蔡 英文(さい えいぶん、(ツァイ・インウェン)、1956年8月31日 - )は、中華民国(台湾)の政治家。現在、中華民国総統(第14代)、民主進歩党主席(第12-13・15代)。同国行政院副院長(副首相に相当)などを歴任した。蔡英文の祖父は屏東県枋山郷楓港の客家の旧家であり、祖母は獅子郷のパイワン族の末裔である。蔡英文の父・蔡潔生は枋山郷出身の豪商。『商業周刊』の報道によれば、蔡潔生は四人の女性と家庭を持ち、蔡英文の母は張金鳳。子供は合わせて十一人で蔡英文は末子。ジャーナリストで政治評論家の周玉蔻は、著書で蔡潔生は五人の女性がいて、蔡英文は五人目の女性が生んだと主張しているが、この説は蔡潔生の家族の確認を得られてはいない。父親について蔡英文は「とても凄い」と自嘲していた。蔡潔生は18歳の時に 日本軍による南洋作戦への徴用を避けるために中国大陸に渡り、満州国の満州機械学校で飛行機修理を学んだ。太平洋戦争で日本が降伏した後に台湾に戻り、自分で事業を起こし、貨物運送所を開設。後に台北市に移って自動車整備工場を開設して輸入車整備業務に参入し、駐台米軍と外国人顧問の相手を専門にして事業を営み、60歳近くになって不動産業、建築業及びホテルビジネスに参入。中山区の中山北路と新生北路一帯に少なくない不動産を購入して富を得た。2011年12月下旬の中央選挙委員会の財産申請資料によれば、蔡英文は土地4ヶ所、建物2ヶ所、台湾ドルで1805万元の預金、担保等を所有していた。蔡英文のパイワン族名は「Tjuku」で、頭目の娘という意味である。家系図によれば本来は「蔡瀛文」と命名されるはずであったが、父親の蔡潔生は「瀛」は画数が多過ぎるので、名前を「蔡英文」へと変更した。父親の勧めで法学を学び、1978年に台湾のトップ名門大学である国立台湾大学法学部を卒業後、1980年にアメリカのコーネル大学ロースクールで法学修士、1984年にイギリスのロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで法学博士を取得。帰国後、国立政治大学及び東呉大学の教授に就任。専門は国際経済法。国民党政権下の1990年代に、行政院経済部の国際経済組織首席法律顧問、経済部貿易調査委員会委員、行政院大陸委員会委員、行政院公平交易委員会委員、委員、著作権委員会委員などを務め、1999年に李登輝総統が発表した中台関係の新定義、いわゆる「二国論」(「特殊な国と国の関係」論)にも深く関わった。民進党が政権を獲得した2000年5月、中台関係の政策を受け持つ行政院大陸委員会の主任委員に就任。2004年には民主進歩党に入党し、同党から立法委員選挙に出馬し当選、2006年1月から2007年5月まで行政院副院長(副首相)を務め、同時に消費者保護委員会委員を務めた。退任後はバイオテクノロジー企業タイメッド生物製剤の社長に就任するが、国民党から「行政院副院長時代に同社に優先的に外注した見返りの天下り」として批判を受けるが、この疑惑は事実無根であることが証明されている。民進党が下野した直後の党主席選で対抗馬の辜寛敏や蔡同栄に圧勝し、2008年5月21日、第12代主席に就任した。代理で就任した人物を除くと、民進党初の女性党首である。同年11月に民進党選出の元総統陳水扁が資金洗浄疑惑で逮捕された際には党主席として国民に謝罪し、「党は陳に関する疑惑を隠蔽することはない」と述べた。国民党の馬英九政権の親中政策への批判が高まる中、蔡の下で民進党は2009年中華民国地方選挙で党勢を盛り返した。2010年5月、第13代主席に再選。11月に実施された地方選挙の一つとして行われた新北市初代市長選挙に出馬するも、国民党の朱立倫に惜敗した。