論理包含(ろんりほうがん、含意(がんい)、内含、、IMP)は、第1命題が偽または第2命題が真のときに真となる論理演算である。条件文(じょうけんぶん、)とほぼ同じものである。論理的帰結()や伴意()とは異なる物であり、論理的帰結の項目を参照。2つの命題 "P" と "Q" に対する論理包含を "P" → "Q" などと書き、「"P" ならば "Q"」と読む。命題 "P" → "Q" に対し、"P" をその前件、"Q" をその後件などと呼ぶ。ペアノは1889年に出版した『数の概念について』において、“ならば”をCを逆向きにした記号で表現した。ラッセルはペアノにならい、1910年から1913年に出版した『プリンキピア・マテマティカ』において、命題“A ならば B”を A ⊃ B と表現した。ゲンツェンはラッセルに従い、命題“A ならば B”を A ⊃ B と表現した。ハイティングは命題“A ならば B”を最初は A ⊃ B と表現したが、後になって右向き矢印で A → B と表現するようになった。したがって、記号 ⊃ は集合論における部分集合の記号と同じだが直接的な関係はない。否定 ¬ と論理和 ∨ で表せる。冒頭の定義はこの式を日本語にしたものである。古典論理ではド・モルガンの法則により、次のように変形できる。ほかに、次のような性質がある。論理包含と条件文は、ほとんどの場合同じものとみなされる。しかし、一部の論理学者は、論理包含は「断言」的関係、条件文は「予想」的関係だとして区別する。また、次のように表現し分けることもある。ただし、上記の利用法とは異なり ⇒ は伴意の記号としても使われることに注意。"P" が偽ならば、"Q" の真偽にかかわらず「"P" ならば "Q"」が真である、という定義は直感的に受け入れ難く、しばしば哲学的な議論の主題となる。以下、例を挙げながらこの定義の妥当性を説明する。例えば「千円以上持っている人は百円以上持っている」という文が(意味深いかどうかはともかくとして)正しいことに異論はないであろう。数学記号を用いると「"x" ≥ 1000 ⇒ "x" ≥ 100」ということになる。この命題の前件と後件は変数 "x" を含み、"x" に代入される値によって真偽が変わるのであるから、正確には「任意の "x" に対して "x" ≥ 1000 ⇒ "x" ≥ 100」という主張である。"x" ≥ 1000 の場合のみならず、"x" < 1000 の場合でも真であるためには、上記の定義が必要であることが了解されよう。なお、この例において二つの集合 {"x" | "x" ≥ 1000} と {"x" | "x" ≥ 100} は包含関係にある。これが「論理包含」という語の由来である。ある人が「この仕事が成功しなければ辞表を出す」と言ったとしよう。この言葉が嘘となるのは、仕事が失敗したにもかかわらず辞表を出さなかった場合のみである。仕事が失敗して辞表を出したならば約束を守ったのであるし、仕事が成功してかつ辞表を出さなかったならば、やはりその人は嘘を言わなかったことになる。仕事が成功したにもかかわらず(何か他の理由で)辞表を出した場合も、やはり嘘を言ったとはみなされないであろう。すなわち、先の宣言では仕事が成功した場合のことは何も言っていないのであるから、辞表を出そうが出すまいが本人の自由である。日常会話における例を挙げたが、注意しなければならないのは、論理学における「ならば」と日常会話における「ならば」は同一ではない、ということである。まず、日常会話における「ならば」は、しばしば時間的な依存関係(因果関係)を内包する。例えば「薬を飲まなければ病気が治らない」の対偶は、逐語的には「病気が治るならば薬を飲む」であるが、この二つは明らかに意味が異なる。時間的な依存関係に注意して「病気が治った人は薬を飲んだはずだ」と言えば元の文の意味に近い。次に、日常会話における前件は、まだ真偽が確定していない事項か、真偽が変数に依存することが普通である。すなわち、偽であることが分かっている命題を前件とすることが、日常会話では通常あり得ないのであって、それが論理包含の定義を分かりにくいものとしている。例えば、身長150cmで体重50kgの人が次のように言ったとしよう。「もし私の身長が160cm以上ならば私の体重は40kg以下である。真理値表より嘘ではありませんよ。」おそらく共感は得られないであろうが、論理学的には全く正しい。結局のところ、論理学における「ならば」は、日常会話での「ならば」と通じる部分もあるためにそのように名付けられたが、似て非なるものであると解釈するのが安全であろう。定義の繰り返しになるが、論理学における「"P" ならば "Q"」は、「"P" でない、と "Q" である、の少なくとも一方が正しい」の短い言い換えなのである。
出典:wikipedia
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