イージーオープンエンド(easy open ends)とは、缶切り等の道具を用いずに開缶できるようにした缶蓋である。略してEOE。なお、日本工業規格(JIS Z 0108:2012)では「開口用の道具を使用せずに、容易に開口できる機能をもつ缶ふた」を「イージーオープンふた」として定義し、その対応英語は「easy opening end」である。イージーオープンエンド(EOE)の缶蓋の種類には、蓋の一部のみが開口するパーシャルオープンエンド(POE)と蓋の全部が開口するフルオープンエンド(FOE)の2種類がある。パーシャルオープンエンド(POE)は蓋の一部のみが開口する缶蓋。POEは主に内容物が液体である場合に用いられ、缶ジュースなどの飲料向けに多く用いられる。POEにはプルタブ式とステイオンタブ式とがある。現在は飲料容器缶のほとんどすべてがステイオンタブ式(中国ではまだプルタブ式が用いられている)であるが、開口部の形状・大きさは内容物により多少異なり、中身が出やすいように幅を広くとったものなどもみられる。タブは指がかかりやすいようにリング状になっており、リングプルあるいはプルリングなどと呼ばれる。ただしステイオンタブ式では、リングと呼べるほどには大きくない。プルタブ式のように引っ張るのではなく、引き起こすだけで済むためである。しかし、力の弱い人や、美容上の問題などで爪を傷つけたくない人向けに、タブの下に差し込んで起こし、開けやすくする器具(プルタブ起こし)も販売されている。専用のもののほか、缶切りや栓抜き、十徳ナイフなどのマルチツールに備えられているものがある。マイナスドライバーの先端のような形状をしているが、用途がわからない人も少なからず存在する。フルオープンエンド(FOE)は缶蓋の面の全周にスコア(切欠き)が入っており全体が開口する缶蓋。日本工業規格(JIS)では「フルオープニングふた」として「缶ふた天面の全周にわたってスコア(切欠き)加工を施し、ふた天面全体が開口されるタイプのイージーオープンふた」と定義されている。食品としてはプリンやゼリーあるいは粉末のものなどに用いられる。テニスボールの缶など、缶の蓋のすべてが取れることが要求されるものにも用いられる。形状としては円形のほか楕円形や角型の缶の蓋にも採用されている。調理済食品の缶の一部には、スチールのFOE蓋が採用されている。FOE缶については、消費者に親しみを持ってもらうため、「パッ缶」との愛称で呼んでいる企業もある。なお、コンビーフなどの缶にみられるように、器具を用いて缶の周囲に刻まれたスコアを巻き切りながら開封する方式はスパイラル式という。缶の蓋部分は缶本体とは別に製造される。EOE缶の蓋は通常、まず板金を丸く打ち抜くと同時に、缶本体にかぶせるための段などをつける成型加工がなされる(シェルプレス)。その後に引き金であるタブをつけるためのリベット穴開けが行われ、開口部となる口金部分を切り取るための溝(スコア)がプレス加工によってつけられる(コンバージョンプレス)。切り取りラインとなるスコアは、深い溝であるメインスコアと、補助的な役目をするやや浅い溝であるサブスコアの2本が同時に加工される。次に引き金であるタブをつけた際に大きく突出しないよう、かつタブが蓋に密着しないようにするためなどの成型が、プレスにより行われる(パネル加工)。タブも板金から打ち抜かれ、十数工程を経て強固なリング状のものに成型され、これが蓋にリベットで取り付けられる。(アセンブル)打ち抜き加工の際に製品ロゴなどを同時に加工し、装飾を施したタブも見られ(写真)、この場合はリング状ではなく平板状なものとなる。これらの工程によってできた EOE蓋が中身を入れられた後の缶本体に取り付けられる。スコアとはイージーオープンエンド(EOE)に用いられる缶蓋に刻まれる切欠きをいう。スコアが割れはじめる(切れ始める)際に要する力をPOP値、全体を開けるのに要する力をTEAR値という。FOE において、前者は20N(ニュートン)以上ないと缶の密封性が損なわれる可能性があり、後者は80N以下でないと開けにくいとされる。しかし、これらの公的な規格などはない。近年では、スコアの形状が左右非対称になっているものがある。これはタブを起こしててこの原理で口金を押し込む際に、スコアに対して均等に力が分散することを防ぐためである。均等に力がかかると開けにくくなり、かつ開く際には急に開いてしまうので危険である。左右非対称にすると、その設定により、特定の部位からスコアが切れはじめ、時計回りに溝が切れていくなどのことが可能となり、ゆっくりと確実に開けることができる。この方式のイージーオープン缶を開ける際に、炭酸飲料ではないのに「プシッ」という音がするものがあるが、これはアルミ缶の清涼飲料水などに見られる現象である。缶の素材が薄くて軟らかいため、運搬時などにおける変形を防ぐ目的で窒素ガスが充填され、内圧が高められているためである。