ニューデリー空中衝突事故(ニューデリーくうちゅうしょうとつじこ、英語:Charkhi Dadri mid-air collision)は、1996年にインドで発生した空中衝突事故(航空事故)である。この事故は民間航空機による空中衝突事故としては世界最悪であり、航空機事故ではテネリフェ空港ジャンボ機衝突事故、日本航空123便墜落事故に続いて、世界3番目の死者数を出した事故である。現地時間1996年11月12日18時32分、サウジアラビア航空763便(ボーイング747-100B、機体記号:HZ-AIH、1982年製造。インド・ニューデリー発サウジアラビア王国・ダーラン経由同国ジッダ行き)は、ニューデリーのインディラ・ガンディー国際空港を離陸した。763便には乗員23名と乗客289名の合計312名が搭乗しており、乗客の多くはサウジアラビアに出稼ぎに向かうインド人労働者であった。同じころ、カザフスタン航空1907便(イリューシンIl-76貨物機、機体記号:UN-76435、1992年製造。カザフスタン共和国・シムケント発インド・ニューデリー行き)は、インディラ・ガンディー国際空港への着陸のため、763便と同じ空域を降下中であった。1907便には、乗員10名、乗客27名の合計37名が搭乗していた。763便は離陸に伴い、18時32分、管制官から高度10000フィートへの上昇を指示され、事故5分前の18時35分、さらに高度14000フィートへの上昇を指示された。763便は指示に従い、高度14000フィートを維持して飛行した。1907便は18時32分、インディラ・ガンディー国際空港管制塔に対し、高度23000フィートを飛行している事を通報した。管制官は高度15000フィートへの降下を指示した。この際、管制官は1907便に対し、12時の方向約5マイルの地点に、正対して進行してくるサウジアラビア航空のボーイング747型機がいる事を通報し、同機を視認したら管制官に通報するよう指示した("[There is an] identified traffic 12 o'clock, reciprocal Saudia Boeing 747, 14 miles. Report if in sight.")。1907便は上記通報を受信した旨管制官に通報した。1907便は高度23000フィートで当該空域に飛来したが、同機の機長は水平飛行に移行する高度を副操縦士に指示することなく降下を続けた。さらに、1907便の通信士は、英語を解さない機長、副操縦士、航空機関士、航法士に対して上記管制官からの警告を通訳していなかった。このため、1907便の機長と副操縦士は、衝突の3秒前に763便を視認するまで事態を把握できなかった。尚、両便とも空中衝突防止装置(TCAS)が装備されていなかった。18時40分、1907便の機長は初めて通信士に管制官から指示された高度を確認した。この時点で、1907便は既に高度14090フィートまで降下していた事が事故調査によって明らかになっている。衝突の3秒前、1907便の航空機関士が12時の方向に同高度を飛来してくる763便を視認し、上昇に転ずるべくエンジンスロットルを全開とした。18時40分、1907便と763便は、1907便の左翼が763便の第1・第2エンジンおよび後部胴体にぶつかる形で空中衝突した。763便は破壊されたエンジンと胴体が発火し、空中分解して墜落した。1907便は左翼を失い、衝突後約10秒間上昇を続け高度15,700フィートに達したところで失速し、墜落した。両機共に生存者はなかった。インド政府の事故調査委員会が双方の航空会社から事故調査の宣誓を取り付けたうえで、フライトレコーダはモスクワとロンドンで解析された。その結果、カザフスタン機の操縦士が管制官の指示した空路よりも低い空路で下降していたことが分かり、事故の第一の原因は、カザフスタン機が管制官の指示に従わなかったことであるとされた。さらに、同機の機長も副操縦士も国際航空言語である英語によって行われる管制官の指示をよく理解していなかったことも判明した。また通信士が英語で送信されてきた通信を翻訳してパイロットに伝えなかったため、英語で送信された通信のフライト・レベル("FL140"と"FL150")しか把握できなかった。そのため「FL140に763便がいるのでFL150まで降下せよ」という指示を「FL150に763便がいるのでFL140まで降下せよ」と間違った把握をしてしまい、そのため763便とほぼ同高度へ降下していった。その後通信士が高度が低すぎることに気付き、「高度が低すぎる!140じゃない!150だ!」と叫び、操縦士は出力を上げ上昇を試みたが間に合わず、さらに上昇するためフルスロットルにしていたため、猛スピードで衝突する結果となってしまった。また、現場付近には雲が出ていたため、事故機が互いに視認できなかったという気象条件も遠因として考えられている。事故の瞬間を偶然目撃したアメリカ軍輸送機のパイロットが、衝突は雲の中で起きたということを証言していた。事故報告書は、事故再発防止のために、空港を発着する航空路の分離と、レーダー管制システムの近代化を提唱している。ナショナルジオグラフィックチャンネルで放送された航空事故番組『』の第6シーズン第4話「CRASH COURSE」は、この事故を扱うものである。
出典:wikipedia
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