あきづき型護衛艦(あきづきがたごえいかん、)は、海上自衛隊が運用する汎用護衛艦(DD)の艦級。計画番号はF130。ネームシップの建造単価は750億円であった。海上自衛隊の第2世代汎用護衛艦の発展型として、17中期防に基づき、平成19年度から平成21年度にかけて4隻が建造された。原型にあたるむらさめ型(03〜09DD)およびたかなみ型(10〜13DD)とともに、護衛隊群の基準構成艦となっている。なお、「あきづき」のネームシップを持つ艦型は、1960年就役の初代あきづき型護衛艦に続いて2代目であり、漢字表記である旧海軍の秋月型駆逐艦を含めれば3代目になる。本艦型は、秋月型が防空駆逐艦という性格を同じくするところから、艦名を継承した。海上自衛隊では、03中期防より第2世代の汎用護衛艦(DD)の整備に着手した。まず平成3年度から平成9年度にかけて4,400トン型(むらさめ型)9隻を建造したのち、平成10年度からは、船体線図と機関構成は同一のままに装備を強化した4,600トン型(たかなみ型)に移行した。一方、10DDの建造に着手した当時、技術研究本部では護衛艦向けの各種新装備の開発が最終段階を迎えており、同時多目標処理可能な射撃指揮装置であるFCS-3は平成12年度ごろ、また大出力・低周波のソナーであるOQS-XXは平成15~16年度ごろの制式化が見込まれていた。従って、これらの新装備がたかなみ型の5番艦以降の建造時期と重なることが予想されたことから、これらをどうやってDDに盛り込むかが問題になった。当初は同型を11隻建造して、むらさめ型(03DD)とあわせて20隻とすることで8艦8機体制の4個護衛隊群の所要を充足したのちに、これらの艦で搭載できなかった新装備(FCS-3やOQS-XXなど)を搭載した第3世代DDを改めて建造することも検討された。しかし最終的には、たかなみ型の建造は平成13年度までの5隻で打ち切られ、DDH・DDGの更新を挟んだのち、同型をもとにこれらの新装備を盛り込んだ5,000トン型に移行することになった。これによって建造されたのが本型である。なお当初は、5,000トン型は平成18年度より建造に入る予定であったが、年度ごとの要求額の平準化などを考慮して、平成19年度に後倒しされた。上記の経緯より、本型の構造は、主要な配置を含めて03/10DDの改良型となっている。船型も、第1世代DD以来の、2層の全通甲板を有する乾舷の高い遮浪船型が踏襲された。その一方で、本型ではステルス対策が大きく進歩した。主船体および上部構造物の傾斜は、むらさめ型の7度から10度に増している。FCS-3A搭載によって対空レーダーをマスト上に装備する必要がなくなったこともあり、03/10DDでレーダー反射断面積の増大につながるとして批判されていたラティスマストは廃止され、あたご型(14/15DDG)と同構造の小型のステルス・マストが採用された。また、やはりイージス護衛艦のように上部構造物を舷側まで拡大し、その上甲板レベル両舷に艦首尾方向に全通した通路を設けた。ここに扉を設けて舷梯や短魚雷発射管、自走式魚雷デコイ発射機を収容した。計画段階では、防衛省の平成20年度予算案の概要に掲載されていた外観図に見られるように、艦載艇や対艦誘導弾の発射筒などを覆うスクリーンや、甲板上の艤装物を隠すブルワークの設置も検討されていたが、重量やコストの面から断念されたとみられている。FCS-3Aは、艦橋構造物と後部構造物の上部壁面に前後分散して配置されており、アンテナを装備した機器室は04甲板レベルに設けられている。これにより、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦のような後部レーダー射界の大幅な制限を受けずに済み、配置面の自由度が高まっている。なお、ダメージコントロール作業時に使用する酸素呼吸器()にかえて、空気タンクを用いる自給式呼吸器()が採用された。搭載艇としては、11メートル作業艇1隻を第1煙突右舷側に、7.5メートル複合型作業艇1隻を第2煙突左舷側に搭載している。従来の第2世代DDでは、一貫して、巡航機はロールス・ロイス スペイSM1C()(川崎重工業ライセンス生産)、加速機はゼネラル・エレクトリック LM2500()(IHIライセンス生産)としたCOGAG構成が採用されてきた。しかし本型の計画段階であった2007年11月、本型の機関選定を巡り当時の守屋武昌防衛事務次官が山田洋行に便宜供与を計るため、SM1Cの対抗機種であるGE・アビエーション社のLM2500に有利な取り計らいを行った疑いがあると一部マスコミが報じた。このために同構成の採用継続は断念され、ちょうどSM1Cの出力向上型()が実用化されたこともあり、同機4基によるCOGAG構成が採用されることとなった。これにより、艦内では主機関が統一された一方、艦隊内での主機関方式の統一は断念され、形態管理上は問題を抱えることとなった。主発電機は10DDと同様、こんごう型(63DDG)以来の3基構成が踏襲されたが、1基あたりの容量は、10DDの1,500キロワットから2,400キロワットへと大幅に増強されている。