『いじわるばあさん』は、長谷川町子による日本の4コマ漫画作品。毎日新聞社発行の週刊誌『サンデー毎日』において、1966年(昭和41年)1月2日号から1971年(昭和46年)7月18日号まで『意地悪ばあさん』の表題で連載された(後述)。『サザエさん』と共に長谷川町子を代表する作品の一つであり、複数回にわたってテレビドラマやテレビアニメ化されている。主人公は漫画の作中でも「いじわるばあさん」と呼ばれることが多いが、本項の文中では設定上の本名である「伊知割 石」の名を用いる。アメリカの漫画家ボブ・バトルの『意地悪爺さん』(原題『Egoist』)という意地悪なおじいさんを主人公とした作品が、1956年から1962年まで文藝春秋の雑誌『漫画讀本』に翻訳連載されていた。これに触発されて誕生したことを、作者の長谷川は『サザエさんうちあけ話』などで語っている。『いじわるばあさん』の作中でも、石が旅行先のイギリスで本家の意地悪爺さんらしき人物と遭遇するエピソードがある。当時の長谷川は朝日新聞の『サザエさん』連載と並行して『サンデー毎日』で『エプロンおばさん』を連載していたが、双方の作品に共通するヒューマニズム色の強い作風に飽きを感じていた。そのような中で『サンデー毎日』の1965年新年号に8ページの漫画を依頼され、執筆したのが『意地悪ばあさん』である。主人公を女性に変更したのは『意地悪じいさん』を読んで「おバァさんのほうがグッと迫力あるのになァ」と言う感想を持ったことに由来し、反響を見て連載を依頼しに来た『サンデー毎日』の編集長と話し合った末、1年後の1966年に連載を開始した。単行本の初版はサザエさんのそれよりも発行部数が多く、読者の側もまた、ヒューマニズムに飽いた人が多かったのだろうと、作者は『サザエさんうちあけ話』で述べている。昭和40年代にして、高齢化社会ならびに老人介護の問題点を取り上げた話も存在する。石自身、度々老人介護施設の職員やヘルパーを相手に意地悪を仕掛けている。また、本作では俗に「サザエさん時空」と呼ばれる登場人物が年を取らない方式ではなく、石の長男の子供たちが連載の後半で進学や就職するなど家庭環境の変化が見られる。日本国外では講談社インターナショナルから『"Granny Mischief"』というタイトルで英語に翻訳・出版されて人気を博した。出版の際には、一部のコマが左右反転されている。テレビドラマやテレビアニメ化された中でも、特に青島幸男主演のテレビドラマ(主人公の名前は「伊知割石」でなく「波多野タツ」とされている)は人気が高かった。ただし、長谷川はアニメの『サザエさん』同様テレビでの登場を快く思っていなかったらしく「漫画作品とは別」と考えており「あれは青島幸男による青島ばあさんです」と述べている。漫画でも青島幸男が演じる波多野タツを伊知割石が批判するエピソードがある。ドラマ、アニメ共にDVDなどの映像ソフト化は一切行われておらず、CSでの再放送も実施されていない。本作の表題は『サンデー毎日』での連載時には『意地悪ばあさん』と漢字で表記されていたが、姉妹社から単行本が発売された際に『いじわるばあさん』と平仮名へ改められた。テレビドラマのうち青島幸男が「波多野タツ」の役名で主演した2作品は連載版に拠って『意地悪ばあさん』、その他の実写作品とテレビアニメ2作品はいずれも単行本に拠って『いじわるばあさん』を正式な表題としている。以下は原作漫画の設定であり、ドラマやアニメでは名前や家族構成が作品ごとに異なっている場合がある。最初の単行本は1966年から1972年にかけて、姉妹社から全6巻が発売された。第1巻の発刊時に初めて『いじわるばあさん』と平仮名の表記が使用されている。1993年に姉妹社が解散した際に他の長谷川町子作品の単行本は多くが絶版となったが、本作と『よりぬきサザエさん』全13巻は財団法人長谷川町子美術館が当面引き継いで刊行する方針が表明され、朝日新聞社が新たに発行を引き受けるまで館内限定で販売されていた。その後、1995年11月に『サザエさん』と同じく朝日新聞社より朝日文庫全4巻が出版された。ただし、文庫版では作品の一部が裏表紙に書かれているなど姉妹社版とは内容・配列に異同がある。1998年には、朝日新聞社刊の長谷川町子全集第24巻・25巻にも採録された。文庫・全集版とも朝日新聞社の出版部門を分社して2008年に発足した朝日新聞出版から刊行が継続されており、同社では2013年から2014年にかけて姉妹社版を復刻した全6巻の単行本も発売している。なお、朝日版では文庫・全集・復刻版とも姉妹社初版4巻56ページの「アフリカ探検」と6巻38ページの「甥を撮る」の2編は掲載が見送られている。姉妹社・朝日新聞出版の3巻と文庫版2巻、全集版1巻の巻末には『いじわる.タンペン』として『いじわる看護婦』『いじわるクッキー』『まんが幸福論』の3作品が掲載されている。