鹵獲(ろかく)は、戦地などで敵対勢力の装備品(兵器)や補給物資を奪うこと。接収(せっしゅう)とも。捕獲(ほかく)と称される場合もあるが、軍事用語としては鹵獲が適当な言葉である。古代中国では春秋戦国時代、三国時代などの戦時で度々行われた行為であり、戦国時代の日本ではたびたびこの行為が戦の度に行われていた。主な目的として、自身の装備品より良い武器を奪うためや、それらを売り払って金銭にするためなどがある。武具鹵獲の機会は戦地に限らず、漂泊船の調査においても可能である(『吾妻鏡』の13世紀の記述として、高麗人の船が日本に着いた際、弓や具足などを調査・記録させている)。近代以降の戦争では、降伏した敵軍から武装解除の際に取り上げたり、敵軍が撤退あるいは敗走時に遺棄・放棄した兵器や物資を手に入れることを指して言うことが多い。また、海上に着弾した弾道ミサイルの破片回収なども部分的鹵獲と言える。一般的に、鹵獲した兵器はそのまま自軍の兵器として転用、調査を行って分析し自軍の兵器の改良や開発の参考に使用、改造を施して使用、または余剰品として廃棄されることが多い。このため、近代以降の軍隊では何らかの理由で兵器を遺棄しなければならなくなった場合、その兵器が敵軍の戦力として運用されないように破壊(爆破・放火・自沈)ないし使用不能にすることが義務付けられている。鹵獲兵器をそのまま自軍の装備として転用したとしても、弾薬・爆弾・ミサイルなどの武装類や、エンジン・機器などの補修部品の規格が自軍と異なっていることが多く、消耗品の更新も難しいことから必ずしも有効な戦力として活用できるわけではない。この場合は稼働率の維持のために共食い整備を行わざるを得なくなった挙句に結局廃棄処分を余儀なくされることもあれば、武装・エンジン・機器などを自軍規格に適合するものに換装したり、別の用途に転用するための大改造を行うこともある。第二次世界大戦期には特に大々的に鹵獲兵器が運用され、特に連合国軍と比較し生産力や兵站に劣る枢軸国軍では盛んに鹵獲行為が行われた。ドイツ軍は完全に準備が整わないうちに第二次大戦に突入し、兵器の生産が部隊規模の拡大と損耗補充に追い付かなかったため、鹵獲した各種兵器の有効活用に特に熱心であった。西方戦役において鹵獲されたフランス軍のオチキス H35やソミュア S35などの戦車は、一部ドイツ軍仕様のキューポラを装備し、二線級戦線に投入され、治安維持任務などに終戦まで使用された。また、独ソ戦以降は重装甲を誇るソ連赤軍の戦車に対抗する必要上、鹵獲したKV-1やT-34などをそのまま運用したり、鹵獲ソ連野砲や占領・併合したフランスやチェコの戦車の車体などを流用した対戦車自走砲を多種類製造した。その他、米・英軍の鹵獲車両も多数が運用されたが、友軍の誤射を防ぐため国籍マークを大きく多数描いているのが特徴となっている。フィンランド軍は、冬戦争や継続戦争において、諸外国からの兵器援助が限定的なものであり兵器の国産能力も低かったため、輸入兵器ともども鹵獲兵器を積極的に活用した。日本軍においても、日中戦争(支那事変)の頃から第一線では高性能のブルーノ ZB26軽機関銃やマウザー C96自動式拳銃を鹵獲・接収し大規模に運用しており、太平洋戦争(大東亜戦争)特にアメリカ軍の自動小銃であるM1ガーランドやM1カービンは積極的に鹵獲運用されていた。組織的な運用としては、空挺部隊である陸軍第1挺進団に対し、シンガポールの戦いで鹵獲されたトンプソン機関短銃がパレンバン空挺作戦後に600挺が供給されている。また、日本軍において鹵獲航空機(主な戦闘機・爆撃機はホーカー ハリケーン・ブリュースター バッファロー・カーチス P-40(トマホーク)・ノースアメリカン P-51・ボーイング B-17・ロッキード ハドソンなど)は、ドイツなどからの輸入機ともども、陸軍航空審査部(旧・飛行実験部実験隊)が主に調査研究の目的で運用していた。また、緒戦の南方作戦で鹵獲したハリケーン・バッファロー・P-40・B-17などは羽田飛行場で戦意高揚のための展示会で一般公開されたほか、B-17は1942年公開の映画『翼の凱歌』にて、バッファロー・P-40・ハドソンは、1943年公開の映画『愛機南へ飛ぶ』、1944年公開の映画『加藤隼戦闘隊』において、ともに一式戦闘機 隼などと対峙する敵機役として大々的に「出演」させている。戦地における鹵獲機装備の実戦部隊としては、P-40のみによる飛行隊がビルマ戦線で編成され爆撃機迎撃用に投入されたものの、同士撃ちや消耗部品の供給の問題があったため短期間で解散している。第二次大戦後の冷戦下で対立する陣営は大抵、アメリカ(西側諸国)とソ連(東側諸国)の軍事支援により兵器を潤沢に供給されることが多いため、敵軍に偽装して敵地に潜入する特殊作戦以外で鹵獲兵器を軍の制式兵器として大々的に使用する例はほとんどないが、例外的にイスラエル軍は周辺を敵性国家に囲まれており、欧米諸国からの武器供給も決して安定しているわけではないため、鹵獲兵器(主に東側製)を有効活用するための改造を自国が導入した旧式兵器(主に西側製)の近代化改修同様に重視しており(T-54/55を改修したチランやアチザリットなど)、そこで蓄積されたノウハウを活用した外国の兵器の近代化改修を請け負っている。ただし、ベトナム戦争後のインドシナ半島では、統一ベトナムが旧南ベトナムが保有した米国製装備を中越戦争やベトナム・カンボジア戦争で活用している(これに対し、カンボジアではクメール・ルージュがロン・ノル政権以前の米国製装備を「反革命的」としてことごとく破壊したといわれている)。また、フォークランド紛争では、展開したイギリス軍のヘリコプター輸送能力が不足していたため、現地で鹵獲したアルゼンチン軍のヘリコプターを一時的に運用していた。レバノン内戦では、レバノン国軍及び治安部隊の装備が各宗派の民兵組織及びパレスチナ人組織に鹵獲もしくは横流しが頻発した。内戦終結後、これらの多くはレバノン国軍及び駐留シリア軍によって回収されている。
出典:wikipedia
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