技術士(ぎじゅつし、Professional Engineer)は、技術士法(昭和58年4月27日法律第25号)に基づく日本の国家資格である。有資格者は技術士の称号を使用して、登録した技術部門の技術業務を行える。技術士補(ぎじゅつしほ、Associate Professional Engineer)は、将来技術士となる人材の育成を目的とする、技術士法に基づく日本の国家資格である。有資格者は技術士の指導の下で、技術士補の称号を使用して、技術士を補佐する技術業務を行える。なお、台湾の技術士については、#台湾の技術士を参照。技術士法第2条は、技術士を次のように定義している。このように、技術士とは 「高等の専門的応用能力」を備えた技術者であると規定されている。では、「高等の専門的応用能力」とは、具体的には一体どのような能力のことであるか。受験対策書や受験対策講座などでは「これまで習得した知識や経験等に基づき、対処すべき課題に合わせて正しく問題を認識し、必要な分析を行い、判断し、対応策の企画立案等を実施できる能力」「的確に問題点を把握して、創意工夫により解決を図る能力」などと説明されている。実際、技術士試験では、技術上の問題を発見し、それを解決できるかどうかを問う出題がされている。「技術上の問題を発見し、それを解決する業務」とは、すなわち技術コンサルタントの業務である。技術コンサルタントと名乗って仕事をするかどうかは別として、技術士とは技術コンサルタントの能力があることを国が認定した技術者であると言える。技術士は、業務独占資格ではない。例えば、建築の設計や医療行為などは、独占業務である。そのため、その資格を持たない者は、これを行うことはできない。一方、技術コンサルタントという仕事は、技術士の独占業務ではない。そのため、誰でも技術コンサルタントの仕事を行うことはできる。しかし、技術士は、国家試験によって一定レベルの問題解決能力を認証されている。また、技術士法第45条および59条により、秘密保持義務を課されている。したがって、無資格の技術コンサルタントと比較して、顧客の信用を得やすいと考えられる。学士を持たない社会人研究者が、技術研究で大学院を受験するとき、受験資格審査に有効な資格である。例えば、国立大学大学院では、技術士第一次試験合格者・技術士第二次試験合格者の、学士を持たない社会人研究者を審査後、受験を許可している。合格・修了後は修士・学士の両方が学位授与機構から交付される。技術士は、登録技術者(レジスタード・エンジニア)制である。したがって、試験に合格しただけでは技術士ではない。所轄官庁である文部科学省へ登録免許税と登録手数料を添えて、以下の事項を登録することで、技術士の権利と義務が発生する。(技術士法32条)技術士の義務に違反すると、技術士登録を取り消されることがある。(技術士法第36条)技術士法第57条は、技術士の名称独占を定め、以下の行為を禁じている。ただし、1950年(昭和25年)に電波法に基づき制定された無線技術士(1990年(平成2年)より陸上無線技術士)は、技術士とは異なる国家資格であるが、技術士に先行する国家資格であるため、名称独占の例外であるとみなされている。なお、技術士の英文名称は「Professional Engineer」、技術士補の英文名称は「Associate Professional Engineer」とされているが、技術コンサルタントを職業とする者が広告、名刺などにおいて、コンサルティングエンジニア(「Consulting Engineer」, 「CE」)を名乗ることに問題はないものとされる。また、他の多くの国家資格と同様に、名称を独占的に使用可能である範囲は日本国内のみに限定される。例えば、アメリカ合衆国においては州法に基づく資格としてが制定されているため、日本の技術士が現地において許可を得ないままProfessional Engineerとして業務を行った場合には州法に依る処罰の対象となる。なお、Professional Engineerは州法に基づく資格であるため、登録に要する基準は各州毎に異なっており、ある州に登録をしたProfessional Engineerであっても、それ以外の州で業務を行った場合には処罰の対象となる。