選挙運動(せんきょうんどう)とは、公職選挙法上、特定の選挙につき特定の候補者または特定の立候補者予定者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接または間接に必要かつ有利な行為をすることと一般に解されている。日本では、公職選挙法上の「選挙運動」の概念について、総務省は「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」であると解している。これは、大審院の1928年(昭和3年)1月24日判決、1929年(昭和4年)9月20日判決、最高裁1963年(昭和38年)10月22日決定を根拠とするものである。一般に『選挙運動』とは、「公職選挙法上、後援会活動等の『政治活動』も含まれる為に、一概に定義することは困難である。また選挙運動には、『選挙活動』との部分が含まれ、実際の選挙活動期間(投票日の1ヶ月前から)を呼称する」との観点から、「(一)次期、または、それ以後の選挙に立候補する為の間と、(ニ)実際に立候補者と成った時の活動」に区分される。日本では、戸別訪問が禁止されていることや正規の選挙運動期間が諸外国に比べ短いこと、公明党や共産党を除いて組織政党が未発達であるため個人単位の後援会が中心となって選挙運動が行われているなどの特徴がある。まず、日本で戸別訪問が禁止されていることから、自動車による候補者の氏名の連呼による選挙運動が行われていることが大きな特徴である。さらに、正規の選挙運動期間が諸外国に比べ非常に短いため、政治活動という形で実質的な「選挙運動」が行われてきたという経緯もある。例えば、選挙告示前において、候補者と候補者の所属する政党の中で著名な者(党首等)と連名の政党名義の演説会の告知という形で政治活動用ポスターとして掲示されるのがその一例である。ほかにも、後援会活動として後援会への勧誘を名目とする戸別訪問や討議資料(公約ではない)という形で頒布されるビラ・リーフレットや政党機関紙の号外形式で発行されるビラの頒布などの形式での政治活動が行われている。なお、これらの運動においては、公約という言葉や候補者という肩書きを使ってはいけないという制約が存在する。告示前の政治活動が事実上選挙運動に近いものが行われるなど非公式な形での選挙運動は実施されているが、このような形の選挙運動規制が果たして適切であるかどうかについては、なお議論が必要であろう。日本における票の買収については、かつてのようにあからさまに多数の選挙人に現金等を配るという形態は少なくなったが、最近では、票の取りまとめという形で町内会の会長や役員等に現金や飲食の提供、選挙運動に従事する報酬として金銭やその他の財産上の便宜を図るといった形に対する摘発が多いようである。日本における選挙運動の形態としては、公明党や日本共産党を除いて党員組織が未成熟であることから、候補者個人および後援会を中心に選挙運動が行われている。まず組織固めとしてあいさつ回りや名簿集め等を公示(告示)前から行い、必要に応じて決起集会等を行い、政治活動用ポスターの掲示の依頼等を行う。公示(告示)が行われ選挙戦に入ると、その日のうちに、手配した人でポスターを貼り終え、選挙運動用自動車によって候補者の氏名を連呼して、選挙区を回る。なお、選挙運動用自動車に乗車している運動員を通称ウグイス嬢と呼ぶ。支持者に対しては電話や葉書で票固めを行う。さらに、候補者は各種団体へのあいさつ回りをする。そして、投票日を迎えるというのが典型的な選挙運動の形態である。広い意味では選挙運動も政治活動の一部であるが、公職選挙法では選挙運動と政治活動を理論的に区別している。公職選挙法における選挙運動とは「特定の公職の選挙につき、特定の立候補者又は立候補予定者に当選を得させるため投票を得又は得させる目的をもって、直接又は間接に必要かつ有利な行為」をさすと解されている。この定義には、大きく3つの要素があって、第一に特定の公職の選挙に関するものであること、第二に特定の立候補者(予定者も含む)の当選を目的とするものであること、第三に問題となる行為が特定の候補者の投票獲得に直接又は間接に必要かつ有利な行為であることに分けられる。