ビデオ戦争(ビデオせんそう)とは、ビデオテープレコーダやビデオディスクに関する規格争いである。VTR創世期以降、さまざまな規格争いが展開されている。家庭用ビデオの規格争いとしては、もっとも有名な事例であり、単に「ビデオ戦争」といえば『VHSとベータマックスのデファクトスタンダード戦争』を指すことがほとんどである。家庭用ビデオの最初期には、カセット収納型規格としてなど、さまざまな規格が乱立していたが、開発・販売が先行していたU規格がカセットの大きさや価格の面で家庭用としては普及せず、各社が1/2インチテープを使用する各規格を構築し「家庭用の本命」とPRしていた。しかしVコードを開発した東芝・三洋がベータ方式に参入(当初は併売)、オートビジョン方式・VX方式を開発した松下電器も子会社であるビクターが開発したVHSの併売を決め、最終的にはベータ方式とVHS方式に収斂されていった。結果としてベータ陣営はソニーを規格主幹として東芝・三洋電機・NEC・ゼネラル(現・富士通ゼネラル)・アイワ(現・ソニーマーケティング)・パイオニア(現・オンキヨー&パイオニア)が、VHS陣営は日本ビクターを規格主幹として松下電器産業を中心にシャープ・三菱電機・日立製作所・船井電機などが、それぞれ加わった。ソニーのベータマックスがU規格と同等の性能確保を意識し、基本録画時間を1時間(後のβIモード)として画質を堅持、U規格と同じ形態によるフルローディングとして機能性を維持していたのに対し、VHS方式では家庭内用途を意識して画質・機能を過度に追求せず、基本録画時間を2時間と設定していた。録画時間で劣るベータマックスは、すぐさま2倍モードに相当する「βII」モードを開発・搭載することでVHS方式に対抗したが、2倍モードの構造的問題から再生処理を本来規格から変更せざるを得ず、βIIモードの再生処理を基本とした「ベータ方式」として規格を再構築し、これを各社が採用する形となった(最初期のβIをソニー以外の各社がサポートしない理由となっている)。ベータマックスの再生モードの基本がβIIモードになったことから、画質面では両者に顕著な差はなくなったが、機能面ではVHSはベータマックスの後塵を拝することとなった。ベータ方式は主幹のソニーが画質維持と高機能化を意図した開発指向で新機種を投入し、対するVHS方式は「家庭用」であることを強く意識した商品開発を各社がバリエーション豊かに進め、技術の進歩に合わせて目まぐるしいほどの速度で画質改善や新機能の搭載が進んだ。こうして家電品史上例のない規格対立戦争は1980年代まで続くこととなったが、一般的傾向としては録画時間が長く、また販売店の多かったVHS陣営が1980年代初頭頃から優勢になり、1980年代半ばには「VHSの実質的勝利」という認識が拡がった。東芝・三洋などベータ陣営のメーカーもVHS方式の併売をはじめ、程なくベータ方式の新規開発を取りやめVHSへ完全に鞍替えすることとなった。ベータ方式の規格主幹であるソニー自身も1988年にVHSの併売に踏み切り、ベータ方式は事実上の市場撤退となった。ソニーはその後もベータ方式の開発・販売を続けていたが、2002年8月27日に同年末でベータデッキの生産終了を発表、市場からの完全撤退となった。最初の戦いがVHS勝利で幕を閉じた理由として、以下の理由が挙げられる。ソニーはベータの苦境を見て、1984年には4日間連続の新聞広告で「ベータマックスはなくなるの?」「ベータマックスを買うと損するの?」「ベータマックスはこれからどうなるの?」といった問いかけに「答えは、もちろん「ノー」。」「もちろん発展し続けます。」というコピーを入れ、最終日に「ますます面白くなるベータマックス!」という展開で終わる奇抜な新聞広告を行ったが、4日間継続して読み続けないと意図が上手く理解できない構成だったことが災いし、ベータ離れがさらに進行する結果となってしまった。なお規格争いに勝利したVHSも、2010年代に終末期を迎えた。パナソニックは2012年に入って「VHSデッキの日本国内向け生産を2011年限りで完全終了した」旨を公式発表。これにより大手メーカーでのビデオデッキ生産は終了した。その後、ドウシシャ(「SANSUI」ブランド)が再生専用プレーヤーの生産を終了し、最終的に船井電機(DXアンテナ)1社がDVDレコーダーとの複合機を細々と製造するのみとなったが、2016年7月末をもって生産を終了した。多くの国でアナログテレビ放送が終了し、デジタルテレビ放送へと完全移行しており、録画ができるビデオ規格としては完全に過去のものとなった(デジタル放送が録画できるVHSの派生規格であるD-VHSは、既に製造が終了している)。その後、ビデオディスクに関しても規格争いが発生した。