J-10(殲撃十型、Jian-10、-10)は、中華人民共和国の航空機メーカー、成都飛機工業公司によって設計され、生産が行われている戦闘機。西側諸国ではヴィゴラス・ドラゴン(Vigorous Dragon:猛龍)と呼ばれる。NATOコードネームは「ファイヤーバード」(Firebird)。高価な主力戦闘機 (J-11) とともに配備され機数を確保する混合運用(ハイ・ロー・ミックス)のための軽戦闘機として開発・配備された。中国人民解放軍空軍では、長らくMiG-21のライセンス生産用にソビエト連邦から譲られた見本用の部品と生産キットを元に製造されたJ-7を運用してきた。後継機の調達に当たり、中ソ対立により独自開発を余儀なくされたが、J-7を基にしたJ-8Iは登場時点から旧式となり、改良型のJ-8IIもアビオニクスの能力不足から他国の第4世代戦闘機と比べると劣っていた。より本格的な後継機としてJ-9、J-10、J-11、J-12、J-13といった一連の開発も行なわれていたが、新世代の戦闘機として実用化するにはフライ・バイ・ワイヤ操縦装置や運動性向上技術(CCV)といった最新の技術が不可欠であるため自国のみの技術力では実現不可能とされ、機体が試作されることはなかった。1980年代に入ると、アメリカ合衆国は日本や大韓民国の基地にF-16の配備を進めるほか、周辺に展開する航空母艦にF/A-18の配備を進め、ソビエト連邦はSu-27やMiG-29を実用化し、中華民国はF-CK-1の開発を進め、日本の航空自衛隊はF-15を200機にまで増強を始めるなど、中華人民共和国周辺の仮想敵国では第4世代戦闘機の配備や戦力増強が進み、以前より質的劣勢を数で補っていた中華人民共和国の空軍戦力はより見劣りのするものとなっていった。中華人民共和国周辺の仮想敵国に配備される機体に対抗できる性能を持つ国産戦闘機を入手するため、1986年から改めてカナード付き無尾翼デルタを持ち、安定性を低下させて敏捷性を高めるという基本方針に基づいた国産戦闘機開発計画を開始したものの、新世代のアビオニクスや高性能エンジンの搭載が必須となり、海外技術の導入か国産技術の飛躍的発展を必要とすることになった。これに対して、本機のアビオニクス及びエンジンの搭載状況の推移通り、海外技術導入による実用化後に国産化率の向上を図ることとして、まずは西側からエンジンとアビオニクスを入手する見込みで計画を進めたと見られる。フライ・バイ・ワイヤ操縦装置や運動性向上研究(CCV)機といった新技術が、当時の中華人民共和国でどこまで研究されていたかは不明である。むしろ中華人民共和国の技術力が低いと認識されている分野であるだけに、海外からの協力を得たのではないかとの観測が出た。特にイスラエルとの密約により、量産に至らなかったラビを開発したIAIから技術者を招いて開発されたとの見方が強い。しかしこれについて中華人民共和国は公式に否定し、イスラエルも回答を避けている。ところが、西側からの技術導入を前提としていたため、1989年に起こった天安門事件を契機としたアメリカをはじめとする西側諸国の対中政策見直しによる武器輸出規制により計画は失敗の危機に瀕した。結局、ソビエト連邦崩壊後に関係を改善したロシアから入手したAL-31Fターボファン・エンジンやアビオニクスを搭載することで実現に至ったが、当初、旧ソ連の新鋭戦闘機にも対抗すべく計画が始まったJ-10にとっては何とも皮肉な経緯となった。1998年3月23日(公式記録)に原型1号機が初飛行した。このときにはロシアから供給されたサトゥールン科学製造合同のエンジンであるAL-31FNを搭載していた。2006年末に中国人民解放軍の機関紙「解放軍報」が写真を掲載していたが、2007年1月5日、中華人民共和国の航空機メーカーグループである中国航空工業第一集団として中華人民共和国内のメディア向けの記者会見で正式に「J-10の自主開発に成功した」と発表してJ-10の模型を公開した。合わせて新型空対空ミサイルや、WS-10 太行を「開発」したとも発表している。中華人民共和国はJ-10についての情報をほとんど公開しておらず技術的な細部は明らかになっていない。低い抗力・十分な強度を持つ構造・大きな機体内容積を実現するためのブレンデッドウィングボディ形式の採用、大迎え角でも安定した空気流入を確保するための機首下面へのエアインテーク配置、機体後端の左右に主翼から延長した棚状の張り出しへのベントラルフィンの配置、十分な構造強度を確保しつつ電子機器の格納配置場所とするために厚く太めた垂直尾翼基底部、全周視界確保のための水滴型キャノピーの装備などといった点は、ラビと共通する特徴である。しかしながら、単一の大きな垂直尾翼を持ちデルタ翼の主翼に近接してやや面積の大きなカナードを置く翼の配置は、ヨーロッパの第4~4.5世代戦闘機の間で流行した、タイフーンやラファール、グリペンの配置に近い。一方で主翼形状にはMiG-21の影響が見られ、エアインテーク形状もF-16と酷似したラビとは異なり、タイフーンのような四角形である。これらに加え、装備するエンジンの違いからJ-10の方がラビより胴体が一回り太いこともあり、外形の印象はラビに似ているものの似て非なる機体といえる。胴体に3,180Lおよび主翼に1,770Lの燃料タンクを備えており、加えて3本のドロップタンクの装備が可能。航続距離は1,850km、戦闘行動半径は550kmである。空中給油プローブを装備しており、HY-6から給油することでさらに延長が可能。加えてコンフォーマル・フューエル・タンクの風洞試験も行われている模様である。