薬物乱用(やくぶつらんよう、Substance Abuse)とは、繰り返して、著しく有害な結果が生じているが、耐性、離脱、強迫的な使用といった薬物依存症の定義に満たないという、薬物の使用状態における精神障害である。薬物に対する効果が薄れる耐性の形成や、身体的依存が形成され離脱における離脱症状を呈する状態となった場合も含む薬物依存症とは異なる。世界保健機関は、薬物乱用の用語は曖昧であるため用いず、精神や身体に実際に害がある有害な使用の診断名を用いている。その研究用の診断基準では1か月以上持続していることを要求している。経過としては、乱用をしなくなるか、あるいは薬物依存症に移行する。また、大麻や幻覚剤のように不快な離脱症状のために再び薬物を使用するという状態が起きない薬物もある。向精神薬に関する条約における薬物乱用とは、精神的依存と身体的依存のどちらか、あるいは両方において薬物が用いられることである。1961年の麻薬に関する単一条約と1971年の向精神薬に関する条約によってこれらの乱用薬物の多くを、国際的に規制している。アンフェタミン、コカイン、ある種の抗不安薬のように、短時間作用型の薬物は依存や乱用を発現させる可能性が特に高い。アルコールや鎮静剤、覚醒剤のように身体依存を引き起こす傾向のある薬物が存在する。逆に大麻や、幻覚剤のように不快な離脱症状を回避するための摂取というものが起きない薬物もあり、治療を求めるのはまれであり、幻覚剤ではほとんどが短い乱用及び依存のあと、元の生活様式に復帰する。アメリカ精神医学会(APA)による診断基準では、害があることを認識しているにもかかわらず物質の使用を止めることができない状態で、かつ耐性や身体的依存の形成が診断基準に含まれる薬物依存症の診断基準を満たしていないものである。週末など非持続的に、過剰摂取などによって薬物に関するトラブルを起こす状態で、薬物の使用が管理できる時期も存在する。経過としては、乱用をしなくなるか、あるいは依存症に移行する。どの診断基準にも、反復的であるという記述が含まれる。物質乱用は、耐性、離脱、強迫的な使用のないもので、また単なる使用、誤った使用、危険な使用の同義語ではない。DSMには重症度の概念が存在するため、臨床的に著しい苦痛や機能の障害を引き起こしていない場合は除外され、大量摂取されていてもそれは単に娯楽的な使用である。DSM-5において、物質乱用と物質依存症を廃止・統一し、新しく物質使用障害を用意したが、以下のような論争があり、DSM-IVの編集委員長のアレン・フランセスは、ICDによる依存と乱用を区別した診断コードの使用を推奨している。以前のDSMで用意した物質乱用は一過性のものだが、新しい診断名を使うことによって常用者のようなレッテルを張り、当人が不利益を被る可能性がある。一時的な乱用者とすでに依存症が進んだ者とでは、予後、治療の必要性などが異なり、そのような区別をもたらす臨床上の重要な情報が失われる。ICD-10(『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』)においては、F1x.1有害な使用(Harmful use)の診断名が存在し、これは精神的または肉体的な健康に実際に害があるような物質の使用パターンである。これは、社会的に否定的な結果が生じたり、文化的に承認されないといったものは含まない。乱用(abuse)の用語は、どのような使用も不可であるという意味として、たまに用いられるため、その曖昧さゆえに依存を生じない物質(下記)の場合を除いて用いられていない。ICD-10の研究用診断基準では、1か月以上持続していることを要求している。依存を形成しない向精神物質以外の誤用(Misuse)には、F55依存を生じない物質の乱用を用いることができる。依存症や離脱症状が生じない物質である。F55.0抗うつ薬、F55.1緩下剤、F55.2鎮痛剤、F55.3制酸剤、F55.4ビタミン剤、F55.5ステロイドあるいはホルモン剤、F55.6特定の薬草あるいは民間治療薬、F55.8他の依存を生じない物質、F55.9特定不能のものである。つまり、世界保健機関は1994年の『アルコールと薬物の用語集』においては、抗うつ薬による依存症や離脱症状が生じるかは不明確だとしているためである。しかしながら、2003年には世界保健機関は、SSRI系の抗うつ薬による離脱症状や依存症の報告が増加していることに言及した。DSM-IVにおいてもICD-10においても、物質依存症など、他の形態をとっている場合には、この診断の使用は推奨できない。向精神作用を持つ物質などの嗜癖を持つ場合、否認という病的な自己防衛機制が働く。この防衛機制のため、たばこのような一部の薬物は、長期的影響(特に認知能力や記憶力などの高次脳機能)を無視し、実際よりも害が少ないと言われる傾向がある。