法律上は技術士の業務が「計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務」と広く定義されているが、建築基準法では建築・建築設備に関する設計などは建築士の独占業務となっており、これに関して技術士は行なえないなど、実際に技術士に期待されている役割は「指導の業務」、すなわち技術コンサルタント(コンサルティング・エンジニア)としての活躍である。技術士試験も実務者に必要な技術力ではなく、技術コンサルタントに必要な論理的思考力・問題解決能力・表現能力をみる内容となっている。技術士全体の84%が一般企業やコンサルティング会社に勤務し、約8%が官公庁に勤務しているほか、約8%は技術士事務所を開業して独立技術コンサルタントとなり、以下のような業務に従事している。技術士登録をすると、技術士の名称を使用する権利を得る反面、以下の義務を負う。これらの義務に違反すると、技術士法 第36条の2の規定により、技術士登録を取り消されることがある。秘密保持義務には刑事罰も規定されている。非技術士の技術コンサルタントが秘密を漏洩しても民事責任を問われるのみだが、技術士は技術士登録を取り消されるだけでなく刑事罰にも処せられる可能性がある。他の技術系資格が専門分野ごとに制度を設けているのに対して、技術士は科学技術の全領域に渡る分野をカバーしている。現在、以下の21の技術部門が設けられており、各部門はそれぞれ部会を作り活動している。船舶・海洋部門と航空・宇宙部門は同一の部会として活動しており、総合技術監理部門では部会が設立されていないことから、19の部会がある。なお、技術部門の区分について、海外の技術資格である米国のPEや英国のCEと日本の技術士では相違が見られる。技術士試験は、技術士法の指定試験機関である日本技術士会が実施している。試験の内容はおおむね毎年同じだが、2007年(平成19年)度のように大規模な制度変更を行う年度もある。この記事の内容は最新の状態に保たれているとは限らないので、受験を志す者は必ず日本技術士会技術士試験センターのウェブサイトで最新の情報を入手すること。例年、おおむね以下のようなスケジュールで実施されている。。第一次試験の出願から第二次試験の合格まで、最短でも2年近くかかることになる。第一次試験には受験資格はなく、誰もが受験できる。史上最年少での技術士第1次試験の合格者としては、8歳の千代田区の小学3年生の男の子がその記録を持っている(H26.1.8朝日新聞東京版朝刊28Pに記載)。第一次試験に合格すると、技術士補登録をする資格が得られる。つまり、第一次試験は、技術士補試験を兼ねている。技術士会では、第一次試験合格者を「修習技術者」と呼んでいる。第一次試験の試験科目は以下の通り。大学や高専などの教育機関の、日本技術者教育認定機構 (JABEE) が認定した教育課程を修了した者は、第一次試験の合格者と同等(つまり修習技術者)であるとみなされる。第一次試験の合格率は、2013年(平成25年)度の実績で37.1%である。第二次試験に合格すると、技術士登録をする資格が得られる。第二次試験を受験するには、修習技術者(技術士一次試験合格もしくはJABEE認定課程の修了)であることに加えて、次のいずれかの条件を満たすことが必要である。また、理工系の大学院を修了している場合、その期間のうち最大2年を、上記の業務期間から減じられる。つまり、理工系の大学院を修了した者が技術士補登録をすれば、最短2年の実務経験で受験が可能になる。一次試験と二次試験の技術部門は、異なっていてもよい。例えば、一次試験は電気電子部門で受験して、二次試験は情報工学部門で受験してもかまわない。総合技術監理部門の選択科目は、他の技術部門の選択科目および必須科目に該当する。すなわち、総合技術監理部門の受験には次の特徴がある。受験申込書に記入した「技術部門」「選択科目」「専門とする事項」に従って、以下の設問に解答する。筆記試験合格者は、図表等を含め3000字以内でA4用紙2枚の技術的体験論文を作成し、所定の期日までに提出する。2006年(平成18年)度までは各部門で異なる出題がされていたが、平成19年度以降は以下の出題に統一された。技術的体験論文を提出した者だけが口頭試験を受験できる。口頭試験は、筆記試験の答案、技術的体験論文、および受験申込書に添付した業務経歴書を使用して実施される。口頭試験の試問事項及び試問時間は、次の通りである。近年では2001年(平成13年)度と2007年(平成19年)度に大きな制度変更が行われている。