高速増殖炉(こうそくぞうしょくろ、Fast Breeder Reactor、FBR)とは、高速中性子による核分裂連鎖反応を用いた増殖炉のことをいう。現行の商用発電用原子炉として一般的な軽水炉と比較した場合の高速増殖炉の特徴を述べる。現在開発が進められている主な形式としては以下のようになる。MOX燃料の元となるプルトニウム239とウラン238は通常の軽水炉で燃料として使うこともできるが、高速増殖炉の炉心で燃やすことで、さらに不要なウラン238から次の高速増殖炉用の核燃料であるプルトニウム239を作り出すことで核燃料を循環させる「核燃料サイクル」を実現するための要となる装置である。高速増殖炉は、核燃料サイクルのウラン-プルトニウム系列を実施する。こういった意欲的な構想の下に先進工業国で研究開発が進められて来たが、軽水炉にはない様々な問題を含んでいるため、実験炉から原型炉までは数か国でいくつか完成しつつも、実証炉の完成までは時間がかかっていた。いくつかの国が研究開発を挫折する中、ついに2014年6月27日にはロシアで実証炉BN-800が臨界に達し、実用化の目処がついた。高速増殖炉は流体を冷却材に使って炉心の熱を外部に導き、蒸気を発生させて発電等に利用する点では、一般的な軽水炉と似た仕組みを持っている。一方では、冷却材と燃料において大きな違いがある。軽水炉では、炉心の熱エネルギーを外部に取り出すための冷却材や中性子の減速材、反射体などを兼ねて軽水を利用するのに対し、高速増殖炉では高速中性子を減速させないように加熱溶融した金属ナトリウムのような液体金属を使用する。高速増殖炉の冷却材は、平均速度が秒速1万km程の高速中性子に対して減速効果が小さくその運動を衰えさせないものでなければならず、また単位体積当たりの出力密度が軽水炉よりもかなり大きくなるため、熱伝導率の良いものでなければならない。高速中性子に対する減速効果は水素や重水素のように核の原子量ができるだけ少ない元素が大きくなる。これらの条件を満たすものとして、金属ナトリウムが使われている計画が多いが、鉛・ビスマスやヘリウムガス冷却も一定の経済性を持つと言われる。ナトリウムは発火性が、鉛・ビスマスは腐食性が問題である。過去には水銀、ビスマス、鉛、カリウム、NaK(ナトリウムカリウム合金)などが考えられた。ナトリウムを採用するメリットとして、以下のような点も挙げられる。金属ナトリウムとして存在している安定同位体のNaは、炉内で中性子を吸収し放射化されNa(半減期 2.6年)とNa(半減期 15時間)に変化するが、半減期が短いため炉停止後の作業者の被爆量を増加させない。また熱伝導率の高さから「もんじゅ」においては3系統ある冷却系のうち、2系統が故障してしまった場合でも1系統のみで炉心の崩壊熱を除去し冷却する事ができる。また循環ポンプなどの電源を全て失う、全電源喪失が起きて循環ポンプが全て停止しても3系統の冷却系にてナトリウムの自然循環と空気冷却器により崩壊熱の除去が可能である。これらの安全性も評価されているため、ナトリウム冷却高速増殖炉は国際的な第四世代原子炉の一つとして位置づけられている。炉心内中央部にはMOX燃料と呼ばれる核燃料集合体が置かれる。使用前のMOX燃料は、燃料となるプルトニウム239とウラン235が微量と、あとは核分裂をほとんど起こさないウラン238で占められている。MOX燃料は、(最初は)他の原子炉で使用済みとなった核燃料棒を再処理して取り出されるプルトニウムとウランを混合して酸化させペレット状に固めて燃料被覆管に詰められ核燃料棒とされる。酸化させることで熱に強くして溶けにくくしている。このプルトニウムは、軽水炉内から取り出された使用済み燃料を再処理して得られた物か、高速増殖炉のブランケットを処理して得られた物のいずれかであり、軽水炉由来の方がプルトニウムの同位体が多く含まれている。ウランは、天然ウランからウラン235を相当分抽出した残り(劣化ウラン)か、または天然ウランそのものである場合と、軽水炉や高速増殖炉のMOX燃料・ブランケットを処理して得られた物などであり、いずれも核燃料として有益なウラン235はあまり含まれていない。使用済み核燃料中には核分裂に伴う分裂片や多くの元から含まれる核燃料近縁の重核種の同位体が含まれ、再処理前にプール内で十分な冷却期間を置いても何年も熱を帯びながら崩壊による強い放射線を放ち続ける。プルトニウムを分離後も、プルトニウム239の他にプルトニウム238やプルトニウム240、プルトニウム241などが含まれ熱と強い放射線を受けながら核燃料の製造を行わねばならない。なおプルトニウムの混合割合を富化度といい、高速増殖炉ではこの割合を20 - 30%とする。炉心内の周辺部にはブランケットと呼ばれるウラン238を主成分とする燃料集合体が置かれる。ブランケットも炉内で「燃える」つまり核分裂反応して発電に寄与するがその割合は比較的少ない。炉心中央部のプルトニウム239やウラン235といった核分裂性の核燃料が臨界による連鎖反応を起こすことで放たれた高速中性子が冷却材にさえぎられることなくそのかなりの割合が周囲まで飛び出して来る。周囲を取り囲むように配置されたブランケット内のウラン238は、この高速中性子を原子核に吸収することで2度のベータ崩壊を起こしネプツニウム239を経てプルトニウム239に変わる。