そして、具体的にある行為が選挙運動に当たるかどうかは、その行為の名目だけでなく、その行為のなされた時期、場所、方法、対象等を総合的に観察し、それが特定の候補者の当選を図る目的意識をともなう行為であるかどうか、またそれが特定の候補者のための投票獲得に直接又は間接に必要かつ有利な行為であるかどうかを、実質に即して判断すべきものである。これに対して、広義の政治活動は、政治上の主義、主張、若しくは施策を推進し、支持し、若しくはこれに反対し、又は公職の候補者を推薦し、支持し、若しくは反対することを目的として行う直接間接の一切の行為を指し、狭義の政治活動は、広義の政治活動から選挙運動にわたる行為を除外した行為をさすものとされている。選挙運動については、その定義に「当選を得させるため」が含まれるのみで、「落選させるため」が含まれないため、いわゆる落選運動は広義・狭義の政治活動にはなるが、公職選挙法上の選挙運動にはあたらない。なお、特定の候補を当選させることを目的として、別の候補を落選させようとする行為は選挙運動になり、選挙運動規制が適用される。選挙運動は,公示日(告示日)に立候補届が受理された時から選挙が行われる日の前日まですることができる。原則として衆議院(小選挙区)においては、候補者につき1箇所及び政党設置のものが1箇所、衆議院(比例区)にあっては都道府県ごとに政党等が設置するものが1箇所、参議院(比例区)にあっては政党等設置のものが都道府県ごとに1箇所及び候補者が設置するものが1箇所、その他の選挙にあっては候補者1人につき1箇所設置することができる。選挙事務所は1日に1回しか移転することはできない。なお、選挙事務所の明確な定義はなく、電話による選挙運動はどこでも行うことができる他、選挙運動用はがきの整理、選挙運動用ポスターの管理、支持者名簿の整理、選挙運動用自動車の乗務員の休憩など、実質的な選挙事務所としての機能に関する規制はなく規制することも難しいため、実質的には、選挙事務所であることを示す看板の掲示に関わる規制である。選挙運動のために法律で定められた文書図画以外のものを頒布・掲示することは禁止されている。現在のところ国政選挙と地方の首長選挙で頒布することが可能であるが、地方の議員選挙では頒布することができない。なお、2007年3月22日施行の公職選挙法一部改正法では、地方の首長選挙でもビラ頒布が解禁された。国政選挙(総選挙及び通常選挙に限る。)において政党等の本部が直接発行するパンフレット又は書籍で国政に関する重要施策およびこれを実現するための基本的方策等を記載したものまたはその要旨等を記載したものでそれぞれ1種類を、選挙事務所・演説会・街頭演説の場において頒布できることとされている。ウェブサイトやソーシャル・ネットワーキング・サービス等によるインターネットの利用、赤外線通信、イントラネットなど放送を除く電気通信を利用した方法により受信する者が使用する通信端末装置(入出力装置を含む。)の映像面に表示させる方法(以下、「ウェブサイト等を利用する方法」という。)により文書図画の頒布については、自由に行うことができる。その際、頒布する者の電子メールアドレス等のインターネット等を利用する方法によりその者に連絡をする際に必要となる情報を表示しなければならない。ただし、電子メールを利用する方法による選挙運動については次項による制限がある。なお、選挙運動の前日までウェブサイト等を利用する方法により頒布されたものは、選挙当日においてもその者の受信が使用する通信端末装置の映像面に表示させることができる。政党や確認団体に限り、政治活動として有料で選挙運動期間中選挙運動用ウェブサイト等を表示させる機能を有した広告を掲出することができる。その際、当該広告に公職の候補者を類推させる事項については掲載できない。公職の候補者(衆議院比例代表選挙を除く。)、衆議院小選挙区選挙による候補者届出政党、比例代表選挙における名簿届出政党等、各種選挙における確認団体に限り電子メールを使用する方法を利用した選挙運動が可能である。ここでいう「電子メール」は特定電子メールの送信の適正化等に関する法律2条1号で定める電子メールをいい、インターネットで通常用いられるSMTP方式を用いた電子メールや携帯電話会社が提供する携帯電話番号を用いたショートメッセージサービスの利用を指す。ただし、受信先についてはあらかじめ選挙運動用電子メールの送信に同意した者の電子メールアドレスや日常送信される政治活動用電子メールを受信しているもので選挙運動用電子メールの送信を受け受信を拒絶しなかった者の電子メールアドレスに限定される。