「プシッ」音はそのガスが抜ける際の音である。従来からの缶詰においては缶切りを用いて開封するか、缶ジュースなどでは専用の穴開け器(オープナー)によって、飲み口(注ぎ口)と空気穴の2箇所の穴を開けて開封していた。1959年にアメリカのErmal Cleon Frazeが缶切り不用のEOE方式を発明し、1963年にその特許を 社に売り、Pittsburgh Brewing Companyに採用するように働きかけた。発明のきっかけは、ピクニックに缶ビールを持参したが、オープナーを持っていくのを忘れたためと伝えられる。1965年には日本にも技術が導入され、1983年には飲料用缶容器のすべてがイージーオープンエンド(EOE)となった。現在のような方式になる以前には、異なる方式も開発され、用いられていた。そのひとつがジューストップ(Juice Top)と呼ばれるもので、缶の開口部に別体の金属部分を取り付けたものである。その部品にスコアが切ってあり、タブを引くとスコアが切れて開口部となるというものであった(現在のオロナミンCの開栓方式に似ている)。別体の金属を蓋として取り付ける方法は、現在でも一部の調理済食品の缶詰などで用いられている。もうひとつジップトップ (Zip Top) という方式があったが、これはプルタブ式と同様に缶の蓋となる金属板そのものにスコアを切り、タブをリベットで取り付けたものである。しかし、これはタブが充分なリングとなっておらず、注ぎ口に対して斜めに取り付けられていた。タブを外してできる開口部は、ヒョウタンやベル(欧米での鐘)に似た、真ん中がくびれた形状であった。1965年には缶飲料全体の4分の1を占めるまでに採用されていたが、プルタブ式に切り替わっていった。ジップトップは開封に力が必要であり、タブがとれやすいなどの欠点があったからである。なお、このジップトップがErmal Cleon Frazeが発明した世界初のイージーオープンエンド(EOE)であり、採用したのは缶ビールであった。これらは時期が早かったこともあり日本にはほとんど紹介されなかった。1965年に日本に技術導入されたのはジップトップを改良したプルタブ式である。先述のようにイージーオープンエンド(EOE)の缶蓋のうち、蓋の一部のみが開口するものをパーシャルオープンエンド(POE)と呼び、その方式としてはプルタブ式が普及していた。しかし、それは開口部が金属片となって缶本体から切り離されるものであったため、その危険性や環境問題が指摘されることとなった。そのため、1980年代にはステイオンタブ式が広まり始め、1990年代初頭にはほとんどすべてがそれに切り替わった。ただし、日本では現在でも中国などから輸入されたプルタブ式の飲料缶がわずかながら流通している。とくにアメリカでは、当時すでに同様な環境問題となっていたためにプルタブが禁止され、ステイオンタブ式が主流となっていたことが日本にも伝わり、市民の意識を高める助けとなった。また、そうした缶飲料が輸入されるようになり、珍しくなくなってきたことも影響した。ポイ捨て問題を解消すべく、企業などに問題提起と要望をした市民団体もあった。ステイオンタブ式にはその普及のために一時期エコマークがついていたことがある。ステイオンタブ式は、開口部分の口金が缶に付いたまま内部に押し込まれるため、当初は衛生的ではないなどの見方もされたが、実際に販売してみると市民の抵抗感などはほとんどなかった。この衛生問題については、新規な規格を取り入れることに消極的な企業側が、日本人は清潔好きだからといういわゆる清潔神話をもとに(自社の製品が売れなくなっては困るということで)述べていた可能性が指摘されている。プルタブ式であっても飲料が口に入る前に缶の外側に触れることは同じであり、「衛生的ではない」との声が消費者からのものであったのかどうかは不明である。なお、1975年には、プルタブのポイ捨て問題に対応するため、2箇所のやや出っ張った口金を指で押し下げる方式のプッシュエンド(またはプッシュボタン)という方式も炭酸飲料において採用された。内圧によって口金を押し付けて密閉している面もあるため、中身を不正に入れ替えることも不可能でなく、力が必要で操作感が良好でないなどいくつかの問題点により、それを採用した製品が市場に出回った期間はごく短かった。プルタブ式で用いられたプルタブについては、それらをチェーン状に接続加工し、のれん(欧米ではカーテン)などを作ることにも利用されたことがある。イージーオープンエンド(EOE)の缶蓋のうち蓋の全部が開口するものはフルオープンエンド(FOE)と呼ぶが、従来からの缶切りで開けたもの以上に開口部がスムーズで鋭利なため、誤って指などでさわってしまうと怪我をするおそれもある。