プルトニウム239は(低速な)熱中性子を吸収するとプルトニウム240に変わるが減速材が存在しなければほとんどの中性子は高速のままで飛び込んで来るため、それがプルトニウム239の核に当たると分裂することになる。ただし、プルトニウムの核分裂断面積は小さく高速中性子が核に当たることはまれである。結局、ブランケットのウラン238は徐々にプルトニウム239へと変化してゆく。ブランケットのウランは天然ウランか劣化ウラン、またはそれらの混合物であり、ウラン238が主体となる。アメリカ合衆国は2006年2月から核燃料サイクル計画 "GNEP: Global Nuclear Energy Partnership" によって、核燃料サイクルとともに高速増殖炉の技術開発推進の立場に転じた。このプロジェクトには2008年1月1日時点で、日本を含む19か国が参加を決定している。またこのプロジェクトによる高速増殖炉の実験炉と核燃料再処理施設建設の発注予定先として交渉相手に選ばれているのは三菱重工、日本原燃、アレバの3社である。通常、軽水炉では燃料棒中のウラン235を熱中性子により核分裂させ、エネルギーを生成する。このとき消費したウラン235以上にプルトニウムが生成されることはなく、燃料棒中の核燃料は減少する。これは、熱中性子は高速中性子よりもウラン235やプルトニウムの核分裂を誘起しやすいが、燃料棒中のウラン238に捕獲されてプルトニウム239を生成する確率が低いためである。逆に高速中性子はウラン235やプルトニウムの核分裂を誘起しにくいが、ウラン238に捕獲されてプルトニウム239を生成する確率が高い。この性質を利用して、消費した燃料以上のプルトニウムを生成するように設計されたものが高速増殖炉である。高速増殖炉の「高速」は、利用する中性子が高速中性子であることに由来する。高速増殖炉では、ウラン238をプルトニウムに転換させるため、ウラン資源を事実上数十倍にできる。このため「夢の原子炉」と言われ、日本、フランス、中国など国内でのエネルギー使用量に比べ資源が少なく、エネルギー使用量の多い国で開発が推進されている。高速増殖炉の燃料転換率は、理論的には1.24から1.29程度と考えられており、もんじゅの場合は約1.2である。プルサーマル方式においてもほぼ同じMOX燃料を使用するが、MOX燃料にはプルトニウムより原子番号の大きい原子が含まれ、これらの元素の同位体による割合が増えていくことを「高次化」と呼ぶ。MOX燃料は再処理を繰り返すごとにアメリシウム241などのマイナーアクチノイドの割合が増えていくのだが、これらの原子核は中性子吸収断面積が非常に大きく、熱中性子を吸収しても核分裂せず、中性子を放出しないため、核分裂連鎖を媒介する中性子が減って原子核分裂反応が成立しなくなってしまう。この核種は化学/物理処理で分離が不可能な大変厄介な物質であり、アメリシウム241等のMAを分裂させられる高速増殖炉、または加速器駆動未臨界炉は長期的に見ると核燃料サイクル計画には必須の要素である。高速増殖炉には以下の三種類の形式がある。なお、もんじゅ事故後、フィジビリティスタディからやり直して、冷却材として鉛ビスマス、ヘリウム、軽水、ナトリウム等の検討が進められた事実があり、その上で実績や国際協力の可能性(鉛ビスマスは実績が少ないのが否めない)が評価されてもんじゅの再起動、そして次期ナトリウム冷却高速増殖炉の開発へ進んでいるのが実情である。高速増殖炉は約20年前まで、ウラン燃料の有効利用促進のため米国、フランス、ロシア、イギリス、ドイツ、日本などで積極的な開発が進められてきた。 しかし1990年代前半に米国の実験炉FFTFとEBR-IIの運転停止、1991年ドイツの原型炉SNR-300の建設中止、1994年英国の原型炉PFR運転中止、1998年にはフランス実証炉スーパーフェニックスの運転中止などが相次ぎ、日本でも「もんじゅ」のナトリウムもれ火災で運転が中止される。1990年代には高速増殖炉の開発は停止状態となり、フランスを除く欧州各国は高速増殖炉の開発を中止した。今なお、日本、ロシア、中国、インドが開発を行っているが、ロシアを除く国では実用化は大幅に先送りされている。ロシアでは、2014年6月に実証炉の臨界が行われた。商用炉の運転は2020年を予定していたが、核燃料の設計を改善する必要があり、また経済性に疑問があるために無期限に延期された。2006年、高速炉の実証炉開発を盛り込んだグローバル原子力パートナーシップ(GNEP計画)が提唱されたが、2009年に計画凍結となった。フランス、イギリス、ドイツ、イタリア、ベルギーの国際プロジェクトで、商業実証炉EFRにより2010年代の運転を目指していたが、設計研究終了後の1993年に計画中止となった。現在高速増殖炉の開発計画は存在しない。国内に豊富に存在するトリウムの有効利用を考慮した独自の核燃料サイクルを目指している。フランスの技術を導入した。ロシアの技術を導入して開発を行っている。原型炉、実証炉は計画中であり、商用炉は2030年頃の運転開始を目標としている。
出典:wikipedia
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