883系電車(883けいでんしゃ)は、九州旅客鉄道(JR九州)の交流特急形電車。大分自動車道の延伸とそれに伴う高速バスの利便性向上に対抗するため、特急「にちりん」(速達型の「ソニックにちりん」)用として1995年(平成7年)4月20日から運用を開始した。「ワンダーランドエクスプレス」や「sonic 883」の愛称がある。最高速度を130km/h(7両編成の速度種別はA48)とし、カーブの多い線形にあわせて振り子式車両としたことで博多駅 - 大分駅間の所要時間を20分ほど短縮した。車両デザインは787系に引き続き、水戸岡鋭治が手掛けている。1995年にはグッドデザイン商品に選定され、1996年(平成8年)にはブルーリボン賞およびブルネル賞を受賞した。振り子式車両の導入はJR九州では初であるが、電化方式で見た場合、営業用交流電車としては日本初の振り子式車両でもある。sonicには、英語で「音速の」という意味がある。1994年(平成6年)度に7両編成3本、1996年(平成8年)度に7両編成2本、1997年(平成9年)度に5両編成3本の計50両が製造された。2008年(平成20年)には、5両編成3本の7両編成化にともなう増備車として、1000番台2両(モハ883形・サハ883形)×3本6両が製造され、56両のグループとなっている。全て日立製作所で製造された。全車が大分鉄道事業部大分車両センターに配置されている。以下、主に製造時点での構造について記述する。車体は軽量構造のステンレス製で、前頭部のみ普通鋼製となっている。近未来的でダイナミックな車体形状が特徴的で、車体の裾絞りは側面に折線のついた直線的な形状である。787系は長距離輸送を目的として製造されたのに対し、本系列は比較的短距離輸送を目的としているためデザインやコンセプトが異なっている。また、787系で示した特急列車のあり方とは異なるもう一つの方向性を示している。1994年製の1次車から1997年製の4次車があり、前面パネルの構造にそれぞれ違いがあるほか、4次車では編成ごとに前面の色が違ったのが特徴である。この前面パネルは取替可能な構造であり、人身事故などで正面パネルを大破した際は取替品が完成するまで応急措置としてパネルを外して運転したこともある。落成時点では全編成にフェンダーミラーが装着されていたが、2005年8月にA6編成がリニューアル出場以来、順次フェンダーミラーが撤去された。かつてはひさしにチューブ式LEDテールライトが設置されていた。しかし2004年(平成16年)11月2日に、一部編成の先頭車のひさしが走行中に何らかの飛来物に絡まれて吹き飛ばされるトラブルが発生した。その直後トラブル再発防止に向けた原因究明のため、急遽全車からひさしが取外された。2005年(平成17年)2月末 - 3月初旬にかけてひさしが再度設置された際にチューブ式LEDテールライトは廃止され、溝で刻まれた3分割スタイルもなくなり、多数のボルトで固定された構造へ改められた。2000年(平成12年)12月から2002年(平成14年)8月にかけて、踏切衝突事故対策として各編成の検査入場時に順次前面排障器(スカート)下部にバンパーが装着された。ただし、A8編成に関しては、2002年(平成14年)5月の大型連休直後の検査入場の際には、その後の2002 FIFAワールドカップ観客輸送に伴う輸送力増強で十分な日数を確保できなかったため、2003年(平成15年)1月に臨時入場した際に装着された。前照灯は、ハイビームとロービームどちらの状態でもA1編成およびA2編成は5箇所が点灯し、A3編成以降は4箇所が点灯する。787系や後に登場した885系とは異なり点灯する数が変化することはない。台車は空気ばね式・ヨーダンパ付き・振り子機能(空気式制御付自然振り子)付きのボルスタレス台車DT402K(電動車)、TR402K(制御車・付随車)である。車輪径は810mmである。振り子機能により、曲線区間において本則+30km/hでの走行と、大幅な運転時間短縮を実現した。制御方式はJR九州の特急形電車としては初の東芝製GTO素子によるVVVFインバータ制御が採用された。高速域での特性に重点を置いており、特性加速領域での電源のレギュレーションを考慮して滑り制御を行うため、中速域から高速域間でのフラットな特性を得ている。このため1次電流抑制機能を備える。ブレーキは発電ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキとなっている。130キロメートルからの停止距離600メートルを確保するために増圧装置と滑走再粘着制御機能が搭載されている。また定速制御機能も備えている。M-TAユニット方式を採用し、制御電動車のクモハまたは電動車のモハと、パンタグラフや主変圧器を搭載する付随車のサハでユニットを組む。ユニットを構成する車両間は半永久連結器を装備するが、他は密着連結器である。