ゴミの分別回収などが広まった結果、缶に残った内容物を洗うことなども多くなり、従来以上に問題となってきた面でもある。これについてはいくつかの対策が考えられたが、現在では切り口を触っても安全なものが開発され、製品によってはそうした缶を用いている。イージーオープン方式はプルトップ(pull-top)と呼ばれることがある。プルトップは、缶切り等を用いず、缶容器の上面に付けられた引き金(タブ)を手で引っ張って開ける方式、または、その部分を指す日本における一般的呼称である。プルトップの語は英語圏ではあまり用いない。用いる場合は食品などにおける全面が開口するイージーオープン缶(フルオープンエンド、FOE)に対して言うことが多い。飲料容器ではプルタブと称することが多いが、リングプル(ringpull)およびプルリング(pullring)の語も用いられる。リングプルのほうが優勢であり、プルリングはごく少ない。しかし、口金が外れるプルタブのことを指したりステイオンタブを含めたタブの総称として言われたりもし、使い分けが一定でない点は日本と同様である。ポップトップ(pop top)と呼ぶこともある。製缶企業においても全面が開口するタイプをフルパネルイージーオープン(FPEO)と呼ぶなど、業界でも国により呼び方が異なる。なお、こうした形式の缶が出る以前の缶は、蓋が平面であるものをフラットトップ(flat top)、ビンのように円錐形の「首」があり、王冠にて密栓・開栓を行うものをコーントップ(cone top)と呼んでいた。プルトップの語はそれに対して作られ、用いられはじめたと思われるが、はっきりしたことは不明である。一時期、飲料缶のプルタブを集めると車椅子に換えることができるという話が全国的に広まった。この話は、1983年のラジオ番組『「さだまさしのセイ!ヤング』内で呼びかけられた運動によって広く知られるようになったといわれる。番組では実際にリスナーから寄せられたプルタブを金属回収業者に引き取ってもらうことによって換金し、病院に車椅子を2台寄付した。アルミのプルタブを集める理由としては、が挙げられていた。もともと、このラジオ番組が放送される以前にも、散乱したプルタブを拾い集めることは、ボランティアグループなどによる環境美化運動のひとつとしてしばしば行われていた。そのうちに、収集したプルタブをより有効に活用し、また福祉と結びつけてより市民の参加を促すために、車椅子を寄付する運動が加わった。この運動を知った同番組は、番組内で積極的に紹介するとともに、同様の取り組みを行った。大阪府理容生活衛生同業組合では、平成14年度から現在までに延べ349台の車椅子を行政や各地の福祉施設に贈呈している。各支部の市内ごとでも車椅子も贈呈されており、発表されている349台以上の車椅子を寄付している実績がある。タブが缶から外れないように改良されて以降も、缶に固定されたリングタブのみを折り取って集めて送るよう呼びかけている団体が存在する。タブのみを集める理由として、回収している団体の一つである大阪府理容生活衛生同業組合や北海道江別市野幌の「プルネット」は「空き缶は輸送しづらい」「保管場所が足りない」「スチール缶が混じる可能性がある」といった理由を挙げている。しかし、アルミ缶回収業者の団体であるアルミ缶リサイクル協会では、ステイオンタブのリング部分だけわざわざ集めるのは非効率である上に危険だとして、タブを取らずに「アルミ缶そのもの(空き缶全体)」を集めるよう告知している。スチール缶はタブの部分にアルミを使用しているためタブだけを分離することで不純物を減らせるのではないかとの声もあるが、アルミと鉄は比重が異なるため、溶かした後で鉄だけを分離することは容易であり、分離したアルミを含んだ鉄鋼スラグは、アスファルトコンクリート用骨材や路盤材として再利用される。そのため、スチール缶リサイクル協会も「『タブを外して集めましょう』といったことを奨励することは絶対行わないようにしてください」「『タブを集めると車椅子がもらえる』といった話を聞くこともありますが、当協会は一切関係ありません」とタブだけを切り離す行為を否定している。全国ボランティア活動振興センターは「プルタブだけでなく、アルミ缶を集めた方が効率がいい。同じような活動をする場合はまず、どこでどの程度の金額に交換できるかを確認してほしい」と話している。いずれにせよ、プルリングで車椅子に交換することは一部の団体が慈善事業として行っているため不可能ではないが、「リサイクル業界はプルリングのみの持ち込みを歓迎していない」というのが実情である。従来から活動している団体(例として世田谷区立希望丘中学校)も、ベルマークのように集めて交換するのではなく、集めた空き缶を地金化して換金し購入しているのである。
出典:wikipedia
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