米国の12歳以上人口では、1ヶ月有病率は9.4%(2013年)、豪州における12ヶ月有病率は5.1%、カナダにおける12ヶ月有病率は5.9%であった。2002年初頭にWHOは、世界では1.4億人がアルコール依存、4億人がアルコール利用障害を抱えていると報告している。薬物・アルコールの初回使用は、多くは青年期であり、青年期後期では物質使用経験は一般的である。米国においては、2010年の全国Monitoring the Futureサーベイによれば、 12学年生(17-18歳)の48.2%について、これまでに何らかの違法薬物使用経験があった。 同調査では、過去30日について、12学年生の41.2%がアルコール使用、19.2%がタバコを使用していた。CDCによれば、2009年には米国の約21%の高校生が、処方箋なしで処方薬を保持していた。また英国においても、16-24歳の青年において最も罹患率が高い疾患は薬物乱用であり、これは環境的、家庭、経験、精神保健、教育などの面でディスアドバンテージを抱える青年層においては有病率は24%に跳ね上がる。国際的には、1961年に麻薬の乱用を防止する国際条約である麻薬に関する単一条約が公布された。その後、1960年代に医薬品として広く流通した幻覚剤のLSDや鎮静催眠剤の非バルビツール酸系やベンゾジアゼピン系の乱用により、1971年に向精神薬に関する条約が、その乱用を防止する目的で公布された。1988年には、麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約が公布された。2011年には、薬物政策国際委員会が、麻薬に関する単一条約にはじまる薬物との戦いの失敗を宣言し、薬物政策の見直しを求め、有害性と法律が合致していないことも指摘されている。タバコやアルコールに関しては、喫煙、飲酒者の4人に1人が20歳未満の時に喫煙、飲酒を始めている。未成年でアルコールやタバコを経験すると、薬物の乱用に興味をもちやすくなるといわれる。2004年に行われた有床精神科医療施設に対する調査では、違法な薬物の単独使用は、51%が覚せい剤である。有機溶剤は17%と2位であるが、初回使用薬物としては45%を占め、薬物乱用への入門薬としては軽視できず、低年齢の乱用者が多いことも問題とされる。2008年現在は、覚せい剤の「第三次乱用期」であり、乱用薬物の中でもっとも深刻な問題を引き起こしている。日本における違法薬物や禁制品の流通は、暴力団などの反社会的勢力にとって伝統的であり、割合としてもきわめて大きな資金源となっている。また、麻酔科医師が医療用麻薬の自身への不正使用によって薬物依存に至ったり、死亡するケースも存在している。薬物乱用や違法薬物製造は全世界で広がりを見せており、発展途上国の外貨獲得産業として違法薬物製造が生産され、人間の生命や、社会や国家の安定を脅かすなど、人類が抱える最も深刻な社会問題の1つとなっている 。1987年(昭和62年)に開催された国際麻薬会議において、その終了日(6月26日)を国際麻薬乱用撲滅デーとし、各国がこの宣言の趣旨を普及するよう促した。また、1998年(平成10年)の国連麻薬特別総会においては、「薬物乱用防止のための指導指針に関する宣言」(国連薬物乱用根絶宣言)が決議されている。2004年(平成16年)に開催された国際連合本部で「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」に関し、公衆衛生分野における初めての多数国間条約として、本条約が発効された。日本も同条約の締結を行い、タバコ規制のための国家能力の構築を図ることを決議された。日本においては、違法麻薬の薬物乱用に対する警戒心や抵抗感が薄れるなど「第三次覚せい剤乱用期(1997年から現在まで)」が続いている。このような状況を早期に終息させるため、日本政府は「薬物乱用防止5か年戦略」に基づき各種対策を講じている。厚生労働省では、関係省庁の協賛や関係団体の後援を得て、平成5年度(1992年)より「6・26国際麻薬乱用撲滅デー」を広く普及し、薬物乱用防止をいっそう推進するために、「薬物乱用防止ダメ。ゼッタイ。」運動を実施している。2011年には、薬物政策国際委員会は、1961年の麻薬に関する単一条約からはじまる薬物戦争により、社会や市民に悲惨な結果がもたらされ失敗に終わったことを宣言し、各国に薬物政策の見直しを求めた。イギリス内務省は、薬物乱用による英国への経済・社会的コスト(犯罪・病欠・疾病)は、年間200億ポンドに上ると推定している。各国日本
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