ゴキブリ(蜚蠊、ひれん)は、昆虫綱ゴキブリ目 (Blattodea) のうちシロアリ以外のものの総称。シロアリは系統的にはゴキブリ目に含まれるが、「ゴキブリ」に含められることはなく、伝統的には別目としてきた。なお、カマキリ目と合わせて網翅目 (Dictyoptera) を置き、Blattodeaをその下のゴキブリ亜目とすることがあるが、その場合、ゴキブリはゴキブリ亜目(のうちシロアリ以外)となる。熱帯を中心に、全世界に約 4,000 種、うち日本には南日本を中心に 50 種余り(朝比奈 1991 によると 52 種 7 亜種)が知られる。世界に生息するゴキブリの総数は 1兆 4853億 匹ともいわれており、日本には 236億 匹(世界の 1.58%)が生息するものと推定されている。「御器(食器)をかぶる(かじる)」ことから「御器齧り(ごきかぶり)」と呼ばれるようになった。現在でも地方によっては「ゴッカブイ」「ボッカブリ」などの方言呼称が残っている。「ゴキブリ」という名称は、明治時代に出版された日本初の生物学用語集に脱字があり、「ゴキカブリ」の「カ」の字が抜け落ちたまま拡散・定着してしまったことに由来する(詳しくは誤植#辞書の誤植の『生物学語彙』を参照)。平安時代には「阿久多牟之(あくたむし)」や「都乃牟之(つのむし)」の古名で呼ばれ、江戸時代には「油虫(あぶらむし)」と呼ばれるようになった。アブラムシは広く親しまれていた名称だが、アリマキとの混同を避けるため近年ではあまり使われなくなっている。漢字表記には漢名の「蜚蠊」(ひれん)という文字が当てられる。沖縄ではこれが訛って「ヒーラー」と呼ばれる。他の方言呼称として、「クロッツ」、「アマメ」(長崎県ほか九州、三重県志摩半島)などがある。体長は10mmほどから100mmに達する種類まで様々だが、家住性の種はどれも10-40mm程度である。最大種は南米に生息するナンベイオオチャバネゴキブリで、体長110mm、開長200mmに達する。日本産の最大種は石垣島、西表島に生息し、体長50mmになるヤエヤママダラゴキブリである。全身が上から押しつぶされたように平たく、狭い場所に潜むのに都合がよい体型をしている。頭部は胸部の下に隠れる。口には大あごがあり、食物をかじって食べる。複眼の機能はあまり良くないが、長い触角と尾部の尾毛(びもう)がよく発達し、暗い環境下でも周囲の食物や天敵の存在を敏感に察知する。脚がよく発達し、走るのが速い。例えばワモンゴキブリの走る速さは1秒当たり1.5m(体長の40-50倍)と言われている。成虫にはふつう翅が 2 対 4 枚あるが、前翅だけ伸びる種類、もしくは翅が全く退化してしまった種類もいて、これらの種類は飛翔能力を欠く。また、翅が揃っている種でも飛翔能力は低く、短距離を直線的に飛ぶ程度である。「アブラムシ」(油虫)の別名もあるように体表に光沢をもつ種類が多いが、種類によっては光沢を欠くものもいる。光沢をつくる脂質は、ヘプタコサジエンを主成分とする。卵 - 幼虫 - 成虫という成長段階を踏む不完全変態の昆虫である。卵は数十個が一つの卵鞘に包まれて産みつけられるが、チャバネゴキブリのようにメスが卵鞘を尾部にぶら下げて保護するものや、サツマゴキブリのように一旦体外で形成した卵鞘を体内のポケット状の器官に引き込んで体内保護するものもいる。また、完全な胎生である種もいる。幼虫は翅がない以外は成虫とほぼ同じ形をしており、5 - 7 回の脱皮を経て成虫となる。クロゴキブリのような大型種は成虫になるのに 1 年半から 2 年ほどかかるものが多く、世代交代の速度は意外に遅い。体の脂肪体を栄養とすることで、ワモンゴキブリは水さえ摂取していない状態でも30-40日は生き残れる。