『透明人間現わる』(とうめいにんげんあらわる)は、昭和24年(1949年)9月25日に大映(現・KADOKAWA)が公開した日本の特撮映画。モノクロ、86分。大映が特撮の大家・円谷英二の戦後復帰作として大映京都撮影所で制作した、日本初の大トリック映画である。中里化学研究所の中里謙造博士は、弟子の瀬木恭介と黒川俊二に研究を競わせ、先に成功した者にほうびを与えると約束した。2人とも博士の令嬢である真知子との結婚を望んでいた。黒川は、物体を透明にする薬品を研究中だったが、中里博士はあらゆる物体を透明にする薬品をすでに発明していた。マウスや猫など多くの動物で実験に成功していたが、人間には試していなかった。それは、元に戻す還元薬がまだできていなかったこと、そして透明薬の副作用により生物の神経に異状をきたして凶暴にするためである。そのため、透明化薬のことは弟子にも秘密にしていたのだ。ある日、研究所を訪れた出資者である自称薬品会社社長の河辺一郎は、中里博士から透明化薬の秘密を聞き出し、悪用することを思いついた。時価800万円のダイヤモンド「アムールの涙」に執心していたのである。ある晩に、覆面をした2人の男が拳銃を持って研究室に現れ、博士は車でどこかへ連れ去られた。後には、数日出かけるので警察に届けるな、という博士の書置きが残された。河辺が研究所を訪れ、黒川に大金を渡して旅行を勧めた。黒川のアパートに、博士の使いと称する男が現れ、それから黒川も消息を絶つ。宝石商天宝堂に、顔を包帯でグルグル巻いた男が現れた。男は、店員の一人と面談して「中里謙造」の名刺を渡し、ダイヤ「アムールの涙」を渡せと脅し、包帯を解いて透明人間となって店員を襲い、ダイヤの持ち主を訊きだして姿を消した。続いて、夜の街で透明人間が浮浪者を殺し、その服を奪うが警官たちに追われ、服を捨てて姿を消す。また、ダイヤの持ち主である長曾我部君子とその友人で花形女優の水城龍子がいる部屋が透明人間に襲われたが、龍子の機転によるダイヤは無事だった。恐るべき透明人間の存在が新聞によって報道され、その正体は中里博士であるという風聞が広まる。研究所は警察に調べられ、思い悩む真知子。警察の松原捜査主任は、研究室の薬品と資料の秘密戸棚を見つけ出し、博士の日記に「私が失踪したら、研究の権利を河辺一郎に譲る」と書かれていることに注目する。日記から、透明化薬を使ったら死ななければ元には戻れないことが判明する。真知子がもう一人の弟子・瀬木恭介にアプローチしているところに河辺が訪れて、2人の仲を裂こうと画策。河辺は瀬木に「黒川君は誘拐されたんだよ」と教えたため、瀬木は河辺に疑念を持ち、警察を訪れて松原捜査主任に相談する。河辺の正体が宝石ブローカー団のボスであることが判る。河辺は、ダイヤを預かっている水城龍子に接近する。瀬木は、河辺が怪しいことを龍子に告げて、協力を依頼。河辺は、龍子からダイヤを預かった真知子を車で連れ出させ、途中で包帯グルグル巻き男に奪わせる。その包帯男は河辺の部下で、中里博士に罪を着せつつダイヤを奪おうとしたのだが、松原主任が張り込みさせた警官たちに捕縛される。そこへ透明人間が現れて男を口封じに刺殺してダイヤを一味に届けるが、一味は偽ダイヤと知る。瀬木がいる研究室に透明人間が現れて、正体を明かす。それは黒川だった。透明人間が中里博士でないと知って、瀬木は安堵する。透明人間が、タバコの煙を燻らせながら、いきさつを話し出す。数日前、博士の使いと称する男たちに連れ去られていた黒川は、博士の身代わりの実験台として、元の姿に戻れる還元薬があると信じ込まされたまま、透明化薬を処方して透明人間になった。一味は、「アムールの涙」を奪ってきたら還元薬を渡すと偽って、凶暴になりつつあった彼を使ってダイヤを手に入れようとしていたのだ。黒川から還元薬をくれと言われ、死ななければ元の姿に戻れない事実を言い出せない瀬木。そこへお茶を持ってきた真知子は、そこに黒川がいるとは知らずに、瀬木に求愛する。真知子に裏切られたと思った透明人間・黒川は窓を突き破って去る。河辺がいる前で、龍子は透明人間が偽ダイヤに気づかなかったことを嘲笑する。