その原動機としては、従来用いられてきたM1A型の最新型にあたる川崎重工業M1A-35(2,400キロワット級)が搭載された。なお停泊発電機は廃止されているが、これは陸上給電設備の充実に伴うものとみられている。機関配置はたかなみ型(10DD)のものをおおむね踏襲しており、被弾時の生残性を高めるため、左舷軸用と右舷軸用の主機関を前後に間隔を置いて配置するシフト配置が採用されている。前部の第1機械室が左舷軸、後部の第2機械室が右舷軸を駆動しており、その間には補機室が設置されている。それぞれの機械室には2基のガスタービン主機と減速機が1組として収容されている。なお上記の通り停泊発電機が廃止されており、これに伴い、10DDと比して補機室の長さは1メートル短縮されている。なお所要馬力低減のため、海自艦船として初めて艦尾フラップが採用された。本型は、新開発のOYQ-11戦術情報処理装置を中核としたシステム艦として構築されている。本型の新戦闘指揮システム(, ATECS) の中核となるOYQ-11は、ひゅうが型(16/18DDH)のOYQ-10を汎用護衛艦向けにカスタマイズしたものと言える。現代海軍C4Iシステムの標準にあわせて、商用オフザシェルフ化されたAN/UYQ-70ワークステーションによる分散コンピューティング方式を採用しており、Q-70と兵器・センサーをローカル・エリア・ネットワークによって連接することで各武器・センサー・サブシステムが構成され、これらのサブシステムはNOYQ-1B統合ネットワークによって連接されている。ATECSは、OYQ-11サブシステム、FCS-3Aサブシステム、電子戦サブシステム、対潜戦サブシステムにより構成されている。通信手段としては、通常の短波(HF)・超短波(VHF)・極超短波(UHF)の無線機のほか、統合データ・ネットワーク(JDN)や海軍戦術情報システム(NTDS)に参加できるように、リンク 11およびリンク 16に対応している。また衛星通信としては、XバンドのNORA-1C(主としてSUPERBIRD B2衛星通信用)、KuバンドのNORQ-1、民間のインマルサット衛星通信用のNORC-4B、およびアメリカ軍のUHF-SATCOMに接続するためのAN/USC-42衛星通信機が搭載されている。上記の経緯より、本型はFCS-3射撃指揮システムを中核とするまったく新しい対空戦システムを搭載している。当初構想では、99式空対空誘導弾(AAM-4)と共通の技術を用いたアクティブ・レーダー・ホーミング誘導方式の艦対空ミサイルであるAHRIM(XRIM-4)とFCS-3を組み合わせることで、ごく限定的な艦隊防空能力である僚艦防空能力(, LLAD)を実現することとされていた。しかし13中期防において、予算などの制約によってAHRIMの開発が見送られることとなり、FCS-3計画の取り扱いについても議論が生じた。結局、13中期防の最終年度で建造されたひゅうが型(16DDH)では、FCS-3に所定の改修を施したうえでアメリカ製のESSM(発展型シースパロー)と組み合わせて搭載された。当時、海自DDGにはイージスBMDが導入されつつあったが、特に当時配備されていたイージスBMD 3.6においては対空戦(AAW)機能とミサイル防衛(BMD)機能の両立が難しく、大気圏外にある弾道ミサイルに対処している間は低空域での探知追尾能力が低下する恐れが指摘されていた。このことから、イージスDDGと艦隊行動する汎用護衛艦に低空防御を委託することが構想されるようになり、その対象として選ばれたのが本型であった。このことから、海上幕僚監部では、多機能レーダーはFCS-3のかわりにAN/SPY-1F、艦対空ミサイルはESSMのかわりにSM-2に変更することも検討されるようになった。しかしこの構成では簡易型イージスとなり、「イージス艦は艦隊防空・本型は僚艦防空」という防衛力整備コンセプトから逸脱すること、また特にAN/SPY-1FをFCS-3と比べると、能力的に高いわけではないうえに、技術的に一世代古く将来発展性に欠けることが指摘された。これらの検討を経て、最終的には、FCS-3をもとに下記のような性能強化策を講じたFCS-3AがESSMと組み合わされて搭載されることになった。なお、FCS-3+AHRIMの当初構想とくらべて、FCS-3A+ESSMの現行システムのほうが性能的に優れていることから、現在では、「僚艦防空」に対応する英語としては、"を外して"(LAD)と称されている。またESSMの搭載数については、標準的にはMk.41 VLSの8セル分、32発を搭載しているといわれている。近接防空火器(CIWS)としては高性能20mm機関砲2基が搭載される。現在、海上自衛隊では赤外線センサ(FLIR)による光学照準に対応したブロック1Bへの更新を進めているが、本型では従来型のブロック1Aが搭載された。2基という搭載数は従来のDDと同じだが、格納庫上のCIWSは装備位置を中心線上に改めている。本型では、対潜戦システムも刷新された。従来の第2世代DDでは、ソナーとしては艦首装備式のOQS-5と曳航式のOQR-2を搭載し、OYQ-103対潜情報処理装置(ASWCS)を中核としたシステム構築を行っていた。