ゴキブリが出現したのは約3億年前の古生代石炭紀で、「生きている化石」ともいわれる。日本における最古の昆虫化石は、中生代三畳紀の地層から発見されたゴキブリの前翅である。古生代から絶滅せずに生き残ってきたことから「人類滅亡後はゴキブリが地球を支配する」と言われるほどだが、実際には森林環境に依存している種が多いので、人類が自らの環境破壊によって森林環境を道連れに滅亡した場合には絶滅する種が多いと推測され、人家生活型のコスモポリタン種は依存する人家環境の消滅によって棲息範囲が減少する可能性が高い。本来は熱帯雨林に生息する昆虫で、昼間は朽ち木や落ち葉のかげにひそみ、夜になると出歩いて菌類、樹液、朽ち木、動物の死骸や糞などを食べる雑食性の昆虫である。食物の主体は朽ち木などの腐植質であり、中にはクワガタムシの幼虫やシロアリのように朽ち木のみを食べて生活するものも少なくない。やがて特に雑食性の強い種の中から寒さや食物に困らない人間の住環境に進出する種類が現れ、不快害虫として激しく忌み嫌われるに至っている。ゴキブリは、体内に共生する微生物により、窒素排泄物を体外に捨てずに尿酸として体内に蓄積し、これを共生微生物を介してアミノ酸に戻すことにより、タンパク質などのアミノ酸態窒素に非常に乏しい食環境で生活できる。残飯や動植物遺骸は勿論、人間の垢や毛髪、和紙や油まで食べる。家屋害虫となるゴキブリの種類は全てのゴキブリのうち1%にも満たない。人家に棲むゴキブリの中で特にコスモポリタンとして世界中に広まっている外来種には、クロゴキブリ、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリなどのようにアフリカ原産だったと推測されているものが多い。これらは寒さには弱く、日本での生息地は北海道と高標高地を除く場所である。しかし近年では人家生のコスモポリタン種は北海道にも進出して一年中暖かいビル内などで繁殖・定着している。一方、森林性の種類は在来種のオオゴキブリ、モリチャバネゴキブリ、サツマゴキブリ、ルリゴキブリなどがいるが、在来種のヤマトゴキブリのように人家にも生活の場を広げる例もある。ゴキブリ目はカマキリ目と近縁で、合わせて網翅類 (Dictyoptera) を成す。なお、これを網翅目とすることがあり、その場合、ゴキブリ目はゴキブリ亜目となる。古くは現在のバッタ目、ナナフシ目、ゴキブリ目、カマキリ目を1目とし、網翅目または直翅目と呼ぶこともあった。しかし実際は、バッタ目とナナフシ目、ゴキブリ目とカマキリ目は近縁だが、たがいは近縁ではなく、このような分類は現在ではなされない。シロアリは伝統的な分類では独立目のシロアリ目(等翅目)とされていたが、現在はゴキブリ目に含められ、シロアリをキゴキブリ属の姉妹群とする説が支持されている。分類体系についてはさまざまな説がある。朝比奈 (1991) は一部の亜科(マルゴキブリ亜科、オガサワラゴキブリ亜科、ハイイロゴキブリ亜科、マダラゴキブリ亜科)を独立した科として扱っている。家住性のゴキブリは、台所をはじめ住居の各所に生息している。古代ギリシャ時代から記録があるほどで、古来より身近な昆虫の一つとして認識されている。日本においては、古くは約4,300年前頃の縄文土器で卵の跡が見つかっている。そのグロテスクな姿やカサカサと早い動き方からもあって現代の日本では一般的には忌み嫌われることが多く、「不衛生」や悪い意味での「しぶとさ」の代名詞と見なされることが多い。アメリカの人々の方が日本よりもゴキブリを嫌う傾向が強いという比較調査結果もある。一方で、世界的には必ずしも害虫扱いされているわけではなく、ペットや食用に利用されることもある。