河辺は中里博士が見つかって保護していると言いだし、龍子が席をはずしたすきに、ダイヤを身に着けた真知子を龍子の家から車で連れ出す。龍子・瀬木・松原捜査主任が集まり、河辺が真知子を自邸に連れ去ったと知る。それを窓の外で立ち聞く透明人間・黒川。黒川は、警察のサイドカーを奪って河辺邸へ急ぐ。運転手の姿が見えないまま、警官たちの制止を振り切って走るサイドカー。河辺邸で、河辺は真知子を部屋に閉じ込めて、ダイヤを奪って彼女をものにしようとする。博士が地下室にいると立ち聞きした包帯男が、地下室へ降りて縛られていた博士を助ける。一方、河辺が真知子を襲う部屋には透明人間が現れて河辺を部屋から追い払い、真知子からダイヤを奪う。透明人間は、河辺ら一味がいる部屋にダイヤを届けて還元薬を要求するが、河辺は「還元薬はない。博士にだまされたんだよ」とうそぶく。博士を呼びながら地下へ降りる透明人間。博士を助けた包帯男の正体は黒川の妹・龍子だった。博士は、透明人間の声からそれが黒川と悟り、龍子も驚く。松原主任が指揮する警官隊が河辺邸を包囲し、捕り物・銃撃戦になる。河辺は、松原・瀬木らの追及にしらを切り、海辺で拳銃を振りかざして逃れようとする。河辺に騙されていたと知った黒川は、その拳銃を奪い取って、ついに河辺を射殺。松原主任は黒川に、君も犯した罪からは逃れられないと通告。拳銃を振りかざして逃げようとする透明人間に、龍子は止めようとすがり付く。黒川と警官隊の銃撃戦。黒川の銃弾で負傷した松原主任に、ついに龍子は兄を射殺してくれと頼む。銃撃の末、海へ入る透明人間。海に浮かんだ遺体は、元の黒川の姿に戻っていた。海辺に立つ一同。中里博士は、自分の研究により世間を騒がせて申し訳ない、と松原主任に謝る。字幕に「科学に善悪はありません。たヾそれを使う人の心によって善ともなり、悪ともなるのです。」のメッセージが現れる。(了)透明人間とは、H・G・ウェルズがSF小説『透明人間』("The Invisible Man"、1897年)において創造したキャラクターであり、特殊な薬品によって姿が透明になった科学者が数々の事件を起こすという筋立てである。本作は、1933年公開のユニバーサル映画作品『透明人間』を研究して作られており、顔を包帯でグルグル巻いた男がそれをほどくと透明になっているという点が共通している。ただし、ユニバーサル作品の方は透明人間が殺人だけでなく列車転覆などの大暴れをするのに比べると、本作では暴れ方がやや地味な印象である。本作は当初、奥田久司によって『透明魔』と仮題された。奥田によると、ちょうど東宝を公職追放されてフリーだった円谷英二が京都にいたので企画を見せて協力を乞うたところ、円谷は「これ絶対面白いから、私協力します」と約束してくれた。おかげで企画が通り、この戦後円谷の本格復帰第1作映画が製作されることとなったという。公開当時、透明人間がタバコを吸う特撮シーンが評判になった。このほか、透明人間が拳銃を発射したり、サイドカー(側車付きのオートバイ)を運転する特撮シーンなどもある。のちに「特撮の神様」と呼ばれることになる円谷にとって、本作はキャラクター物としては『ゴジラ』(1954年)以前の初期代表作とも評されている。しかし、円谷は本作での力量不足を理由に大映への入社を断っており、その後は東宝の『透明人間』で同じ題材に再挑戦している。報道資料によると小学生向けに作られたものであったが、字幕に「科学に善悪はありません。たヾそれを使う人の心によって善ともなり、悪ともなるのです。」のメッセージが示され、大人の鑑賞に耐えうる作品として制作されている。本作では、松竹歌劇団の男役スターだった(当時は退団)水の江滝子のレヴューが見られる。戦後の占領期は剣劇禁止であったため、時代劇のスターであった月形龍之介が現代劇で発明家の科学者を演じている。のちに大映の化け猫映画『怪談佐賀屋敷』(1953年)で悪家老・磯早豊前役を演じる杉山昌三九が、「杉山剛」として悪役を演じている。
出典:wikipedia
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