当初LDはパイオニア1社だけの販売に対して、VHD賛同社はアイワ・赤井電機(現・AKAI professional)・オーディオテクニカ、クラリオン・山水電気・三洋電機・シャープ・ゼネラル(現・富士通ゼネラル)・東京芝浦電気(現・東芝)・トリオ(現・JVCケンウッド)・日本楽器製造(現・ヤマハ)・日本電気ホームエレクトロニクス・日本ビクター(現・JVCケンウッド)・松下電器産業(現・パナソニック)・三菱電機の15社にも及んだ。一方、ソニー・日立製作所・日本コロムビア・日本マランツ・ティアックなど両陣営とも参加を見送ったメーカーも存在したが、いずれも後にLD陣営に加わった。最終的にはVHDが敗退しLDが残存する形となった。このような結果になった理由としては、下記のようなことが挙げられる。LD対VHDはLDの勝利で幕を閉じたものの、その後LDは以下のような理由により、ヒット商品とはなりえなかった。そして、十分に一般家庭に普及しない状況において、後継となるDVD-Video規格が発表された。DVDはディスクの直径がCDと同一の12cmとLDと比べて小さく、非常に使いやすかった。またLDの反省を踏まえて、当初からレンタルを解禁するなど(これはコピーガードを採用したからでもある)、ソフトの供給体制も当初から整備された。さらにCD-ROMに代わるパソコンの外部・内蔵記憶装置としてもDVD-ROMが普及したほか、DVD-R等書き込み可能型の規格も登場した。これによりLDの市場は急速に衰退し、ソフト供給は2007年3月で停止され、LDプレーヤーもパイオニア以外は2000年までに製造中止、パイオニアも2009年1月14日に製造中止を発表した。しかしながら、DVDに採用されたMPEG-2特有のノイズやコピーガードがLDには無いという画質上のメリットがある。また、音質面ではLDの方がDVDより優れているとする意見もある。コレクターズアイテムとしての観点からは、ジャケット写真が非常に大きいという魅力もあるため、根強いLDファンも存在する。8ミリビデオはソニーがベータ・VHSに代わる「小型で扱いやすい『家庭用ビデオシステムの本命』規格」として提唱し、長らくの調整の後に「業界統一規格」として多数の賛同会社を得たうえで発表・発売された。当初はベータマックスやVHSに代わる家庭用ビデオカセットとして普及が期待され、据置型機種も多く発売されたが、その小型なカセットサイズを活かしたカメラ一体型ビデオシステム(ハンディカムシリーズ)が注目を集め、他社も含めてハンディタイプのビデオカメラ用途として一大勢力を築く結果となり、ソニーの思惑とは違った形ながらも普及が進んだ。一方VHSの規格主幹だった日本ビクターは、カメラ一体型ビデオシステム用途としてVHS規格に合致する小型カセットであるVHS-C規格を開発・発売、ビデオカメラ用途での規格対立戦争となった。当初はVHSとの互換性を重視したVHS-Cが若干優勢であった。しかし1989年にソニーが「パスポートサイズ」のキャッチコピーを採用いた小型機CCD-TR55 を発売すると、8ミリビデオ規格が優勢になり始める。1992年にシャープの「液晶ビューカム」がヒットし8ミリ規格の注目度が高まると、VHS-C陣営の中からも8ミリに転換する会社が続出した。なお、アメリカにおいては、小型であることはさほどのメリットにならず、大型機の方が録画時間など性能に優れていること、レンタルビデオソフトの再生用途にも使えるということ、日本人にとっては重たいVHSビデオカメラが白人や黒人にはそれほど重くなかったことなどから、VHSのビデオカメラが主流であった。これには後にレンタルビデオソフトの再生機として安価な韓国製のVHSデッキが普及したことから、ビデオカメラ市場推移はVHSから8ミリへの世代交代という形でなされている。規格争いに勝利した8ミリ規格も、90年代頃より徐々にDV方式へと世代交代していった。2000年代以降はそのDVも衰退し、DVDやハードディスク、メモリーカードなど、ビデオカメラの規格は多様化傾向にある。規格としては世代交代した現在において、過去の映像資産の保存という観点では、8ミリだと当時使用したビデオカメラが稼動できる状態でなければ、違うビデオカメラを用意するか、あるいはあまり普及していない(中古も入手しにくい)据え置き8ミリデッキが必要になるという問題がある。一方VHS-Cは、カセットアダプターさえあれば、広く普及している据え置きVHSデッキで再生可能であり、映像資産を残すには有利である。ただし、40分など長時間テープはテープ自体非常に薄く作られているため、デッキにもよるが急激な巻き戻しを行うとテープがリールから外れることも多いため、注意が必要である。またVHSデッキも上述の通り、日本国内メーカーでは完全に製造が終了するなど、現在は衰退傾向にある。そのため近年では8ミリやVHS-Cで撮り貯めた映像を、DVDやブルーレイやハードディスクなどに焼き直し保存して、従来のカセットは廃棄する人も多い。