次に掲げる場合の立札及び看板の掲示テレビ及びラジオによりNHK又は民放が実施テレビ及びラジオによりNHKが実施午前8時から午後8時までの間に限り、演説者がその場所にとどまり、選管から交付された標旗を掲げて行う場合(候補者1人当たり1旗交付。衆議院(比例区)においては各政党等に1政党につきそのブロックの定数と同数の数の旗を、参議院(比例区)においては候補者に対し候補者1人当たり6旗交付する。)、さらに衆議院(小選挙区)においては、届出政党の選挙運動用自動車又は船舶の周囲で行うことができる。候補者の行う選挙運動員は15人以内でなければならない。確認団体の使用する自動車の車上およびその周囲で午前8時から午後8時までの間行うことができるただし、一部選挙無効の再選挙においては発行しない参議院選挙区選出議員の選挙においては、推薦団体による推薦演説会・演説会周知のためのポスターの掲示、会場における立札・看板及びポスターの掲示を行うことができる。自由に行える選挙運動としておおむね次のものがあげられる。もっとも、選挙運動期間外に行えば事前運動として処罰される。候補者個人が行う選挙運動については、選挙運動費用の上限額が規定されている。なお、政党等が行う選挙運動に関する選挙運動費用に対する別段の規制は無い。さらに、日常の政治活動の費用に対する費用の規制は無い。これらのことが何を意味するのかというと、法律で規制されているのは、個人が行う選挙運動期間中の選挙運動費用だけなのであるが、実際に選挙に出るための費用といわれるものはこうした費用に限られない。実際には選挙期間以外の選挙に出るためあるいは議員活動を行う上での、日常の政治活動として事務所費及び人件費等が相当程度必要とされているが、こうした費用への支出に関して特段の規制は無い。また、政党等が国政選挙運動期間中に「政治活動」として行うテレビコマーシャルの費用や新聞広告についても上限無く行うことは可能である。したがって、法定選挙運動費用に含まれる主な経費としては、選挙運動用のポスター・ビラ・葉書の作成・印刷費、選挙事務所費、新聞広告費、個人で行った電話による選挙運動の電話代、ウグイス嬢に対する報酬、選挙運動期間中の運動員に支給した弁当代などが含まれるが、実際には選挙運動期間中に限ってみても、所属政党や確認団体による選挙運動や政治活動の経費の占める割合は相当なものと思われるし、さらに選挙運動期間前の政治活動費(政治活動用ポスターの印刷費や政治活動用の事務諸費や私設秘書等の人件費等)も実際問題としてかかる訳でなかなか選挙に係る経費というものの実態はなかなか見えにくいものがある。次に掲げる者に限り一定の基準によって報酬及び実費弁償をすることができる国政選挙、都道府県の選挙、市長選挙及び政令指定都市の市議の選挙においては、政党その他の政治団体は、その政治活動のうち、政談演説会及び街頭政談演説の開催、ポスターの掲示、立札及び看板の類の掲示並びにビラやそれに類する文書図画の頒布並びに宣伝告知のための自動車、船舶(衆議院選挙に限る)及び拡声機の使用については、選挙の期日の公示(告示)の日から選挙の当日までの間に限り、これをすることができない。なお、立札及び看板の類については、政党その他の政治団体の本部又は支部の事務所において掲示するものを除く。禁止されている掲示又は頒布には、それぞれ、ポスター、立札若しくは看板の類又はビラで、政党その他の政治活動を行う団体のシンボル・マークを表示するものの掲示又は頒布を含む。宣伝告知には、政党その他の政治活動を行う団体の発行する新聞紙、雑誌、書籍及びパンフレットの普及宣伝を含む。なお、新聞・雑誌への広告やテレビやラジオのコマーシャルの放映、インターネットのホームページや電子メールを利用した政治活動はいかなる政治団体においても選挙運動にわたらない限り行うことができる。また、個人の政治活動については選挙運動期間中でも自由に行うことができる。しかし、確認団体の行う政談演説会、街頭政談演説、ポスター及びビラにおいては選挙運動にわたる政治活動を行うことができる。ただし、ポスター及びビラにあっては氏名を類推させることを記載してはならない。
出典:wikipedia
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