Bに譲渡するとともに、当該財産を管理・処分(運用)することで得られる利益をある人Cに与える旨をBと取り決めること、およびそれを基本形として構築された法的枠組みを意味する。Aを委託者(settlor, trustor)、Bを受託者(trustee)、Cを受益者(beneficiary)と呼ぶ。信託された財産を信託財産と呼ぶ。受託者は名目上信託財産の所有権を有するが、その管理・処分は受益者の利益のために行わなければならないという義務(忠実義務)を負う。歴史的には、中世英国法の「ユース」 (use) に端を発したと言われる。ユースは封建制度下の相続に対する世俗支配者のさまざまな干渉を回避するために発明された法技術であり、衡平法 (Equity) 裁判所で発達、更に英米法圏で発展した。日本においては明治38年にロンドンで起債して資金調達ができるようにする目的で担保附社債信託法(現在の担保付社債信託法)が立法されて導入され、その後、旧信託法が立法された。日本の信託法はカリフォルニア州信託法とインド信託法をモデルにしたと言われている。日本においては、各号に掲げる方法のいずれかにより、特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。同条において同じ。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう(1項)と定義され、信託法によって規律される。信託は、金融制度のインフラとして活用されている。また、信託は高齢者・障害者のための財産管理制度(福祉型信託)としても普及することが期待されており、生命保険信託と呼ばれる保険商品群が福祉型信託ニーズの受け皿として育ちつつある。営業信託は信託法のほか信託業法によっても規律される。1948年から2004年まで、金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(兼営法)による認可を受けた金融機関(信託銀行等)がもっぱら担い手となってきたため、証券投資信託、年金信託等、主に金融資産を運用するスキームとして用いられることが多い。しかし、動産・不動産を運用するスキームにも使われ、また、遺言信託や公益信託等、営業信託とは異なる用いられ方もする。2004年11月26日の信託業法改正によって、運用財産には知的財産権等が加わることになった。信託会社は、終戦直後以降、信託業務だけを取り扱う会社は皆無で、日本では長らく信託銀行7行(三菱・住友・三井・安田・中央・東洋・日本の各信託銀行)および旧・大和銀行のみの「信託兼営」の時代が続いてきたが、2004年の信託業法改正で銀行併営でない信託会社の新たな設立・発展が期待されている。平成19年度税制改正により、新信託法に対応するため税制が拡充・整備された。以下では、当該改正前の税制を解説した後、改正点を解説する。信託は法人格を持たず、受益者に所得を分配する導管にすぎないため、法人税を課する必要性を欠く(信託導管論)。そこで、信託自体に法人税は課されず、受益者が直接信託財産を保有しているものとみなして、収益発生時に受益者に所得税等を課税することを原則とする(法人税法12条、発生時受益者課税の原則。これは民法上の組合と同様である)。ただし、合同運用信託など同条但書に列挙されている類型の信託については、受益者が多数に上るといった事情があるため、収益受領時に受益者に課税することとされる(受領時受益者課税)。また、特定目的信託などについては信託段階で法人とみなして課税(法人課税)する一方で、一定の要件を満たす場合に支払分配金を損金に算入することを認め、二重課税を回避する(これは特定目的会社や投資信託、投資法人と同様である)。新信託法により受益証券発行信託などの新たな類型の信託が創設されたこと、それに伴い租税回避を防止する必要が生じたことにより、概略以下のような改正が行われた。本改正により、信託法上は有用であるように見える類型の信託が、税務上は大きなデメリットをもたらすことがあり得ることとなったため、注意が必要である。信託は、英米法圏にあっては法体系中において欠くことのできない要素である一方、大陸法圏においてその継受は遅かった。英米では衡平法(Equity)の成立過程において形成され受け入れられたが、大陸法の概念においては、財産法においては権利の本質が明らかではない実定法的概念であり、物的所有権を譲渡したあとに用益(Use)の受益を保証する行為は衡平的精神発動の結果に過ぎない信義に由来するものであり、本来的に市民法の一部とみなされるためである。信託の制度を受容した初期の例として、日本のほか米国ルイジアナ州およびカナダのケベック州があげられる。近時はフランスでも信託の立法論議が行われ、2007年に成立した仏民法の一部改正により同法2011条以下に規定が追加された。
出典:wikipedia
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