東芝、タイム・ワーナー、松下電器、日立、パイオニア、トムソン、日本ビクターが推すSuper Density Disc(スーパー・デンシティ・ディスク・略称SD)方式と、CDの延長線上にある技術を利用したソニー、フィリップスなどが推すMulti Media Compact Disc(MMCD)の二方式が対立していた。ハリウッドをも巻き込み全面対立の様相を呈していたが、両陣営の水面下での度重なる交渉の末、両方式の長所を併せ持った折衷方式としてDVDが誕生した。統一規格として誕生したDVDではあるが、記録フォーマットに関するDVDに争いの場を移し、VHS対ベータに次ぐほどの規格対立が生じた。DVDフォーラムが開発したDVD-R/RW/RAMと、DVDアライアンスが開発したDVD+R/RWに大きく分かれ、さらにはDVD-RWとDVD-RAMに関しても対立が生じた。結果として、DVD-RAM陣営には松下電器産業を規格主幹として日本ビクター・日立製作所・東芝などが、一方のDVD-RW陣営にはパイオニアを規格主幹としてソニー・シャープ・三菱電機などが、それぞれ加わった。特にDVDレコーダーでは各社の特徴がはっきり見られた。ソニーはライバルである松下電器が筆頭であるDVD-RAMを敵視しており、2006年前半までのスゴ録は録画はおろか再生も不可能だった。また、DVDアライアンス陣営にも参入しており、日本メーカーのDVDレコーダーでは唯一DVD+R/RWの録再が可能である。一方の松下電器はDVD+R/RWはもちろんDVD-RWも敵視しており、最初期のDIGAではDVD-RとRAMのみの対応だった。しかし2005年春からDVD-RWもビデオモードのみながら録画・再生が可能になり、2006年秋からはVRモードでの録画にも対応した。一方でDVD+R/RWは日本国外市場ではそれなりに普及したが、日本国内では通常のDVD-R(ビデオ用)と比して割高でありCPRMに対応できていないこともあって、あまり普及しなかった。2010年代現在では既に次世代DVDが登場し、後述する通り次世代DVDはBDの勝利で決着している。そして2011年には多くのメーカーがDVDレコーダーの生産を終了し、「VHS対ベータマックス」の項で述べた通り、最終的には船井電機(DXアンテナ)1社がVHSとの複合機を生産するのみだったが、2016年7月末で生産を終了した。この機器はDVD-R/RWの録画再生に対応し、DVD-RAM、DVD+R/RWへは対応しない。なお、BD機器における下位互換、DVDプレイヤーの再生対応については、現状ではDVD-R/RWに対応しているBD機器/DVDプレイヤーに比べると、DVD-RAMやDVD+R/RWに対応する機器は少ない。以上、DVDの規格争いは、日本においては概ねDVD-R/RWの勝利で終了するも、既にBDへの世代交代がなされるという結果に終わったといえる。第3世代光ディスク(次世代DVD)に関するビデオ戦争で、次世代DVDというネーミングから「次世代ビデオ戦争」とも呼ばれた。次世代DVDにはBlu-ray Disc(BD)とHD DVDが名乗りを上げた。2005年前半には規格統一の動きもあったが、記録層の薄さ(0.1mm)や両陣営の光ディスクに対するビジネススタンスの違いから同年夏には統一断念となり、結果として2陣営が混在する形となった。両陣営ともに満を持して世に送り出した規格であるが、日本のソフトメーカーは当初は次世代DVDには消極的で、消費者もこうした規格対立・次世代DVD機器の高価さ・動画共有サイトなどの台頭などを理由に、買い控えの傾向にあった。先行き不透明な状況から、両規格に対応した機器としてパソコン用ドライブが発売されるなど、明確な決着が付くまでには相当な時間がかかることが予想されていた。しかし次世代DVDが完全に普及しない状況でありながら、以下の理由により徐々にBD陣営に優勢に傾いてきた。そして米国時間2008年1月4日、ワーナー・ブラザーズが「Blu-ray Disc単独支持」への路線変更を行い、それに続きBlu-ray単独表明をしていたパラマウント・ピクチャーズは単独表明の際、契約条項による「ワーナー・ブラザーズが選択したフォーマットを追従できる権利」を行使するかどうかの決断を行っていた。日本時間2008年2月19日において、東芝がHD DVDの「事業終息」(事実上の撤退)を表明し、Blu-ray Disc対HD DVDの6年の次世代ビデオ戦争はBlu-rayで統一される形で終了した。東芝は撤退後もBDには参入しないと表明していたが、2009年9月4日に参入を発表し、BD陣営の軍門に下った。なお2009年には、新たな次世代DVD規格として、中国が中心となって新たに従来の赤色レーザーを使う「Red-ray Disc」を発表した。しかし2014年現在まで、進展は見られない。
出典:wikipedia
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