交通事故の過失割合(こうつうじこのかしつわりあい)とは、交通事故におけるお互いの過失(不注意)の度合いを割合で表したもの。車両等の交通を原因とする人の死傷または物の損壊(=交通事故)が起きた場合には、通常、故意または過失によって他人の権利・利益を侵害したものとして、により、損害賠償義務を負うことになる。また、自動車損害賠償保障法(自賠法)の規定により、自動車(原動機付自転車を含む)の運行供用者(名義人)は、自動車等の運行により他人を死傷させたときには、その損害を賠償する義務を負う。しかし、交通事故が発生したとき、損害を被った者にも事故を発生させた原因(過失)がある場合、損害を被らせた者だけに損害額を負担させることは公平感・納得性に欠けるものである。よって、過失相殺によって被害者の過失に相応する分を減額する。これは通説、判例のみならず実務上も確立しており、車両の種類、事故の態様、道路交通法上の優劣関係によって過失割合が具体的数字として類型化されている。例えば加害者の過失が60%程度、被害者の過失が40%程度である場合、過失割合6:4などという。被害者に生じた損害の額が1000万であるとすれば、加害者はこの場合600万円の賠償を行えば足ることになる。なお、日本国内においては、交通事故が大量に発生する実情により、賠償実務において迅速且つ公正に処理を行なう必要性から、別冊判例タイムズ№16『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』全訂4版(判例タイムズ社 発行・東京地裁民事交通訴訟研究会 編)が発行されている。同書では事故類型・当事者の車格等に応じて細かく類型化・基準化が成されており、損害保険(自動車保険)の処理を始め、紛争処理、弁護士による斡旋、調停や訴訟と、交通事故の損害賠償実務において非常に多くの場で用いられている。但し、実際には、事故による損害総額、当事者の意向、当事者が加入する任意保険の補償範囲等により、類似した事故類型・発生原因であっても、割合値に若干の変動が有る場合があることに留意する必要がある。また、交通的な弱者を保護する観点から、同じ現場・進行方向の類型であっても、例えば四輪車同士の事故と四輪車若しくは単車対自転車の事故とでは過失割合が変わる傾向にある。前掲『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』では、車両対歩行者、四輪車同士、四輪車対単車(単車側に人身損害が発生していることを前提)、四輪車若しくは単車対自転車に分類して、基準値を設定している。過失割合は、事故の当事者の損害額負担割合と読み替えられることから、現実的には実際に損害額を支払うことになる、事故当事者が任意自動車保険に加入する損害保険会社にて、当事者への事実確認を経た上で決定されることが多い。但し、名目上は損害保険会社は、弁護士会との取り決めにより、提携・契約する弁護士の指導により示談交渉を行ない過失割合を決定していくという体裁である。日本国内においては、国で制度付けた強制保険たる自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)以外に任意自動車保険の普及率が高い。物的損害においては加害者による直接賠償以外には任意自動車保険でしか対応する術はなく、人身損害においては任意自動車保険が自賠責保険の支払範囲外を支払っていることから、但し、損害保険会社が提示した過失割合で当事者が納得するとは限らず、その先の解決手段として、交通事故紛争処理センターによる裁定や、訴訟・調停といった司法の場の活用も有り得る。2000年代後半からは、任意自動車保険への弁護士費用負担特約が普及したことから、訴訟や調停に持ち込まれるケースが増えたとされる。自動車損害賠償責任保険(通称:自賠責)は、人身事故によって生じた事故の保険のみの取扱いであり、物損事故は取扱われない。被害者保護の観点から、被害者に多少の過失(=事故発生原因)があっても、重過失と認められない限り、減額が行われないようになっている。減額については被害者側の過失割合が70%以上100%未満の場合に行われる。減額割合については交通事故の損害賠償 - 日本損害保険代理業協会 ページ10を参照。