2012年1月14日実施の2012年総統選の民進党公認候補として、再選を目指す国民党の現職の馬英九と次期総統の座を争ったが敗れ、投開票が行われた14日夜に党主席辞任を表明、3月1日付での辞任を了承された。後任の代理主席は、陳菊高雄市長。2014年3月15日、党主席選挙への立候補を表明した。現職の蘇貞昌と有力候補の謝長廷がひまわり学生運動の影響を受け立候補を取り下げたため、党主席に選出された。2014年中華民国統一地方選挙での躍進により党内基盤を確立し、2015年2月15日に次期総統選候補者に選出される。6月には米紙『タイム』アジア版の表紙を飾り、独占インタビューも掲載された。10月、日本を訪れ、政府高官や与野党幹部らと会談を行った。2016年1月16日、2016年総統選で中国国民党の朱立倫、親民党の宋楚瑜を破り、初当選を果たした。得票数2位の朱立倫に300万票以上の大差をつけての圧勝であり、台湾初の女性総統となる。2016年5月20日、中華民国総統に就任した。2016年8月1日の「原住民族の日」に政府を代表して原住民に謝罪した。2016年8月16日に「対外経済戦略会談」を開き、東南アジア諸国や南アジア、ニュージーランド、オーストラリアとの関係を強化する「新南向政策綱領」を採択した。蔡英文 (著), 前原 志保 (監訳), 阿部 由理香, 篠原 翔吾, 津村 あおい (翻訳)『蔡英文 新時代の台湾へ』白水社、2016年。2008年7月、台湾の主要政治家10人の支持率について行われた世論調査(国民党寄りとされるテレビ局TVBSが実施)では支持率49%の1位となり、馬英九総統の30%(7位)を大きく上回った。「台湾のライス」と呼ばれるなど学者出身で清廉なイメージがある。2012年総統選に立候補し、2011年4月の世論調査では現職の馬英九総統と互角の支持率を出している。短髪・眼鏡の風貌から日本のコンピュータゲーム『艦隊これくしょん -艦これ-』に登場する「霧島」に似ているとされ、現地においても「霧島小英」と称されている。2015年11月14日には、「霧島」のねんどろいどが蔡英文の選挙事務所に届けられている。蔡英文の批判者は、その政策が抽象的で曖昧、なおかつ揺れ動くとして蔡を「空心菜」または「空心蔡」と呼んでいる。この渾名は2011年8月から出現し始めた。当時、蔡英文は既に民進党総統選候補者であったが、民進党内部のある人物は蔡の政策に公開質問を始めていた。先ず、民進党前立法委員郭正亮は、蔡英文の両岸政策が余りにも抽象的であるとし、続いて陳水扁オフィスの前主任陳淞山はその「十年政綱」もまた「空心政見」であると断言した。この後、「空心菜」のレッテルがずっと蔡英文に伴い、2015年の第二回目の総統選挙参戦時も依然として両岸政策は「空心」だと疑問を挟まれていた。政治的立場は穏健独立派とみられているが、2008年11月の中国海峡両岸関係協会の陳雲林会長の訪台をめぐって「訪台を歓迎しない」「台湾史上、最も暗い1週間」と踏み込んだ発言を行い、急速な対中接近を図る馬英九政権を強く牽制した。2010年4月25日には馬英九と共にテレビ討論会に出席し、両岸経済協力枠組協議について「安価な中国製品が大量に輸入され台湾の産業が圧迫された結果、独立性を失い中国の寄生虫になる」として馬を批判し、世界貿易機関の下で中国と交渉するべきと主張した。2015年10月10日に行われた国慶日祝賀大会では、ライバル政党で与党の中国国民党の党歌であり、中華民国の国歌でもある中華民国国歌の歌詞のうち「吾党」(元々は「中国国民党」を指す意味)の部分だけ、歌うのを拒否した。しかし、2016年5月20日に中華民国総統に就任した際には、中華民国国歌の「吾党」を唱和した。中華民国のメディアでは「吾党」を歌うのかが、注目の的となった。2012年総統選に立候補後、2025年までに原発全廃を目指す目標を表明、民進党結党以来の党是の一つである「脱原発」を鮮明に打ち出した。