選好(せんこう、)とは、選択肢の集合上に定義される二項関係である。選好関係()とも呼ばれ、formula_1などの記号で表される。経済主体の嗜好や行動様式を表現する最も基本的な概念であり、無差別関係()や効用関数()も選好関係から導出される。選好関係formula_2が合理性()と呼ばれる条件を満たすとき、formula_2と全く同じ情報を持つ効用関数が無数に存在することが知られている。
ミクロ経済学やゲーム理論の中心的な枠組みであり、マクロ経済学、財政学、金融論、経営学、会計学、マルクス経済学、政治学、社会学、進化生物学などや社会科学のさまざまな分野で用いられている。ミクロ経済学では経済・社会の現象を経済主体の行動に還元するアプローチ(方法論的個人主義)が取られる。経済主体の行動を科学的に分析するためには、それが何らかの様式や法則に基づいている必要があり、そうした様式を表現するための概念として選好関係と効用関数が用いられる。
経済主体は直面した多数の選択肢の中から一つを選んで行動する。あらゆる選択肢の集合をformula_4とすると、選好関係はformula_4上の二項関係と定義される。すなわち、選好関係formula_2はformula_7を満たす。経済主体formula_8の選好関係がformula_9であるとき、「経済主体formula_8にとってformula_11はformula_12と同等以上に好ましい」ことをformula_13と表す。選好関係formula_9が完備性と推移性を満たすならば、「formula_15ならばformula_16」を満たす実数値関数formula_17が存在し、これが「選好関係formula_9を表現する効用関数」、あるいは単に「効用関数」と定義される。効用関数formula_19の値は経済主体formula_8にとっての選択formula_21の主観的な好ましさを表していると解釈できる。現在ではマクロ経済学、財政学、金融論など経済学のあらゆる分野だけでなく、経営学、会計学、マルクス経済学、政治学、社会学、進化生物学など経済学以外の様々な学問でもミクロ経済学的なアプローチである選好関係や効用関数を用いた分析が行われている。経済主体formula_8の選好関係formula_9についての命題formula_13は「経済主体formula_8にとってformula_11はformula_12と同等以上に好ましい」ことを意味する。しかし、formula_8が2つの選択肢formula_29についてどのような主観的な評価をしているのかは直接観察することが出来ない。そこで、経済学では直接観察することが可能な実際の行動を通じて経済主体の選好を推定する。例えば、ある学生が口では「漫画よりも文学書が好きだ」と言う一方で文学書を読まずに漫画ばかり読んでいたとしたら、彼の選好formula_30について「"漫画"formula_30"文学書"」が成り立つと考えるのである。このような考え方は顕示選好理論()と呼ばれる。選好関係formula_32によって、経済主体の意思決定に関する次の2つの基本的な二項関係が導かれる。選好関係formula_51を用いて無差別関係formula_52や強い意味での選好関係formula_53を定義することは可能であるが、逆にformula_52やformula_53が単独でformula_51を定義することは不可能である。この意味において、選好関係は経済主体の嗜好を表現する最も基本的な概念である。理論経済学において公理として仮定されることのある選好関係の性質を以下に挙げる。なお、formula_4は選択肢全体の集合を表すものとする。合理性()はミクロ経済学において最も重要視される選好関係の性質である。選好関係formula_51が合理的()であるとは、formula_51が完備性と推移性を満たすことをいう。また、合理的な選好formula_51を持つ経済主体formula_77は合理的な経済主体であると定義される。
合理的な選好関係は完備な前順序 ()として数学的に表現されるため、合理的な選好関係は「選好順序」()とも呼ばれる。合理性は選好関係が効用関数で表現されるための必要十分条件である(後述)。
現実には人間は論理的整合性を欠いた行動をとるが、合理的な個人を前提とした理論モデルは非合理な個人の行動モデルを構築する上でも有効である。このように合理性モデルをベンチマークとして構築・活用するアプローチは一般に方法論的合理主義と呼ばれる。効用関数(こうようかんすう、)formula_78とは、「formula_15ならばformula_80」を満たす関数として定義される。このように定義される効用関数formula_81は「選好関係formula_9を表現する効用関数」、「選好関係formula_9の効用表現」とも呼ばれる。この効用関数formula_19の値は経済主体formula_8にとっての選択formula_21の主観的な好ましさを表していると解釈できる。formula_4上の選好関係formula_2に効用表現が存在するための必要十分条件は、選好関係formula_2が完備性と推移性を満たすことである。これは選好関係formula_2が合理的あることを意味している。効用表現が存在する場合の選好関係と効用関数の各性質の関係は次の表にまとめられる。経済主体formula_8の選好関係formula_51が合理性の仮定を満たすとき、選好関係の定義から、経済主体formula_8はを選択する。つまり、経済主体formula_8は選択可能な選択肢の集合formula_95の中で最も選好される選択肢を選択する(合理的行動)。選好関係formula_51を用いた上記の表現では選択可能な選択肢の集合formula_97が変化した際の経済主体formula_8の行動の変化を分析するのは技術的に難しい。他方、効用表現formula_81を用いるとformula_95に直面した経済主体formula_8の行動はと定式化することができ(効用最大化問題)、効用関数formula_81が微分可能であれば解析的な手法によって比較的容易に分析することが可能である。
出典:wikipedia
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