2000年(平成12年)度までの技術士二次試験の出題形式は概ね以下のようであった。全体の記述量は12000字にもおよび、「論文のトライアスロン」と言われるほどであったが、2001年(平成13年)度から論文の記述量が削減され、また総合技術監理部門が新設されて、以下のようになった。(総合技術監理部門については省略)これには次のような批判があった。そのため、2007年(平成19年)度より以下のように改正された。この制度改革により、試験結果には次のような変化が現れた。このことから、改正前の試験と比べて受けやすくはなったが、易しくはなっていないと言える。以下、2008年(平成20年)度の実績に基づいて記述する。二次試験の合格率は年度や部門、部門内の選択科目によって異なる。実際に受験した26,423人のうち、4,967人(18.8%)が筆記試験に合格し、4,143人(15.7%)が口頭試験に合格している。総合技術監理部門は、他部門で合格した者が受験することが多かったので、かつては他の部門よりも合格率が高かったが、現在では他部門の平均と変わらなくなっている。なお、技術士第二次試験の合格者の平均年齢は41.8歳であるが、合格率が最も高いのは30代の受験者であるので、30代で合格できる試験にするという制度改革の主旨は達成されたと言える。なお、史上最年少の技術士第二次試験の合格者は、26歳である。(技術士が有資格者として認められているもの)(技術士が資格試験の一部あるいは全部を免除されているもの)技術士制度は科学技術の全分野を網羅する制度であるが、実際の有資格者数の割合は建設部門が45%を占めており、これに関連の深い上下水道部門や応用理学部門(地質)が続いている。この分野では建設コンサルタント登録の条件とされるなど、事実上の業務独占資格(必置資格)となっているためである。また官公庁の土木建設系の技官や、都道府県庁に所属する技師らが比較的多く資格取得する(建設部門では毎年の資格取得者割合は官と民が半々)。建設分野では高く認知されており、「30代前半までに技術士の資格を取得しないと、技術者として会社に残ることは難しい」とさえ言われている。しかし、その一方で、それ以外の技術分野、例えばソフトウェア開発の現場での認知度は低い。国境を越え、技術者の技術水準を国家間で相互に承認するための仕組みの一つとして、APECエンジニアが2000年11月1日に登録を開始した。政府間で交渉が済んでいる国との間でAPECエンジニアは、同一の技術レベルを持つ技術者として認められる。APECエンジニア9分野で、日本では技術士がAPECエンジニアの登録要件となっており、Structuralのうち建築構造系の登録以外の事務局は日本技術士会内に設置されている。Structuralのうち建築物に関する業務(建築物等の企画・計画から設計・施工・維持管理その他にいたるあらゆる局面での建築構造に関する業務を対象)関連の技術者の場合、建築基準法上の設計、工事監理は建築士でなければ行えないため、建築構造系の一級建築士である構造エンジニアが登録は技術士とは別となっており、財団法人建築技術教育普及センターが事務局を担当している。申請の対象となる技術士技術部門及び選択科目と対応するAPECエンジニアの分野は、以下の通りとなった。2011年1月現在の加盟エコノミーは以下の通り。EMF(Engineers Mobility Forum)協定に加盟しているエコノミー間での技術者相互承認を行っている。APECエンジニアが政府間の枠組みによる相互承認なのに対し、EMF国際エンジニアは各国のエンジニア協会同士の相互承認となっている。日本の場合略称はIntPE(Jp)である。2011年1月現在の加盟エコノミーは以下の通り。台湾における技術士とは、職業訓練法に基づきが行うの合格者をいう。2014年の場合、全国技術士技能検定は129の職類に対して行われ、その範囲は理工学に留まらず按摩や美容、会計事務など幅広い。ランクも職種に応じ甲級、乙級、丙級の3段階(多くの職種ではうち1~2段階、一部の職種は単一級の1段階のみ)あり、甲級は大学卒業後一定の業務経歴が必要だが、丙級は義務教育修了で受験できるなど、日本の技術士制度に比べ広範なものになっている。
出典:wikipedia
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