黒き星の皇子(くろきほしのみこ)はテーブルトークRPG(TRPG)『セブン=フォートレス V3』のリプレイ作品。全1話。『E-LOGIN』2003年9月号から2003年12月号まで掲載され、後にエンターブレインからファミ通文庫の1冊として発売された。「みこシリーズ」の第2弾でもある。ゲームマスター兼リプレイ執筆は菊池たけし。イラストは石田ヒロユキ。文庫版では巻頭の予告コミックやキャラクター作成のレビュー漫画をみかきみかこが執筆している。システムは『セブン=フォートレス V3』及びそのサプリメント『セブン=フォートレス パワード』が使われているが、『セブン=フォートレス』シリーズの世界であるラース=フェリアではなく、同じ主八界を成すとはいえラース=フェリアとは異世界であるファー・ジ・アース(=地球)を最初から最後まで舞台としているため、読者の間では『ナイトウィザード』(ルール第一版)のリプレイとして扱われることが多い。ファミ通文庫の表紙でも、背表紙には「セブン=フォートレス リプレイ」と表記されているが、表表紙には『セブン=フォートレス V3』と『ナイトウィザード』のロゴタイプが併記されている。前作の『紅き月の巫女』が一年半に及ぶ長期連載だったため、一話分の物語を全5回ほどの連載で濃く描こうというコンセプトで初められたリプレイ。しかし連載途中で、『E-LOGIN』と『TECH GIAN』という2つのアダルトゲームソフト雑誌を抱えていたエンターブレインの社内事情(記事「E-LOGIN」の「アダルトゲーム雑誌重複問題」の項目を参照。なお本リプレイ自体は全年齢対象である)により『E-LOGIN』の休刊が決定。連載を全4回に短縮する形で最終号となった2003年12月号までになんとか物語を完結されている。なお、文庫版では加筆が行われ初期構想どおりの全5章の構成となっている。プレイヤーは『紅き月の巫女』で主役級であった矢薙直樹と小暮英麻を続投。さらにみこシリーズ以外の『ナイトウィザード』リプレイである『星を継ぐ者』で人気を博した矢野俊策と田中天を登場PCごと引っ張ってきている。40億年後の世界。地球はある無敵の魔神によって滅ぼされつつあった。地球を守る守護天使たちはその無敵の魔神を倒すために、地球のあらゆる歴史が書かれた「予言書」に頼ることになる。予言書によると、40億年前に存在する少年「神条皇子」ならば魔神を倒せるという。守護天使ソルティレージュは過去からその勇者を連れてくるため、予言書を携え200X年の日本へと向かう。一方、200X年の日本では多くのウィザードたちがある目的のために独自に動き出していた。守護者と言われる亜神たちからウィザードたちにもたらされたある予言に対応するためである。その予言とは、今から48時間後にある少年が世界を破壊する魔神に覚醒するという恐ろしいものであった。魔神に覚醒する少年の名前は「神条皇子」。ウィザードであるこの少年は幼馴染の東雲麻耶を失った悲しみから魔神へと変貌するという…。魔神を倒すために皇子を未来へ連れて行こうとするソルティレージュ。皇子を魔神へと覚醒させるために暗躍する魔王ベール=ゼファー。覚醒の前に皇子の抹殺を図る地球の守護者アンゼロットと世界魔術協会。ひとりの犠牲者も出すことなく魔神の覚醒を防ぐ手段を模索するローマ聖王庁。様々な勢力が皇子の周りをとり巻き、そして運命の一瞬がやってくる。プレイヤーによって操作するキャラクター。PC。名前の横にカッコで記述されているのはPCの読みとプレイヤー名である。キャラクタークラスについてスラッシュで複数かかれている場合はマルチクラスおよびクラスチェンジによりクラスを複数有していることを表し、太文字で強調されているクラスはメインクラスであることを示す。属性についてはスラッシュをはさんで左側が第一属性、右側が第二属性となる。キャラクタークラスの横のレベルはそのリプレイ開始時のもの。なおルール上、PC全員は『セブン=フォートレス V3』(及び『セブン=フォートレス パワード』)で追加された異世界メインクラスを保有している。