パンタグラフは落成当初は下枠交差式だったが、2000年(平成12年)に全車885系と同一のシングルアーム式に交換された。JR九州でこの改修例は本系列が最初である。シングルアームパンタグラフへ初めて取替えられたのは当時小倉工場へ全般検査入場していたA2編成のうち、6号車(サハ883-2)のみであったが、残りは同年3月14日のA6編成から順次およそ1日につき2基ずつのペースで大分運輸センターにて取替作業が行なわれた。そのため、A2編成 - A5編成は一時的に新旧パンタグラフが編成内で混在することもあった。これらの編成はいずれも2号車と4号車はそれぞれ同時に取替えられたものの、A3編成 - A5編成はA2編成とは異なり6号車の取替が3月末となった。それに対して、A1編成とA6編成 - A8編成はそれぞれ編成単位で一挙に取替えられた。最終取替車はサハ883-5であった。パンタグラフ台は、先に営業運転を開始していた東日本旅客鉄道(JR東日本)のE351系と同じく台車枠直結の支持台上に設置され、パンタグラフと架線の位置関係は車体の振り子動作の影響を受けない構造となっている。このため、パンタグラフを備えるサハ883形のこの部分はデッドスペースとなっている。この方式は885系でも採用された。行先表示器は787系に続いて字幕式を採用した。クロハ882形は中央に客用扉が設置されているため縦長の寸法である。本系列ではミュージックホーンも搭載されているが、運転台の下のペダルで操作するのではなく、運転室のコンソールボックスの中のスイッチを操作して吹鳴させる。運転中に鳴らすものではなく、各種試験動作等の注意啓発の合図のために設置されたもので、通常は聞くことができない。ドアチャイムは813系や後の885系と同じである。列車内を一つの街と見立てており、2・4号車の車端部に設置されているコモンスペースは「公園」、デッキは「人の集まる広場」と位置付け、客室空間はガラスを多用している。また、ソファが備えられたマルチスペースが2号車の車端部に設置されている。室内の座席は、グリーン車・普通車とも、動物の耳をイメージした形状の可動式ヘッドレストを採用し、「楽しさ」を表現したものとなっている。振り子車ということで、座席脇に赤玉のついた取っ手が設けられた。787系に装備されていたグリーン車のオーディオサービス機器は廃止された。普通車の車内中央部には「センターブース」と称される空間が設けられた。ここは前後がガラスで仕切られ、向かい合わせで固定された座席の間に固定式の大型テーブルが設けられている。787系のボックスシートの流れを汲んでいるが、センターブースの座席も若干リクライニングすることが可能である。ただし、1・3号車には設置されていない。グリーン車の座席は革張りで、フットレストと電動式のリクライニングを装備している。B席がなく、A+CDの3列配置となっており、定員は15名である。なお、1A・C・D席のみ、クッションフットレストが置かれている。また、運転席寄りにはパノラマキャビンが設置されている。なお、座面の幅は普通車・グリーン車とも430mmとなっているが、グリーン車は2+1列配置で2列シート側は座席毎に独立した両肘掛仕様の黒レザー張りの座席となっており、隣席との間隔は普通車よりも広く確保されている。1号車の普通席側には車椅子対応の座席が2席分用意されている。トイレは787系同様、洋式の真空式となっており、奇数号車に設置されている。1号車に設置のトイレはバリアフリー対応でスペースが広くとられている。3号車に設置のトイレは男女別に個室が分かれているが、洗面所は兼用となっている。783系などと同様に、左手操作横軸マスコンハンドルと右手操作縦軸ブレーキハンドル(常用7段+非常)を備えている。また、MON3と同様の乗務員支援モニタ(音声による停車駅接近予告機能を付加)も備えている。2008年7月に、それまで5両編成であった第6編成から第8編成の7連化が行われた。これに伴いA06〜08編成の車番が改番された。その際に増備された車両(モハ883の1000番台、サハ883の1000番台)は、ステンレス製車体の従来車に対して、885系中間車に準じたアルミ合金製車体となっており、外観・車体断面形状とも従来車とは全く異なる。また、本区分番台は本系列で初めて中間電動車(モハ)にパンタグラフが取り付けられているが、この点も885系中間車と同じである。さらに、行先表示器も885系と同じLED式となっており、走行中も常時点灯している。車内設備も885系に準じており、座席も革張りではないが885系と同型のものとなっている。2008年7月18日から順次営業運転に投入された。1次車の登場から10年以上経過したこともあり、2005年3月からリニューアル改装が開始された。主な内容は以下のとおりである。2007年(平成19年)4月をもってリニューアル改装が完了した。