このうち『いじわる看護婦』と『いじわるクッキー』は『意地悪ばあさん』と同じく月曜ドラマランドで実写化された。B6判。朝日新聞出版から刊行された復刻版では初出時のカラー・2色刷原稿が復元されているのを始め、大半が単行本未収録であった『いじわるばあさん 意地悪クイズ』や作者の手による「自選いじわるばあさん」などのページが追加されている。函入りの全巻セットも発売。文庫・全集とも2008年以降は朝日新聞出版が刊行を引き継いでいる。講談社インターナショナルから発売された英語版『Granny Mischief』の日本語対訳。英訳はジュールス・ヤング、ドミニック・ヤング。『いじわるばあさんかるた』は、数少ないキャラクターグッズとして姉妹社から1976年に発売されたかるた。姉妹品の『サザエさんかるた』シリーズ(全3組)に比べて札のサイズが大きくなっている。長らく絶版で入手困難となっていたが、コラムニストのブルボン小林が気に入って2012年3月20日放送のTBSラジオ『小島慶子 キラ☆キラ』で紹介したことから評判となり、2014年に赤ちゃんとママ社から復刻版が発売された。本作を基にしたテレビドラマは合計4本製作されている。上記のうち、1.と3.は意地悪ばあさん (テレビドラマ)を参照のこと。藤村有弘主演版のドラマ『いじわるばあさん』は、フジテレビ系で1971年10月12日から12月28日まで毎週火曜日21時00分〜21時30分に放送された。本作は他のドラマ版と違い、芸術座からの公開録画となっている。主演の藤村は本作以前に同じ長谷川町子原作のドラマ『エプロンおばさん』の日本テレビ版で、主人公の敷金なしを演じていた。主人公の名前こそ異なるが長男夫婦の名前は原作と同じで、設定上は読売テレビ版よりもやや原作に近くなっている。ytv版の完結から2年振りの登場で、フジテレビ製作としては第1作となるが同日放送の『ゲバゲバ一座のちょんまげ90分!』(日本テレビ系。枠は20時 - 21時26分)に人気を取られたためytv版ほどヒットせず、3か月で終了した。本作を最後にフジテレビ火曜21時枠のドラマは長期の中断に入り(30分ドラマは終了)、次にこの枠でドラマが放送されるのは25年後、いわゆる「火9」の第1作となった1996年4月16日開始の『みにくいアヒルの子』からである。レギュラーの中には後年、アニメ版『キャプテン』(日本テレビ系)で主演した和栗正明がいた。市原悦子主演版のドラマ『いじわるばあさん』は、2009年から2011年にかけてフジテレビ系の「金曜プレステージ」枠で3作が放送された。1999年に青島幸男主演の最終作『意地悪ばあさんリターンズ』が放送されたのを最後に実写ドラマ・アニメなどの映像化はされていなかったが、10年ぶりの復活となる。本作以前の映像化作品ではドラマ・アニメを問わず全て男性の俳優もしくは声優が主演していたので、市原は「いじわるばあさん」を演じた史上初めての女優になる。複数話のオムニバス構成であり、オープニングや話のつなぎではドラマ用に新規作成された『いじわるばあさん』のアニメーションが挿入され、杉並児童合唱団が歌うフジテレビの1981年版主題歌「意地悪ばあさんのテーマ」の行進曲風アレンジが挿入歌として使用された。金曜プレステージ版では、少子高齢化社会や振り込め詐欺などの製作時を反映した社会問題を取り入れるなど、コメディだけでなく社会派ドラマの要素が盛り込まれている。2009年1月9日放映。視聴率13.6%。2010年4月23日放映。視聴率13.3%。2011年1月28日放映。視聴率15.6%。これまでに2回アニメ化されている。タイトルはいずれも原作単行本と同じ『いじわるばあさん』だが、両作品に製作スタッフ・キャストの面で繋がりは無い。『いじわるばあさん』のアニメ第1作は、ドラマ第1作と同じ読売テレビ(ytv)製作で1970年10月3日から1971年8月18日まで放送された。全40話。放送時間(JST)は、開始当初は土曜19時30分〜20時00分だったが、1971年4月〜6月期は水曜19時30分〜19時56分となった。製作局はytvだが、日本テレビ系列において土曜19時30分枠でytv製作番組が放送された事例は他に無く、水曜19時30分枠に関しては39年後の2010年1月から3月まで水曜19:00〜19:56に放送されたytv版『SUPER SURPRISE』のみとなっている。ナックの製作した初のテレビアニメである。同じくytv製作だった1967年版ドラマで3代目の波多野タツを演じた高松しげおが「原野タツ」の役名で主演している。各話のサブタイトルクレジット部はサブタイトルを読み上げずに、タツがその回のエピソードに関する話題を述べるという他のアニメでは余り見られない独特の手法が採られている。原作のラッシーに相当するキャラクターとして、ばあさんの相棒的な犬の「ペケ」が登場する。