王シフト(おうシフト)は、読売ジャイアンツの王貞治選手が打席に立った際、対戦チームが敷いたシフト。特に、広島カープ(現・広島東洋カープ)の白石勝巳監督(当時)が1964年頃に考案した配置に対してこの呼称を用いる。当時、広島カープのスコアラーを務めていた川本徳三は王の打球が右方向に集中していることに目をつけた。そこで川本は地元企業で後に広島に資本協力をすることになる東洋工業(現マツダ)が車体設計の計算を行う為所有していた電子計算機を使って王のデビュー戦以来の全打席の打球方向を数値化し、白石はその結果に基づいて選手の守備位置を決めたという。一塁手を一塁線へ、二塁手をより一塁側へ、遊撃手は二遊間へ、三塁手は遊撃手の守備位置へ、外野手はそれぞれ右方向へ移動。結果フィールドの右半分に野手が6人という極端なシフトとなった。電子計算機での試算結果によると、このような極端なシフトを採った場合、王の全打席通算打率は2割3分台まで低下するという具体的な結果が示されており、王シフトは単なる思いつきではない、後年の「データ重視野球」の先鞭を付けた例とも言われている。この『王シフト』が初めて行われたのは1964年5月5日、後楽園球場での巨人対広島ダブルヘッダーでの第二試合7回裏であり、この時守備についていた選手はというメンバーであった。白石監督の狙いは、右方向の打球が多い王のヒットを減らすことはもちろんであるが、それ以上にがら空きのレフト方向を王に印象付けてレフトへの流し打ちを誘うことにあった。左に流すバッティングなら長打も少なく、また流し打ちを繰り返しているうちにやがて一本足のフォームが崩れてくるのではないかとの狙いだった。しかし、王は王シフトを眼前にしても流そうとは全く考えなかったと語っている。白石も後年NHKのインタビューに対し、自らの狙いに反して自分のスタイルを貫き通した王のこの姿勢を高く評価している。また左翼の守備についていた山本は「選手・コーチは経験上、以前から王の打球が右方向に多いのはわかっていた。それを改めて数値化したことで王シフトの必要性はみんなすぐに理解した」と語っている。王は5月3日の試合(阪神戦)で1試合4打席連続本塁打を放っており、5月5日のダブルヘッダー第1試合(巨人-広島7回戦)の第1打席は5打席連続の新記録がかかっていた。しかし、結果は大羽進が2球目に投じた内角高めのシュートでファーストライナーに仕留められ、新記録達成はならなかった。第1試合は4打席無安打。王シフトを挙行した第2試合(8回戦)では、シフトを開始した打席でバックスクリーンのわずか右へ18号ホームランを放たれるなどして4打数3安打を決められる結果となり、このシフトも功を奏しなかった。しかし、このシフトは多少なりにもプレッシャーにはなったようで、例えば翌日の9回戦では遊飛と3つのセカンドゴロなどで5打数無安打に抑えたり、1964年の対広島戦の王の成績は打率.291、本塁打数は対戦した5球団で最も少ない7、本塁打率11.29であり、シーズンの成績(打率.320、55本塁打、本塁打率8.58)からみればまずまず成果はあったと「記録の神様」と呼ばれた宇佐美徹也は一応の評価をしている。なお、王シフトにもほとんど自分のバッティングスタイルを変えることのなかった王だが、同年7月15日の広島戦で一度だけ三塁方向にバントしたことがある。バントした打球は誰もいない左翼方向を外野まで転がり、この間に王は二塁まで進んだ。このプレーは誰にもエラーがつかなかったため、王の二塁打が記録された。この「バントで二塁打」という珍記録も王シフトの副産物だった。なお、ONコンビのもう一人である長嶋茂雄についても東洋工業のコンピュータで解析を行ったが、特に特徴的な傾向がなく、長嶋シフトが作られることはなかった。王は現役を引退した後にオフシーズンに行われるOB戦に度々出場しているが、その際にも相手側は王シフトを敷いて対応していた。白石の考案した王シフトは他のチームにも影響を与え、他のチームも同様のシフトを敷くようになっていった。しかし王は動じることなく、1964年に放った日本記録となる55本塁打のうち50本がセンターから右方向の打球だった。王の長打力に磨きがかかり始めると、変わったシフトをとるチームも出てきた。1968年6月26日、中日ドラゴンズは内野手4人を全部1塁、2塁間に配置、レフトを左中間、センターを右中間、ライトを一塁ライン際に守らせた。中心線から左側には外野手が1人いるだけというシフトだった。また、1972年の日本シリーズ第1戦(10月21日)、阪急ブレーブスは二塁手を1、2塁間に、三塁手を遊撃手の位置に配置し、中堅手の福本豊を右中間に、そして遊撃手の大橋穣をセンターに守らせる「外野4人シフト」を敷いた。この試合の王の第2打席は「遊飛(ショートフライ)」と記録されているが、これはバックスクリーン手前まで飛んだ打球を大橋が捕球したものである。
出典:wikipedia
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