トリコテセン類(トリコテセンるい、)は、マイコトキシン(菌類の毒素)の中の1つで、トリコテセン環を持つセスキテルペンに属する約100種のカビ系毒素の総称である。主にムギ赤かび病により生産される物質で、人や家畜に重篤な中毒を引き起こすほか、無脊椎動物、植物にも影響を及ぼす。ただし、カエンタケにも含有されているように、必ずしもカビだけが産生するわけではない。A~Fの6種に分類される。トリコテセンの生物活動を引き起こす最も重要な構造上の特徴は 12,13-エポキシ環、ヒドロキシ基、アセチル基である。一連の化合物はトリコテセン核に付く官能基により分類され、構造上の特徴から3つのグループに分けられる。このうちタイプA(T-2トキシン、HT-2トキシン、ジアセトキシスカーペノール)およびタイプB (デオキシニバレノール (DON)、ニバレノール (NIV)、3- および 15-アセチルデオキシニバレノール)が毒物質として問題となる。穀物など植物のカビからトリコテセンが検出された地域は、ロシア、フランス、ブラジル、インド、カナダなど冷帯から熱帯まで多岐にわたり、食中毒の原因として報告されている。フザリウム属の主な生産菌同属菌には、ゼアラレノン(ZER)やフモニシン(FUM)を生産するものがあり重複汚染も多く発生している。キノコのカエンタケもトリコテセン類を生成するが、カエンタケの属するボタンタケ科はフザリウム属と近縁である。体内に取り込まれる経路は、皮膚及び粘膜などからの経皮浸潤、粉塵の吸入による気管支及び肺、含有する食物摂食の三経路がある。毒性は タイプAのT-2トキシンが最も強い。トリコテセン類は、リボゾームの 60S サブユニットに結合することによる蛋白質および核酸の合成阻害による免疫阻害作用、セロトニン介在性ニューロンへの作用による食欲不振や嘔吐、免疫系細胞へのアポトーシス、炎症性サイトカインの産生などを引き起こす。このため、動物と人間に対し強い毒性を発揮する。かつて日本では、太平洋戦争後の食糧難時に東南アジアなどからコメを緊急輸入したが、輸入米がカビ汚染で黄色に変色し毒性のあるマイコトキシンを含んでいたため、十数万トンの米を廃棄した事例がある。この黄変米事件の原因については、Penicillium属のカビが作るシトリニン、ルテオスカイリン、ルグロシン等のマイコトキシンとされている。また、第二次世界大戦後のソビエト連邦のオーレンバーク地区で発生した食中毒性無白血球症 (ATA)の原因物質で有り患者の30%~80%が死亡した。麦赤カビ病の多発した1998年には、台風で倒伏し水に浸かったイネの変色部位から検出した。食品添加物専門家会議(JECFA)による暫定耐容一日摂取量(PTDI)として、(T-2またはHT-2 単独又は合量)= 0.06 μ g/kg bw/day(2001年)食品添加物専門家会議(JECFA)による暫定耐容一日摂取量(PTDI)=1 μg/kg bw/day(2001年)平成13年度に厚生労働省等の調査では、国産小麦玄麦(n=82)の DON 汚染平均値は0.16 mg/kg、最高値は 2.1 mg/kg 。
輸入小麦玄麦(n =144)では DON 汚染平均値は 0.06 mg/kg、最高値は 0.68 mg/kg。と、輸入小麦より国産のほうが DON 汚染濃度が高いことを示すデータが得られた。普通、小麦では製粉により、ふすまに高く、粉には低く含有する。酵母による分解はなく、また熱に対する安定性も高い為、通常の調理では分解されない。但し、調理方法によって食品中への残存量は変わる。特に熱に対し安定であることから、一度産生された物質を除去することは困難である為、農作物の生産段階での対策が重要である。つまり、収穫前(開花期)の適切な農薬散布や赤カビ被害穂の別刈り、収穫後の迅速な乾燥、粒厚や比重による選別などと同時に保管中の適切な衛生管理も必要となる。古くから小麦や大麦では、赤カビ病に耐性を持たせた品種の開発が行われている。
出典:wikipedia
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