これに対して、本型では、16DDHを踏襲した統合システム化が行われている。システム名称はOQQ-22とされている。艦首ドームのシリンドリカル・アレイ(CA)は16DDHのOQQ-21と同等であるが、艦底装備の長大なフランクアレイ(FA)部分は省かれており、その一方でOQR-3曳航ソナー(TASS)が追加された。また魚雷防御システムとも連接されている。信号処理などに用いる標準計算機盤としてはAN/UYQ-70が採用されている。また、潜水艦の静粛化や対潜戦の浅海域化に対応した新戦術であるバイ・マルチスタティック戦術への対応も想定されているが、本格的な実装は将来装備を待つ必要がある。就役後、平成26年と27年度予算で「あきづき型護衛艦等の対潜能力向上(マルチスタティック)」の名目で、マルチスタティック能力付与のための2隻分の部品調達予算と2隻分の改修工事予算が計上された。対潜兵器としては、ネームシップでは従来艦と同様、垂直発射式アスロック(VLA)対潜ミサイルを前部上甲板のVLS内に、68式3連装短魚雷発射管を両舷各1基装備した。ただし短魚雷発射管は、新型の97式魚雷や12式魚雷に対応したHOS-303に更新されており、また2番艦以降は、対潜ミサイルも新型の07式垂直発射魚雷投射ロケットに更新された。これに伴う対潜戦システム強化により、2番艦以降は基準排水量にして50トン増加となっている。この他、魚雷防御システムとしては、10DDで採用された曳航具4型に加え、投射型静止式ジャマー(FAJ、第二煙突前方船体中央部)、自走式デコイ(MOD、右舷短魚雷発射管横)を各1基搭載している。これらの装備はソナーと共に対魚雷防御(TCM)指揮管制装置で一元的に管制される。対水上捜索レーダーとしては、ひゅうが型と同様にOPS-20Cを搭載する。これは、従来航海レーダーとして用いられていたものを強化したもので、マスト中段フラットのメイン・アンテナ、その左下のサブ・アンテナの2つの空中線により構成されている。艦対艦ミサイルとしては、第2世代DDの標準であった90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)が踏襲されており、4連装発射筒2基に収容されて搭載される。発射管制用の艦上装置として、艦対艦ミサイル艦上装置2型(SSMS-2B)が搭載されている。また本型では、主砲として62口径5インチ単装砲(Mk.45 mod.4)が採用された。これは海上自衛隊では14DDGで装備化されたもので、10DDで搭載されていた54口径127ミリ単装速射砲(127mmコンパット砲)と比べると発射速度は低く、対空射撃には不向きだが、より長い射程を備えており、対地・対水上射撃には優れた効果を発揮する。FCS-3Aによる射撃指揮をうけるが、レーダー照準射撃だけでなく、電子光学照準器による光学照準射撃も可能である。電子戦装置としては、第2世代DDで標準装備となっているNOLQ-3電波探知妨害装置シリーズの最新バージョンであるNOLQ-3Dが搭載される。これはデジタル化など最新の信号処理技術を適用し、特に受信系については、従来のチャネライズド受信機をデジタル化することで感度向上をはかるとともに、探知距離の延伸を実現している。また方向探知の方式は、従来の振幅比較方式に対して位相差方式に変更し、精度向上を図っている。なお、デコイ発射機としては、従来通りのMk.137 6連装発射機×4基を用いたMk.36 mod.6が搭載されている。哨戒ヘリコプター(SH-60JまたはSH-60K)は常用1機だが、ハンガーはたかなみ型より拡大されており、哨戒ヘリコプターであれば2機、MCH-101掃海・輸送ヘリコプターであれば1機に対応可能とされている。SH-60Kと母艦との間のデータ通信は、ORQ-1C-2ヘリコプター・データリンク(TACLINK)により行われる。また、着艦拘束装置は、たかなみ型のE-RAST(Expendable-Recovery, Assist, Secure and Traverse)から、これを発展させたRAST Mk.6に変更された。RAST Mk.6は、従来のベア・トラップやRASTと同様の着艦機拘束機能に加えて、RSD(Rapid Securing Device)自体にヘリコプターのセンタリング・ストレートニング機能を備えていることから、複雑な操作が不要で、拘束から移送までの操作を一人で実施できるのが特徴である。なお、SH-60Kには着艦誘導支援装置(SLAS)が装備されており、本来は本型がSLAS対応護衛艦の1号艦として予定されていた(ひゅうが型DDHは広大な全通甲板を備えているためSLASを必要としなかった)が、予算上の制約のため、結局、SLASの艦載部分は搭載されていない。ただし、後日装備に備えて、機器用のフラットなどは用意されている。本型は、ミサイル防衛対応を含む防空を重視したミサイル護衛艦(DDG)を中心とするグループ(第5~8護衛隊)に1隻ずつ編入し運用する。
出典:wikipedia
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