主題歌は、1967年のytv版テレビドラマ主題歌「意地悪ばあさんのうた」の旋律を転用して歌詞を全面変更・改題した『いじわるマーチ』。エンディング曲『さすらいのいじわるゲリラ』(作詞・作曲 - 南雲修治 / 歌 - サトー・ベベ)はレコードが発売されており、後年発売されたアニメソングのコンピレーション・アルバムでも何度か収録されているが主題歌の『いじわるマーチ』はレコード製造が確認されておらず、未だCD化されていない。最終回の翌週はプロ野球中継だったが(その事に関しては後述)、当時の新聞のテレビ欄では雨傘番組として「いじわるばあさん」と記載されている。未放映の回が存在したのか、放送済の回の再放送の予定だったのかは不明。関東地区では、終了後に日本テレビの夕方枠で何度か再放送されたが、1970年代後半以降は全く再放送されず、映像ソフトも一切発売されていない。ただし、ytvの開局50年を記念して関係者に配布された『読売テレビ50年社史』付属のDVDには、第1話(タツがゴルフに行った回)の一部が収録されている。2010年11月に日本テレビ系『DON!』番組内「きょうは何の日」のコーナーで「長谷川町子美術館がオープンした日」が特集された際、本作の映像の一部が流された。ほか二本立てで放送。水曜時代の1971年4月以降は中断が多くなっていたが、これはプロ野球中継のため。当時のプロ野球放送枠は20:00 - 21:26だったが、日本テレビは前年の1970年より水曜のプロ野球中継を19:00 - 21:26と2時間半に拡大していた。しかし次番組『新・オバケのQ太郎』のヒットにより、翌1972年より元の20:00 - 21:26枠に戻した。『いじわるばあさん』のアニメ第2作は1996年4月19日から1997年6月13日まで、フジテレビ系列で放送された。全46話。放送時間(JST)は当初、金曜19時00分 - 19時29分であったがテレビ朝日『ドラえもん』の裏と言うこともあり視聴率が伸びず、1996年8月から関東広域圏のみのローカル枠となる金曜日17時30分 - 18時に移行し、ほとんどの地域では放送開始からわずか3か月の7月19日放送分の第9話で打ち切りになった。第38話からは『FNNニュース555 ザ・ヒューマン』スタートに伴い金曜日17時25分 - 17時55分と放送開始が5分早くなった。なお、テレビ長崎では金曜19時 - 19時30分枠は長崎県提供の行政広報番組が自社制作枠として編成されていた関係から、土曜18時30分枠で放送されていた。本作のオープニングテーマは作詞と作曲を森雪之丞が手掛け、スラップスティックが歌う1981年のフジテレビ版主題歌「意地悪ばあさんのテーマ」を、王様がカバーしたものが起用された。ただし、歌詞は「ローラースケート」を「ローラーブレード」にするなど一部変更されており、曲名もタイトルチューンで「いじわるばあさん」とされている。エンディングテーマは王様のオリジナル曲『裸の王様グルグル』(FHDH-1550)で、オープニングはこのシングルCDのカップリング曲として収録されている。劇伴の作曲は和田薫で、ファンハウス(BMG JAPANを経て現在のアリオラジャパン)から主題歌の他に『いじわるばあさん オリジナル・サウンド・トラック』(FHCF-2296)が発売された。同じ長谷川町子原作・エイケン制作のアニメ版『サザエさん』のOP映像とED映像では、歌詞テロップが一切表示されないが、本作のオープニングとエンディングでは歌詞が表示されていた。主人公の名前はytv版アニメと異なり、原作に準じて伊知割 イシとなっている。性格は原作に比べるとかなりマイルドになっており、町内会の高齢者を引き連れて一緒に意地悪を行う回、今どきの女子校生と意気投合する回、手術を怖がる子供のために町の人に100回意地悪を行う回等、人間関係が良好に描かれるエピソードも散見された。番組ラストのフォーマットは、金曜19時台はストーリー直後に「いじわるクイズ」の問題を出した後にCM→エンディング→予告→「いじわるクイズ」の答だったが、金曜17時台移動後は予告の直前に出題されるようになった。これに伴い、予告の締め台詞も「次回も見ないと、いじわるしちゃうぞ!」から「次も見ないと、いじわるするよ!」に変更された。この「いじわるクイズ」は、ある物のシルエットを映して、それが何かを当てる物だが、答を発表する時は必ずシルエットが天地逆になって、予想と違う物になるというパターンだった。ytv版と異なり再放送の実績は地上波・衛星放送を問わず皆無である。また『サザエさん』やytv版アニメと同様に映像ソフト化はされておらず、東映ビデオ発売の『エイケンTVアニメ主題歌大全集』(VHS、LD、DVD)にも未収録となっている。ほか(C)(財)長谷川町子美術館2本立てで放送。
出典:wikipedia