なお、保険者(自賠責保険)に被害者側の過失割合が100%であり、自賠法3条但し書きにより自賠責保険が免責されるう認定された場合には、自賠責保険から保険金は支給されない。この場合は過失割合について交通事故紛争処理センターや訴訟の場で争う事になる。なお、訴訟でも加害者に無過失と認定された場合には当然損害賠償義務は否定される。人身事故で上記の限度額を超えた場合、又は物損事故の場合、加害者の加入している任意保険からの補償となる。任意保険の場合は過失割合に応じて過失相殺が行われる。この場合、自賠責保険の適用範囲も含めて過失相殺が行われる。例えば、後遺障害を伴わない傷害事故において、損害額200万円・被害者の過失30%の場合、損害賠償額は120万円+80万円×70%=176万円にならず、200万円×70%=140万円になる。しかし、損害額200万円・被害者の過失50%の場合、200万円×50%=100万円にならず、自賠責保険の120万円が適用される。加害者・当事者同士が任意保険に加入していた場合、過去の判例などから一般的な負担割合を保険会社が提示し、それに基づいて示談で解決するといった形が一般的である。その場合、民事交通訴訟における過失相殺率等の認定基準や交通事故損害額算定基準などを認定基準として考慮することが多いが、あくまで目安にすぎない。もし、被害者の過失割合が0と認められた場合、被害者が加入する保険会社は支払い義務がないので、原則として案件に関与できない(弁護交渉代理など特約が必要となる)。逆に、保険会社同士が特約なく交渉する場合には、過失割合は0ではないとみなして案件に関与するので、契約内容によっては満額支払われないことがあり、注意が必要である。日本での過失割合は、交通弱者の保護の観点から、大型車<普通車<オートバイ<自転車<歩行者、の順番で過失割合の算定上も保護がなされている。特に、自動車・オートバイと、それ以外(自転車・歩行者)との事故で、自転車・歩行者が死傷の被害者になった場合には、自動車損害賠償保障法の無過失責任の原則により、自動車・オートバイの運行供用者、運転者に極めて重い責任が民事上も課せられることとなる。また、自動車・オートバイの間でも、加害者が大型車の場合には、大型車であることだけを理由として過失割合が加算され、また、被害者がオートバイの場合は、二輪であることだけを理由として過失割合が減算される傾向にある。例として、歩行者が赤で横断歩道を横断開始し、青で進入してきた自動車との間で死傷事故が起きた場合にも、過失割合の基本割合は、歩行者側に70%となり、すなわち自動車側は、歩行者側の死傷による損害について、損害額の30%を支払う義務が生ずることになる。同様に「自動車同士」「自動車とバイク」などでも、大きい車両を運転する側が過失責任を問われることが多い。ただし、交通弱者保護とはいえ、誰にも注意義務があることに変わりはないので、過失相殺に基づく過失割合につき、相手方と交通弱者側の過失割合が逆転(後者が50%以上)することもある。過失割合における加算・減算要素はの一例は次の通りである。また、下記の修正要素は、事故の主要な態様の種別によって採否が細かく変わるものであって、全ての項目が必ずしも適用される訳ではない。また、事故の主要な態様分類について仔細な分類(横断歩道の有無、信号機の有無、信号のタイミング、交差点の状況や直進・右折・左折のその他の状況)がされており、一概に適用されるものではない。人身事故の場合、過失運転致死傷罪などの刑事責任も下される。そのとき事故原因が専ら加害者にあるのか、それとも被害者にもあるのか(つまり「専ら以外」)によって、罰金や付加点数が変わる。たとえば、『専ら以外の原因で治療期間15日未満の軽傷事故又は建造物損壊に係る交通事故』では付加点数2点で罰金12万円以上だが、『専らの原因で治療期間15日未満の軽傷事故又は建造物損壊に係る交通事故』と判断された場合は、事故の度合いが同じでも付加点数3点、罰金20万円以上と重くなっている。また、事故の相手方に人身損害を負わせて自動車運転過失傷害罪で送致(書類送検)されたとしても、事故の相手方がセンターラインオーバーしたり信号無視したりして専ら事故の相手方に事故発生の主原因がある場合には、不起訴(起訴猶予)となる事例が多い。
出典:wikipedia
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