GMが操作するキャラクター。NPC。名前の横にカッコで記述されているのはPCの読みである。『黒き星の皇子』は、ゲームシステムには『セブン=フォートレス V3』が使われているが、世界観は完全に『ナイトウィザード』に従っている。ライム=ケーベルやマンテル博士、ゾフィの魂など、これまで菊池たけしが手がけたTRPGリプレイや読者参加企画の人物やアイテムが登場してはいるが、『V3』の個性でもある「様々な世界からのキャラクターが競演する」という部分はほとんど強調されず、表面的には「ウィザードたちが地球をエミュレイターから護るために人知れず戦う」という『ナイトウィザード』リプレイのノリが維持されている。こうなった理由は2つある。一つは『ナイトウィザード』リプレイの読者層に『セブン=フォートレス』を紹介しようという営業的側面。もう一つの、そして最大の理由は、このリプレイのシナリオに仕掛けられている、ある大掛かりなトリックを表現するために、『V3』で設けられたあるキャラクタークラスを採用する必要があったためだ。そのクラスとは、PC2(リプレイにおいてソルティレージュとなる)のシナリオハンドアウトで推奨クラスとされた「エンジェル」である。『ナイトウィザード』には守護天使であることを表す「使徒」というクラスがある。一方、「エンジェル」は菊池の読者参加企画『エイスエンジェル』の世界観を『セブン=フォートレス V3』に導入するに当たり設けられたクラスで、『エイスエンジェル』の背景世界である第五世界エルフレアの人造天使を表すクラスである。『ナイトウィザード』のルールであれば、強化改造された天使ならば「使徒」と「強化人間」、人造天使なら「使徒」と「人造人間」の組み合わせだけで表現できるにもかかわらず、なぜ『セブン=フォートレス V3』を採用してまで「エンジェル」をPC2のハンドアウトの推奨クラスにしているのかが、『黒き星の皇子』の最大の謎を解くためのヒントになっている。『黒き星の皇子』では「『未来の日記』の1ページ」が完全に行方不明になったかのような演出が良くされるが、実は様々な場所に、菊池たけし作品に詳しい者ならば『エイスエンジェル』のキーアイテムである「エンジェルシード」を想起させるキーワードがちりばめられている。ほとんどは『エイスエンジェル』を知らないと全く気づかないような難解な伏線だが、掲載誌が『エイスエンジェル』を連載していた『E-LOGIN』であったのが、このシナリオトリックを使うことを可能にした。「ソルティレージュはエルフレアの人間でもないのに、エンジェルのクラスを持っている以上、体内にエンジェルシードが存在していることになる」ということが、すなわちソルティレージュがエンジェルシードを埋め込まれた東雲麻耶の未来の姿であることを意味している。『ナイトウィザード』の名物キャラと言える柊蓮司だが、「黒き星の皇子」ではストーリーにはほとんど関わらない。しかし「黒き星の皇子」は、いわゆる「柊サーガ」においては「キャラクターレベルを下げられる」という記念すべき事件が起こった作品として重要な位置にある。『ナイトウィザード』には「レベルドレイン」「経験点の喪失」などのレベルが下がるルールは存在していないため、本来不可能なことである。しかし「黒き星の皇子」は『セブン=フォートレス パワード』を導入して『ナイトウィザード』と『セブン=フォートレス V3』を連結した初のリプレイであるため、GMの菊池たけしには「全PCのキャラクターレベルを均一にしておきたい」という考えがあった。そこで障害となったのが柊のキャラクターレベルであった。同じ「星を継ぐ者」で初登場したグイード=ボルジアと異なり、途中に『フレイスの炎砦』の5セッションを挟んでいる柊のキャラクターレベルは「6」になっており、「黒き星の皇子」のシナリオにおいては強くなり過ぎていた。そのためセッション開始に先立ち、菊池は柊のプレイヤーである矢野俊策に対し、シナリオハンドアウトでキャラクターレベルを「4」に下げるようリビルドを指示した。