2016年3月12日に台北市内で台湾の電力政策の見直しを求める反原発デモが行われ、蔡英文は台湾第1、第2、第3原発の運転延長はせず、建設が凍結されている第4原発は計画を中止とする民進党の方針を強調。環境配慮や再生可能エネルギーの推進に取り組むとし、放射性廃棄物の処理については、「今こそ超党派で向き合う時だ」と団結を訴えた。同年5月、気温上昇による電力供給問題の解決の為として台湾電力が17か月停止している台湾第一原子力発電所1号機の再稼働を6月に考慮していることに対し、経済部長・李世光は「2025年原発全廃」は「今日原発全廃」ではないと表明した。綠色消費者基金会董事長・方儉は蔡総統が約束をたがえたと考えており、法に依って台湾第一原子力発電所を監視せずに経済部や行政院原子能委員会に1号機の再稼働を認めるのは大規模な無差別殺人行為のようなものだと表明した。台湾の少子化は日本より進んでいるが(2014年時点で日本の出生率1.4に対して台湾は1.1)、2015年5月26日には嘉南薬理大学の講演で少子化現象について触れ、「現在の若者は18歲で良く準備しなければならず、以後は一人が二人分の働きをして70、80歲まで努力しなければならない」と語った。同年12月5日には基金を作って少子化現象の対策にあたる考えを示した。同性愛及び同性婚に対して賛成の立場をとっている。2015年8月20日の台湾でのバレンタインデーにあたる七夕に、「祝全天下所有的情人,七夕情人節快樂!」(全国全ての恋人に、七夕恋人の日おめでとう!)の題名で3組の同性愛者を含むビデオクリップを公式サイトに掲載。同年10月31日に台北市内同性愛者など性的少数者(LGBT)のパレードが開かれ、Facebookで「愛の前では全ての人が平等」とコメントして同性婚への支持を表明した。蔡英文は台湾基督長老教会が運営する台北雙連幼稚園に通ったこともあり、度々台湾基督長老教会の行事に参加している。2015年6月21日には長老教会150周年南部地区感謝礼拝に高雄市長陳菊、屏東県長潘孟安、前行政院長張俊雄ら民進党の関係者と出席し、「長老教会の台湾に対する無私の奉献に感謝します」と挨拶した。2015年12月5日には中央教会と共に台湾基督長老教会が主体となって当時の総統候補・蔡英文と副総統候補・陳建仁の為の「全国基督徒後援会」が結成された。2016年1月19日、台湾基督長老教会は蔡英文の総統当選を祝賀する公告を出した。死刑廃止を主張しているが、2015年7月17日に台湾大学で「死刑廃止には2つの条件が必要で、1つ目は社会のコンセンサス、2つ目は完全に整った体制があることだが、この2つの条件は今台湾ではまだ完全に整っていないし、存在しない」と語っている。2016年7月12日、常設仲裁裁判所が南沙諸島とスカボロー礁にあるすべてのリーフは法的には排他的経済水域および大陸棚を生成しない「岩」と結論した南シナ海判決の際には「裁定は台湾の権利を傷つけるもの」などと猛反発し、軍艦(康定級フリゲート迪化)を派遣した。立法院も「どんな国際的仲裁裁判に基づく一方的決定も中華民国は一切認めない」とし、「中国の台湾当局」という表現が判決文にあることにも抗議している。また、日本との紛糾を避けて7月に予定していた日台海洋協力対話を延期した。2016年7月19日の国家安全ハイレベル会議で「国際法に基づいた平和的解決」「多国・地域間協議に台湾を加えること」「関係各方面には南シナ海における航行と飛行の自由を守る義務があること」「中華民国(台湾)は、争議の棚上げと資源の共同開発による紛争の解決を主張すること」などの「4つの原則」を提示した。2008年10月、週刊東洋経済のロング・インタビューを受けた。