エンジン単発のエンテ型戦闘機としては大型に仕上がったものの、機体構造には金属材料のほか複合材料が用いられ、軽量化が図られている。第1期生産分は、ロシアのAL-31FN(Su-27搭載エンジンの派生型)ターボファンエンジンを搭載する。AL-31Fは米空軍のF-16中・後期型に搭載されているP&W F100 F100-PW-229にほぼ匹敵し、同じ単発機であるラビや、サーブ 39 グリペンを大幅に上回る推力および推力重量比を発揮する。中華人民共和国はロシアに対しこれまですでに180基のAL-31FNを発注していると伝えられ、2013年には、寿命が延長されて推力が向上したAL-31FN シリーズ3の供給契約を結んでいる。一方で、1982年にアメリカより入手したCFM56-3をベースにWS-10(アフタバーナー時最大126kN)が開発されたが、性能面ではAL-31FNとも遜色がなかったものの、寸法が大きすぎ、また制御システムに問題があることなどから採用には至らなかった模様で、量産型には採用されなかった。搭載するための研究自体は続けられておりJ-10Bの試作5号機がWS-10Aを搭載して試験を実施している。しかし、故障が多く信頼性の面で大きく劣るため、単発のJ-10に搭載できるようになるには更なる成熟が必要だとされている。レーダーは南京の第14電子技術研究所開発のKLJ-3(別名としてJL-15、1473型の名称も伝えられる)を搭載。このレーダーは最大探知距離104~130kmで、同時に15目標を探知しつつ、2~6目標を同時追跡可能なパルスドップラー・レーダーである。輸出用のFC-20には、KLJ-10型レーダーが搭載されている。そのほか、各国がレーダーを提案しており、イスラエルはエルタEL/M-2032、イタリアは空対空・空対地など26の動作モードを備え、赤外線探知装置や光学追尾装置との連動も可能なグリフォ 2000/16、ロシアは160kmの探知距離を有し10~15目標を同時探知、そのうち4~6目標を同時追跡するTWS機能を持つジューク10PDを提案していた。中華人民共和国はロシアからファズトロンRP-35を3機分導入し援助を受けて組み立てたが追加発注は行わなかったという。その際、中華人民共和国はこのレーダーを解析したものの重要チップのコピーを行う事ができなかったという説もある。RP-35はレドームの小さいMiG-29UB用に開発されたレーダーで、ジュークMEの簡易型である。J-10Bでは新型のフェーズドアレイレーダーを搭載している。アクティブ式かパッシブ式かは明らかにされていないが、1996年にロシアのチホーノフNIIP()設計局からペロパッシブフェーズドアレイレーダーのアンテナを購入して、研究を行っていることから、J-10Bが搭載しているレーダーもパッシブ式の可能性が高いとされる。このレーダーは直径が700mm、探知距離150kmで、同時に30目標を探知して4~6目標の同時追跡が可能と見られている。飛行操縦装置は4重のデジタル・フライ・バイ・ワイヤと見られる。コックピットはグラス化されており、広角ヘッドアップディスプレイと3つの多機能ディスプレイ(MFD)を備え(液晶で2基はモノクロ、1基はフルカラー)、HOTAS概念が導入されている。また、ウクライナのアーセナル社の製品をコピーしたヘルメット目標指示装置(Su-27、MiG-29で使用されているものと同じもの)とミサイルのシーカーの連動も可能ともされている。各機材はMIL-STD-1553Bに準拠したデータバスにより接続されている。胴体にGSh-23 23mm機関砲を搭載するほか、両翼下に3ヶ所ずつ、胴体中心線下に1ヶ所、胴体前後左右に4ヶ所の計11ヶ所のハードポイントを持ち、7トンの空対空/空対地の各種兵装を搭載できる。J-10はLANTIRNのAN/AAQ-14のようなFILAT前方赤外線・レーザー目標指示ポッド(イスラエルの技術援助で開発)も搭載可能とされており、夜間や悪天候下でも攻撃ミッションの遂行が可能であることになる。2004年1月に中国人民解放軍空軍第44師団に15機が初めて配備された。2011年現在224機が配備されている。2009年には八一飛行表演隊(オーガスト・ワン)にJ-7GBの後継機として配備された。J-10の輸出は中華人民共和国軍需産業の最大顧客であるパキスタンとの交渉が進んでいる。2006年2月下旬に中華人民共和国のJ-10製造工場を視察しJ-10の詳細について説明を受けたパキスタンのムシャラフ大統領(当時)は、報道陣に対して「パキスタンは中華人民共和国のJ-10を購入することを検討する」と述べた。4月12日には、FC-20として少なくとも36機のJ-10を購入することで合意した。引き渡しは2014年~15年ごろになる予定。他にJ-10の導入を希望している国には朝鮮民主主義人民共和国、イランとシリアなどがあるものの、中国側は慎重な姿勢を取っている(J-10の代わりにFC-1を提案)。2010年6月16日には、金正日からの供与の要請を拒否したことが報じられた。2014年11月15日、四川省成都の郊外でJ-10Bが1機墜落する事故が発生した。住民7人ほどが負傷、パイロットは脱出に成功した。AL-31FNエンジンの故障とみられている。2015年12月17日、J-10Sが浙江省で墜落した。パイロットの2名は脱出に成功した。2016年9月28日、天津市でJ-10B が1機墜落した。バードストライクによるAL-31FNエンジンの故障が原因。パイロットは脱出に成功した。出典
出典:wikipedia
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