リプレイ本文において菊池は「よい子のユーザーのみなさん、これはネタなのでマネしないようにしましょう(笑)」と、おどけた口調ながら今回の措置が特例であることを強調している。これ以降、柊には「下がる男」の称号が与えられるようになる。ストーリー上では、柊がレベルを下げられた理由は、アンゼロットの言葉によれば「今回の事件で柊はレベルが4に下げられると運命で決められているから私はそれに従っただけ。この運命にはあらがうことはできない」とされている。実際『黒き星の皇子』には「未来に書かれた日記」というギミックがあり、アンゼロットの言っていることは間違いにはならない。なお、今作で柊のレベルを下げるために使われた「下がるお茶」は、「The 2nd Edition」移行後のリプレイ「蒼穹のエンゲージ」でも用いられている。東雲麻耶の愛称。麻耶は本来は皇子の心の支えとなるけなげな少女として描かれる予定だったが、矢薙直樹小暮英麻の要望により、舌っ足らずな言葉使いでしゃべり語尾に「にゃふぅ〜」とつける明らかに頭のゆるそうなロリキャラ、というイタイキャラクターにされてしまった。これは小暮英麻の座右の銘である「萌えとイタイは紙一重」を体言したキャラでもある。このせいで、麻耶はリプレイ中ではかなり妙な存在感を持つキャラになった。明らかにシリアスな場面でも空気の読めない萌え口調を求められる麻耶のキャラクター性にGMの菊池たけしは四苦八苦していたようだ。リプレイ終了後、麻耶のこのイタさを強制した小暮は「責任」を取る形でウェブラジオ「ナイトウィザード通信」(「ふぃあ通」の前身)中のミニドラマで麻耶の役を担当することになるのだが、これが本当に「萌えとイタイは紙一重」を体現するくらいノリノリで頭のゆるいロリキャラを演じ、そのイタさに逆に多くファンをつけてしまった。「ふぃあ通」では2009年頃まで小暮英麻とは別に「東雲麻耶」が1コーナーを担当していた。小暮の演じる麻耶は次第に常軌を逸脱した言動を見せるようになり、頭のゆるいロリキャラでさえなくなり、エキセントリックでアグレッシブな能天気娘へと変貌していった。あまりにもリプレイでのイメージとかけ離れていったために今では「これはリプレイに出てくる麻耶とは設定を同じくする別のキャラクター」と菊池たけしによって公式にみなされている。そのためもあってか、ウェブラジオのミニドラマで出てくる麻耶は天涯孤独ではなく母親と暮らしているなど一部設定もリプレイとは異なっている。小暮が演じる麻耶はリプレイ上の麻耶と区別するためもあって「にゃふぅ」(もしくは「まやふぅ」。「ふぃあ通」では「まやふぅ」がコーナー題として用いられていた)と呼ばれることもある。これは小暮がラジオで演じるアンゼロットがあまりにエキセントリックなため「コグレロット」と呼ばれてリプレイ上のアンゼロットと区別されているのと同じである。なお、にゃふぅは『ToHeart2』のまーりゃんに似ているという声が「ふぃあ通」のファンの中で聞かれることがあるが、これは声優が同じ小暮だからである。『黒き星の皇子』はナイトウィザードやセブン=フォートレスのいくつかのリプレイをつなぐ大河物語「マジカル・ウォーフェア」の一編でもある。神条皇子は第三世界エル=ネイシアの生まれとなっているが、彼を赤子の時エル=ネイシアから浚ってきたのは魔王ベール=ゼファーである。ベール=ゼファーは「世界の破滅をもたらす魔神の覚醒」という自分にとって都合の良い運命を確定すべく、魔神覚醒のための定められた条件「麻耶と皇子が惹かれあい、麻耶の死に皇子がショックを受け世界を否定するようにする」を実現するために皇子の環境に干渉しつづけた。皇子と麻耶が惹かれあっているのは全てベール=ゼファーのお膳立てだった。”首席”が麻耶を射殺したことで、事態はベール=ゼファーの思惑通りに進んだかに見えた。しかしナイトメアとマンテル博士の介入、そして何よりも、皇子が「麻耶の蘇生」という希望を得て正気を取り戻した時点で、計画は水泡に帰した。
出典:wikipedia
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