この中で、対日関係について「日本と友好的関係、協力的関係を維持することは、最も良い政策的な選択肢だ」と述べた。さらに、かつて日本語を3年間勉強したこと(ただし、本人いわく「あまり上手ではない外国語」)、よく日本を観光で訪問したことなどを明かした。日本統治時代については「日本人には誤りもあったが、台湾に対する貢献もあった」と評価。尖閣諸島(釣魚台)問題については「台湾の領土」との立場を強調しつつ、経済利益は双方が共同で享受することを提唱している。2009年3月には民進党の党首として初めて訪日し、自由民主党幹事長の細田博之や、日華議員懇談会の会長である平沼赳夫、民主党代表の小沢一郎らと会談した。2015年10月に再度訪日し、日本政府高官などと非公式に会談を行ったほか、与党・自民党の細田博之幹事長代行とも会談した。また、野党・民主党の枝野幸男幹事長や日華議員懇談会メンバーらとも会談を行った。この訪日の際、安倍晋三首相とも非公式に会談を行ったとみられているが、菅義偉官房長官は否定しており、蔡自身も、台湾との窓口に当たる交流協会の大橋光夫会長に会っていたとしている。蔡は出発前、この訪日について「今回の訪日は民進党の対日関係重視を表すものだ。日本の各界と意見交換し将来の協力の方法を探したい」と述べていた。尖閣諸島については、「台湾の領土である」との立場を採っている。2008年10月に東洋経済からインタビューを受けた際は、「釣魚台(尖閣諸島)の問題については、民進党が政権を担当して以来、非常に明確な政策がある。釣魚台は台湾に属している、ということだ」と述べた。一方、「このこと(日台互いに領有権を主張していること)が短期内に解決できないのであれば、領土の概念から導き出される経済利益について共同で発展させることができるはずだ」とも述べ、こうした前提の下で相互に討論することが可能であるとの認識を示し、「領土の問題については、それぞれが各自に主張する。しかし領土の概念から引き出される経済利益は、双方が共同で享受する。これが我々の基本的な理念だ」とした。総統選を控えた2015年9月23日には、「釣魚台列島(尖閣諸島)は台湾のもの。これは我々の一貫した立場だ」と述べ、改めてその立場を表明した。2016年1月16日、総統選勝利後の記者会見で「釣魚台(尖閣諸島)は、台湾に属しています」と再び明言した。一方、「日本との関係は非常に重視しており、この主権上の争いを関係発展に影響させることは希望しない。我々の間には主権やその他の論争が存在するが、我々は日本との関係強化を継続する」とも述べ、従来通り日本との関係強化を図る意志も表明した。2016年4月に台湾の漁船が沖ノ鳥島周辺の排他的経済水域で日本の海上保安庁に拿捕されてから馬英九中国国民党政権は、沖ノ鳥島について排他的経済水域を設定できない『岩』との認識を示していたが、蔡英文が5月20日に総統に就任して間もない5月23日に「法律上の特定の立場を取らない」として扱いを修正した。また、馬政権時代、台湾側が求めていたにもかかわらず、実現しなかった海洋協力対話を同年7月までに実施する方向で調整していることが明らかになった。しかし、この決定に対して国民党ばかりでなく民進党や時代力量からも異論が出ている。2016年に発足させた政権では重要ポストに対する知日派の登用が目立った。対日窓口機関とされる亜東関係協会の会長には、知日派とされ自身の側近でもある邱義仁を起用した。また、駐日大使に相当する台北経済文化代表処駐日代表には、「知日派の重鎮」と評される謝長廷を起用した。元行政院長(元首相)が駐日代表に起用されるのは初めてのことであり、この異例の人事は蔡の日本重視の表れだと言われている。
出典:wikipedia
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