『デッドマン』(原題: "Dead Man")は、ジョニー・デップ主演、ジム・ジャームッシュ脚本・監督による1995年のモノクロ映画。音楽担当ニール・ヤング。この作品は、物語の主人公の名前からも分かるように、18世紀イギリスの詩人ウィリアム・ブレイクと深い関わりを持ち、ブレイクの詩からの引用が至る所にちりばめられている。ビル・ブレイクという名前の青年が、会計士の仕事を求め、マシーンという名前の街にやってくるが、仕事を得ることはできなかった。その夜、セルという若い娘に出会い、痴情騒ぎに巻き込まれ、男が発砲。セルが自らの身を投げ出しブレイクをかばったため一命を取り留める。しかし、濡れ衣の罪を着せられたブレイクも、弾丸を撃ち込まれた体のまま、報奨金目当ての殺し屋たちに追跡されることになってしまう。深い傷を負ったブレイクは、途中、ノーボディという名前のインディアンに命を助けられる。ブレイクの名前を聞いたノーボディは、自分が助けた人物が、イギリスの詩人ウィリアム・ブレイクそのひととであると考え、深い敬意を払う。こうして、ブレイクとノーボディとの不思議な逃亡の旅が始まる。その過程で、腰抜けの会計士ブレイクは、巧みな銃の使い手、まさに、正真正銘の白人殺しの張本人へと変貌をとげていく。※括弧内は日本語吹替(VHS版)『デッドマン』では、ウィリアム・ブレイクという名前の他にも、詩人ブレイクの作品の登場人物や、詩人ブレイクの人生と関わりのある人物の名前が使われている。たとえば、紙製の花を売っていた娘の名前セルは、ブレイクの『セルの書 (The Book of Thel)』の主人公の名前であり、また、ディッキンソン工場の支配人ジョン・スコフィールド (John Scholfield) という名前は、1803年にブレイクを暴動教唆の罪で告訴した兵士の名前 ジョン・スコウフィールド (John Schofield) を連想させる。子供の頃、兵士に銃で殴られ、アメリカから海を渡ってイギリスに連れ去られたが、ブレイクの詩集と出会い、その叡智の言葉に勇気づけられ、脱走に成功、ふたたび故郷の部落に戻ることができた登場人物のノーボーディは、自分にとって特別なこの詩人の言葉をしばしば暗唱する。たとえば、自分が助けた白人の名前がウィリアム・ブレイクであることを知り驚いたノーボディは、ブレイクの詩「無心のまえぶれ (Auguries of Innocence)」の一節を口ずさむ。さらにノーボーディは、ブレイクの『天国と地獄の結婚 (The Marriage of Heaven and Hell) 』のなかの「地獄の格言 (Proverbs of Hell)」のひとつ「The Eagle never lost so much time. as when he submitted to learn of the crow (鷲がカラスから教えを受けようとすれば時間を無駄にする)」という言葉や、ブレイクの『永遠の福音 (The Everlasting Gospel)』の一節「The Vision of Christ that thou dost see / Is my Visions Greatest Enemy(おまえの見るキリスト像は、おれのキリスト像の最大の敵)」という言葉を口にしたり、「ウィリアム・ブレイクは 伝説の男 彼は おれの友達」と歌ったりもしている。一方、この映画の物語全体を、反逆者としての詩人ブレイクの思想と人生の寓意とみなすことも出来る。「銃はお前の舌だ。銃で話すことを学ぶ、お前の詩は血で書かれるのだ」とノーボディに言われたブレイクは、次第に腕を上げ、やがては「おれの詩でも食らいやがれ」とつぶやきながら保安官を撃ち殺したあと「Some are Born to Endless Night (あるものたちは終わりなき夜に)」とさらりと言ってのけるほどの、巧みな銃の使い手となる。こうしたブレイクの変貌ぶりは、若い頃はシェイクスピアのソネット風の叙情的で軽やかな言葉の使い手だった詩人ブレイクが、白人でありながら、白人文化の野蛮さを告発し、キリスト教徒でありながら、正統派のキリスト教神学とその教会制度を批判し、奴隷解放を叫び、王政や帝国主義やあらゆる権威主義に真っ向から盾を突き、西欧近代思想のありとあらゆる急所を撃ちまくったため、正統的なキリスト教信者や伝統的な文化の継承者たちから、狂人とか悪魔崇拝者などというレッテルを貼られ、だれもいない(ノーボディしかいない)荒野をひとり彷徨い歩くことを運命づけられた、文化的お尋ね者となっていった事実に符合する。また、ブレイクの詩と思想の特徴は、繊細さと大胆さという相反するふたつの要素の共存にあるが、『デッドマン』の映像はこうした特徴も共有している(たとえば、追っ手たちを容赦なく撃ち殺していく大胆不敵なブレイクを描き出す映像と、戯れに撃ち殺された子鹿のとなりに横たわりその血を自分の顔にペイントするブレイクを描き出すリリカルな映像とが共存)。こうした意味において、ブレイクの思想とその人生のエッセンスを的確に捉え、それをまったく新しいスタイルで表現し直した『デッドマン』は、ジャームッシュの詩人ブレイクに対するオマージュ作品と言える。
出典:wikipedia
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