このうち、A3・5編成は車体側面の形式・番号標記は旧・日本国有鉄道(国鉄)書体(スミ丸ゴシック)となっており、水戸岡デザイン特有の「数字もしくは文字を1字毎に四角形で囲む」表記ではない。ただしA5編成に関しては、2007年6月の重要部検査時に元の表記に戻された。A3編成も翌7月の重要部検査時に元の表記へ戻された。なお車体妻面の検査標記等は落成時点から一貫して国鉄書体である。最初にリニューアルを受けたA8編成のみ一部にステンレス切抜文字が使用されていたが、その後の要部検査で他編成と同様の銀色テープに変更された。クロハ882-6では、リニューアル施工時に前照灯がHID方式へ変更されたが、現在は従来車と同様のシールドビームに戻されている。リニューアル入場はA2編成のみ唯一検査扱いの対象外だったため、営業復帰当時は床下機器や台車の泥汚れは放置されていたが、他の編成はいずれも重要部検査ないし全般検査扱いである。重要部検査扱いだった編成も普段とは異なり、全ての台車と一部の床下機器のみ洗浄ではなく、全般検査出場車並に全面的に綺麗にされていた。中でもA1編成が全般検査入場した2006年2月16日からA3編成が全般検査出場した同年3月17日まで定期検査としては唯一2編成同時入場だったため、所定の883系7連4運用を確保できなくなり、その内の1運用3往復(6号→13号→28号→35号→48号→55号)を885系S7編成による代走に頼るという同系S3編成代替新造車製造中の頃とは正反対な状況が続いた。883系は運行開始以来ほぼ(「ソニックにちりん」→)「ソニック」専用で使用されており、現在は1・3・4・6 - 11・13・16・19・20・22・23・25・26・28・29 - 33・35・40・41(休日のみ883系)・42-45・47・48・50・51(平日のみ883系)・52 - 55・60 - 62・101・102号の42本(21往復)で使用される。過去に「ソニックにちりん」「ソニック」以外の定期列車に充当された例は、1995年4月と1997年3月のダイヤ改正の直前に「にちりん」の運用に入っていたのを除けば(883系はダイヤ改正に先行して投入された)、小倉駅始発だった「ソニック201号」の送り込み列車を兼ねた「きらめき」上り1本(博多駅→門司港駅)の例のみである。「きらめき」には「ソニック201号」が設定された2008年3月に当時5両編成だったAo6 - 8編成が充当されたのが最初で、2008年7月にいったん885系電車に変更されたが、2009年3月より再び883系に戻され、2011年3月12日のダイヤ改正で「ソニック201号」が大分駅始発だった「にちりん3号」(改正後は787系で運転)に統合されたため、883系は「きらめき」から再び撤退した。他にも、過去には臨時列車や運用変更で以下の列車に充当された例がある。2008年7月19日より5両編成のA6 - 8編成に新造増備車(1000番台)を連結し、すべての編成を7両編成化するのに伴い運用変更が行われた。変更点として、5両編成で運転されていた列車が、6両編成の885系や7両編成の883系の既存・新編成により置き換えられたり、6両編成の885系で運転されていた列車が7両編成の883系により置き換えられた。結果として、「きらめき - ソニック201号」への充当終了(運用自体は885系で継続)や、佐伯駅発着列車への充当復活などが発生した。佐伯乗入運用は、2003年3月15日改正で撤退以来5年4ヶ月ぶりの再設定である。2008年7月現在の編成および運用は、以下のとおりである。「A」の「A」は883系、「」は大分車両センター所属を示す記号である。充当列車は前述の通りで、14号が佐伯駅始発、41号が佐伯行きである。本系列は当初、1編成当たりの運用担当数が博多駅 - 大分駅間2往復だったため、次期検査入場までの周期が1年8箇月 - 2年だった。2000年3月11日ダイヤ改正で運用担当数が増加し、2007年現在では2往復半 - 3往復という状況である。そのため、重要部検査まで60万km以内の基準により、1年3箇月 - 1年半が平均的な状況であり、JR九州の在来線車両の中では最も検査周期が短い。2000年3月 - 9月の1・2次車の全般検査当時は、落成から2回の重要部検査を受けて全般検査に至っていたが、2002年10月のA4編成全般検査以降、落成ないし前回の全般検査から3回の重要部検査を受けてから次期全般検査へ至る基準へ改められた。本系列のデザインを手掛けた水戸岡鋭治は「『1』はデザイン的によくない」ということで、本来「881系」とするはずだった形式称号を「883系」にさせたという逸話がある。各車両のデッキには、大分県竹田市の姫だるまなど沿線の民芸品を展示してある。
出典:wikipedia
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