リニアエアロスパイク・エンジンとは、NASAのX-33及びベンチャースターのために開発された新型の液体燃料ロケットエンジンの名称である。推進剤は液体水素と液体酸素。高度に関係なく高い推力と比推力を発揮でき、SSTO(単段式ロケット)であるベンチャースターに必要な打ち上げ能力を提供する最先端のエンジンとなる予定であった。2012年現在、これを使用している打ち上げロケットは無い。一般的に、ロケットエンジンの推力は燃焼圧力と外部圧力の比によって決定される(他にも様々な要素が存在する)。即ち、外部圧力が高ければ(気圧が高い=高度が低い)それだけ推力と比推力は低下し、高度が増すにしたがって外部圧力が低下するので推力は増加する。現行のロケットエンジンに搭載されているコニカル型、及びベル型のロケットエンジンノズルは、中心に配置された燃焼室から高圧ガスを噴出し、ノズルの内壁に沿って膨張させる。ラバール・ノズル形状で最適な外部圧力は一つだけなので、それ以外の高度では効率が悪く、外部圧力の影響が打ち上げロケットの性能に少なからず影響する(SSMEを例にとると、真空中ならば4,400m/sの噴射速度を達成するが、海面高度では3,500m/s程度しか発揮できない)。故に多段ロケットにおける第一段エンジンは相対的に高い能力を確保するために燃焼圧力を高めに設定してある。しかし、燃焼圧力を高めればそれだけ燃焼室の強度が要求され、また推進剤も高圧で噴射しなければならず、技術的な困難が伴う。また、高度上昇に伴う外部圧力の変化に対応してノズル形状を変える進展ノズルやデュアル・ベルノズルもエンジン質量の増加や燃焼ガスの制御など課題がのこる。一方で、高度に関係なく能力を発揮するノズルとしてスパイク型が研究されていた。スパイク型ノズルはコニカル型、ベル型ノズルと構造が大きく異なり、燃焼室が中心ではなく円状にならんでおり、中央に突き出されたスパイク(突起)と周囲の空間そのものをノズルとして使う。即ち、外部圧力にしたがって燃焼ガスが勝手に最適な噴射構造を決定する。そのため、スパイク型ノズルは海抜0mから真空中までほぼ100%の能力を発揮し、ロケットの能力を大きく向上させるものとして期待されていた。また、スパイク型はベル型などに比べて全長を短く出来るという地味だが重要な特徴を持つ。しかし、その構造ゆえに冷却が困難という重大な問題があったため、現在まで実用化されることはなかった。リニア(Linear:線形)の名の通り、リニアエアロスパイク・エンジンは燃焼室が直線状に並んでいる。とはいえ、それ以外は理論的なスパイク型ノズルと同じである(断面形状はそのまま)。小型の燃焼器は二次元スパイクの上端に内側(つまりスパイク側)を向くよう取り付けられており、高速で噴射された燃焼ガスはスパイク表面をなめるように流れる。燃焼器の断面は四角形で隣同士と密着するように整形されている。エンジン自体は傾けることが出来、ベクター・スラストが可能である。リニアエアロスパイク・エンジンはX-33用に、その高い能力を持ってSSTOを実現するため開発された。途中、突然の推力低下や異常燃焼などに悩まされつつも、結果的に安定した動作を達成した。リニアエアロスパイクはX-33、ひいては拡大実用版であるベンチャースターにも搭載される予定であった。しかし、本体であるX-33の開発が困難を極め、最終的に予算超過で凍結となる。これに伴い、リニアエアロスパイク・エンジンは実際に飛行することも搭載されることもなく、その使命を終えた。
出典:wikipedia
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