隠れ家になりやすい汲み取り式の便所や台所を経て人間に対してサルモネラ菌などの病原体を伝播させたりする。ただし、ネズミや蚊などと異なり、ゴキブリが特定の病気を媒介することはない。まれにゴキブリに対してアレルギー反応を示し、喘息の発作を起こす人がいる。また、機械類に侵入して内部の配線等を切断・破壊したりといった行動も注目される。活動する人を襲って傷つける事はないが、就寝中などに噛まれる事例もある。ゴキブリは海外ではポピュラーなペットであり、愛好家も存在し、ペット用にさまざまな種が輸入されてもいる。1993年6月4日には、岡山市でゴキブリの品評会が初開催された。当初はゴキブリの大きさを競うだけだったものが、最近はゴキブリの艶を競ったり、ゴキブリレースを行うなど、年々多様化している。会場は、最初は市役所、次は文化ホールで、3回目はスーパーマーケットで開催された。ほぼ全世界(日本、中国、ベトナム、タイ、ナイジェリア、カメルーン、コンゴ、メキシコ、ブラジル、イギリス)の一部地域もしくは先住民族によって、広く食用として利用されてきた歴史がある。ただし、バッタ類やハチ類、甲虫類などと比べれば、ゴキブリを食べる地域やその消費量は少ないといえる。清潔な環境下で育成すれば臭みも少なく、種類によっては可食部も大きい。卵鞘も揚げて食べたり酒に漬けたりできる。調理法は食人口の多さから極めて多岐に亘るが、東アジアでは油揚げが一般的である。ゴキブリの唐揚げを食べた人の話によれば、食味はシバエビに似ており、食べられない味ではないとのことだが、少なくとも日本では一般にゲテモノ料理の扱いとされる。またこれらの食べ方は食用種や野生種の話であり、一般家庭の台所などから見つかる個体は有害物質の生物濃縮が進んでいる危険性が高く、食用するのは不適切である。ゴキブリを口にした人間や犬猫は、ゴキブリを中間宿主とする条虫に寄生される場合も有る。民間療法では地域ごとに様々な効能が謳われているが、迷信が殆どである。「金匱要略(きんきようりゃく)」によればサツマゴキブリやシナゴキブリの雌は血行促進作用を持つものとして漢方薬の一つに扱われている。また、これらの薬効は日本の薬局方では認められていないが、シナゴキブリの乾燥品は漢方薬として入手が容易である。ゴキブリはその体構造が原始的・平均的であるため実験動物としても利用されており、アメリカ合衆国などには専門の業者がいて珍種などを販売している。中でもワモンゴキブリの評価が高い。エヴァンズはその利点として飼いやすいことを挙げ、何しろ最初から実験室に住んでいるからと述べている。市販の薬品使用から直接攻撃まで多岐に渡る。しかし、幅広い食性や環境への適応力といった形態的・生態的特性から、ゴキブリを根絶するのは困難である。家庭内のゴキブリを捕獲・駆除するための商品は数多く開発・発売されている。餌・誘引剤と粘着シートによる捕獲器(「ごきぶりホイホイ」など)、薬剤が遠くまで飛ぶスプレー型殺虫剤、火や水による化学燻蒸で締め切った室内を燻す殺虫剤(「バルサン」など)、ホウ酸や薬剤入りのベイト剤などが挙げられる。なお、薬品は人体にも有害な場合が多く、使用法によっては耐性ゴキブリが発生するおそれもある。益虫の中にはアシダカグモのように人間には害のないものもいるが、最も一般的な手段としてネコの飼育がある。しかし、幼いときからキャットフードのみで屋内生活をしてきたネコの場合、逆にゴキブリを恐れそのエリアに近づかなくなってしまうこともある。ゴキブリについてはさまざまな逸話や都市伝説(噂話)が存在する。
出典:wikipedia
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